映画と音楽を融合させた新感覚なイベント『New Neighbors』で感じたこと

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Homecomings 撮影=kazuyatanaka

Homecomings 撮影=kazuyatanaka

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2017.2.19(SUN) 京都みなみ会館

京都の音楽シーンを牽引する4人組バンド・Homecomingsとイラストレーターのサヌキナオヤが、映画と音楽を一度に楽しめ、その世界を堪能することができるという、これまでにありそうでなかった新感覚のイベント『New Neighbors』を彼らのホームタウン・京都で実施。ライブだけ、映画だけ……では味わうことができない、広がりを持ったユニークなイベントの模様を紹介する。

『New Neighbors』 撮影=kazuyatanaka

『New Neighbors』 撮影=kazuyatanaka

海外の映画や小説にインスパイアされた音楽で、オリジナリティあふれる世界へと導いてくれるHomecomings。そんな彼らが、自身のジャケットのアートワーク等を任せるサヌキナオヤと共に、今までにない音楽と映画を融合させた興味深いイベントを初めて行うとあって、会場には開場の15:00前から続々と人が集まり行列を作り出す。しかも今回の舞台・京都みなみ会館は歴史ある映画館だけに、その風情もたっぷり。駆け付けた音楽や映画を楽しみにする高感度な人たちが醸し出すおしゃれな空気感と相まって、わくわくする気持ちが否応なしに高まる。もちろん開演の15:30前には満席の状態だ。

そして15:30、通常のライブではまずない映画の上演合図のブザーが鳴り響き、Homecomingsが壇上のスクリーン前に姿を現す。たくさんの照明を背負ったライブハウスとは違い、ステージもいつもとは異なる様相となっており、ネオンロープライトで装飾され、家庭のクリスマスにも似た雰囲気だ。加えて4人の衣装は、なんとパジャマ。これは上映する映画『アメリカン・スリープオーバー』(スリープオーバー=お泊り会)に合わせたものなのだが、アットホーム感を倍増させ、ライブを見るぞ!というような一種の意気込みを消し去って、4人の世界に遊びに来た、という感覚をもたらす。

Homecomings 撮影=kazuyatanaka

Homecomings 撮影=kazuyatanaka

そんななかまず畳野(Vo&Gt)が、今回の企画意図や満員へのお礼を述べる。「昔からこういう企画ができたらいいなと思っていて……」という言葉からは、彼ら自身のこのイベントにかける意気込みや期待が大きなことをうかがわせる。そして始まったのは「Sea of Love」のカバー。ハニー・ドリッパーズの1959年のヒット曲で、1989年のアル・パチーノ主演の映画『シー・オブ・ラブ』のテーマソングだったこのナンバーは、1曲目から映画と音楽を楽しむ今日の企画ならではといったところ。メロウなメロディに乗る優しいボーカルは、ステージとフロアの近さのせいか畳野の息づかいまで聴こえてくるようで、耳だけではなく心に響く。続いて2曲目もカレン・オーのカバーで「The Moon Song」。これも映画『her/世界でひとつの彼女』の主題歌だ。少しけだるさも感じる歌声と心地いいマラカスのリズムは夢の世界へ誘うようだ。すると今度は彼らのナンバー「ANOTHER NEW YEAR」をプレイし、どこか甘酸っぱくてこそばゆいような空気で観客を包み込む。

Homecomings 撮影=kazuyatanaka

Homecomings 撮影=kazuyatanaka

挟むMCでは福富(Gt)が、「(衣装のパジャマの)サイズが合わなくて、おじいちゃんみたいな感じ(笑)」と無邪気なトークで和ませ、畳野も「(こういう企画・ライブなので)寝ちゃってもいい気がして。夢との間にHomecomingsの音楽があれば(いいな)……」と、どこまでもリラックスした様子だ。そんなMCどおり、次はカラーの夢を見せてくれるようなどこかハッピーな空気をまとった「GREAT ESCAPE」へ。続く「LEMON SOUNDS」ではどこか熱を帯びたようなサビで、少しだけビターで青い一面を見せる。ここでもう一度MCタイムに。今回メンバーとサヌキがイベントのために作ったジン(小冊子の一種)のことや、福富が勝手にサントラ企画と題して『アメリカン・スリープオーバー』をイメージしたSEを制作し、開場中に流れていたことを語る。楽しみどころが散りばめられていることに再度気付かされる。

