「お前ら全員一番デッカいところまで連れていく」THE ORAL CIGARETTES “キラーチューン祭り”にみた自信と覚悟
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THE ORAL CIGARETTES photo=Viola Kam (V’z Twinkle Photography)
唇ワンマン TOUR 2016~キラーチューン祭り東名阪ワンマンの巻~ 2016.11.22 Zepp Tokyo
Zepp DiverCityでの新春リベンジマッチから始まったTHE ORAL CIGARETTESの2016年は、お世話になった地方のライブハウスを切磋琢磨しあう仲間とともにまわる対バンツアーを行ったり、地元・奈良での初のホールワンマンを開催したり、音楽面/精神面において自身を掘り下げた「DIP-BAP」「5150」をリリースしたり――と、バンドの地盤を固めるための旅をしてきた1年となった。その終着点がこの『唇ワンマン TOUR 2016~キラーチューン祭り東名阪ワンマンの巻~』ツアーファイナル、Zepp Tokyo公演である。
THE ORAL CIGARETTES photo=Viola Kam (V’z Twinkle Photography)
「一本打って!ただいまより~」と山中拓也(Vo/Gt)がバンドサウンドを従えて開幕宣言をするおなじみのオープニングからこの日もスタート。イントロがリフレインするSEからそのまま1曲目の「DIP-BAP」に突入すると、ミクスチャーとヒップホップが混ざり合ったマーブル模様のサウンドとギュンギュン飛び交うレーザー光線がオーディエンスを昂らせる。2曲目を終えたところで早くもMC。自分の口から言わせてください、と前置きしてから、来年6月16日に初の日本武道館ワンマンが決定したことを改めて報告した。そして「このワンマンツアーではお前らと腹割って話したい。ただそのためにはお前らも俺らも汗かかなアカン、ぶつかり合わなアカン。ついてこいや!」と、「STARGET」へ。
THE ORAL CIGARETTES photo=Viola Kam (V’z Twinkle Photography)
「気づけよBaby」では歌うようなフレーズからスラップまで自在に操るあきらかにあきら(Ba/Cho)の多彩さが光り、「GET BACK」~「嫌い」の繋ぎでは3連符を刻む中西雅哉(Dr)がそのビートひとつで空気を塗り替える。「嫌い」では何かに取り憑かれたかのような鈴木重伸(Gt)の移入っぷりが凄まじかったし(サビ終わりで若干ふらついていたのもそのためだろう)、「マナーモード」で見せた山中の湿度・粘度高めのヴォーカル&ジェスチャーは曲自体の大きなアイデンティティになっていた。途中にはソロ回しを披露する場面もあったし、一人ひとりの見せ場もふんだんに盛り込まれていたが、各々の個性がバンドをさらに確かなものにするための要素としてしっかりと機能しているのだということも読み取れた。バンドの手綱を握る頼もしいドラムと、土台がしっかりしているからこそ自在に動き回ることができるヴォーカル&ギター、そしていざという時に頼みの綱になるのが両者の媒介役であるベース。ガチッとひとつに固まった4人のサウンドは、場内のテンションがどれだけ上がろうともどこか落ち着き払っている。
THE ORAL CIGARETTES photo=Viola Kam (V’z Twinkle Photography)
ところで、ツアータイトルの通りセットリストはアッパーチューンのみで構成されていたが、そもそもどうして彼らは“キラーチューン祭り”で今回のツアーを廻ることにしたのだろうか。メジャーデビュー直後のワンマンでは“ダンスロック”という言葉に対する疑問を語っていたし、それ以降のライブでも「“楽しい”だけじゃなくて伝えたいことがたくさんある」と言っていた。そこだけを見られてバンドのことを一元的に捉えられることを嫌っているように見えたのに、なぜあえて“キラーチューン祭り”に焦点を当てる必要があったのか。正直開演前までは私自身も疑問に思っていたが、ライブを観ているうちに伝わってきた部分がかなりあったため、その辺りにも触れておく。
THE ORAL CIGARETTES photo=Viola Kam (V’z Twinkle Photography)
