今なお燃え盛るファイティング・スピリッツ――エレファントカシマシ・宮本浩次が語る、転がりつづけた30年の結晶

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エレファントカシマシ・宮本浩次

エレファントカシマシ・宮本浩次

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30周年記念のベスト盤『All Time Best Album THE FIGHTING MAN 』には30曲が収録されている。単純に計算すると、1年に1曲ずつという狭き門だ。名曲、名演奏が並んでいるのはもちろんだが、人間で言うところの“人生”みたいな“バンド生”の流れも浮き彫りになってくる。彼らは節目節目で名曲を生み出してきた。時には歌が突破口になったり、起爆剤になったり、旗印のようなものであったり。夜空の星をたよりに航海する旅人に例えるならば、エレファントカシマシにとって、楽曲は夜空に輝く星々のような存在でもあるのではないだろうか。そしてそれらが放つ光はリスナーをも照らしてきたと思うのだ。宮本浩次(Vo/G)による選曲、曲順になっていて、ベスト盤ではあるのだが、オリジナル作品にも通じる肌触りと不思議な調和がある。このベストについて、さらにバンドの30年について、宮本に聞いていく。

——このベストを聴いていて、1stアルバム『THE ELEPHANT KASHIMASHI』の1曲目の「ファイティングマン」は、バンドのこの30年の、予言の曲であるような気がしました。

「ファイティングマン」もそうですが、本筋のドーンとしたところは1stアルバム『THE ELEPHANT KASHIMASHI』の中にほとんど入っていると私も思っていますね。「ファイティングマン」「BLUE DAYS」などの初期の曲は、高校時代のやりきれない日々の繰り返しの中から生まれていて。「やさしさ」という曲もそう。<何をしても どこに行っても 体が重たくて、今日もいつもと同じ>って歌っていた。当時は17歳ぐらいで車の免許もないくせに、<おまえの町まで車をとばして>って歌ったり(笑)。誰もが一生懸命生きているけど、やがては無残に年老いていくんだという意識であるとか、初期の歌の中にそうした要素が入っていて、それが土台となっているのは間違いないですね。最初はほとんど楽器を弾けなかったのが一応人前で弾けるようになったとか、技術的な進歩はあるけれど、本質はさほど変わってない。

——でもバンドの軌跡、流れが見えてくる作品でもありますよね。

ひとりの人間が10代、20代、30代、40代と歩んでいく中での思いも重ねられる作品になったのかなとは思いますね。

——アルバム22枚、シングル48枚、260曲を超える楽曲の中から30曲が収録されたわけですが、どういう基準、どういうやり方で選んだのですか?

最初に「30周年30曲3000円というベストアルバムはどうだろうか」って、レコード会社や事務所から提案があって、語呂合わせみたいで、おもしろいと思ったんですよ。わかりやすいじゃないですか。しかも特に意味がないところが新鮮な感じがしたんで、「わかりました」と。収録曲はすべてCDになってるわけで、選ぼうと思えば、誰もが選べるじゃないですか。でも宮本本人が選ぶところにこのアルバムの意義があるんじゃないかと思って、かなり考えました。最初は2週間ぐらいでできると思っていたんですよ。「今宵の月のように」「悲しみの果て」「ガストロンジャ—」「俺たちの明日」などはまず入れたいと思って、候補にしていった。頭に浮かぶもの、思い付く限りはメモ帳に書き出していきました。結局、入らなかったけど、映画の主題歌になった「絆(きづな)」も候補として挙げたりして、60曲くらいになった。でもそこからは時間がかかりました。

——どういうところで苦心したのですか?

エレファントカシマシには特徴的な曲がありまして、その扱いが難しかったんですよ。例えば、“男シリーズ”と呼ばれる一連の歌。「ファイティングマン」「珍奇男」「花男」「浮雲男」「待つ男」「男は行く」などなど。「珍奇男」はライブでは成立しているんですが、日によって長さが違うし、収録音源は技術的にもまだまだの時期のものだし、音質もあまり良くない。「ハナウタ~遠い昔からの物語~ 」「新しい季節へキミと」などの完成された楽曲と比較すると、別のバンドかっていうくらい、テンションも音質も違う。ベスト盤と言えど、ひとつの作品としてエピック時代の曲が共存できるのか。そこがまず悩みどころでした。

