大阪・大正区から音楽シーンを作る、若手アーティスト発掘イベント『T-1 ライブグランプリ』予選レポート

レポート
音楽
2017.7.7
『T-1グランプリ』

『T-1グランプリ』

画像を全て表示(10件)

『T-1ライブグランプリ2017』2017.6.25 大正区民ホール

大阪・大正区が主催する音楽イベント『T-1ライブグランプリ2017』の第1回予選が、6月25日(日)に大正区役所の区民ホールで開催された。同イベントは、才能ある若手アマチュアミュージシャンを発掘するコンテスト形式のイベントで、“音楽で大正区を盛り上げたい”との思いから2009年より開催されてきた。行政が主催する音楽イベントといっても、大型音楽フェスさながらの本格的な演出と装飾が施されていて、日ごろ区民に親しまれているホールが非日常な空間へと変わっていた。そういった細部に渡る心意気から、イベントに懸ける想いと音楽への愛が、随所から感じられる。

グランプリに輝いたアーティストには、大正区の音楽振興大使として成人式やマラソン大会など区のイベントで活躍する機会が提供される他、テレビなどメディアで取り上げられることも。スタートから9年目を迎える今年は、関西を中心に全国からチャンスをつかみ取ろうと駆け出し中のアーティストから多数の応募が集まった。第1回予選となったこの日は、選ばれし全8組のアーティストが出場。関西のライブハウスや芸能プロダクション、音楽プロデューサーなど業界を支えてきた審査員の厳正なる審査により、3組が決勝へと駒を進めることができる。

ざ☆ちょんだら~ず

ざ☆ちょんだら~ず

当日は入場無料ということもあり老若男女がつめかけ満席。決勝戦への出場権を獲得するのは、一体どのアーティストなのか!? 開演を待ちわびる観客の前に、トップバッターで登場したのは、沖縄エンターテインメントバンド、ざ☆ちょんだら~ず。大正区とゆかりの深い、沖縄の盆踊り“エイサー”で先導をつとめる“チョンダラー”をイメージしたピエロのようなメイクで、陽気で愉快なステージを繰り広げる。電子音と三線が混ざり合う独特のサウンドに合わせて、観客と沖縄の伝統的な踊り“カチャーシー”を舞ってお祭り騒ぎに。

倉田泰次

倉田泰次

2番手のシンガーソングライターの倉田泰次は、艶っぽい声を武器にハンドマイクで振り付けを交えながらを甘いラブソングを披露。今年の1月に発売したばかりだというアルバム『四季恋人』から「初雪」ではしっとりと、「真夏のフラミンゴ」では情熱的に歌い、対極ともいえる楽曲でふり幅をアピールした。

船堂舞

船堂舞

続いて2015年から活動を開始したばかりの船堂舞が登場。自ら“ゆとり世代代表”と謳うユーモアはポップでキャッチーな楽曲にも詰まっていて、例えば「モトカノ超え」では“大好きな人の元カノを超えたい!”と、キュートな乙女心をキーボードに乗せて弾き語る。等身大だからこそ説得力もあり、“夢を諦めたくない”と訴えかける強い気持ちには観客も拍手を送る。最後まで笑顔を絶やさず、ハツラツとした歌声を届けステージを後にした。

山登りミュージシャン秦野貴仁

山登りミュージシャン秦野貴仁

4番手には、山登りミュージシャン秦野貴仁が勢いよく登場。ギター1本で関西の山を中心に活動中で、これまでには富士山の山頂でも弾き語りに成功したとか。『T-1ライブグランプリ』には昨年に引き続き、2度目の出場。山々に影響を受け生まれた楽曲とコミカルなキャラクターで観客の心を掴み、大正区にある“昭和山”をテーマに作ったバラードでリベンジに挑んだ。

