これからは現場で武者修行! 夏のリサイタル・ツアーに挑む、反田恭平のピアニスト魂が熱い

インタビュー
クラシック
2017.2.15
反田恭平(撮影:大野要介)

反田恭平(撮影:大野要介)


入魂のエモーショナルな演奏で注目されている若手ピアニスト・反田恭平が、ロシア留学を切り上げ、今春から日本を拠点に本格始動。夏のリサイタル・ツアーに向けて、いよいよ大車輪を回す。

■これと決めたら、とことんやり抜くタイプ

2013年9月にモスクワに渡ったときは、まだ19歳。前年優勝した『日本音楽コンクール』で、課題曲のラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」を弾いて以来、ロシア音楽に興味を持ったのがきっかけだった。チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院で教鞭を執るミハイル・ヴォスクレセンスキーの公開レッスンを受講するや、見込まれたのである。

 モスクワ音楽院で学び、休暇に帰国して演奏会、15年夏にはデビューCD『リスト』をリリース、翌16年1月にはサントリーホールでデビュー・リサイタルを成功させた。約3年半で自分のどこが変わったと思うか尋ねたら、「現場で学ぶことが多くなりました。練習しているときは、どれだけ成長しているのかうまく表現できてるのか分からないけれど、舞台で演奏すると、こんな手法ができるとか、ペダルの使い方が生きてるとか実感できるようになったんです」

振り返れば、留学生活はハードだった。

最初に住んだ寮の部屋には、ペトロフのアップライトピアノがあったが、「音が抜けていて調律師も来ない。自分で調律しても2~3時間したら元に戻ってる(笑)」

反田恭平(撮影:大野要介)

反田恭平(撮影:大野要介)

だが、今日はこのポイントを押さえようと目的を決めて、机を鍵盤代わりに練習したり、ベッドでイメージトレーニングしたりして、めげなかった。真冬には、部屋のすき間から零下20度以下の外気が忍び込む。シャワーの湯も1分くらいで水に変わる。しかし「ロシア音楽を身体にしみこませるには最高の環境」と受け止めるようにした。

学校の近くのマンションに引っ越したのは、2年ほど経ってからだ。

「徒歩5分くらいかな、冬でも暖かくて快適で、シャワーはお湯がずっと出て、バスタブもある(笑)。モスクワの量販店で買った安い電子ピアノで練習です。でもその頃には、学校の警備員にチップを渡したら夜でも練習室を使わせてくれると分かって、練習室で夜中の2時頃まで練習したり……学校を辞めたから言えることですが(笑)……」

そうして、演奏会を重ねるうちに、「周囲から『優しい音が弾けるようになったね』と言われるようになりました。重みや厚みを変えずに、小さな音で弾けるようになったという意味です」

昨夏、気鋭のアンドレア・バッティストーニの指揮で、ラフマニノフの『ピアノ協奏曲第2番』をイタリアで録音したときは「楽章ごとに、音色が変わっていくのを実感できた」という。伸び盛りの貴重な経験である。
目標は3年単位で立てることが多いそうだ。イメージトレーニングも欠かさない。
「3年後にどんなに指が回ってどんな音色になるか、想像できます。けれど今は、それを上回るスピードでできているので、波に乗って行けたらいいなと思っています」

反田恭平(撮影:大野要介)

反田恭平(撮影:大野要介)

■目指すは、オールマイティーのピアニスト

今夏のリサイタル・ツアーでは、約2カ月かけて全国13都市を巡る。プログラムは2種用意した。

「東京のオペラシティや札幌のKitaraでは、クラシック好きのコアな人にも楽しんでいただけるように、リストのソナタやシューベルトの即興曲を入れました。他の会場では、お客さんアンケートでリクエストの多いショパンに本格的にチャレンジです。マズルカやエチュードを弾き込んでから選びました。ドビュッシーは今まであまり弾いてないので、『月の光』や『喜びの島』は初めてです……」

選曲の一つ一つに意味がある。しかも、遠い目標も見据えている。

「僕は特定の時代や作家の作品だけを弾くのではなく、ピアノ曲を分類するとバロック、古典派、ロマン派……など7種なので、各ジャンルの名曲を均等に弾けるピアニストになりたいです」

メディアで紹介されるにつれ、街で声をかけられることも増えてきた。4月には佐渡裕指揮で、東京シティフィル・ハーモニック管弦楽団とラフマニノフの『ピアノ協奏曲第2番』を各地で演奏する。さまざまな経験を重ねて行って、「ゆくゆくは、日本での演奏は勿論ですが、他の言語文化にも触れて、海外で活動してみたい。日本のピアニストといえば……といわれる人になりたいし、小澤征爾さんのように『世界のオザワ』と呼ばれるような存在になれたら、もっとカッコいい!」

ピアノ協奏曲を作って演奏したいという野望も、実は胸に秘めている。「昔のオーケストラ譜のような大きな五線紙に手書きしたいな……」

ショパンやリストが生きてたらビックリするようなコンチェルトを聴きたいものだ。

反田恭平(撮影:大野要介)

反田恭平(撮影:大野要介)

取材・文:原納 暢子  写真撮影:大野要介

公演情報
反田恭平ピアノ・リサイタル 2017年 全国縦断ツアー
 
<神奈川>
日時:7/8(土)19:00
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール          
問い合わせ:サンライズプロモーション東京  0570-00-3337(全日10:00~18:00)

 
<静岡>
日時:7/13(木)18:30
会場:静岡音楽館AOI
問い合わせ:静岡朝日テレビ事業部    054-251-3302(平日9:30~18:00)

 
<愛知>
日時:7/15(土)13:00
会場:愛知県芸術劇場コンサート ホール
問い合わせ:中京テレビ事業 052-588-4477(平日1-:00-17:00)

 
<新潟>
日時:7/21(金)18:30
会場:長岡リリックホール・コンサートホール
問い合わせ:サンライズプロモーション東京       0570-00-3337(全日10:00~18:00)

 
<富山>
日時:7/28(金)19:00
会場:富山県教育文化会館
問い合わせ:北日本放送事業局 076-432-5555

 
<北海道>
日時:8/3(木)19:00
会場:札幌コンサートホールKitara
問い合わせ:オフィス・ワン 011-612-8696

 
<北海道>
日時:8/4(金)19:00
会場:函館市芸術ホール
問い合わせ:道新文化事業社 011-241-5161

 
<福岡>
日時:8/6(日)13:30
会場:福岡シンフォニーホール(アクロス福岡)
問い合わせ:キョードー西日本 092-714-0159

 
<岩手>
日時:8/17(木)18:30
会場:岩手県民会館中ホール
問い合わせ:岩手日報社事業部 019-653-4121 http://www.iwate-np.co.jp/

<福島>
日時:8/20(日)14:00
会場:福島市音楽堂
問い合わせ:福島放送 事業・営業推進部 024-933-5856(9:30~17:30)

 
<兵庫>
日時:8/26(土)14:00
会場:兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
問い合わせ:リバティ・コンサ-ツ 06-7732-8771(10:00-18:00)

 
<秋田>
日時:8/31(木)18:30
会場:秋田アトリオン音楽ホール
問い合わせ:秋田朝日放送 事業部 018-888-1505(平日9:30-17:30)

 
<東京>
日時:9/1(金)19:00
会場:東京オペラシティ コンサートホール
問い合わせ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00~18:00)

 
※詳細は公式サイト http://soritakyohei.com/concert/ にて
 
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