——先日の武道館での「珍奇男」も圧倒的だったので、ベストに入れてほしくもなるんですが、ライブで成長した曲であり、ライブでこそ本領を発揮する曲ですもんね。

そうなんですよ。「東京の空」も悩みました。ジャズ・トランペッターの近藤等則さんの13分を超えるパフォーマンスを入れたいという気持ちもあって、どうしたもんだろうと。朝10時にレコード会社に出社して、会議にも2回出たんですが、30周年30曲3000円でどういうものがいいのかを話してる中で思ったのは、“これがエレファントカシマシの基礎です”って言える作品にしようってことでした。僕らのことをテレビドラマ主題歌だった「今宵の月のように」で知ってくれた人もいるだろうし、フェスで「俺たちの明日」を聴いてファンになってくれた人もいるだろうし、そうした裾野の広がりをもたらした基礎の曲をまずは入れていこうと。で、若干応用編的な曲、「歴史」のような特徴的な曲も入れていこうということで、自分の中で2枚のディスクにそれぞれ“Mellow & Shout”“Roll & Spirit”というニックネームをつけて、分けて入れていくべく、2か月かかって落とし込んだというか、自分を納得させたというか。

——このベストは、さらに深いところに入っていく入り口的な作品ということですね。

このベスト盤を聴いて、そっちに向かってくれれば一番うれしいですね。「翳りゆく部屋」を入れようと思ったのもそこなんですよ。多少、反対意見もあったんです。「日本を代表する名曲であるとは言え、ユーミンのカバーをベスト盤に入れるのかどうだろうか?」って。そう言われるだろうと思って、「ストーンズもビートルズもベスト盤にカバー曲が入っています」って説得する言葉を用意していったんですが、そこまでする前に通りました(笑)。名曲だし、ライブでたまにやると喜んでくれる人もいて、エレファントカシマシの曲のように聴いてくれる人もいるので、「東京の空」や「珍奇男」の代わりに、このアルバムのひとつの象徴として入れさせてもらおうと。

——バンドサウンドで見事に成立していて、エレファントカシマシというバンドの表現力が見えてくる曲でもあるし、音楽に対する意欲、挑戦心が伝わってくる曲でもあります。

「翳りゆく部屋」が入っている『STARTING OVER』というアルバムは、東芝EMIからユニバーサルに移籍した最初の作品なんですが、新しいレーベルになって再スタートするタイミングで、蔦谷好位置さんと出会って、「笑顔の未来へ」など、新しい曲を作っていた時期、「翳りゆく部屋」はその記念碑的な曲でもあって。いろんな人たちと幅広くやっていくぞっていう心構えが形になった作品というか。我々も40代になったけれど、まだまだ広がっていくんだっていう意気込みみたいなものも入っているという。

——2枚のディスクに“Mellow & Shout”“Roll & Spirit”というニックネームを付けて、分けて入れたとのことですが、分類の基準は?

今、思い出したことがあるんですが、ベスト盤のタイトルは『THE FIGHTING MAN』ですけど、裏テーマというか、他のタイトル候補で、『THE ROCK BAND』というのがあって。『THE ROCK BAND』もなかなかいいんじゃないかって思っていたんですよ。1人じゃ成立しないし、4人が演奏している感じも出るんじゃないかなって。“エレファントカシマシの基礎”と同じ意味合いで、“THE ROCK BAND”という言葉が浮かんだ。それは“俺たちはロックバンドだぜ”ってことではなくて、30周年30曲3000円と同じニュアンスで、特別な意味づけをしていない識別するための言葉としての“THE ROCK BAND”。で、その言葉との繋がりで、俺たちはずっと転がり続けてきたんじゃないか、Rollしてきたんじゃないか、その象徴的な曲が「ファイティングマン」であり、「ガストロンジャー」なんじゃないかって。「ファイティングマン」を入れるためにも、そういう意味合いを持たせたかったんですよ。

