山田姉妹 昭和のヒットソングから、オペラ、ミュージカルソングまで、デュオ・ボーカルの魅力全開!
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山田姉妹
CDデビュー後初の『サンデー・ブランチ・クラシック』出演 山田姉妹 “サンデー・ブランチ・クラシック” 2017.5.7. ライブレポート
2月に日本コロムビアからCD『あなた~よみがえる青春のメロディー~』でメジャーデビューした山田姉妹。『サンデー・ブランチ・クラシック』への登場は3回目だが、この日はCDデビュー後初とあって、気合いも十分。アルバム曲だけでなく、オペラの難曲をデュオで歌うという天晴れなチャレンジも披露した。
客席の後方から「翼をください」のアカペラが静かに始まると、聴衆は驚いた面持ちで、わらわらと振り向いた。ステージに向かってゆっくり歩みながら歌う山田姉妹のデュオ・ソプラノの澄んだ声が、客席をふんわりと包み込む。ドレスは揃いの淡いピンク。シックなカフェ空間に、二輪の花が微笑んでいるかのようだ。
MC中の様子
ピアノ伴奏がすうっと加わり、ステージに立つふたり。客席から向かって左が姉の山田華(はな)、右が妹の山田麗(れい)だ。歌い終えると、まずは自己紹介とデビューのご報告。
「二卵性の双子なので、身長が5センチほど違うし、顔も違いますが、幼い頃から一緒に歌っていて、お陰さまで2月にCDデビューできました」
感慨深げな様子で話すふたりの初々しさがほほ笑ましく目に映る。デビューアルバムは、1960~70年代のフォークソングやニューミュージックなどの名曲をデュエットしたもので、オープニングの「翼をください」はもとより、さだまさしの「雨やどり」、太田裕美の「木綿のハンカチーフ」、坂本九の「見上げてごらん夜の星を」など13曲を収録している。
昭和歌謡がフツーに流れている家庭で育ったため、幼い頃から自然に聞き覚え、ふたりで楽しく歌っていたというだけあって、口ずさんでいるかのような愛着や温かさを感じるナチュラルな歌唱である。ふたりは声質が似ているので、CDを聴いただけでは、どちらがどのパートをどのように歌っているのか分かりにくいが、こうしてライブで「見て聴く」と歌唱の工夫が分かって、楽しみが倍増する。
姉の華
妹の麗
例えば、2曲目に披露した「この広い野原いっぱい」は、華のソロで始まり、2番で麗とハモり、3番は麗の旋律でスタートして華のハモリが加わり、4番はユニゾンからハモリに変化して……と、いった具合。
続く「ひこうき雲」は、華のソロで始まり麗とハモって、ユニゾンで1番を終え、2番は麗の旋律に華の「Ah…」を溶かし、ハモリに変化してユニゾンで終える。最後のサビはふたりでたっぷりハモって、旋律を追いかけ合い、ユニゾンで締め、静かに「Ah…」で閉じていく。とにかくどの曲もかなり工夫を凝らした構成なのだ。
この後の「切手のないおくりもの」や「結婚しようよ」では、ふたりの追いかけ合いやハモリのバリエーションが、短いフレーズで変化したりし、振り付けも加わるので、聴衆はすっかり引き込まれて、あっという間に5曲が終了。
オペラの名曲をデュオで歌う、スペシャルタイムとなった。ちなみに華は東京藝術大学声楽科、麗は国立音楽大学声楽科卒である。
「私たちは声楽を習ってきたので、マイクを外して2曲歌わせていただきます。1曲目はプッチーニの『ジャンニ・スキッキ』のアリア『私のお父さん』で……」と、父親に恋人との仲を認めてもらいたい娘の心情を歌った曲であることを説明してから歌唱を始める。
双子の姉妹ならではの響き
麗のソロで始まり、華にバトンタッチした後、ハモリに変化したりしながら、ゆったり感情豊かに歌い上げる。通常のソロより深みのある妙味を醸している。
2曲目のモーツァルト「魔笛」の「夜の女王のアリア」はソプラノの難曲のひとつで、スタッカートでハイF(ファ)を出さなければならない。
