THE BACK HORN×吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)、The Birthday×北村匠海、Original Love×GRAPEVINE……スペシャルセッションが実現した『ARABAKI ROCK FEST.25』2日目レポート!
THE BACK HORN
堂島孝平 30th×ARF25th 春のヒットスタジオ大感謝祭 Guest:藤井隆、石野理子(Aooo)
2日目のMICHINOKU STAGEのトップは(10:50〜)、堂島孝平のデビュー30周年とARABAKIの25周年のコラボ企画『春のヒットスタジオ大感謝祭』。メインは堂島孝平でサブが藤井隆、ふたりとゲストがさまざまな曲を歌うこの人気企画、2年ぶりである。 まず堂島孝平がバンドと共に歌う、自身の「H.A.P.P.Y」でスタート。曲を終えると「ARABAKI親善大使、堂島孝平です! こんなにたくさん集まってくれて、泣いてませんけど、泣いてます。涙が間に合ってないですけど、心は泣いております」。で、登場した相方=藤井隆が「ナンダカンダ」で、参加者を大喜びさせる。以降、1曲ごとに「藤井ボケ倒して進行をじゃまする」「堂島つっこんで進行を戻す」の掛け合いで爆笑を起こしながら、「PERFECT LOVE」(堂島孝平)、Aooo石野理子が加わって「6AM」(堂島孝平)と「世界中の誰よりきっと」(中山美穂&WANDS)を披露。最後は「友情出演」=ARABAKIに毎年出演している東北勢、川内太鼓・川崎中学校吹奏楽部・西馬音内盆踊り・藤原美幸(秋田民謡)・みちのくプロレスの選手たちを呼び込んで、音頭バージョンにリアレンジした堂島の「葛飾ラプソディー」を、一緒に歌い踊った。
堂島孝平 30th×ARF25th 春のヒットスタジオ大感謝祭 Guest:藤井隆、石野理子(Aooo)
Original Love×GRAPEVINE
Original LoveとGRAPEVINEのコラボは、BAN-ETSU STAGEで11:50から。まずGRAPEVINEが、「どあほう」「天使ちゃん」と、今年リリースされた最新曲2曲を披露。東北でやるのは初めてではないだろうか。田中和将がギターを持たず、ハンドマイクなのが新鮮。3曲目「こぼれる」と4曲目「COME ON」で、ギター&ボーカルで田島貴男が加わる。「こぼれる」では田島は地声、田中はファルセットで声を重ね、「COME ON」の後半では田島・田中・西川弘剛のギターが三つ巴になっていく。そしてOriginal Loveは、まず「Let’s Go!」「Music,Dance&Love」の2曲を演奏。「Let’s Go!」で田島のギターの音が出なくなり、「Music,Dance&Love」は、ハンドマイクで歌いきる。「OK、ギターが直ったぜ!」と叫んで拍手を浴びてから始まった「The Rover」では、途中で田中がギターを持って入って来た。
Original Love×GRAPEVINE
満員の参加者に「接吻」の最後でコール&レスポンスを求め、「ソウルがある」の大熱唱でオーディエンスをさらに酔わせてからのラストは、2バンド合同でOriginal Loveの「R&R」。午前中からこれ!?と言いたくなるくらいの、すさまじい熱量の60分だった。
Original Love×GRAPEVINE
Cody・Lee(李) Guest:曽我部恵一(サニーデイ・サービス)
Cody・Lee(李)(HANAGASA STAGE/13:45〜)が、ゲストに招聘したのは曽我部恵一。曽我部、6曲目で登場すると、サニーデイ・サービス『いいね!』のTシャツを着ているベースのニシマケイに「いいTシャツ着てますね!」。「大好きな曲を選びました」(曽我部)「僕たちも大好きな曲を選びました。もう、今日みたいな日にぴったりなんじゃないですかね。風が吹いてます。春の風が吹いてます」(高橋響)という言葉から、『いいね!』収録の「春の風」をデュエット。曽我部、ギターを持たずにハンドマイクで、まるで吠えるように歌っている。次は「もう1曲やろうよ。Cody・Lee(李)の曲、やってくれるみたいで。大好きな曲」(曽我部)「始まったら終わっちゃうからな、始めたくないんだけど」(高橋響)という言葉から「我愛你」へ。曽我部が去ってのラストは、「When I was cityboy」で締められた。岩手県花巻市出身の高橋響は、曲の途中で、東北への思い、ARABAKIへの思いを叫んだ。
Cody・Lee(李) Guest:曽我部恵一(サニーデイ・サービス)
㊗RCサクセション&忌野清志郎 デビュー55周年 BRADIO 15th& ARF 25th Presents ソウルサイドのキヨシロー Guest:奥田民生、田島貴男(Original Love)
RCサクセション&忌野清志郎のデビュー55周年と、BRADIOの結成15周年と、ARABAKIの25周年。その3つを記念しての『ソウルサイドのキヨシロー』(ARAHABAKI STAGE/15:20〜)は、RCとソロ清志郎からソウル・ミュージック寄りな曲をセレクトし、BRADIOが演奏して、ゲストで田島貴男と奥田民生が歌う、という企画である。まずBRADIOの「Flyers」と、RCサクセションの「ステップ!」を、BRADIOだけで演奏。真行寺貴秋、「Flyers」の間奏で「幸せだあー!」と絶叫する。「ステップ!」は、オリジナルよりBPMを速くした、疾走感あふれるバージョンになっている。