——なるほど。

最初はエピック時代のものは全曲いらないんじゃないかと考えていました。「悲しみの果て」以降だけで成立するんじゃないかなって。“オールタイムベスト”と言えるものにするには音質の違いを超えた精神的な軸が必要だった。そこで“Roll & Spirit”という言葉が出てきた。ロックバンドが転がり続けていて、その芯の部分には魂があるという。通常のベスト盤だったら、1曲目に「ファイティングマン」が来るだろうけれど、自分の中で納得するには1枚1枚の意味づけが必要になってきて、1枚目はバンドの顔にあたるのがメロディなんじゃないかという思いもあって、“Mellow & Shout”という言葉が出てきまして、「今宵の月のように」、「俺たちの明日」などの叙情性のある曲で構成していった。で、2枚目は“Roll & Spirit”としてまとめていくことにしようと。僕が曲を選ぶときの気持ちの整理の仕方として、そうしたニックネームが必要だったということですね。

——普通に考えると、“Roll & Spirit”に入っている「涙」はむしろ“Mellow & Shout”に入るんじゃないかと思ったりもしますが、宮本さんの感覚で分けると、こうなるわけですね。

そうです。自分で整理する上での落としどころがこれだったという。で、音質的なことも含めて、「ファイティングマン」と「笑顔の未来へ」を同列に置くためにも、日本語のわからない外国人のエンジニアであるテッド・ジェンセンがリマスタリングすることによって、統一感を持たせてもらおうと。

——“Mellow & Shout”は「今宵の月のように」「悲しみの果て」「四月の風」という曲順でスタートして、新たなる始まりのパワーが感じ取れるところもいいですよね。

(当時)契約が切れたのは自分たちにとってとても大きなことで、プラスにとらえることもできますよね。それまでのことを一新するきっかけにもなりますから。売れなかったけど、実験的だったエピックソニーの時代を7、8年過ごして、契約終了で1回全部とっぱらってリスタートして、この4人でなんとかやっていくんだっていう思いで、下北沢SHELTERやQUEでライブをやることを目標にして、必死で曲を作っていた時期に生まれたのが「悲しみの果て」や「四月の風」で。事務所から給料をもらっているのとは明らかに違う精神状態でスタートしていましたよね。

——背水の陣ということですよね。

冗談でよく言うのは、ファースト・アルバム『THE ELEPHANT KASHIMASHI』の次がもしも『東京の空』(通算7枚目となるエピック時代最後のアルバム)だったらなってこと。それくらい大いなる実験をした作品だった。近藤等則さんがトランペットで参加してくれた「東京の空」、Dr.KYONがピアノを弾いてくれた「真冬のロマンチック」などなど、優れたミュージシャンたちの音楽性やアイディアを自分たちなりに獲得・咀嚼して、リスタートする上でも大きな作品になりましたから。『東京の空』を作って、どこにも所属しない期間を経て、佐久間正英さんや土方隆行さんに手伝ってもらって、『ココロに花を』(ポニーキャニオンでの最初のアルバム。通算8枚目)を制作していくわけですが、当時はバンドにとって過渡期だったので、模索したり試行錯誤したりするのは必然でしたね。

——“Mellow & Shout”では個人的には「四月の風」と「リッスントゥミュージック」が特に好きです。

「四月の風」は僕も大好きな曲で。もしもこの中で1曲を挙げろと言われたら、最新シングル「夢を追う旅人」と言いたい気持ちもあるんだけど、この曲になるんじゃないかな。この曲を作ってるとき、感覚的にはひとりぼっちだったのを覚えていますね。いくつか契約の話があって、当時、僕はバイトをしてなかったので、いろんな事務所やレコード会社に行って話を聞いて、その内容をメンバーに報告するのが僕の仕事でした。そんな状況の中、正月に赤羽の部屋で微熱で布団にくるまりながら、“何かが起きそうな気がする”って歌を作っていて、ゼロから始めるんだという気持ちをストレートに込められた気がします。「リッスントゥザミュージック」はもう少し余裕をもって、抜けた気持ちで作れてるという意味で印象深かった曲ですね。これも妙に入れたくて(笑)。

——このベスト、通常盤、デラックス盤、初回限定盤という3形態でのリリースとなりますが、この形態については?