優希

優希

続いては、ギターを抱えて47都道府県を巡りその土地で曲を作るという、修行の旅に挑戦中の優希が登場。今年で10周年を迎える彼女からこのステージに立っていることの喜びと覚悟が語られ、ひしひしと緊張感が伝わってきた。情景が浮かぶ繊細な歌詞とマッチしたメロディにのせ、じんわりと心に沁みわたるような優しい歌声で会場を包み込んでいった。

オオツエ

オオツエ

今度は、淡路島出身のシンガーソングライターのオオツエ。淡路島の特産品である玉ねぎの歌を、チャーミングに歌い上げて自身と故郷、そして甘い玉ねぎの魅力を届けたかと思えば、今度は大好きな祖父への想いを綴った「キオク」をエモーショナルに歌い上げた。感情の機微を巧みに鳴らすハーモニカの音色にかえて、駆け巡る思い出と溢れだす気持ちをバラードで丁寧に届けた。

♯~hashtag~

♯~hashtag~

弾き語りが続いた中、バンド編成の♯~hashtag~が迫力のサウンドを鳴り響かせた。美しいメロディに重厚なビートが効いた楽曲をメドレーで披露し、バンドならではのスケール感がダイナミックに心を揺らす。観客のクラップに呼応した力強い歌声がホールを突き抜けていき、これまでにない存在感を示した。

今村光志

今村光志

ラストは、平成生まれ大正育ちの今村光志。60~70年代のフォークから影響を受けたメロディーにのせて奥深い歌詞を届けていく。弱冠二十歳とは思えぬ風格すら漂っていて、それはきっと愛するルーツミュージックから多くのことを学び、これから待っている何十年分もの人生経験を豊かな想像力が補っているからだろう。哀愁ある歌声を観客はじっと見つめるように聴き耽っていた。

rüüa

rüüa

全出演者のステージが終わり審査員と観客による投票タイムへ。発表の前に、第3回大正区音楽振興大使に輝いたrüüaによるスペシャルライブも披露され、グランプリに輝いた先輩として、堂々たるステージングで魅了した。2011年の出場以来、6年ぶりに『T-1ライブグランプリ』のステージに立った喜びと感謝を伝え、当時を振り返りながら大正区への想いを語った。

いよいよ、開票の時間に。審査員、そしてこの4月から大正区長を務めた吉田康人氏の前に、全出演者が呼び込まれ期待と興奮をグッと堪えて発表を待つ。緊張感が張りつめた会場で、司会により発表された3組は……、今村光志、優希、そしてオオツエの3組。会場がワッと沸き上がり「頑張れ!」や「おめでとう!」と声が飛ぶ。この3組が、12月17日(日)に開催される決勝戦でグランプリをかけて出場することになる。さらに、今回は惜しくも決勝進出は逃したものの高評価を受けたアーティストに審査員特別賞が設けられ、♯~hashtag~と山登りミュージシャン 秦野貴仁が受賞した。

最後に、吉田区長は「住みよい大正区から、日本を、世界を、そして音楽を良くしていきたい。良い歌を、良いミュージシャンを大正区から世に送り出していきましょう! そして日本の音楽シーンを作っていきましょう! みなさんのことを誇りに思います」とメッセージを送った。音楽を通して大正区を盛り上げ、若者の“やってみたい!”という気持ちを尊重し、繋げていくきっかけとして開催されてきた『T-1ライブグランプリ』。この日、出演したアーティストたちも夢を持ってステージに立ち、全身全霊でライブを繰り広げた。その姿はキラメキに満ち、観客と心を通わせ音楽でひとつになれることを証明してくれた。第2回予選は9月24日(日)の14時から行われ、出演者とボランティアスタッフを7月21日(金)まで募集中。我こそはという若者は、是非、応募してみてほしい。

取材・文=大西健斗

イベント情報

T-1ライブグランプリ予選大会

◆予選第2回開催日程:2017年9月24日(日)
(エントリー締切:2017年7月21日(金)必着)

ファイナル決勝:2017年12月17日(日)


応募の詳細は、大正区HPをご覧ください。
http://www.city.osaka.lg.jp/taisho/page/0000392942.html

 

シェア / 保存先を選択