実写映画『咲-Saki-』は原作ファンを納得させられるか? アニメ版との演出・キャスティング・構成の違いから読み解く

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2017.1.31
宮永咲役 浜辺美波 (C)小林 立/SQUARE ENIX・「咲」プロジェクト (C)Ritz Kobayashi/SQUARE ENIX

宮永咲役 浜辺美波 (C)小林 立/SQUARE ENIX・「咲」プロジェクト (C)Ritz Kobayashi/SQUARE ENIX

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アニメや漫画の実写企画が相次いでいる。これは実写でやるのは無理だろう、あるいはやってほしくないと原作ファンから声の上がる企画もどんどん実写化されつつあるのは、アイデアのほしい映画会社と原作権を売って利益を確保したい出版社側の思惑が一致した結果なのだろう。出版社も本業が厳しくなっていきているので、今後もこの流れは続くはず。

『咲-Saki-』の実写化プロジェクトが発表された時も、期待よりも不安の声が大きかったように思う。麻雀という実在のゲームを題材にしているとはいえ、かなり漫画・アニメにカリカチュアされた演出が魅力の作品であるので、その魅力を実写にアダプト可能なのか、筆者も不安に思ったものだ。しかしながら、これがなかなか良くできている。実写作品は、アニメの破天荒でダイナミックな演出とは異なるストレートな青春物語を志向して、好感度の高い作品になっている。

迫力のアニメ版、スピードの実写版

映画『咲-Saki-』 (C)小林 立/SQUARE ENIX・「咲」プロジェクト (C)Ritz Kobayashi/SQUARE ENIX

映画『咲-Saki-』 (C)小林 立/SQUARE ENIX・「咲」プロジェクト (C)Ritz Kobayashi/SQUARE ENIX

アニメや原作漫画は、座っている状態の多い闘牌を、まるでアクション映画のようにダイナミックに見せるのが特徴だ。高度に二次元向けにカリカチュアされた演出が作品の魅力のひとつであったが、この闘牌の迫力に関してはアニメ版のがどうしても上手だろう。しかし、2時間以内の尺に収めなければいけない事情もあるなか、実写の劇場版では、長野県予選決勝の戦いを迫力ではなく、スピード感のある演出で勝負している。また、実写でも牌を打つ時に光るエフェクトを入れたり、残像を入れたりと、最大限迫力ある描写を行っている。

アニメ版は各校の回想シーンなどを随所に挿入する分、試合展開の盛り上がりを中断してしまうきらいもあった。実写版では、清澄高校以外の出場校のエピソードを、ドラマ版の特別編で凝縮して描いているので、闘牌中は麻雀の戦いが集中して描かれている。この構成は結果として、県予選の熱い部分を凝縮してスクリーンで見せることになった。緊張感が持続して、展開を知っていても手に汗握った。元々、原作は闘牌もかなりリアルな展開で、全てのゲームの牌譜を作成して臨んでいるというくらい緻密に作られているそうだ。実写劇場版では、そのリアルに作られたゲーム内容に一層集中できるのではないか。だからといって、麻雀のルールを知らなくても楽しめる作りになっていて、そうした点も原作やアニメ版を良く読み込んでいるな、と感心させられた、

浜辺美波から『貞子vs伽椰子』菊地麻衣まで 若手女優陣のキャスティングの結果は?

片岡優希を演じた廣田あいか(私立恵比寿中学) (C)小林 立/SQUARE ENIX・「咲」プロジェクト (C)Ritz Kobayashi/SQUARE ENIX

片岡優希を演じた廣田あいか(私立恵比寿中学) (C)小林 立/SQUARE ENIX・「咲」プロジェクト (C)Ritz Kobayashi/SQUARE ENIX

アニメ・漫画原作の実写化で最も心配されるのは、キャラクターの再現度だろうが、この点に関しては本作はかなり良かったと言える。まず主人公・宮永咲役の浜辺美波がとても魅力的だし、作中最もナチュナルなキャラに配役されたということもあるが、とても自然に演じられている。浜辺は実写版ドラマ『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない』のめんま役でも好評だったが、今後アニメの実写版を多数任せられる女優に成長するかもしれない。

清澄高校勢では、片岡優希役の廣田あいかも強烈な印象を放っている。アニメでは釘宮理恵が演じた役だが、声の再現度がすごい。キャラの再現度に関しては他校のキャラたちもいい。特に龍門渕透華(永尾まりや)のお嬢様っぷりの再現度が高いし、風越女子の池田華菜(武田玲奈)も原作の猫目女子をリアルにしたらこんな感じだろうというイメージで、ピッタリハマっている。