BRADIO×田島貴男(Original Love)
そして田島貴男が登場し、真行寺と共に歌ったのは「Sweet Soul Music」。曲を終えて「さっきの『ステップ!』、あれ僕、やったんですよ、清志郎さんと一緒に。とてもね、ふざけたおじさんでした。偉そうなこと一切なかった」と、2004年にNHK-BSの音楽番組で共演した時のことに触れる。続く「スローバラード」での田島の絶唱っぷり、すさまじいものがあった。田島を送り出した真行寺、「ソデで観てて、民生さんと『濃いなあ』って。でも我々からしたらね、もうおひとかたも濃いんですわ」と、奥田民生の名をコールする。曲は「毎日がブランニューデイ」と「世界中の人に自慢したいよ」の2曲。田島貴男がRC、奥田民生が清志郎ソロである。奥田民生、フジロックの清志郎セッションでは、いつも必ず「スローバラード」なので、新鮮である。
BRADIO×奥田民生
なお、奥田民生、「毎日が〜」を歌う前に、「僕、今年、出番が少ないんで。歳も歳なんでね、これから5年ぐらい、チラ出でいこうと思います」。「世界中の〜」を歌う前には「コピーバンドとか言うんでしょ? それをこうやって、仕事で人前でできる喜び。みんなはスタジオを借りてやるじゃない? おカネもらってます。ありがとうございます、先輩。おかげで毎年出れてます」とMCした。最後はBRADIOに戻って、「オーティスが教えてくれた」と、自身の「スパイシーマドンナ」の2曲で終了。今回のこの話をいただいた時、まず真っ先にやりたいと思った曲だった──と、真行寺は「オーティスが教えてくれた」を紹介した。
㊗RCサクセション&忌野清志郎 デビュー55周年 BRADIO 15th& ARF 25th Presents ソウルサイドのキヨシロー Guest:奥田民生、田島貴男(Original Love)
エレファントカシマシ
ゲストやコラボはない、通常どおりのライブ。だが、普通、バンドがフェスに出る時というのは、同じ時期の各地のフェスに複数出演するものだが、今年の春の彼らはここだけである。つまり、これもある意味「ここでしか観れないステージ」だったのが、MICHINOKU STAGEの四番手(16:15〜)、エレファントカシマシである。
「今宵の月のように」「悲しみの果て」「デーデ」「珍奇男」「四月の風」「ガストロンジャー」「RAINBOW」「ファイティングマン」「俺たちの明日」という、もはや「鉄壁の」と言ってもいい9曲。「俺たち、第一回目も参加してるんだぜ。ARABAKI25周年おめでとう、そしてみんなおめでとう! 行くしかねえな、行こうぜ、素敵な未来へ!」。ラストの「俺たちの明日」を歌う前に、宮本浩次はそんな祝いの言葉を贈った。
エレファントカシマシ
The Birthday(クハラカズユキ、ヒライハルキ、フジイケンジ) Guest:北村匠海(DISH//)
The Birthdayのステージのコラボ・ゲストは北村匠海(DISH//)。前半〜中盤は「LOVE ROCKETS」をフジイケンジ、「青空」をクハラカズユキ、「Red Eye」をフジイケンジ、「サイダー」をヒライハルキ、と、メンバーがリードボーカルをとっていく。5曲目から参加した北村匠海が歌ったのは「カレンダーガール」と「なぜか今日は」。The Birthdayとステージに立つのは初めてではないが、そんな経験などなかったかのような、はりつめた表情が印象的だった。ボーカル自体は堂々たるものだったが。ラストの「声」はクハラカズユキが歌った。The Birthdayは、9月に四都市のクラブクアトロを回る対バンツアーが決まっている。
The Birthday(クハラカズユキ、ヒライハルキ、フジイケンジ) Guest:北村匠海(DISH//)
ピーズ
精力的に活動しているが、東北でのライブは考えたらかなり久々、おそらくそのせいでオーディエンスがものすごく熱狂的だったのは、東北ライブハウス大作戦STAGEのトリ(17:55〜)、ピーズ。「焼めし」で始まりラストの12曲目「とどめをハデにくれ」まで駆け抜けるように演奏、さらにその12曲目が終わったところで「アンコールだ!」と「脳ミソ」「Yeah」を追加。とにかく楽しそうだった、4人とも。なお、ピーズはこの後、6月13日(金)仙台MACANAと7月4日(金)札幌BESSIE HALL、北日本で2本のワンマンが決まっている。
ピーズ
ROTTENGRAFFTY Guest:TAKUMA(10-FEET)
