刀剣の所作体験も!東京美術俱楽部で美術商に聞く、初心者でも楽しめる『2019東美アートフェア』の魅力

インタビュー
アート
2019.9.27
左から、夏目洋史東美青年会理事。池田祥三東美青年会理事長。

左から、夏目洋史東美青年会理事。池田祥三東美青年会理事長。

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『東美アートフェア』は、東京美術商協同組合が主宰するアートフェアだ。今年は10月4日から6日にかけて開催される。会場は、東京美術俱楽部。102軒の一流の美術商のブースが軒を連ね、選りすぐりの古美術、近代美術、現代美術、茶道具、工芸などを紹介する。画廊や古美術店の雰囲気をオープンな会場で、一挙に見て買うことができるイベントだ。
開幕に先駆けて、東美アートフェアの実行委員でもある、東京美術青年会の池田祥三さんと、夏目洋史さんに「東美アートフェアの楽しみ方」を聞いた。

2019東美アートフェアで、センスのあう美術商との出会いを

──今年の見どころをお聞かせください。

夏目:102軒もありますので、見どころは満載です。今回入れ替わりでの出店となるのが、刀剣を扱う「日本刀剣」さん(ブースNo.4‐15)と、古典籍・書画・文房四宝などを扱う「玄海樓」さん(ブースNo.4‐9)の2店です。

池田:このアートフェアに出品されるものには、基本的には値札がついています。美術館によく行かれる方は「あれって、このくらいの値段で買えるんだ」と分かるのも面白さの一つでしょうね。

そして、何より品揃えの良さは、プロである我々同業者の目でみても楽しいものです。東美アートフェアを主催する東京美術商協同組合は、加入に厳しい審査があり、誰でも入れるものではありません。東美アートフェアは、そんな東京美術商協同組合員の中から102軒が出店するイベントですから、日本のトップディーラーが集まっていると思っていただいて差支えありません。そのような中で、自分の店の看板でやる以上、皆、この日に向けて時間をかけて準備し「これが良い」と思ったものを出しています。

──日本のトップディーラーの本気が詰まったブースが102軒並ぶと思うと、ワクワクします。参考までに、夏目さんのお店(ブースNo.3-30)は、いつ頃から今回の準備をされていたのでしょうか。

夏目:3年ほど前からです。今年は加来万周さんという、若手ながら人気と実力を兼ね備えた作家さんの新作を出します。加来さんは次々に作品を描くタイプではありませんので、3年前には声をかけ、今年の東美アートフェアに向けて準備を進めてきました。

池田:注目しているコレクターの方も多いでしょうね。品物はもちろん、会場ではディスプレイの造作やブースの作り方にも、美術商のカラーが出ますよね。

夏目:凝る店は凝りますからね。

池田:色使いにセンスを感じさせる店もあれば、あえてディスプレイはシンプルに、品物だけで勝負するスタイルの店もあります。102軒もあれば、個性も様々です。東美アートフェアにきて、その場で購入いただかなくとも、ここでご覧いただくことが、信用でき、尚且つ好みにあう店と出会うきっかけになるのではないでしょうか。

夏目:ここで出会った店舗に、後日足を運んでいただければ、店主ともゆっくりお話いただけるでしょうし、私どもとしてもうれしいですね。

池田祥三(いけだしょうぞう) 東美青年会理事長。いけだ古美術代表取締役。日本、中国を中心に、 考古美術や金石古陶磁、 仏教美術などを扱う。

池田祥三(いけだしょうぞう) 東美青年会理事長。いけだ古美術代表取締役。日本、中国を中心に、 考古美術や金石古陶磁、 仏教美術などを扱う。

見る目、審美眼は、養えますか?

──いずれの美術品も価値あるものだと思いますが、その中から、センスの良いものを見つける「見る目」「審美眼」といったものは、どうしたら養えるのでしょうか。

夏目:目で見て覚えるしかないような気がします。

池田:そうですね。習うよりは、数多くみた中に美しいなと感じるものがある、という感覚です。たとえば私の店(いけだ古美術。南青山)では、縄文土器や弥生土器を扱います。「美しい」の感覚や基準は、作った当時の人たちと現在の私たちとで異なるでしょうが、今、縄文は非常に人気があり、東京国立博物館の『縄文展』も大きな話題となりました。私たちはあくまで現代の感覚で、縄文土器の造形的な美しさをみているのですよね。

土器もすべてが美しいわけではありません。数ある中に、美術的鑑賞に耐えうるものがある。博物館の、土器を中心とした展示室でもわかるかもしれません。実際に部屋に飾るなどすると、ただ古いだけの土器と美術品といえる土器では、さらにわかりやすく差が出ます。