通常盤は“エレファントカシマシの基礎”という位置付けで、デラックス盤は20年前と去年の年末に撮った下北沢シェルターのライブ映像を入れようと。じゃあ初回限定盤はどういう立ち位置にしたらいいかと考えて、わかりやすいようにライブ映像のベストを入れることにしました。近藤等則さんと一緒にやった1994年の日比谷野外大音楽堂での「東京の空」も入れることができた。26歳の私と41歳の近藤さんが一緒にやってるんですが、近藤さんがホントにかっこよくて、これはぜひ観てほしいですね。1991年に武道館3000席でやったときの「待つ男」も入っています。音が悪いんですが、それがかっこいいという。1988年の電気つけっぱなしの渋谷公会堂の映像も発掘されたので、その時の「ファイティングマン」も入れたり。1992年に吉祥寺バウスシアターで黄土色のとっくりセーターを着て歌った「曙光」、震災直後の仙台Rensaでの「明日への記憶」、昨年末の 下北沢シェルターの「花男」も入っていて。17曲のライブ映像集が30曲の音源を補完していて、音源ベストと映像ベストを合わせて本当のベスト盤っぽくなっているという。初回限定盤は4200円なんですけど、これまでには表に出てなくて、今回発掘された映像もあるので、ファンに人にはこっちのほうがお得というか、こっちを買って欲しいですね(笑)。

——そういう映像を観て、ご自分ではどんな感想を?

びっくりしました(笑)。トミが裸でドラムを叩いている映像があったりして、その当時はそういうのが好きだったみたいで、そういうことも思い出すので、映像ってすごいなと思いました。自分たちが子どもの時からのアルバムを観ているみたいな感じですよね。ハイハイしてる時、小学校、中学校、高校、就職みたいな。バンドのそういう時の流れみたいなものも感じました。武道館3000席で演奏した26、27年前の「待つ男」と、先日の武道館でやった「待つ男」は明かに同じ曲じゃないですから。であるにもかかわらず、ライブを経ることで、みんなとの一致点を見いだしながら曲も成長してる。「ファイティングマン」にしても30年後にも戦闘能力がまったく衰えてなくて。現役の音として鳴ってるのは誇らしかったですね。

——むしろこの曲に込められたファイティング・スピリッツも愛も、年々、さらに増量されているのではないかと思いました。

今や、「ファイティングマン」ではファンの人たちがみんな立ち上がって、自分たちの歌として受け止めてくれてるのがうれしいですし、感無量ですね。

——“Roll & Spirit”はさっき宮本さんが“転がっていく”感覚とおっしゃってましたが、音楽的な面でバンドの可能性を追求したり、実験したり、冒険したりという流れも見えてきました。ミクスチャー的なアプローチがあったり、打ち込みを導入したり、様々なプロデューサーが参加したりという挑戦の歴史でもあると感じました。

自画自賛になってしまいますが、こういう編集って、きっと僕にしかできないですよね。本当の意味でプロの自覚が芽生えてきたのは、エピックとの契約が切れて、「悲しみの果て」を作ってからだと思っていまして。それ以降に作った楽曲を“Mellow & Shout”としてまとめてますが、なぜ「大地のシンフォニー」を“Roll & Spirit”に入れたのか、今話していてわかりました。この曲の中の<地下鉄の駅で誰かとすれちがう>というフレーズが好きなんですが、転がり続ける感覚がこの曲の中にも入っているから、“Roll & Spirit”に入れたんじゃないかと思います。「歴史」という曲を入れたのは、森鴎外を歌っていたりソロ的なアプローチで作ったりして、新たなことに挑んでいたから。「コール アンド レスポンス」は全部打ち込みですし、「暑中見舞-憂鬱な午後-」は小林武史さんとニューヨークでレコーディングして、アレンジもゆだねた曲だった。で、「俺の道」で再びバンドに回帰している。“Roll & Spirit”には1stアルバムの曲から最新アルバムの曲まで、全期間の曲が入っていて、これも“エレファントカシマシの基礎”ではあるんだけど、ちゃんとRollしていて、時間軸はグシャグシャだけど、ひと通り流れがわかるようになっている。精神的なところでのRollする感覚を音楽を通じてストーリー仕立てにしたんだな、ちゃんと誠実に組んでいたんだなって、自信を持って勧めることができる気がします。

——「RAINBOW」「涙」「ファイティングマン」というラストの3曲も素晴らしいです。ここにも30年が凝縮されていると感じました。「RAINBOW」と「ファイティングマン」はまさにRollする感覚を象徴・代表する曲ですが、その間に「涙」を入れたのはどうしてなのですか?

