結城洋平による「結城企画」の旗揚げ公演『ブックセンターきけろ』公演レポート

レポート
2016.11.12

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2016年11月11日(金)より東京・Geki地下Libertyにて結城企画・第一回公演『ブックセンターきけろ』が開幕した。本作は劇団プレステージで10年間中心メンバーとして活躍し、2014年の退団後はフリーとして活動していた俳優・結城洋平が立ち上げたユニット「結城企画」の旗揚げ公演で、結城の他に、ナイロン100℃の眼鏡太郎、劇団ゴジゲンの目次立樹が出演している。脚本・演出は、京都を拠点に活動する劇団ヨーロッパ企画内のユニット「イエティ」の脚本・演出を手掛ける大歳倫弘

舞台は東京のはずれにある古本屋「ブックセンターきけろ」。経営難に頭を悩ませている店長(眼)は、暇だという常連客のカズマサ(目次)に店を手伝わさせるありさま。そこに、アルバイトの面接にコウタ(結城)がやってくる。だが、コウタは性格も行動もどこか変わった人物で、とても仕事ができそうにない。店長はコウタを雇うことをためらう。しかし、古本屋の手伝いから離れたいカズマサは、コウタに仕事を引き継がせるために、自分がコウタの面倒を見ると言い出す。

なし崩し的にコウタを働かせてしまう店長。ある日、コウタが常連客の名前を覚えられずに間違えてしまい、怒った店長は仕事を覚えられないコウタに、記憶テストをすると宣言する。困ったコウタはカズマサに相談するが、コウタへの記憶テストは、なぜかコウタと店長の“記憶力対決”へと発展し……。

舞台上には白を基調とした古本屋のセットと、上手の上部から舞台を俯瞰するカズマサの部屋が配置された実にシチュエーション・コメディらしい構成。シンプルながらも、カズマサの部屋のシーンでは、部屋の下に広がる空間を利用して、現実と、記憶術の「ジャーニー法」や「物語法」を行う際の脳内が効果的に表現されており、目に楽しい。

この板の上で、見た目以上に個性的な3人が、ゆるく飄々とした人間模様を繰り広げる。一見すると好青年だが、常識が通用しない不思議な性格のコウタ。至って普通人のように見えるが色々と問題抱え暴走する店長。常識人のようで、実は店長とコウタの問題を収めるどころか爆発させてしまうカズマサ。結城×眼×目次が演じる3人のキャラクターと関係性に、シチュエーションとセリフが相まって、観ていて自然と笑いがこみ上げてくる。

「本」と「記憶」というテーマは、主宰の結城が企画立ち上げ時に「“記憶”を題材にした作品にしたい」と大歳に持ちかけたことがきっかけとなっている。そこに、さらに大歳の「ただ気軽に笑えるだけでなく、豆知識を入れたい」という思いが加わって誕生したのが本作だ。大歳のその思いは、冒頭シーンに出てくる紀元前ローマ時代の政治家で哲学者のキケロとローマ人のやり取りや、3人が様々なキケロの記憶術を練習するシーンにも表れている。コウタや店長が舞台上で暗記するシーンでは、観客も一緒に記憶術を使って楽しむのもおもしろいかもしれない。

結城が「日常の中にありそうだけど、非日常的なものをコメディ化して上演するおもしろさを観てほしい」と語る本作。90分という上演時間ということもあってか、肩の力を抜いて“日常の中の非日常”を気軽に楽しめる、そんな芝居だ。

結城企画『ブックセンターきけろ』は、11月11日(金)から11月13日(日)まで東京・Geki地下Liberty(下北沢)にて上演。

なお、11月12日(土)18:00公演ではアフタートークが開催され、結城、大歳に加え、劇団ゴジゲン主宰で映画『アズミ・ハルコは行方不明』(12月公開)やクリープハイプのMV監督を務めるなど映像作品も手掛ける松居大悟がゲストとして登場する。

(取材・文・撮影/櫻井宏充)

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