ヤクブ・フルシャ(指揮) 東京都交響楽団 躍進顕著な俊才が戦後の傑作交響曲を解明

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クラシック
2016.12.5
ヤクブ・フルシャ © Petra Klacková

ヤクブ・フルシャ © Petra Klacková


 前回から少し間が空いたので、待望の思いひとしおだ。12月の都響定期に首席客演指揮者ヤクブ・フルシャが登場する。1981年チェコ生まれの彼は、チェコ・フィルの常任客演指揮者を務め、欧米の一流楽団にも定期的に出演する俊才。しかもこのところロイヤル・コンセルトヘボウ管、ミラノ・スカラ座フィル、ウィーン国立歌劇場等へデビューし、今年9月にはバンベルク響の首席指揮者に就任するなど、その活動は充実を極めている。こうした勢いの中で、大野和士音楽監督就任後の都響を初めて振る今回は、快演が続いた以前にも増して注目が集まる。

 特に目をひくのが、マルティヌーの交響曲第5番とショスタコーヴィチの交響曲第10番が並ぶ公演だ。国際マルティヌー協会の会長を務めるフルシャは、都響でも、全曲演奏を目指す交響曲(3、4、6番)をはじめ、同作曲家の作品を次々に披露。当コンビの看板レパートリーともなっている。今回の5番は1946年に書かれたマルティヌー充実期の所産で、複調、ボヘミアの旋法、ドゥムカ等を織り交ぜながら万華鏡のように音楽が変化する。ここは、最大の理解者が伝えるマルティヌー再発見の喜びに浸りたい。ショスタコーヴィチの10番は、1953年に書かれた20世紀屈指の傑作交響曲。スタイリッシュな表現も重厚な表現も可能だし、暗号や隠れたメッセージの扱いを含めて、フルシャのアプローチに熱視線が注がれる。共に“ダイナミックかつ古典性を有しながら、一筋縄ではいかない交響曲”。複雑な曲も明快に構築し、引き締まった活力をもたらす当コンビにはピッタリの作品だけに、新鮮な名演が期待される。

文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2016年12月号から)


ヤクブ・フルシャ(指揮) 東京都交響楽団
第822回 定期演奏会 Aシリーズ

12/19(月)19:00 東京文化会館
問合せ:都響ガイド03-3822-0727
http://www.tmso.or.jp/

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