【SPICE対談】ラジオの中の人[関西編] FM802・DJ竹内琢也×飯室大吾【後編】

2017.4.25
インタビュー
音楽

左から、飯室大吾×竹内琢也

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――TTは現在、夜の番組『BEAT EXPO』もやっていて、こちらはディレクターさんが居るスタイル。どちらもやってるDJってなかなかいないと思うんやけど、メリットデメリットで言うと何かある?

ワンマンスタイルDJだとディレクターさんとの化学反応は起きないですよね、当たり前ですけど。ディレクターさんとやる場合は化学反応が起きるわけじゃないですか。ディレクターさんが持ってきた曲をかけてみたら、すごく盛り上がったりする。企画やコーナーにしてもそういうことはあると思うんです。だからワンマンスタイルのときは自分で完結してしまうのでそこがデメリットというか、出来ない部分です。

――逆にメリットの部分でいくと?

瞬発力じゃないですかね。曲に関しても自分の思いや考えだけで1分後の曲を変えることが出来るし、リクエストやメッセージにも瞬時に反応しやすい。だから化学反応という意味では作り込んだコーナーとかは難しいと思うんですけど、例えばメッセージで“この時間に、こういう曲をかけてください”というメッセージがきても、自分の判断で突如番組の流れを変えることも出来る。ディレクターさんが居たら相談することになると思うので、瞬発力で次の曲を変えるとか雨が降ったらちょっとムードに持っていこうっていうのが可能なので、それが1番のメリットかなと思います。

――確かにね。ディレクターさんが居たら、ディレクターさんが持ってきた1曲がすごく良くて、“こんな曲あったんやー”って新たに発見したり、トークでもディレクターさんに言われたテーマで話してたら盛り上がったとかもあるもんね。

そうなんです。だからどっちのスタイルにも良いところがあると思います。1人でやっていたら、やっぱりそういうことは起きないので。

――そこだけ聴くと寂しいもんな(笑)。1+1=2でしかない……みたいな。

そういう感じはありますよね。だけどオンエアしてる感はあります。初めてミキサー卓を触ってオンエアした時、校内放送をやってるような。もしディレクターさんと一緒にやってたら1番近いリスナーさんてディレクターさんやったりするじゃないですか。だからディレクターさんの反応を見て喋って進めていく。だけどワンマンは視界からディレクターさんがいないので、ほんと校内放送という感じです。自分でミキサー卓触って音出して、止めようと思えば止まるから、リスナーさんに向けて喋ってる感はすごくあります。ストレートに伝わってるなと。

――なるほど、それは良いことやね。その感覚を掴むのが難しかったりもするのが、この世界やったりもするから。何もないところでリスナーさんを感じられてるのはすごいね。

そうですね。それはありますね。

左から、飯室大吾×竹内琢也

――次に聞きたいのがTTの選曲について。純粋に気になってたんやけど、どうやってやってるの? 例えばDJとディレクターの共同作業の中で、1時間の枠の中のコーナーの3曲を選曲するとなったら、ある程度ヒントがあると思う。その前のゲストパートでたっぷり喋ったから、CM挟んで3曲続けてかけてみようとか、洋楽にしてみようとか。イントロで喋らない分、わかりやすいヒット曲をかけてみようとかの判断基準があると思うんやけど、真っ白な状態で1から全部作るのって、どうやってるの?

基本的には一緒なんですけど、全曲に意味は持たせてますね。一概にこうというのはないんですけど、自分の熱に忠実に選曲するというのは基本的にあって。だけど埋まらない時もあります。選曲し始めて2時間くらい真っ白な時ありますよ。「全っ然出てけえへんな」みたいな(笑)。でも、ちょっとずつ埋めていくというか、例えば『BEAT EXPO』に関しても『DASH FIVE!』にしても、例えばアルバム特集でアルバムの曲がバッチリ決まったら、周りの曲が浮き上がってきたりもするし。もちろん失敗もあるんですが、やってみないと分からないということもあるし、全然ハマらなかったということもあるんですけど、丁寧には考えてますね。

――そのハマるハマらないの感覚は自分の感覚?

