デフォルメされた動物たちが諦めない強さをくれる『SING/シング』 #野水映画“俺たちスーパーウォッチメン”第二十一回

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 (C)Universal Studios.

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TVアニメ『デート・ア・ライブ  DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス  怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。

先日公開され、日本でも話題になっているミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』。あちらは夢追い人達の大人の恋愛を描いた作品だが、今回は同じく“音楽”をテーマにした、子どもから大人まで楽しめるアニメーションを紹介したいと思う。それが『ミニオンズ』(15)のスタッフが贈る最新作『SING/シング』!

 

コアラのバスター・ムーンがオーナーを務める劇場は、経営が上手くいかず倒産寸前。楽天家だが何よりも劇場を愛する彼は、栄光を取り戻すために世界最高の歌唱コンテストを開催することを決意する。それぞれに事情を抱えつつも歌に夢を賭けた動物たちが、未来を変えるために劇場に集結するのであった。

 

可愛い動物、実力派俳優、ヒットソングの良いバランス

(C)Universal Studios.

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本作はストーリーが歌で進行するようなミュージカル映画ではないが、テイラー・スウィフトからデヴィッド・ボウイ、きゃりーぱみゅぱみゅまで、誰もが一度は耳にしたことがあるだろうヒットソングたちが随所で使われている。登場曲数は60曲以上! そのほとんどは歌唱コンテストのオーディション参加者たちがサクサクと歌ってゆくのだが、その時点で体がリズムを刻みたくなること間違いなし。私なんて、試写での鑑賞じゃなかったら口ずさんでいたかもしれない(笑)。洋楽はあんまり聴かないから……と敬遠してしまいそうな人でも、可愛い動物たちがリズミカルに歌う姿を見れば、そんな心配は吹き飛ぶはずだ。

そしてそんな動物たちの声と歌を担当するのは、歌ウマ実力派俳優&シンガーたち。パンクなヤマアラシの女の子・アッシュを演じるのは、4月に『ゴースト・イン・ザ・シェル』の公開も控えるスカーレット・ヨハンソン。そのパワフルな声は、アッシュの歌声にとてつもない説得力を持たせている。性格に難ありだが歌はピカイチ、ハツカネズミのマイク役はセス・マクファーレン。『テッド』(12)のテッド役で一躍有名になった彼が、ムーディーな歌声を聴かせてくれる。

 

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ほかにも魅力的なキャスト陣が勢揃いする中で、私が一押ししたいのは言わずもがなタロン・エジャトン! ……いや、確かに私が彼贔屓なのは認めるが、それにはちゃんとした理由があるのだ。エジャトンが演じるのは、ギャングという家業から足を洗い、歌手になりたいゴリラのジョニー。彼は父親に内緒でコンテストに参加し、家業の手伝いと両立させながら優勝を目指す。偉大なギャングである父親たちとは違い、繊細でまだ自分に自信を持てない、そんな揺れ動く心を、エジャトンはハスキーボイスで切なく歌い上げる。映画スタッフたちも驚嘆したという、ジョニーの葛藤を見事に反映させた彼の熱唱に注目してほしい。

 

いくつになっても、大事なのは諦めないこと

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正直に言ってしまうと、本作では予想外の出来事はそんなに起きない。ストーリーは「きっとこうなるだろうな」と思った通りに進んでゆく。それなのになぜ飽きることなくワクワクし続けられるかといえば、歌というエッセンスのほかに、誰もが欲し憧れる“強さ”があるからなのだ。子どもの頃に抱いた夢や目標は、成長するにつれ手放してしまうことが多いはず。この物語の登場人物たちもそうだ。子どもの世話に追われている主婦や、たとえ夢を追い続けていてもくすぶっているストリートミュージシャンなど、現実でも見かける者たちばかり。憧れの劇場オーナーになったバスターでさえ、ショーの失敗が続いて劇場を売り払う寸前まで来ている。けれど、“ショーを成功させる”という一つの目標に向かってゆく内に、皆手に手を取り合い、“諦めない強さ”を取り戻してゆくのだ。

もちろん現実では、努力をしても必ず上手くいくとは限らない。それでも挑戦し続けることは素晴らしいことだと私は思う。心さえ折れなければ、人はいくつになっても変わることができる……この映画はそんな勇気と強さを、動物キャラのデフォルメで、押しつけがましくなく与えてくれる。

ちなみに私のおススメキャラは、バスターの親友・ヒツジのエディだ。金持ちのボンボンである彼は、やりたいことも特になく、日がな一日ダラダラしている。だがそんなエディも、親友のために、自分のやるべきこと、在るべき場所を見つけてゆくこととなるのだ。二人の絆に、思わずうるっとせずにはいられない……! 

 

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一見すると子ども向けのように思える本作だが、大人が観れば、自分の胸にチクリとくる想いに気付くことだろう。最後に待ち受けるクライマックスシーンは、パワフルで、でもやさしくて、最高にハッピーな気持ちにさせてくれる。そう、『SING/シング』は大人が観てこそグッとくる作品だと推しておこう! ぜひ皆さんも私のように、恥ずかしいほどのあたたかい涙を劇場で流してほしい。

『SING/シング』は、3月17日(金)よりTOHOシネマズ スカラ座ほか全国ロードショー。

作品情報

映画『SING/シング』​

監督/脚本:ガース・ジェニングス
製作:クリス・メレダンドリ、ジャネット・ヒーリー
キャスト:マシュー・マコノヒー、リース・ウィザースプーン、セス・マクファーレン、スカーレット・ヨハンソン、ジョン・C・ライリー、タロン・エガートン、トリー・ケリー、ニック・クロール、ジェニファー・サンダース、ピーター・セラフィノーウィッチュ、レスリー・ジョーンズ、ジェイ・ファロア、ニック・オファーマン、ベック・ベネット

吹替え版/演出:三間雅文 日本語吹替え版音楽プロデューサー:蔦谷好位置 日本語歌詞監修:いしわたり淳治
出演(吹替版):内村光良、MISIA、長澤まさみ、大橋卓弥(スキマスイッチ)、斎藤司(トレンディエンジェル)、山寺宏一、坂本真綾、田中真弓、宮野真守、谷山紀章、水樹奈々、大地真央

配給:東宝東和
(C)Universal Studios.
公式サイト:http://sing-movie.jp/

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