「実際にどんなに高い音かを、聴いてください」と、麗が基音C(ド)から音階をのぼって発声した時点で、客席は圧倒されてザワザワ。いざ歌唱が始まると、勢いのある曲調にふたりの声が重なって進行するので迫力が増し、サビの高音域では麗の旋律に華が呼応するアレンジが効果的で、ドラマチックなショートストーリーを聴いているかの気分に。場内は大いに沸いた。
淡いピンクの衣裳が映える
最後に、アルバム曲の「あなた」をたっぷり歌い上げた後は、アンコール。ミュージカル『マイ・フェア・レディー』のヒットナンバー「踊り明かそう」の軽快なリズムに乗って、明るく華やかな歌声を響かせ、お開きとなる。短時間とは思えない満腹感のあるプログラムだった。ちなみに、この日のピアノ伴奏者の木村トモカは、アルバム曲の「翼をください」「結婚しようよ」「あなた」などを編曲しており、とてもピアノ一台とは思えない味のある演奏で、ステージを盛り上げていた。
終演後にはサイン会も
終演後、山田姉妹のふたりにお話を伺うことができた。デュオならではの歌唱時の工夫や、今後の目標についてたっぷりお聞きしている。
――華さんのソロの出だしが多かったような気がしましたが、華さんが旋律を歌うことが多いんでしょうか?
華:ああ、前半そうだったかも。
麗:でも、全体的には半々ですね。アルバムもそうですし。
――おふたりともソプラノながら、ナマで聴くと麗さんの低音が意外に太く、ズンと響いてて、華さんの澄んだ声が広がることなど、細かな違いがリアルに伝わってきます。それぞれの良さをどのように捉えていらっしゃいますか。
華:私の声の方が繊細というか、優しい音色ですね。麗の低音を土台に、私の声が乗っかったり、取り巻いてる感じでしょうか。
麗:確かに、低音に重量感があるとよくいわれます。ドラマチックな感じとか(笑)。でも、曲ごとの言葉の意味合いや感情によって、声色を使い分けていますし、どっちがメロディーを歌ったらいいかなとか、いつも話し合って決めています。
華&麗:ふたりの声は、他の誰と歌うより、混じり合っていますから。
インタビュー中の様子
――「夜の女王のアリア」のデュオ、聴き応えがありました! この曲をデュオで聴いたのは初めてだったんですが、おそらく殆どの人がそうだったんじゃないかなと思います。
華&麗:この曲のデュオは、きっと「宇宙で初めて」だと思います、「世界初」じゃなくて(笑)!
――高音のところの呼応も、聴いていてとても楽しかったです。
麗:歌っていると「ああ、来るべき所に来た。ここ、ハマった感じ!」って思います。ユニゾンになったときも、それはそれでいい感じだし。
華:溶け合う感じ、ですね。
――アンコールのミュージカルナンバーも華があって、お客さんもノッていました。ミュージカルのレパートリーも多いのですか?
華:結構歌っていますね、何曲あるか数えたことはないですが、ミュージカルソングだけでなく、ディズニーやジブリの曲なども、たくさん歌っています。
――メジャーデビューして、この先やってみたいことがいっぱいだと思いますが、目標は?
麗:私たちは、音楽のジャンルや客層を問わずに歌っていて、日本歌曲や童謡なども大事にしていますが……。
華:CDデビューがかなって、オリジナル曲を作って歌いたいねと話したりしてます。
華&麗:今、25歳ですが、10年、20年、30年と年を重ねるにつれ、その時その時の感情、声質で歌い続けられたらなあと。それを目指しています。みなさん、応援よろしくお願いします。
山田姉妹
取材・文=原納暢子 撮影=早川達也
1966カルテット/女性カルテット
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円
6月11日
西谷牧人/チェロ&新居由佳梨/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円
6月18日
MUSIC CHARGE: 500円
■会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F
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