選んだときは淡々と考えていて、弾き語りもエレファントカシマシの1つの特徴なので、何か入れたいと思っていて。最初は佐久間さんとやった「月夜の散歩」を入れようかと思っていたんですよ。東京の護岸されてる川べりの道を月の夜に歩いてる時のそのままの歌なんですが、結構好きなので。「涙」にしたのは、野音や武道館など大きいところでもよくやっていた曲だし、<悲しいときには涙なんかこぼれない/うれしいときは肩怒らせ世を笑うさ>という歌詞が言いやすいし、ベスト盤にふさわしいだろうということで、弾き語りの代表にしました。

——オリジナリティーのあるベスト盤ですよね。

ベスト盤っていろんなやり方があって。例えば、売れることを第一義に考えて、マーケティングを重視して選ぶベスト盤もあると思うんですが、『All Time Best Album THE FIGHTING MAN』は宮本が選ぶところに意義があると思うし、記念盤として意味のあるもの、エレファントカシマシの手作り感覚のあるアルバムになっていると思います。

——デビューから30年ですが、このベストを聴いていて、同じ4人のメンバーでやり続けることのかけがえのなさも感じました。宮本さんはどう思っていますか?

バンドって確かに素晴らしいものなんだけど、その前提のもとで、個人的なところで言うと、4枚目の『生活』というアルバムを作った時はソロになりたいと思っていたんですよ。そういうことって、毎日のように思うもので。練習している時にそう思うこともある。でも何がかっこいいのか?って冷静に考えると、結局、バンドだっていう結論になるというか。単純に、何がすごいかっていうと、石君と友達になろうと思って友達になったわけじゃないってことですよね。中学の1年6組でなぜか石君のこと気に入って、始業式の日に一緒に帰ったわけですよ、12歳のときに。トミとも1年6組で同じクラスメートだった。成ちゃんはトミの高校時代の友達で。自然な成り行きでこの4人になった。ずっと一緒にやってきたってことは、必然的に3人のことが好きだからってことですよね。すごいテクニックがあるわけじゃないけど、なぜかおもしろいなって思ってしまうという。そこはひと言では言えないものがあるんですが。

——ひと言で言えない何かがあるというところが“バンド”ってことなんでしょうね。

「新曲ができたよ」って言って、いきなり「笑顔の未来へ」を弾き語りでやり出したときに、トミが返してくれたドラム。「おはようこんにちは」でリフを演奏したときに、即座に音が返ってくるトミのドラム。ミヤジが「こうしたいんだ」って言ったときに反応するバンドのすごさは感じてますよね。どんなに口で「この曲はすごくいい曲だから」って説明したって、ちっとも解りはしないんですよ。そのかわり、“「笑顔の未来へ」ってミヤジにとって、大事な曲なんだろう、理屈じゃないんだろう”って、すぐに反応してくれるのが素敵なところで。でもできないものはできない(笑)。ドンカマ(リズムマシン)に合わせて一生懸命叩こうとしても、いつまでたっても上手になるわけじゃないし、ならなくてもいいってことも最近わかってきました。先日の武道館でも2時間のステージをやるために、1日9時間ぐらい、お正月から毎日練習したんですが、練習すると確実に自分のものになるんですよ。手応えがあった。そういうことが大切なんだなって。あと、たたずまいですね。そこは意外と大事だなと思っていて。4人で写真におさまったときのたたずまい、悪くないなって。自分のことながら、そこは感じたりして。

——ローリング・ストーンズにしても、メンバーが並んでいる写真を観ると、バンドだなって思いますもんね。

そうなんですよ。昔、あんなふうになりたいって思っていた。バンドってそういうものだなって。30何年経て、僕ら4人からもそういうバンドの波動みたいなものが出ているんじゃないかって思えるようになってきました。

——ライブを観ていても、宮本さん、石森さん、高緑さん、冨永さんのたたずまいを観ていると、バンドだなって思います。それにしても、音楽的な実験、冒険を続けながらも、バンドの基本に戻ってきて、30年続けるのはかなり奇跡的なことなのではないかと思うのですが。

