毛利亘宏と矢崎広が語る少年社中『モマの火星探検記』、再演への情熱!

インタビュー
舞台
2017.5.19
(左から)矢崎広、毛利亘宏

(左から)矢崎広、毛利亘宏


宇宙飛行士・毛利衛が綴った物語『モマの火星探検記』と、ロケット作りに夢を馳せる少女・ユーリを描いた少年社中の舞台『ハイレゾ』をミックスし、新たな物語として2012年に上演された『モマの火星探検記』が、この夏、新キャストにて上演される。脚色・演出は「本作はこれからもたくさんの人に観てもらいたい作品」と語る少年社中主宰の毛利亘宏。そして本作の主人公・モマを演じるのは、演劇界の話題作の出演が続いている矢崎広だ。人間の夢とテクノロジーの夢が絡み合うこのファンタジックな世界に託す、ふたりの熱い思いを語ってもらった。

■「この作品、やはり持ってるな」

──『モマの火星探検記』は2012年以来の再演となります。

毛利 もう「嬉しい」のひと言ですね。『モマの火星探検記』という毛利衛さんの原作を取り入れて創り直したこの作品の前身『ハイレゾ』は、ホントに僕らが昔からやっている作品。そこを含めた延べでいうと4回目の上演になるので…それは非常に嬉しいです。やっぱりね、自分の中で「どんどん大きなステージでやっていきたいな」「たくさんの人に観てもらいたいな」って思い続けている一本なんですよね。しかも宇宙を題材にした作品で、今回は銀河劇場で上演ということで。

矢崎 おしゃれな感じ(笑)。

毛利 うん(笑)。あと大阪はサンケイホールブリーゼでも上演があるので、多くのお客様に観て頂けるということが本当にうれしくて……。「この作品、やはり持ってるな」って思いました。

──矢崎さんは本作をご存知でしたか?

毛利 前回の公演を観てくれていて、気に入ってくれてたんだよね?

矢崎 そうなんです。すごく面白かった。少年社中を最初に観たのは『天守物語』(2011年)だったんですけど、その次に観たのが『モマ〜』で……自分が『天守物語』で少年社中の世界に足を踏み入れたとしたなら、『モマ~』でもう完全にどっぷりと沼に(笑)。ホントに「社中、好きだぁー!!」って心底思って、大感動して、後半なんかボロボロ泣いてて…終演後、隣の人に「スゴい泣いてたね」って言われるくらいでしたから。

──毛利さんとはこれまでもミュージカル『薄桜鬼』シリーズなどでタッグを組み、少年社中の『贋作・好色一代男』(2014年)では主演も経験されています。

矢崎 はい。僕、『好色~』のときにいろんなインタビューで「社中は自分がやりたいと思っていることをやっている劇団だなってホントに思う」というようなことを話したんですけど、そもそもそれを実感したのがこの『モマ〜』なので……もう……「『モマ~』、やるんだ!」って、今じわじわとその思いを味わってます。

毛利 矢崎は『好色~』以降、ホントにずっともう快進撃ですよ。なかなか飲む時間もないもんな。

矢崎 いやいやそんなこと……。ありがとうございます。

──昨年出演された作品のうち、『宮本武蔵(完全版)』とミュージカル『ジャージー・ボーイズ』の2作が読売演劇大賞で作品賞を受賞。素晴らしいです!

毛利 スゴい話だよね~。

矢崎 僕は初めて受賞に関わらせて頂いたんですが、複数っていうのはなかなかないことだと言われたので……幸せですよね。授賞式では壇上で集合写真を撮るんですけど、僕は「なんであの金髪頭のヤツは2回も壇上に上がってるんだ?」って思われてましたよ(笑)。お互いのカンパニーでも「あれ?」って(笑)。

毛利  「どっちとるんだ?」って?

矢崎 ハハハハッ(笑)。

──毛利さんはもうずっとそんな矢崎さんの活躍を見守っていて。

毛利 うん。だからそういうのも含め、ホントに今回も一緒にできるのが楽しみでしかないというか……やっぱり役者に合わせて改訂しますし、再演ではなくもはや新作に近くなる気もしているのですが、そもそも“矢崎がやるモマ”に期待していますからね。稽古場で彼がどうこの役を膨らませてくれるか。楽しみだなぁ。

矢崎 僕も楽しみです! 毛利さんとは『好色~』のあともずっと「また一緒にやりたいね」と言っていて、それ以来の機会ですから。

毛利 ちょっと久々。俺的にはこれが新たなキックオフ、くらいの感じだよ。

矢崎 確かに! お互いのタイミングがやっと合ったので、ここからまたグングンやっていきたいです!