そして劇場版で最も強烈な印象を放つのが、やはり龍門渕高校の大将の天江衣なのだが、これが大変迫力があってすごい存在感を放っている。演じるのは子役の菊地麻衣。『貞子vs伽椰子』で盲目の少女を演じ、その高い演技力で評判になっていたのだが、本作でも見事に天江衣になりきっている。原作やアニメでは、難しい言葉を喋る可愛い幼女だった天江衣が、実写劇場版では不気味な迫力を纏い不気味さを加味した“ラスボス”として描かれており、彼女の異質な強さを際立たせることに成功している。

菊地麻衣 (C)小林 立/SQUARE ENIX・「咲」プロジェクト (C)Ritz Kobayashi/SQUARE ENIX

菊地麻衣 (C)小林 立/SQUARE ENIX・「咲」プロジェクト (C)Ritz Kobayashi/SQUARE ENIX

総じて本作はキャスティングセンスが良く、原作ファンにも納得してもらえる出来となっているのではないか。

実写劇場版には、アニメ版よりも爽やかさを感じさせる内容で幅広い層にアピールできる力がある。ドラマ版か原作・アニメを観ていれば、ストーリーの理解もより追いつくはずだ。ドラマ版はAmazon プライム・ビデオやレンタル・セルDVDで視聴できるので、見られる環境にある人は是非見て欲しい。

 
文=杉本穂高

映画『咲-Saki-』2月3日(金)より TOHOシネマズ日本橋ほか全国ロードショー。
 
作品情報

『咲-Saki-』

(C)小林 立/SQUARE ENIX・「咲」プロジェクト (C)Ritz Kobayashi/SQUARE ENIX

(C)小林 立/SQUARE ENIX・「咲」プロジェクト (C)Ritz Kobayashi/SQUARE ENIX

 
浜辺美波 浅川梨奈 廣田あいか 古畑星夏 山田杏奈 加村真美 樋口柚子 星名美津紀 吉﨑 綾 武田玲奈 ・ 岡本夏美 あの 大西亜玖璃 長澤茉里奈 山地まり 永尾まりや 柴田杏花 小篠恵奈 金子理江 菊地麻衣 / 長谷川朝晴 玉城裕規 佐野ひなこ/ 夏菜

原作:小林 立(掲載「ヤングガンガン」スクウエア・エニックス刊)  
脚本:森ハヤシ 音楽:T$UYO$HI(The BONEZ)
製作:沢桂一 相馬信之 松浦 克義
チーフプロデューサー:岡本東郎 茶ノ前香 原田知明 丸山博雄 中川 岳 宇田川 寧 阿部 隆二
プロデューサー: 行実 良 竹内崇剛 深迫康之 山田 香菜子 柴原祐一 木村 康貴
撮影:長野泰隆
照明:児玉淳
美術:山下修侍
録音:小林武史
装飾:山本 裕
編集:木村悦子 川村紫織
VFXスーパーバイザー:宗片純二
衣裳:加藤みゆき
衣裳制作:加藤紀子
ヘアメイク:内城千栄子
音響効果:渋谷圭介
麻雀指導:ケネス徳田 黒木真生 馬場裕一
キャスティング:あんだ敬一
助監督:石川浩之
制作担当:今井尚道
ラインプロデューサー:本島章雄
宣伝プロデューサー:亀山登美、廿樂未果
麻雀指導:バビロン
衣裳制作:バンダイアパレル
制作プロダクション:ダブ
配給:プレシディオ
製作: (VAP AMUSE MBS A-Sketch DUB SQUARE ENIX)
監督:小沼雄一


公式サイト: http://www.saki-project.jp

(C)小林 立/SQUARE ENIX・「咲」プロジェクト (C)Ritz Kobayashi/SQUARE ENIX

 

リリース情報
ドラマDVD『咲-Saki-』

発売中※ゲオにて先行レンタル
【セル】
①DVD BOX 通常版
②DVD BOX 豪華版
③Blu-ray BOX 通常版
④Blu-ray BOX 豪華版
【レンタル】
⑤DVDレンタル Vol.1~2
税抜価格:①5,800円 ②8,000円 ③7,700円 ④12,000円
■仕様:①③本編2枚組+特典映像
②④本編2枚組+特典ディスク1枚
⑤本編のみ全2巻
 
映画&ドラマ『咲-Saki』オリジナル・サウンドトラック

音楽:T$UYO$HI
発売日:2017年2月1日(水)
定価:2,500円+税
品番:VPCD- 81893
発売元・販売元:バップ ※DVD、サントラとも /レンタル版は発売・販売:アミューズソフト
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