自分ですね。やっぱり曲が良い聴こえ方したなと思う時は、結局自分が良いなと思った曲や、ただ単純に好きだと思ったり、カッコ良いなと思った中でしか作れないような気がするんです。すごく選曲に時間かかる時はかかりますし、難しいですよね。

――そこがTTのセレクター能力の高さやと思う。いわゆるラジオディレクター選曲じゃない選曲の仕方をしてる気がして。面白いREMIXとか挟んできたりするよね。意外とそういうのってFMメジャーステーションではかけないし、例えばこれがApple MusicだったらREMIXがかかったりしても良いのかもしれない。だから普段802でかけないような曲を1曲目に選んできたり。けどそれが奇をてらった聴こえ方がしない感じがする。

基本、奇をてらっているように思われるのですが、そんなことは全然なくて、基本いけそうならいく、成り立ちそうならやってみるという感じです。

――普通、海外の売れてるアーティストがいればオリジナル曲はたくさんかかるよね。そうなった時に、実はリミックスがありますよってドヤ顔でかけてしまいがち。でもTTの場合は純粋に曲として聴いてもらいたいと思ってる感じがするんだよね。

REMIXに関して言うと、例えばエド・シーランとかはラジオで「Shape Of You」がすごくかかってて。それはもうフリやと思って、それがあるからREMIXが活きてくると思ってかけてます。だからこそサラッとかけた方がカッコ良いと思うんです。あとポップな曲をかけたあとは次の曲を紹介するより、ふわ~っと曲に入る方がインパクトがあるかなとか考えますね。

――やっぱりかけ方とかも考えてるんやね。それってTTライブラリーが頭の中にもうあるの?

具体的にパソコンにプレイリストを作ってるんです。自分で考えるのが面倒くさいので(笑)。毎回、ヒット曲なら半年に1回くらい更新して、邦楽、洋楽で分けたり、ヒット曲ではないけどラジオキラーチューンというのも存在してるので、それはそれで分けて作ってますね。パソコン見ながら選曲が全部出来るようにしています。で、新たに加えたり作ったりして、全部リスト化してるので日々の選曲は楽ですね。

――職人さんですね。選曲をする上で参考にしてることはあったりするの?

僕は他の番組を聴いて参考にすることも多いし、それで良いなと思えば、しばらくしてから同じ流れを使ったりとかはありますね。あと同じ流れじゃなくて、この曲のあとにこの曲がきたら良いなと思えば、そっちを使ったり。なので生活の中でという感じですね。

――“朝”という時間帯を意識して選曲はする?

もちろんしますね。“朝”というワードが入ってる曲はもちろん活きてきます。だけど、自分がかけたい曲が例えば100曲あったとしても、早々に尽きるというか。『DASH FIVE!』は6年目に入ったんですけど、5時から6時の1時間番組から5時から7時までの2時間番組に変わった時に、一度ポップな選曲にしたんです。ちょうどその時が1990年代とか2000年代のポップスをかけるというのが自分の中にあって。最近あまりかかってなくて新鮮なんじゃないかな?と思って、かけたりしてました。で、ここ最近のムードとしては最近の洋楽をかける方が面白かったりするので、選曲のムード自体も変わってきてます。あと番組の始まりはあまりアップテンポな曲はかけず速すぎず遅すぎずのミドルテンポが朝には良いなとは思ってますね。だから毎年新譜が大事になんですよね。どれだけ自分が良いなと思う新譜に出会えるかどうか。それに組み合わせてかけたりするので。

――あと海外の音楽ニュースとか取り入れてて、どこどこのバンドが新作出るのを発表したとか。結構調べたりしてるの?

飯室大吾

あれもめちゃくちゃ調べてるというよりか、これもプレイリストみたいな感じでパソコンにブックマークで音楽ニュースサイトを入れてます。朝、3時半に802に到着して1時間くらいでニュースを見て、そこから情報を仕入れて気になるものがあればiTunesで買って選曲したりもしています。

――常にアンテナを張ってやってるイメージがあるけど、他に音楽に対して何か意識してることは? 日常で気になる曲があればShazamしてとか?

そんなにないですよ。もちろんそういう時もありますけど、やっぱりしんどくなりますね。音楽はそうやって求めて聴くものじゃないと僕は思ってるんです。無理して聴くのは、わりと反対というか……頑張って調べるというよりかは、気分良い時に聴いた音楽を気分良く聴いてたいし、自分の気持ちに忠実でありたいです。例えばライブを待ってる間のBGM、街中を歩いてて流れていた曲とか生活の中で良いなと思った曲とか。一応、新譜も全部聴くようにはしているんですけど、正座して聴くようなことがないように移動中に聴いたりして自分で楽しい状況を作り出して音楽は聴きたいなと思っています。

――きっと全部をひっくるめてTTの性格と番組が、きっちり合ってるような気がする。

そうですかね。ワンマンスタイルだからといって、リスナーさんには分からない部分だし、ディレクターさんが居ての番組との大きな違いはないと思ってるんです。去年から始まった夜の『BEAT EXPO』に関して言うと、最初はディレクターさんと一緒にやりながら番組の構成などは自分で考えて、ミキサー卓を触りながらワンマンスタイルでやっていたんですけど、そのスタイルを辞めさせてもらったんです。選曲とか構成は自分でやらせてもらってるけど、今、一緒にやってるチームで出来ることは他にもあるなと思って。自分ひとりでやるよりもBGMを変えてもらったり、ジングルを入れたりしてくれるチームなのでワンマンスタイルでやるのは違うなと思ったんです。