自分の中で“バンドにはいつでも戻れる”と思っているところはありますね。たとえば、2006年のアルバム『町を見下ろす丘』は東芝EMIとの契約が切れることが分かってるときに作ったので、そんなにいろんなことはできなくて、バンドだけに戻らざるを得なかった。1997年に佐久間さんと一緒に作ったアルバム『明日に向かって走れ-月夜の歌-』は、あの時点でのバンドの頂点を極めた作品という手応えがあったんですが、それだけにあのままだと、次には行けないんですよ。それでその翌年のアルバム『愛と夢』は打ち込みで作っていった。その次の『good morning』もそうですよね。この4人でやっていくにはどうしたらいいんだろうってことは常に模索していました。小林武史さんと一緒にやった時も、バンドでリハーサルをやったんだけど、どうしても『明日に向かって走れ-月夜の歌-』でたどり着いたサウンドを超えられそうもなかった。そうすると、メンバーとやる気になれなくなってしまうんですよ。それで佐久間さんであったり、根岸さんであったり、いろんな人の力を借りて、いろいろ挑んでいって、勉強させてもらったり、吸収させてもらったりして、『俺の道』で再び4人のバンドサウンドに戻っていくことができた。1度到達したと思うと、同じようなことはできなくなってしまうんですよ。

——同じことをやるということは留まるということだから、Rollすることに反しますもんね。

そうなんですよ。いろんな人とやったり機械を使ったりしたのは、バンドが次に進むために必要なことでした。

——30周年の今年はバンドにとって初の47都道府県ツアーもありますが、逆に今までなんでやってこなかったんだろうと思いました。

ずっとやりたかったんですけど、みんなが元気で健康で、ツアーに全力を注げるタイミングがなかなか無かったんですよ。この時期にできることになったのはみんなのタイミングが合ったからですね。フェスに出て、シングルもしっかり出して、今も思ってますけど、絶対にもっと売れてやるぞっていう意識で活動していると、制作期間もそれなりに必要になってくるので、そうなるとライブとのバランスが難しくて、どうしてもツアーがタイトにならざるを得なかった。でも30周年のきっかけでベスト盤も出るし、レコード会社も事務所も我々も万全を期して、ようやく全県ツアーができるタイミングにたどりつけた。ようやくここに来たな、よし、行くぞって思っています。

——どんなツアーにしたいと考えてますか?

武道館のリハーサルでも繰り返し繰り返しやると、自分の歌もバンドの演奏もより自分達のものになることがはっきりわかったんで、リハーサルの時間をしっかりとって、歌をしっかり歌うコンサートにしたい。そうすることが一番ハッピーなんで、そこを目指してやっていきたい。ともかく練習を重ねるのみですね。

——30年やってきた現時点での結論が“練習”っていいですね。

そうなんですよね。逆に言うと、しばらく練習しないとダメだなと痛感しましたから。下手になっちゃうし、忘れてしまう。30周年まではなんとかなっても、30周年からはどうなるかわからないと思っています。シガー・ロスというアイスランドのバンドが好きで、彼らの音楽をよく聴いているんですが、彼らは1日10時間どころじゃないすさまじい練習をしているんじゃないかと思うんですよ。メンバー同士、仲が良くないとできないし、お互いがお互いを必要としてないとできない。リハーサルで音を詰めていくことの重要性って、頭でわかってても、なかなか難しくてね。50歳くらいになると、メンバーの中でも感覚的に若い人と若くない人とが出てきたりするので、そこもリハーサルで克服していくしかないですよね。「ガストロンジャー」だって、「俺たちの明日」だって、練習しなきゃいけない。すべての曲がそうです。「ファイティングマン」もそうやって日々更新していくからこそ、「ファイティングマン」なんだと思ってます。