まず特筆すべきは、冒頭に書いたように、2016年はバンドの地盤を固めた年であり、今回の“キラーチューン祭り”もその延長線上にあるのではないかということ。バンドのオフィシャルブログによると、今年12月に武道館ワンマンをやってしまおうという話が一度上がったそうだが、それを断り6月まで延ばしたのは、自分たちがやるべきことを地道にやってからにするべきだと考えたからだという。それと同じように、自分たちの手持ちの武器を研いでから次へ進みたいという意思がバンド側にあったはずだ。野心を切り崩さないバンドではあるが、一方で、階段を1段飛ばしでピョンピョン走り抜けていくことができないようなところもある。そういう性格こそがこのバンドの“らしさ”であり、どうしても憎めないところだ。
THE ORAL CIGARETTES photo=Viola Kam (V’z Twinkle Photography)
そして“キラーチューン祭り”が自分たちの武器だと正面切って言えるようになった理由に関しては、お客さんとの信頼関係というところに尽きると思う。山中は「全員を救うことは無理だって少し諦めがつきました。でも俺らに向かって手を伸ばしてくれる人たちの手は放したくない」と話していたが、そういうふうに吹っ切れることができたからこそ、目の前の相手の声をしっかりと受け入れられるようになった、ゆえに人気の高い“キラーチューン祭り”が自分たちにとってのかけがえのない武器であることを、素直に認められるようになったのではないだろうか。
THE ORAL CIGARETTES photo=Viola Kam (V’z Twinkle Photography)
この自信と信頼が紙一重である点こそが今のオーラルが調子のいい理由であり、だからこそ彼らは、せめて目の前にいる相手には誤解なきように、できるだけ丁寧に自分の考えを伝えるようにしている。そういう意味で印象深かったのは、「大魔王参上」を終えたあとのMC。武道館ワンマンが決まったのはもちろん嬉しいけどそれを特別視しているわけではないことを伝えたうえで、フロアへ「武道館って東京の人たちにとってどういう場所?」という質問を投げかけた。もちろん回答は様々だったが、さすがオーラルファン、「もっとデカいところがある」「通過点」「登竜門」など、フロアから飛び交う声もなかなか野心的である。言いたかったことが既に伝わっている、と笑ってから、「オーラルにとって武道館がゴールではありません。なんならお前ら全員海外の一番デッカいところまで連れていく! だからその日まで、いや、達成したとしても、20年、30年、ずっと応援していただきたいです。これからもTHE ORAL CIGARETTESをよろしくお願いします!」と山中。深くお辞儀をする4人の元へ温かな拍手が送られたのだった。そのあと、「メジャーデビューからずっとみんなで歌ってきた曲」=「起死回生STORY」と「あなたたちを守っていこうという決意表明の曲」だという「5150」でこの日のライブは締め括られた。
THE ORAL CIGARETTES photo=Viola Kam (V’z Twinkle Photography)
THE ORAL CIGARETTES photo=Viola Kam (V’z Twinkle Photography)
フェスでもデカいステージを任せられるような存在になっているし、人気急上昇っぷりは破竹の勢いと言っていいほどだが、激流に流されて大事なものを見失わないように、彼らはこの1年間踏ん張ってきた。THE ORAL CIGARETTESを確かめ、肯定してきた。逸る気持ちを抑えながらじっくり歩いたこの経験は、これから先、バンドにとっての財産となっていくことだろう。踏みしめた地面の固さを確認できたならば、あとは飛ぶのみ。新春にリリースされるアルバム、それから全国ツアーに武道館、どれも楽しみだ。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=Viola Kam (V’z Twinkle Photography)
THE ORAL CIGARETTES photo=Viola Kam (V’z Twinkle Photography)
2. CATCH ME
3. STARGET
4. Mr.ファントム
5. 気づけよBaby
6. GET BACK
7. 嫌い
8. マナーモード
9. モンスターエフェクト
10. MIRROR
11. 大魔王参上
12. A-E-U-I
13. mist...
14. カンタンナコト
15. 狂乱 Hey Kids!!
16. 起死回生STORY
[ENCORE]
17. 5150