――確かに『BEAT EXPO』はチームプレイ冥利に尽きる番組やと思う。ディレクターさんが転がしていく。ディレクターさんのタイミングで面白いSE出したり、BGM変えたり。

だから1人でミキサー卓を触ってるよりその方が良いなと思って変えさせてもらった、というパターンもあるんです。これは発見というか、やっぱりその都度だなと気付きました。本来のチームでやって、チーム力を活かしてやる方が良いと。

――面白いね! そういう時もあるぞと。いろんな経験してますね。

あんまり固執しないというか、状況に応じた対応をとりたいし、その方が全部うまくハマっていくなら、そうするのがベストです。がんばらないというか、何がベストかを考える方が良いですね。

――すごいなー。じゃあTTは悩んだり凹んだりしないの?

むっちゃしますよ(笑)。インタビューがうまくいかなかった時とか、盛り上がらなかった時とか。でも、あまり反省はしないですね。『DASH FIVE!』が当初は月~金の毎日だったので、凹んでたら無理というか、次の日はすぐにやってくるし、毎回凹んでたらしんどすぎるっていう。次の日、打率二割から三割ぐらいで良いかなくらいの気持ちでやらないと続けられない。怒られる時は怒られるし、それなりに考えたりもします。だから自分自身で落ち込んだりしないように心がけてます。良く言うと深く捉えないようにしてますね。

――受け流し方が身についてるというか、それが毎日やる現場をテンション高く続ける秘訣やと思う。

すぐ次の日がくるし、落ち込んだりしたまま選曲するとしんどくなってきたりすると思うし、だからほどほどに……(笑)。

――今は朝の番組『DASH FIVE!』をセルフプロデュースして、夜の『BEAT EXPO!』は音楽だけじゃなく他ジャンルのカルチャーとか、音楽以外のいろんな人に会いに行ったりしてると思うねんけど、今後DJとしてどんなことをしていきたいとかあるの?

あんまりないんですよね(笑)。何だろう? でもこんなに長くやれると思ってなかったので、今の状況は嬉しいです。今後も選曲はずっとしていたいなというのは思っていますね。あと、最近思っているのは、“真面目な話が面白いな”とすごく思っていて。きっと賛否あると思うんですけど、ラジオで“笑い”というのは非常に重要な要素で……それを否定しているわけではなくて、もちろんすごく面白いなと思うしトライしたいと思ってるんです。だけどリスナーさんは真面目な話を聞きたいんじゃないかなと思うんです。何考えてんのかな?この人、とか。僕が今、面白いなと思うことが真面目な話を聞くことなので、インタビューの時でも、そういう話が聞きたい。この人がこのパン好きやとかも、もちろん面白い話だと思うんですけど、どういうことを考えて活動してるかという部分に興味があるんです。

――なるほどね。最初、盛り上がってるインタビューとか聞いたら、なんであんなに盛り上がれるの?って新人の頃に羨ましくて良いなと思ってたけど、今はこの人何考えてるんやろうってことをじっくり聞きたいと僕も思う。

ラジオなのでポップに楽しくというのはあると思うんですけど、リスナーさんもそういう話を求めてるんじゃないかなって思う。もっと突っ込んで話を聞いたとしても、みんな聞き耳をたてるんじゃないかなって。ミュージシャンだとしても、そうじゃない人でも、その人がどういう想いを持っているかというのを今後は真面目に聞いてみたいですね。

――TTは次なる段階に突入してきたという感じがするよね。今回のインタビューでTTのことが分かってきた気がする。チームの中でやるDJとワンマンスタイルDJ、両方やってるTTだからこそ、いろんな捉え方をして見えてきた感覚やと思う。TTのこれからが楽しみです。今日はありがとうございました!

 

インタビュー=飯室大吾 取材・撮影=K兄 文=YUMI KONO
 

■第1回『FM802・DJ飯室大吾×ディレクターたっちゃん』はコチラ
■第2回『FM802・DJ落合健太郎×番組ディレクター・スマイル』はコチラ
■第3回『FM802・DJ土井コマキ×番組ディレクター但馬康友』はコチラ

 

番組情報
『DASH FIVE!』毎週木曜日、金曜日5:00-7:00
『BEAT EXPO』毎週月曜日、火曜日19:00-20:48』
FM802 DJ AUDITION 2017 https://funky802.com/djaudition/