毛利 行こう行こう。

毛利亘宏

毛利亘宏

■「今年は宇宙イヤー」

──毛利さんも忙しくされてますよね。人気の2.5次元舞台も複数手がけられていますし、常にどこかの劇場で演出作品がかかっているという印象があります。その中でもコンスタントに劇団公演を続けているタフネスがある。

毛利 やっぱり軸足は少年社中にあるという気持ちでずっとやっていまして……ここが自分を鍛える場というか、一番チャレンジして自分の責任でできるところなので、劇団は劇団でしっかりやりつつ、外での活動もおろそかにしないでやっていきたいですね。演劇以外では今、スーパー戦隊シリーズのメインライターも務めてるんですけど、今年は特に宇宙繫がりで…実際、スーパー戦隊のほうがあとで決まったんですが「今年は『宇宙戦隊キュウレンジャー』で行きます」と言われ、「宇宙戦隊!?」ってびっくり。『モマ~』もあるし、奇遇だなぁと。

矢崎 そうか。今年は宇宙イヤーですね。

毛利 そう! それをね、勝手に「なんかいいな~」って思ってる(笑)。

──妙な雲行きの悪さを感じさせるような今の社会状況の中、改めて広い宇宙に思いを馳せるというのは清々しく、それだけでなにかのメッセージを受け取れるような気持ちになります。

矢崎 ……そう思います。

毛利 細かいことなんて気にしないでマクロに……という呼びかけでもあるし、もっと言えば、マクロもミクロも同じ地平にある。みんなが日々頑張ってる中での悩みとかはすごく大事なことだしスゴくちっぽけなことでもあって、でもそれを全部肯定していくっていう視点から描けたらいいなと思っています。人間をすごく肯定できるお話にしたい。

矢崎 ニュースを見ても荒れてるじゃないですか、日々。ホントに笑っちゃうくらいイヤな話題が溢れていて、色々と考えさせられるような空気も流れた。でも僕はこうして今も役者をやらせてもらえているし、やれる環境にいるからこそ、こういう作品を届けたいんです。今お客さんに感じてもらいたい気持ちや伝えたいメッセージっていうのがすごく込められるし、たくさん籠っている作品だぞって思うので。

矢崎広

矢崎広

──劇団への客演は、プロデュース公演とは違う緊張感もあると思いますが。

矢崎 僕は劇団という括りを知らないので、そういう中にいると……幸せです、とっても。どこかで劇団というモノに憧れているんでしょうね。本当にみなさんといられるのがスゴく嬉しくて! 前回の『好色〜』は15周年公演だったんですが、参加したときは自分も少年社中の新人劇団員のような気持ちでやってたんです。なので、それ以降の少年社中の舞台にほかのゲストの方が出ているのを観るとなんかちょっと嫉妬しちゃって(笑)。「なんで俺が出てないんだ?」って、見に行き辛くなっちゃったり。

毛利 (笑)。知ってる役者だったりするとなおさらでしょう?

矢崎 (笑)。劇団さんでしか味わえないような経験ってたくさんあって、それを社中のみなさんが教えてくれるので、今回も自分のためにもすごく意義のある公演になるんじゃないかな。しかもフルメンバーが揃ってらっしゃって。贅沢ですよ~。

──では、矢崎さんが感じる少年社中の魅力とは?

矢崎 僕はもう毛利さんの創る世界がとにかく好きなんです。どの作品もそうなんですけど、少年社中という名前の如く男の子の夢も詰まってるし、笑って、楽しんで、泣けて、みたいな……やっぱりこういう「王道」がいいよね、としみじみ思わせてくれる。もちろんメッセージ性というか尖ったところもありますけど、それだけじゃなく、ホントに王道で表現しているところが単純にわくわくさせてくれるし、僕はスゴく好きなので……。

──そして似合う、と思います。その世界観が矢崎さん自身にも。

毛利 そうなんですよ。似合うんです、彼。

矢崎 心の正劇団員ですから──なんて(笑)。でも確実に僕の中に“劇団少年社中の矢崎広”は存在してますね。

毛利 (大きく頷く)。

矢崎 それを今回また久々に引き出してって感じなんですけど……まぁ、好きという言葉で片付けてしまっていいのかわからないですけど、でもやっぱり社中、好きだなぁ。少年社中は僕の中の演劇の楽しさってところを教えてくれる劇団。お客さんとホントに会話できるようなお芝居なので、そこの楽しさや感動は、自分を初心に戻らせてくれます。そこを今年このタイミングでっていうのが、やっぱりとても貴重だし必要だと。

毛利 うん、うん。

毛利亘宏

毛利亘宏

■今の僕らにとって大事ななにかを教えてくれる作品

──今回、矢崎さんのほかにも生駒里奈(乃木坂46)さん、中村優一さん、松田岳さん、鈴木勝吾さんなどなど、魅力的な出演者の方が揃っています。毎回、そうした役者さんを通じて初観劇したお客様が、また新たな社中ファンとなっていく……という“輪”もいいですよね。