──なるほど。ちなみに池田さんや夏目さんは、年間どのくらいの数の美術品をご覧になるのでしょうか。

夏目:どのくらいでしょう。何万点……。

池田:様々なジャンルの美術品を、年間数万点みていますね。ただ「見る目」にも色々あります。お客様の中には、万人受けする美術品を好む方もいれば、人に何と思われようが、自分はこれが好きと仰られる方もいます。感性で楽しむ物もあれば、専門的に勉強して初めて分かるというようなジャンルもあります。東美アートフェアの会場を見渡しても、「このジャンルの中ではこれが最高」と誰もが異論なく認める超一級品は別として、のこりの大部分の美術品には、美術商の好みが出るものです。アートにこれから触れてみたいという方は、まずは自分が好きと思える商品を、気軽な気持ちで探してみる事をお勧めします。

夏目洋史(なつめ ひろふみ) 東美青年会理事。靖雅堂夏目美術店の4代目。日本画・洋画を扱う。

夏目洋史(なつめ ひろふみ) 東美青年会理事。靖雅堂夏目美術店の4代目。日本画・洋画を扱う。

そもそも美術商の仕事とは?

──年間数万点という美術品をご覧になる美術商さんの、普段のお仕事についてお聞かせください。

池田:美術商にもそれぞれに専門の分野があります。私は古美術商で、夏目さんは画商。古美術商は、おおまかには江戸以前のものを扱います。明治大正のものは、いまでは古美術に近い扱いとなりつつありますが、近代美術という括りにするのが一般的です。

夏目:画商が扱うのは日本画、洋画、版画などの絵ですね。

池田:我々のお客さんは、必ずしも一般の愛好家の方々ではなく、大学や美術館、同業者だったりもします。「交換会」と呼ばれる美術品の市場での売買も重要な仕事です。全国の美術商が品物をもって集まり、同業者同士で競売をするのです。築地の魚市場の、美術品版をイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。

夏目:今日もちょうど、「交換会」が下の階で行われているんですよ。

──先ほどこの建物(東京美術俱楽部)の奥から、男性の大きな声を聞きました。

池田:おそらく、競売の「〇万」「〇〇万」という声ですね。

──そうだったのですね!古美術店の静かな雰囲気から、美術商さんに謎めいたイメージを持っていましたが、あの活発な競りの声を聞くとイメージが変わりますね。

夏目:画商の場合は、百貨店で催事をする機会も多いです。たしかに店舗だけを見てしまうと、美術商は中で何をしているか、わかりにくいですよね(笑)

池田:映画や小説、テレビ番組に登場する骨董屋や古美術商は「騙す人」「足元をみて値段をつける人」といった描かれ方をされることも多いですからね(苦笑)。私自身、よく聞かれるのは「値段はどうつけるのか?」ということです。美術品にも市場があり、相場があります。交換会では、相場を知るプロの美術商同士が競るので、それほど安く買えることはありません。それなりの額で仕入れたものに、店ごとに値段をつけて売る。美術品の値段にも、きちんと理由があるんですよ。

見て、触れて、買えるアートフェア

──最後に、はじめて「東美アートフェア」に来る方へ、楽しみ方のアドバイスをいただけますか。

池田:たとえば器物は、器の裏や全体と高台のバランスなど、360度から楽しむものです。もし特別気に入るものがあれば、美術商さんに「手に取ってもよろしいですか?」と聞いてみてください。万が一のことを考え、極力低い位置で持つのがポイントです。

夏目:壊れやすく、傷つきやすいものですから、指輪や腕時計は外してから触れていただくと良いですね。美術館との違いは、ガラス越しではなく間近で見られること。だからこそ美術品を傷つけるようなことがないよう、注意は必要です。

池田:また、会期中には茶の湯を題材にした漫画の原作者、早川光さんのトークショーや、事前予約制の体験イベントもあります。「はじめての刀剣」というイベントでは、研ぎ師の方が真剣を用いて、刀剣の所作をレクチャーします。「はじめてのお茶」というイベントは、茶道の経験がない方を対象に、ご自身でお茶を点て、抹茶をいただくところまでの体験をしていただきます。

夏目:これが一つのきっかけになればいいですね。

池田:一流の美術商たちが、この日のために揃えた美術品ですから、ブースを眺めるだけでも十分に面白いはずです。よほど気に入るものがあった時には、観て、触れて、購入もでき、美術商との出会いもある「東美アートフェア」に美術館へ行く感覚で気軽に足を運んでいただければと思います。


「2019東美アートフェア」は、10月4日から6日にかけて、東京美術俱楽部での開催。


取材・文=塚田史香 撮影=iwa

イベント情報

2019 東美アートフェア
 
10月4日(金)11:00-20:00
10月5日(土)11:00-18:00
10月6日(日)11:00-17:00

 
会場:東京美術倶楽部 東美ミュージアム
 
入場料:一般:1,000 円(700 円)/学生(高校生以上):500 円
※ いずれも消費税込み
※ ( )内は前売券、または20名以上の団体券
※ 中学生以下、障害者手帳をご持参の方(付添者1名を含む)は無料。
※ 割引・無料には入館の際、学生証、障害者手帳をご提示ください。
※ チケットは入場当日に限り有効です。

■2019 東美アートフェア オフィシャルサイト : http://www.toobi.co.jp/artfair2019
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