取材・文=長谷川誠 撮影=西槇太一

リリース情報
All Time Best Album『THE FIGHTING MAN』
2017.3.21 (火) ON SALE 
収録曲 CD2枚組 リマスタリング音源30曲収録
(Disc1)Mellow & Shout 
1.今宵の月のように 
2.悲しみの果て   
3.四月の風    
4.風に吹かれて    
5.夢のかけら    
6.友達がいるのさ   
7.俺たちの明日     
8.笑顔の未来へ
9.リッスントゥザミュージック     
10.翳りゆく部屋      
11.桜の花、舞い上がる道を    
12.ハナウタ~遠い昔からの物語~     
13.新しい季節へキミと
14.ズレてる方がいい    
15.夢を追う旅人
(Disc2) Roll & Spirit   
1.ガストロンジャ―     
2.デーデ     
3.奴隷天国     
4.花男   
5.戦う男    
6.so many people     
7.コール アンド レスポンス     
8.暑中見舞-憂鬱な午後-
9.俺の道     
10.歴史     
11.大地のシンフォニー  
12.Destiny     
13.RAINBOW     
14.涙    
15.ファイティングマン
 
◆初回限定盤 UMCK-9896
エレファントカシマシ『THE FIGHTING MAN』初回限定盤

エレファントカシマシ『THE FIGHTING MAN』初回限定盤


[UNIVERSAL MUSIC STORE]  http://store.universal-music.co.jp/product/umck9896/
3CDマルチケース仕様 ¥4,200(税抜)2CD+1DVD
DVD 収録内容
“THE FIGHTING MAN’s  LIVE HISTORY””
1.「ファイティングマン」 1988渋谷公会堂“1st ホールコンサート” ※
2.「待つ男」 1991年日本武道館“日本武道館3000席” ※
3.「曙光」 1992年吉祥寺バウスシアター“吉祥寺バウスシアター5days”
4.「東京の空」with近藤等則 1994年日比谷野外大音楽堂
5.「悲しみの果て」 1995年下北沢シェルター ※
6.「昔の侍」  1998年日本武道館“風に吹かれて”
7.「おまえと突っ走る」 1999年日本武道館“新春ライブ” ※
8.「赤い薔薇」 2001年日本武道館“新春ライブ” ※
9.「あなたのやさしさをオレは何に例えよう」 2002年渋谷公会堂“Life TOUR”
10.「生命賛歌」 2003年 赤坂BLITZ “BATTLE ON FRIDAY” ※
11.「俺たちの明日」 2008年日比谷野外大音楽堂
12.「新しい季節へキミと」 2009年日本武道館“桜の花、舞い上がる武道館”
13.「明日への記憶」 2011年仙台Rensa“悪魔のささやきTOUR” ※
14.「「序曲」夢のちまた」 2012年10月14日 日比谷野外大音楽堂
15.「今宵の月のように」 2013年日比谷野外大音楽堂“復活の野音”
16. 「桜の花、舞い上がる道を」 2014年さいたまスーパーアリーナ“デビュー25周年記念コンサート”
17. 「花男」 2016年12月27日 下北沢シェルター ※
※全17曲収録、※印の楽曲は、初商品化映像(新規編集含)になります。
※5.「悲しみの果て」 ※1995年下北沢シェルター、17. 「花男」 ※2016年12月27日 下北沢シェルター
はデラックス盤に収録されている映像と同内容になります。

◆通常盤 UMCK-1563/4
エレファントカシマシ『THE FIGHTING MAN』通常盤

エレファントカシマシ『THE FIGHTING MAN』通常盤


[UNIVERSAL MUSIC STORE]  http://store.universal-music.co.jp/product/umck1563/
2CD 30曲¥3,000(税抜)

【CD SHOP 特典情報】
エレファントカシマシ「All Time Best Album THE FIGHTING MAN」CDショップ特典
下記のCDショップでご予約/ご購入いただくと先着でB2サイズのリリックポスターをプレゼント!! 
■B2サイズリリックポスター 対象CDショップ
●HMV全店(ローチケHMV含む)
●新星堂全店 ・ WonderGOO全店
●TSUTAYA RECORDS全店
●TOWER RECORDS
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●その他全国拠点店
※全国拠点店のリリックポスターを特典とした対象CDショップは後日ご案内いたします。
※特典は先着で数に限りがございます。
ご予約/ご購入の際は店舗/ECサイトにて特典の有無をご確認ください。
※また店舗によって特典の取り扱いのない店舗もございます。
※特典はお買い上げ/の際にお渡しいたします

 

ライブ情報
デビュー30周年記念コンサート “さらにドーンと行くぜ!”
2017年3月20日(月・祝)
16:00 OPEN / 17:00 START
チケット料金:¥6,900(税込)
チケット発売中!