毛利 有り難いですね。やっぱり演劇というモノの炎を消しちゃいけないというか、僕らも20周年ともなるといろいろ責任を背負ってやっていかなくちゃいけないなというのを感じておりまして。演劇界を……ひとつの文化を守っていく……守りつつ、攻めつつっていうね。そこの意識も。実際、劇団という体勢でやっているカンパニーも少なくなっているので、僕らがこうして続けて行くことの意義は大きいのかもしれません。で、矢崎を始めこうやって賛同して出演してくれる若い役者さんもたくさんいるのも嬉しい事実。「劇団員だ」ってね、矢崎にそんな風に言ってもらえるのはホントに嬉しいよ。

矢崎 (ニコニコ)。

毛利 そういう僕ら演劇人の思いが束ねられてひとつのエネルギーになり、作品としてしっかりとお客さんに届いていくんじゃないでしょうか。

矢崎 あのー、この『モマの火星探検記』ってタイトルだけ聞くと、お客様は「冒険モノなのかな」って思うかもしれないんですけど、「それだけじゃないんだよ」っていうのは、こういうインタビューの場でもどんどん伝えていきたいなって思っていて。

毛利 うん! ぜひ!

矢崎 もちろん宇宙が関わってるし、毛利衛さんが書いた原作があるんですけど、そこに社中がやっていた『ハイレゾ』の世界が交わって、“人間”というスゴく大事なことが……でもあまり言い過ぎるとネタバレになっちゃうから詳しくは言えないんですけど……時間の概念とか宇宙の概念とかも入ってきて、ファンタジックだしどこか現実的だしってところがホントに素敵なんです。男の子だけじゃなく女の子もスゴく好きなテイストになってるんじゃないかな。そこの深さや面白さを……あー、とにかくホントにぜひ観て欲しいです!!

矢崎広

矢崎広

──毛利さんの中にある演出のイメージは?

毛利 劇場も銀河劇場とサンケイホールブリーゼというより広い場所に移れるので、やっぱりスケール感は大きくしたいな。しっかりエンターテインメントにしていきたいです。物語の骨格はもう素晴らしいモノができているので、役者個々のキャラクターをもっともっと膨らませて……楽しいお芝居にしたいですね。

矢崎 劇場が大きくなるたび、少年社中という劇団のスケールが大きくなるたびに、毛利さんの頭の中もまたどんどん膨らんでいっているような気が僕はしていて、じゃあ今回はって考えたら、それはもうさらにわくわくするしかないですよ! 僕自身がモマをやっていくのももちろん楽しみですけど、いちファンとしても相当期待しています。お客さんもぜひそんな気持ちでいて欲しいですね。理屈じゃなく、今の僕らにとっての大事ななにかを教えてくれる作品になるのではないかと……。公演が8月っていうのもいいんですよ。なんか、夏にぴったりな作品だと思う。

──そうですね。きっと、余韻を味わいながら遠回りして帰りたくなると思います。

毛利 (ニコニコ)。

矢崎 そう! 劇場を出て、星空でも眺めつつ、銀河劇場だとモノレールに乗っていただく。

毛利 モノレール、いいねぇ~!

──銀河鉄道の気分で、お客さんも物語の一部になれるシチュエーション。

矢崎 わ~。そうなってくれたらホントに嬉しいです。

毛利 そうだね。素敵な宇宙イヤーになると思います。劇場が宇宙空間に変わる、そんな作品にしますので、ぜひ劇場にてお楽しみください。

(左から)矢崎広、毛利亘宏

(左から)矢崎広、毛利亘宏

インタビュー・文=横澤由香  撮影=荒川 潤

公演情報
『モマの火星探検記』
 
■原作:毛利衛「モマの火星探検記」(講談社刊) 
■脚色・演出:毛利亘宏
■出演:
井俣太良 大竹えり 岩田有民 堀池直毅 加藤良子 廿浦裕介 
長谷川太郎 杉山未央 山川ありそ 内山智絵 竹内尚文 川本裕之 

 
矢崎広/生駒里奈(乃木坂46)
 
中村優一 松田岳 輝馬 相馬圭祐 五十嵐陽向
谷口賢志 鎌苅健太 鈴木勝吾

 
■東京会場主催◎少年社中・東映・日本テレビ
■大阪会場主催◎少年社中・東映・読売テレビ・サンケイホールブリーゼ
■製作・プロデュース◎少年社中・東映
■協力◎講談社
■製作協力◎第一通信社

 
■公式サイト:http://www.shachu.com/moma2017/
 
<東京公演>
■会場:天王洲 銀河劇場 (東京都)
■日程:2017年8月9日(水)~8月13日(日)

 
<大阪公演>
■会場:サンケイホールブリーゼ (大阪府)
■日程:2017年8月9日(水)~8月13日(日)

 
【5/13(土)12:00~5/28(日)18:00 最速先行
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