「ライブででっかい音が鳴ってればいい」SHANKの根本にある変わらないもの
SHANK(左から、 池本雄季(Dr/Cho)、 松崎兵太(Gt/Cho) 、庵原将平(Vo/Ba)) 撮影=kazuyatanaka
SHANKが3年ぶりとなるアルバム『Honesty』をリリースした。10曲で20分ほどと短い時間ながらも、勢いのままに突き進む作品は彼らの姿をそのままパッケージングしたようで、なんとも爽快でノンストレスな作品に仕上がっている。感じるままを音にしたという作品に込められた思いとは、一体何なのか。現在45本もの長い全国ツアーを慣行中の彼ら。神戸公演でのステージ直前、メンバー全員に話を聞いた。
――1月18日(水)に4枚目のアルバム『Honesty』がリリースされ、現在はそのアルバムを引っ提げツアー『Honesty Tour 2017』の真っ最中。今日で(取材日は3月9日(木)・神戸公演)10本目のステージとなりますが、お客さんからのアルバムの反応はいかがですか?
庵原:やっぱり各地で反応が違いますね。それぞれ土地の色が出るけど、悪くないんじゃないかな?
――2015年にはミニアルバム『SHANK OF THE MORNING』も発表されましたが、フルアルバムとしては3年ぶりのリリースです。SHANKは常にライブを欠かさないバンド。日々多忙ではあるかと思いますが、アルバムリリースまでには長い時間を要したなと感じました。
庵原:自分たちに自覚はないんですよね。ずっとツアーをやっているのは変わりないし、ミニアルバムも出してた。ずっと何かをしているつもりなので、もう3年経ってたんだって感じです。そんなに無理して出そうっていうもんでもないし、良いのができたら出そうかって考えてて。って言っても出来なかったんですけどね、簡単に言っちゃうと。
――正直すぎる返事に驚きです(笑)。
庵原:いいものが出来たタイミングが今回だったという感じです。
――曲が出来なかったというのは、具体的な理由はありますか?
松崎:作れなかったわけじゃなかったんですけど、これを発表したい!と思えるものになるまでに時間がかかって。作ってはいたけど、満足のいく状態では出せなかったんですよ。
――曲作りはミニアルバム発表以降もコンスタントに続けていたんでしょうか?
庵原:今回は長い期間やってましたね。プリプロも併せて半年以上も作業をしていて。
松崎:CDがリリースされる半年以上前にはもう出来上がってたんですよね。でも、色々あってリリースが伸びて……だから余計に長く待たせた感じになったのかな?
――作品に込めたイメージはどんなものがありましたか?
庵原:作品そのものにコンセプトはないし、毎回イメージするものも特にないんです。曲が完成したものから入れていって、アルバムとして聴くうえであとはどういうものをプラスしたらいいかってことを考えて。どんな曲を加えれば、自分たちが聴いていて飽きないかを考えるんです。
――今作は全部で10曲が収録されています。リリースにあたって、楽曲のストックはどれくらいあったのでしょうか。
松崎:ストックというのは特に決めていないんですよね。曲数を縛って作品を作るわけでもないし、作った曲のなかで、いいなと思えたものが単に10曲だっただけで。なんだかんだ言って10年くらいCDを出して、音源がたくさんあるなかで同じ活動をするなら新しい作品を出さなくてもいいって、いつもメンバーとは話をしているんで。今回のアルバムに時間がかかったのもそれが原因なのかなって。
――作品を出すなら同じことをしない。今回のアルバムはこれまでとの違いが明確にありましたか?
松崎:特にないかも……。ちゃんと考えてないけど(笑)。
庵原:アルバムはそれぞれ色が違うとは思うんですけど、聴く人によっては全部一緒だって言われるかもしれない。自分たちとしては何が変化したのかって問われたら、良く分からないっていうのも事実で……。
――明確な確信ではなく、納得するものが作品に詰まっていると。
庵原:そういうことですね。
松崎:活動の根本に、人にどうこう言われて活動を変えていくっていうことがない。自分たちが良いと思ったら世に出していく、それの繰り返しですね。
庵原:変化を言葉にするのは難しいですね。でも、昔に比べて難しいことはしなくなりましたね。色々考えて作り込んでいくタイプではないんだと思います。
――では、今回のアルバムも自然なタイミングで曲が集まったと。楽曲制作はスムーズにいくタイプですか?
池本:急かされたら出るよね。
庵原:その時々で違いますけど、結果やっぱりケツを決められないと動けないかな。
――夏休みの宿題は最後にまとめてやるタイプですね。
庵原:毎回最後にばーーーっとやっちゃうほうですね(笑)。
――みなさんも似たタイプですか?
池本:俺もそうだけど、兵太くんは違うんじゃない?
松崎:俺は宿題はやらないタイプです!
庵原:根本がちげー!(笑) でも、オレもなかったことにしたりしたなぁ。
SHANK 撮影=kazuyatanaka
――楽曲は松崎さんがリフを作って、庵原さんがまとめていく方法が多いとか。骨組みを作って渡す、その段階である程度楽曲のイメージも伝えていくんでしょうか?
