“殺人すら合法となる一晩”に意外なユーモアも『パージ:大統領令』#野水映画“俺たちスーパーウォッチメン”第二十四回

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2017.4.15
 (c)2016 Universal Studios.

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TVアニメ『デート・ア・ライブ  DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス  怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。

喧嘩をした相手や不義理をしてきた相手に「くそー!殺してやりたいー!」と思ったことくらい、誰だってあるのではないか。「そんなこと一度もない」と言い切れる聖人なあなた。もし自分の大事な家族や恋人の命を奪われたらどうだろうか? さすがに復讐したいと思ってしまうかもしれない。今回は、そんな願望を叶える“殺人すら合法となる一晩”を描いたシリーズ第3弾『パージ:大統領令』を紹介しよう。ちなみにシリーズと言ってもストーリーは一作ごとに完結しているので、パージ法という設定だけ知っていれば、本作からでも楽しめるので安心してほしい。

近未来、アメリカ合衆国はNFFA(新しい建国の父たち)と呼ばれる組織によって統治されていた。NFFAは、一年に一晩だけ警察や病院などの公的機関のすべての機能を停止し、殺人を含むすべての犯罪が合法になる法律‟パージ法”を制定。これによって、「国民の鬱憤を発散させ、犯罪を抑制できる」としていた。しかし、実際にはパージのターゲットとなるのは貧困層や弱者。“パージ法”が富裕層のためのゆがんだ制度であることを見抜いたローン上院議員は、“パージ法”廃止を公約に掲げて大統領戦に立候補し、支持を拡大していた。そんな中、NFFAはパージの夜を利用して、敵対するローン上院議員の暗殺を計画。護衛を務めるレオ・バーンズは、裏切りにあいながらもローン上院議員を守りぬくべく奮闘するのだった。

 

リアルとリンクする!?パージの世界観

(c)2016 Universal Studios.

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一作目『パージ』(13)はパージのターゲットとなった男を匿い、襲われてしまう富裕層の家庭を描いた。二作目『パージ:アナーキー』(14)は舞台を街に拡大し、狩られる側が無慈悲に殺されてゆく様子を描写し、“パージ”の全体像を浮かび上がらせていた。前二作は、本作『パージ:大統領令』でパージの是非を問う大統領選を描くための布石だったのだ。

冒頭では、ローン上院議員とレオ以外に、パージに備えて自分の店を守ろうとする黒人・ディクソンの様子が描かれる。彼は偶然にもレオたちと出会い、反パージ派としてローン上院議員を守ることになるのだが、ディクソン以外の反パージ派の面々も黒人や移民が多く、NFFAの傭兵は白人ばかり。また、女性であるローン上院議員は、昨年の大統領選でトランプ現大統領の対立候補となったヒラリーを思わせる。現実とリンクしたかのような本作は、アメリカでは大統領選を前にした昨年7月に公開されたこともあってか、シリーズ最大のヒットとなったようだ。


意外なユーモアとレオの活躍に注目

(c)2016 Universal Studios.

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ここまで小難しい話をしてしまったが、本編開始後しばらくは、ユーモラスなノリも見せてくれるのが本作のギャップ萌えなところだ。ディクソンの店でチョコバーを万引きしようとして注意された女子高生が復讐に来るくだりには、お腹を抱えて笑ってしまった。お世辞にも可愛いと言えない、三白眼ガン睨み黒人女子高生がイルミネーションでギラギラのデコカーで乗り付ける。コスプレのような下着でドレスアップし、顔には「KISS ME」の文字が入ったお面、手にはラインストーンのデコ銃。「いやいや怖くてキスなんかできねーよ!」とツッコミたくなること間違いなし。店に立てこもったディクソンたちと、店の前で「あたしはチョコバーガール~」と繰り返す女子高生たちの、手に汗握る攻防戦が繰り広げられる……のかと思いきや、この戦いは意外な形で結末を迎える。爽快感がたまらないシーンなので、楽しみにしていてほしい。

女子高生にじりじりと攻められていたディクソンも、実は元ギャングという経歴の持ち主なので、バトルスキルは確かなもの。そのほかにも、メキシコ移民で修羅場をくぐり抜けてきたマルコスや、昔はワルで名を馳せたレニーなど、レオたちと行動をともにする反パージ派は心強い仲間たちばかり。パージの夜に、彼らのように弱者を助けるのか、はたまたパージをエンジョイするか。自分ならどうするだろう?  そんなことを考えながら楽しんでほしい。

また、シリーズを通して観ている人にとっては、前作で頼もしい姿を見せていたレオの活躍もみどころの一つ。二作目『パージ:アナーキー』で息子の命を奪った男に復讐をしようとしていたレオが、パージの全貌を知ったからこそ警護主任として命懸けでローン上院議員を守ろうとする姿には心を打たれる。また、一作目で登場したある人物が、本作で意外なことに……というお楽しみも待っている。細かいところまで楽しみたい!  という方は、前二作を観てから劇場に足を運ぶのも良いだろう。

『パージ:大統領令』はTOHOシネマズ日劇ほかにて公開中。

作品情報

映画『パージ:大統領令』



(2016/アメリカ/109分/スコープサイズ/ドルビーデジタル 5.1ch/R15+)
製作:ジェイソン・ブラム、マイケル・ベイ
監督・脚本:ジェームズ・デモナコ
主演:フランク・グリロ
配給:パルコ
原題:THE PURGE: ELECTION YEAR
公式サイト:http://purge-movie.com
(c)2016 Universal Studios.

 

作品情報

野水伊織がヒロイン役で日本語吹き替え版に出演

映画『呪怨館』

DVDレンタル&発売中

(C) 2012 Attic Door Licensing, LLC All Rights Reserved

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2014年 / アメリカ)    
原題:Haunt                           
【スタッフ】
監督    マック・カーター                
脚本    アンドリュー・ベーラー                
製作    スティーヴン・シュナイダー「インシディアス」シリーズ「パラノーマル・アクティビティ」シリーズ        
    サーシャ・シャピロ    「フューリー」「ロック・ザ・カスバ!」        
    ケリー・ワグナー「THE JUON/呪怨」「呪怨 パンデミック」        
VFX    マシュー・ブラマンテ「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」        
編集    トム・エルキンズ「インフェルノ」「アナベル 死霊館の人形」「ネスト」        
【キャスト(日本語吹き替え版)】    
エヴァン:ハリソン・ギルバートソン(高坂 篤志)                
サマンサ:リアナ・リベラト(野水伊織)            
ジャネット:ジャッキー・ウィーヴァー(塙英子)                
エミリー:アイオン・スカイ(石山真理恵)                        

【ストーリー】
アッシャー家は3人の子供と人里離れた美しく広大な一軒家に引っ越して来た。新居に引っ越してきたエヴァンは、隣家の美少女サマンサとすぐに仲良くなり新生活も順調だったが、ある日サマンサが家の屋根裏にあった霊と交信できるボックスを興味半分で動かしたところ、次々と怪現象が起こり始める。その原因を探ると、その館にはある女性にまつわる血塗られた戦慄の過去があることが判明するが、呼び寄せてしまった“それ"は静かに目の前に迫っていた。
発売元:アット エンタテインメント
販売元:アメイジングD.C.
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