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ローラン・テシュネ(チェンバロ/アンサンブル室町芸術監督) 東西のアートを融合して捧げるサティへのオマージュ

2016.12.11
インタビュー
クラシック


 西洋の古楽器と日本の伝統楽器で現代音楽を演奏するユニークな集団「アンサンブル室町」がクリスマスの日に、生誕150年のサティに焦点を当てたコンサートを開く。芸術監督を務めるフランス人チェンバロ奏者ローラン・テシュネに聞いた。

「サティはあらゆる芸術のジャンルを飛び越えたコラボレーションに情熱を注いだアーティストです。本公演では、ダンス、ジャグリング、朗読など多様な芸術と音楽を織り交ぜて彼にオマージュを捧げます」

 面白いのは、彼自身の編曲によるサティの「スポーツと気晴らし」や「ソクラテス」の他に、内外の10人の作曲家に委嘱した新作と合わせたプログラムを組んでいること。青柿将大(1991生、以下同)、川島素晴(1972)、木下正道(1969)、渋谷由香(1981)、鈴木純明(1970)、台信遼(1982)の6人の日本人に、フランス人のアラン・モエーヌ(1942)とフロラン・キャロン=ダラス(1986)、カナダ人のゼミソン・ダリル(1980)、そしてダンサーでもあり演出も担当するイタリア人のアレッシオ・シルヴェストリン(1973)。

「各自のサティのイメージでオマージュを、と伝えただけで、どのような形になるかはそれぞれの作曲家に託しています。創造的な公演を事前に説明することは非常に難しい。箱に収まらない、あらゆる可能性を秘めた公演をお届けします、とだけお伝えしておきましょう」

 アンサンブル室町は2007年に結成、現在60人以上のメンバーで活動している。

「ヨーロッパの古楽器と和楽器はほぼ同じ時代に誕生していますし、笙とオルガン、三味線とギター、尺八とトラヴェルソなど、似た楽器が多く存在していることは興味深いと思います。両者を一緒に演奏することで音色の新しい可能性が生まれ、多くの作曲家が興味を持ってくれています。私は1995年に日本へ移り住み、ピエール・ランディの著作『日本の音楽』に衝撃を受けました。そして、尺八奏者・山本邦山と出会い、最初にチェンバロと和楽器の合奏を試みた後、アンサンブル室町を結成しました。個人の芸術的冒険が、新しい世紀にふさわしい集団による錬金術へと発展してきたわけです」

 そんなテシュネは、サティの魅力は人間的な大きさだという。

「それが彼をテーマに選んだ理由です。彼の生きた19世紀から20世紀にかけては大きな痛みを伴った時代。現代はその頃と似ています。しかし現代社会は戦争などの恐ろしい衝突を防ぐことができると信じています。クリスマスを信じるように人間性を讃えるのです!」

取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ 2016年12月号から)


アンサンブル室町による MERRY CHRISTMAS MR.ERIK SATIE!
12/25(日)16:00 東京文化会館(小)
問合せ:東京コンサーツ03-3200-9755
http://www.ensemblemuromachi.or.jp/