松崎:そういうことは全くしないですね。10秒くらいのワンフレーズだけを渡すんですよ。
――そこを軸にして楽曲を作っていくと。SHANKは元々楽曲がすごくタイトなイメージがありますけど、今回の作品は10曲で20分ほど、よりタイトになりましたよね。
庵原:年々飽き症になってるんですよね。
松崎:作っている段階ではそんなに短いとは思っていなくって。レコーディングして初めて短いことに気付いたんですよね。
――飽き症っていうのは、早く次の曲を演奏したいっていう欲からですか?
池本:ライブをやってると、長い曲って飽きるんですよね。演りながら“長いわぁ”って思いますもん。
松崎:サビが3回くるともう飽きるんですよ。
庵原:なんでも、ちょっと足りないくらいが良くないですか?
――足りないのが良いにしても、今作の短さは本当に驚かされましたよ。
庵原:やろうと思えばやれるんですけどね……。
池本:長いわぁ……ってなるもんな(笑)。
――アルバム全曲を通じて20分ほど、短いなと気付いた段階で曲を増やすという選択肢は?
庵原:さらっと聴けるアルバムにしたかったんで、その選択肢はなかったですね。
松崎:短いけど、やりたいことはふんだんに詰め込んだ作品になりました。
庵原:ツアーのことを考えたとき、50分~1時間をステージで回すことを考えたとき、16曲も入ったアルバムをリリースしたら、その作品中心のステージになるじゃないですか?
――作品の世界観としてはどうしても避けられないですよね。
庵原:それはそれで面白くない。とにかくさらっと何回も聴ける、飽きないものを作りたかったんです。
SHANK 撮影=kazuyatanaka
――おかわりが何杯もいけちゃう作品、ということですね。今回の作品、1曲目はアコースティックの柔らかな雰囲気が特徴的で。“今回はこういう方向性で攻めるのか?”と思いきや、すぐさま2曲目で激しく展開していく。ギャップの違いも楽しめました。
庵原:さっき、アルバムを出すたびに違うことをしようっていう話をしたじゃないですか。正直、段々とやることがなくなってくるんですよね(笑)。早くて短い曲はやったし……。
池本:ギター始まりもやったし~。
松崎:カウントもしたし~。
庵原:ほかに何をやってないんだろうって考えたときに、アコースティック始まりはまだ手をつけてないって気付いて。
――新しいものに毎回挑戦したい、それも飽き症からくるものなんでしょうか。
庵原:うん。またそれかい!って思われたくないですしね(笑)。
松崎:CDを入れた瞬間、誰の作品なのかわかってほしいという気持ちもありますし。
――こういう遊びの部分がライブでどう表現されるかも楽しみですよね。
池本:それはライブを見てもらえたらわかるんでね!
松崎:僕らの作品は口で言うよりもライブを見てもらったほうが早いと思うんですよ。
――確かに、この勢いはライブを体感しないと存分に楽しめないですね。2曲目以降は勢い止まらず突き進んでいきますし。そして、今作はラスト曲がそのままタイトルになっています。このタイトルも庵原さんが?
庵原:そうですね。でも、タイトルは最後まで悩みましたね。
――前作はバンド名を配した作品、今回は曲名をそのまま配した作品になっています。
庵原:それを言われると、あんまり考えてないですね(笑)。“これでいっかな”くらいです。
――楽しければオッケーっていう、勢いは伝わりますね(笑)。
庵原:はい! ラストの曲は最後に完成したんですけど、その曲ができたことで作品全体が締まった感じがしたんです。『Honesty』っていう言葉の響きもすごく好きで。
松崎:『Honesty』は最初から元ネタがあったのに、一番最後に完成した曲なんですよ。でも、SHANKっていつもそう。“この曲いいよね”って録った曲が一番時間かかったりするんですよ。
――作品はツアーやイベントの合間に制作してきたとのことですが、この曲がずっと作品のキーとして存在していたんでしょうね。
庵原:そうかもしれないですね。ちゃんと考えてなかったけど……。
――取材中、“ちゃんと考えてない”というワードがすごく出てきますよね(笑)。
庵原:そうですね(笑)。基本的に何も考えてないんですよ、オレらって。
池本:考えちゃダメなんだよね(笑)。
――ライブを楽しむ、バンドを楽しむ。それが前提にあるからなんでしょうね。
松崎:ライブででっかい音が鳴ってればいい、それに尽きますね。
庵原:だいたいのバンドマンはライブキッズからスタートするじゃないですか? 大きな音を生で聴きたい、ライブハウスではしゃぎたい、それってバンドを始めたころとたいして変わってないんですよね。そりゃあ、バンドが売れたらいいなって思いますよ? 大人になったし、色々考えなあかんなって思うこともあるけど……。
松崎:無理やろ(笑)。
庵原:これを機に考えるんやん(笑)。でも、長く続けられたらいいなっていうのはずっと思ってるんです。バンド活動よりも長く続けてきたことが自分の人生の中に、他にはない。バンドだけは面白いなって思ってずっと続けてきてることなんで。
――作品名の『Honesty』は“正直”という意味がありますが、SHANKそのものを示す言葉にも感じますね。SHANKの楽曲はリリックがすごくストレートで、押しつけがましさが一切ないのも特徴的だなと思います。
庵原:それはありますね。押しつけがましいのは得意じゃないんですよ。自分がされて嫌なことは人にはしちゃいけないって教わってきたんで。
――リリックのストレートさもそういうところが影響しているんでしょうね。詞世界についてメンバーから意見が出ることはないんでしょうか?