Homecomings 撮影=kazuyatanaka

Homecomings 撮影=kazuyatanaka

そして、いよいよライブはラストへ向けて「HURTS」から。軽快なビートとギターが彩るポップなナンバーを、映画館のシートに身を埋めて聴くという何とも不思議なシチュエーションだが、楽しさが減るわけではなく、観客一人ひとりが脳内で踊っているような確かな感情の動きが客席から伝わって来る。

そして最後は、この後上映される映画『アメリカン・スリープオーバー』のエンディングテーマ「The Saddest Story Ever Told」をカバー。透明感や突き抜けるようなさわやかさも感じる曲は余韻も十分。ふわふわと滑らかに、境目なく映画へとつなげてくれるようだった。畳野も「Homecomingsの音楽とリンクする」と『アメリカン・スリープオーバー』を表現。さらに「リアリティとフィクションが交差する」「日常を切り取った」といった言葉で上映前に映画を紹介し、休憩を挟んで今日のもう一つのお楽しみ、『アメリカン・スリープオーバー』の鑑賞タイムへ突入した。

『アメリカン・スリープオーバー』 撮影=kazuyatanaka

『アメリカン・スリープオーバー』 撮影=kazuyatanaka

16:30から上映スタートした映画『アメリカン・スリープオーバー』は、最新作『イットフォローズ』で映画ファンを魅了したデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の2010年の初監督作品。アメリカの郊外に暮らす若者たちのスリープオーバーと言われるアメリカでは定番のお泊り会の一夜を描いた青春群像劇で、昨年、東京などで上映され高い評価を集めた。スターが出演するわけではなく、圧倒的な主人公がいるわけでもない物語は、どこにでもいそうな複数の登場人物たちが、大げさではないがみずみずしさをたたえてスクリーンに次々登場。誰もが思春期に持つ、不安や憧憬、欺瞞や優しさなど、色とりどりの感情が淡々としたストーリーと共に通り過ぎていく。

そんな高圧的ではなくともしっかりと心の片隅に印を付けていく作品は、Homecomingsの音楽とも共通点が多い。例えば、ふっと思い出す1シーン……ふっと頭をよぎる音楽といった存在といった感じだ。そんな映画は、会場に集まったHomecomingsファンの心をがっちりととらえたことだろう。

そして上映後は、畳野とサヌキがステージに。「みなさんのおかげで最高のイベントになりました」「ありがとうございます!」とそれぞれ感謝を口にして立ち去った。映画・音楽同様に押しつけがましさゼロの潔い去り際はなんとも彼ららしく、逆にライブと映画の余熱をより一層に楽しませてくれるようだった。


取材・文=服田昌子 撮影=kazuyatanaka

イベント情報
SECOND ROYAL RECORDS 15th ANNIVERSARY
会場:大阪・味園ユニバース
日時:3月18日(土)
開場:12:00 開演:13:00 終演:22:00
出演:Homecomings、平賀さち枝とホームカミングス、HALFBY、HANDSOMEBOY TECHNIQUE、カジヒデキ with 佐藤寛/古川太一 (KONCOS)、松田 "chabe" 岳二、サイトウ"JxJx"ジュン (YOUR SONG IS GOOD)、アナ、Turntable Films、シャムキャッツ、王舟、Yogee New Waves、Seuss、THE FULL TEENZ、she said
前売:4,300円 (税込・ドリンク代別途要)
*保護者同伴に限り中学生以下無料。
*高校生は会場にて2000円キャッシュバック(要学生証)
 
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