30th ANNIVERSARY TOUR 2017 “THE FIGHTING MAN”
■4月8日(土) 東京・北とぴあ さくらホール 16:30/17:00
■4月15日(土) 山梨・コラニー文化ホール 大ホール 17:30/18:00
■4月22日(土) 茨城・茨城県立県民文化センター 大ホール 17:30/18:00
■4月23日(日) 千葉・市原市市民会館 大ホール 17:00/17:30
■4月29日(土・祝) 岡山・岡山市民会館 17:30/18:00
■4月30日(日) 高知・高知県立県民文化ホール オレンジホール 17:00/17:30
■5月3日(水・祝) 鹿児島・宝山ホール 17:30/18:00
■5月4日(木・祝) 熊本・熊本県立劇場 演劇ホール 17:00/17:30
■5月6日(土) 島根・島根県民会館 大ホール 17:00/17:30
■5月7日(日) 広島・広島上野学園ホール 17:00/17:30
■5月14日(日) 福井・福井フェニックス・プラザ 17:00/17:30
■5月20日(土) 北海道・わくわくホリデーホール 17:30/18:00
■5月27日(土) 岐阜・長良川国際会議場 17:30/18:00
■5月28日(日) 三重・四日市市文化会館 第一ホール 17:00/17:30
■6月3日(土) 福島・郡山市民文化センター 大ホール 17:30/18:00
■6月4日(日) 山形・やまぎんホール 17:00/17:30
■6月10日(土) 佐賀・鳥栖市民文化会館 大ホール 17:30/18:00
■6月11日(日) 宮崎・メディキット県民文化センター 演劇ホール 17:00/17:30
■6月18日(日) 神奈川・神奈川県民ホール 大ホール 17:00/17:30
■6月24日(土) 徳島・鳴門市文化会館 17:30/18:00
■7月1日(土) 愛媛・松山市民会館 大ホール 17:30/18:00
■7月2日(日) 兵庫・神戸国際会館 こくさいホール 17:00/17:30
■7月8日(土) 長野・まつもと市民芸術館 17:30/18:00
■7月9日(日) 東京・オリンパスホール八王子 17:00/17:30
■7月15日(土) 秋田・秋田県民会館 17:30/18:00
■7月16日(日) 岩手・盛岡市民文化ホール 17:00/17:30
■7月22日(土) 沖縄・ミュージックタウン音市場 17:15/18:00
■9月23日(土・祝) 愛知・名古屋国際会議場 センチュリーホール 17:15/18:00
■9月24日(日) 石川・本多の森ホール 17:00/17:30
■9月30日(土) 長崎・島原文化会館 大ホール 17:30/18:00
■10月6日(金) 青森・弘前市民会館 18:30/19:00
■10月8日(日) 宮城・仙台サンプラザホール 17:00/17:30
■10月9日(月・祝) 栃木・宇都宮市文化会館 大ホール 17:00/17:30
■10月14日(土) 大分・宇佐文化会館 大ホール 17:30/18:00
■10月15日(日) 香川・サンポートホール高松 大ホール 17:00/17:30
■10月22日(日) 新潟・新潟県民会館 17:00/17:30
■10月28日(土) 和歌山・和歌山市民会館 大ホール 17:30/18:00
■10月29日(日) 滋賀・守山市民ホール 大ホール 17:00/17:30
■11月3日(金・祝) 福岡・福岡サンパレス 17:30/18:00
■11月5日(日) 鳥取・米子市公会堂 17:00/17:30
■11月18日(土) 群馬・ベイシア文化ホール 大ホール 17:30/18:00
■11月19日(日) 埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール 17:00/17:30
■11月23日(木・祝) 山口・山口市民会館 大ホール 17:00/17:30
■11月25日(土) 京都・ロームシアター京都 メインホール 17:30/18:00
■11月26日(日) 静岡・三島市民文化会館 大ホール 17:00/17:30
■12月2日(土) 奈良・なら100年会館 大ホール 17:30/18:00
■12月9日(土) 富山・富山オーバード・ホール 17:30/18:00

<チケット料金>
指定席 6,900円(税込)
※7月22日(土) 沖縄・ミュージックタウン音市場公演のみ、
スタンディング 6,900円(税込) ドリンク代別となります。
※3歳以上チケット必要

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