庵原:たぶん、CD出るまで見てないですよ?
――そんなことってあるんですか?
松崎:レコーディングのとき、歌詞が庵原とエンジニアさんの分しか用意されてなくて。途中で歌詞が変わることもあるから、僕らの分を用意してもしょうがないなって。
池本:歌詞の意味も、なんなら英詞も見ずにリリースまでいくことって毎回のことですよ。
松崎:CD出て、歌詞カードを読んで“あぁこういう歌詞なんや”って思うんですよね。
――ファンと立場が変わらないですよね(笑)。
松崎:そうです。だからプロフィールにファンだって書いといてもらったら……。
池本:松崎と池本は庵原のファンです!(笑)
SHANK 撮影=kazuyatanaka
――今作でもお馴染みのカバー曲が収録されています。今回はビートルズをカバーアーティストに選んでいますね。
庵原:ビートルズが好きだし、ずっとカバーもしたくって。いろんな曲をやるなかでアレンジがしやすく、一番しっくりくる曲が「Don’t Let Me Down」でしたね。
松崎:候補の中に「Twist and Shout」もあったんですけど、ビートルズって基本は繰り返しの曲が多いんですよね。ずっと同じことばっかやってて、これは無理だなって却下されました。
――そこも飽き症な性格が出たんですね(笑)。
松崎:今回のアルバムは今までみたいにリズムが速いとか、ズカズカと攻める感じの曲がないんですよね。それを踏まえると、今回のアレンジが一番しっくりくるのかなってなりましたね。
――カバー曲がアルバムの真ん中に収録されていて、前半と後半で雰囲気が変わるのも面白かったです。
庵原:そこも飽きないように考えましたね。
――今回はツアーの合間、神戸公演での取材となりました。ツアーは全部で45本。そしてSHANKといえば、釣り。長いツアーの合間の楽しみで、釣りはやっぱり外せないですか?
松崎:ほんと、釣りばっかしてますね~。ツアーの日程を組んだのは僕なんですけど、予想ではもう今頃はあったかいイメージだったんですよ。でも予想と反してめちゃくちゃ寒い。だからイメージしてた釣りとは全く違いますね。
――イメージしてたのはツアーの雰囲気ではなく、釣りなんですね(笑)。
池本:お客さんにも釣りでツアーを組んでるのはバレてるんでね。
松崎:ハイシーズンに合わせて四国で釣りができると思って、わざわざリリースまで伸ばしたのに!
――最初の話であった、“色々あって伸ばした”ってこのことですか!?
松崎:元々は6月に録り終わってて、10月にはリリースする予定だったんですよ。で、ツアーを11月から回ると2月頃にはツアーが終わってしまう。1~2月って一番釣りが厳しいシーズンなのに、そこでツアーをしてどうするんだって……そこでエイベックスに日程をずらしたいってお願いして。去年が暖冬だったんで、予定を間違えましたね。もう1ヶ月くらいリリースを遅らせたらよかったかなって。
――いやいや、ファンのみなさんは待ち望んでましたよ! ツアーの機材車には釣り道具も満載なんでしょうね。まさかボートまで乗っているとかは……。
池本:いや、そこまでやると怒られますね(笑)。
庵原:最終的にはそこを目指したいですけどね。
松崎:機材車とメンバー車に別れたら、メンバー車の後ろにゴムボートを引っ張って。機材だけ先に会場に入ってもらうっていう……。
――SHANKの人気が上がり、機材車のランクが上がり、いつか釣り用ボートがツアー車にくっつく日が来れば、「SHANKすごい売れた!」って思いますね。
池原:バス釣りどころかカジキとか釣りだしてね。
庵原:売れた証拠だよね(笑)。
――関西だとバス釣りの名所・琵琶湖のある、滋賀でのライブも残っていますし。そして対バンのメンツもかなり素敵なアーティストが集まっていますよね。
池本:先輩も後輩も関係なく。
庵原:カッコイイっていうのは前提ですね。
松崎:初めてのバンド同士を一緒のステージにあててみたり、良い出会いになればいいなって思っています。気の知れた友達もいいけど、次に何か生まれるような関係ができたら。
――これからも続くツアー、SHANKがどうパワーアップしていくのか楽しみにしています!
松崎:まずはアルミボートからスタートしていこうと思います!
――そこもやっぱり釣りネタなんですね(笑)。
取材・文=黒田奈保子 撮影=kazuyatanaka
『Honesty』