「去年10-FEETのステージで、1曲俺とNOBUYAが歌いに来て、最後、去り際に『来年出してくれ!』言うたら、見事呼んでもらえました、ありがとうございます! いつも俺らは10-FEETに寄りかかっているみたいな見え方、ということで、TAKUMAさんには帰ってもらいました」──そんなことを言うROTTENGRAFFTYのNAOKI(ARAHABAKI STAGE/18:50)。しかし、そのMCからの「響都グラフティー」の次に始まったイントロは「その向こうへ」だった。TAKUMAが登場、この曲と「切り札」でボーカルを取った。だけではなかった。2曲を歌い終えて去った、と思ったら、次の「金色グラフティー」の途中で戻って来る。曲には参加せず、ライブカメラマンから借りたカメラでメンバーたちを撮影しまくる(しかもフラッシュを焚く)、花道を突っ走って客席エリアに飛び込む、などなど、好き放題な暴れっぷりだった。
ROTTENGRAFFTY
ARF 25 A GO GO GRANDSLAM THE BACK HORN KYO-MEI MICHINOKU PEACE SESSION & Session Guests
2日間の大トリは、唯一のARABAKI皆勤賞バンドであり、まだセッション企画がARABAKIに根付く前の2014年の大トリでホスト・バンドをやってくれたTHE BACK HORNにお願いしたい。彼らなら期待を上回るようなことをするだろうから、ゲストは事前発表なしにした──と、開催前のインタビューでARABAKIのプロデューサー菅氏が話していたが、まさにその言葉どおりのステージだった。「声」「シンフォニア」「修羅場」「コワレモノ」の4曲を、最初にメンバーだけでプレイ。そしてここから、実に8人のゲストが、山田将司と共にTHE BACK HORNの名曲を歌った。
5 サニー/片平里菜
6 罠/TOSHI-LOW(BRAHMAN)
7 冬のミルク/ホリエアツシ(ストレイテナー)
8 戦う君よ/菅原卓郎(9mm Palabellum Bullet)
9 太陽の花/山本響(Maki)
10 コバルトブルー/村松拓( Nothing's Carved In Stone)
11 空、星、海の夜/大木伸夫(ACIDMAN)
12 世界中に花束を/吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)
4曲目の「こわれもの」は、「神様だらけのスナック」という歌詞の「スナック」をオーディエンスに叫んでもらうのが恒例だが、この日は「ARABAKI」とコールしてもらうことを、菅波栄純は求めた。他のアクトにゲストで出た時は、延々としゃべったりしていたTOSHI-LOWは、「罠」の2コーラス目から歌いながら現れ、曲が終わるとパッと去った。結成年が同じストレイテナーのホリエアツシに「冬のミルク」を歌ってもらうのは、THE BACK HORNが最初に作った曲だから──と、山田将司。ホリエ、「僕、今回のARABAKI、これで2曲目です。2曲だけのために来てる」。もう1曲は、HANAGASA STAGEのトリ(18:50〜)、Age Factoryで歌った「HIGH WAY BEACH」である。
THE BACK HORN×ホリエアツシ(ストレイテナー)
出て来るなり「間に合いました」と言ったのは大木伸夫。HATAHATA STAGEでのトリ(19:20〜)を終えて駆けつけたのだ。あとで知ったが、いったん引っ込んでからアンコールをやると間に合わないので、「絶対内緒だけど」と、オーディエンスに事情を説明して、引っ込むのを省略したらしい。「僕ね、昨日、大阪ワンマンだったんですよ。ARABAKIじゃなかったら引き受けなかったし、THE BACK HORNじゃなかったら引き受けなかったと思います」。
THE BACK HORN×大木伸夫(ACIDMAN)
最後に登場した大先輩、同じステージのひとつ前(18:00〜)だったTHE YELLOW MONKEYの吉井和哉は、山田将司、「14年前にTHE BACK HORNが東北のことを思って作った曲を、この方と一緒にやらせていただきたいと思います」。吉井和哉は「山田くんは誕生日が同じなんですよ。だから昔から、歳の離れた双子の弟みたいな感じがしているよ」。曲に入る時、「1,2,3,4」とカウントする声がガラガラだったドラムの松田晋二は、2010年に『JAPAN JAM』というフェスの一回目のセッション企画で、吉井和哉のバックでドラムを叩いている。
THE BACK HORN×吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)
そしてラスト=13曲目の「刃」は、ARABAKIレギュラー出演の東北勢から、西馬音内盆踊りの20名と川内太鼓6名がオンステージ。記念すべき25周年のARABAKIを、THE BACK HORNの4人と共に、華やかに賑々しく締めくくった。和太鼓の響きといい、踊り手たちの動きといい、その「和」な感じが、THE BACK HORNの音楽にマッチしていた。
一同が去ったあと、プロデューサー菅氏が終演の挨拶。「25年やって来ました。その間に、ちょっと難しいかな、やめようかな、と思ったことも、何回もあったんですけど、みなさんが幸せそうなので、続けて来れました。本当にありがとうございます」という言葉に、とても実感がこもっていた。
ARF 25 A GO GO GRANDSLAM THE BACK HORN KYO-MEI MICHINOKU PEACE SESSION & Session Guests
文=兵庫慎司 撮影=Team SOUND SHOOTER