ゴッホ、モネから歌麿、村上隆まで――古今東西の傑作が揃い踏み! 『ボストン美術館の至宝展』をレポート 

2017.7.26
レポート
アート

右からフィンセント・ファン・ゴッホ《子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人》1889年、フィンセント・ファン・ゴッホ《郵便配達人ジョゼフ・ルーラン》1888年

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時代、ジャンルを超えた名品の数々がこんなに一堂に会す展覧会はめったに無いだろう。『ボストン美術館の至宝展 ー東西の名品、珠玉のコレクション』(会期:2017年7月20日〜10月9日)が東京都美術館で開幕した。世界屈指の美の殿堂、ボストン美術館の所蔵品の中から選りすぐりの傑作80点が一挙公開されている。ゴッホ、ドガ、喜多川歌麿、モネ、エドワード・ホッパー、アンディ・ウォーホル、村上隆と作家名からも分かる通り、見逃せない魅力的な作品ばかりだ。本展スペシャルサポーターの木梨憲武も登場した開会式や内覧会より、豪華な本展の内容を紹介していこう。

『ボストン美術館の至宝展 ー東西の名品、珠玉のコレクション』エントランス

木梨憲武も太鼓判! 古今東西の名品が一挙集結

アメリカ屈指の美術館であり、世界有数の百科事典といえるほどの多種多彩な約50万点の作品を所蔵するボストン美術館。1870年の設立当初から国や州の財政的援助は受けず、ボストン市民をはじめとする多くの寄贈者によって美術館のコレクションは拡大してきた。そんなボストン美術館の幅広い内容を総合的に紹介する本展は、古代エジプト美術、中国美術、日本美術、フランス絵画、アメリカ絵画、版画・写真、現代美術の7つの章から成り、作品と共にコレクション形成に寄与した収集家たちの功績も紹介していく。

開催に先駆けて行われた開会式では、国内外で個展を開催するなど作家としても活動している、本展スペシャルサポーターの木梨憲武が登壇。「本展覧会の世界選抜の80点の作品は、何かを感じられるすごい作品しかきていないと思います。開幕から約2ヶ月半、上野がすごいことになるのではないかなと思っています」と語り、見応えのある本展に太鼓判を押した。

開会式にて本展の魅力を語る、展覧会スペシャルサポーター・木梨憲武

黄金のマスクを彷彿させる《ツタンカーメン王頭部》

会場に入って最初に現れるのが、古代エジプト美術の数々だ。1905年から約40年間にわたって実施された、ボストン美術館とハーバード大学による共同発掘調査の成果を中心に貴重な出土品が並ぶ。中でも注目なのが、「王家の谷」で発見された黄金のマスクで有名なツタンカーメン王の彫刻《ツタンカーメン王頭部》だ。写実的にかたどられた切れ長の眼、ふっくらとした唇が印象的だ。顔立ちが黄金のマスクに似ているといわれている。

《ツタンカーメン王頭部》エジプト、新王国時代、第18王朝、ツタンカーメン王の治世、前1336-前1327年

中国美術においてもボストン美術館は世界有数のコレクションを誇る。本展ではその中から、北宋・南宋絵画の名品が公開される。南宋末期に活躍した画家、陳容による《九龍図巻》は、沸き立つ雲と荒れ狂う波の中を9匹の龍が悠然と、そしてダイナミックに翔け巡る姿が描かれている。見ていると力がみなぎってくるような、生気あふれる作品だ。かつて清朝の乾隆帝も旧蔵したという。

陳容《九龍図巻》(部分)南宋、淳祐4年(1244)

初の里帰りを果たした、幻の巨大涅槃図

ボストン美術館の日本美術コレクションは、日本国外に所在するものとしては最大のコレクションだ。日本美術の章では、本展の見どころのひとつである幻の巨大涅槃図が公開される。江戸時代の仏画の代表作と言われる、英一蝶《涅槃図》は、ボストン美術館でも最大の掛け軸で、画面だけでも高さ約2.9m、幅約1.7mにも及ぶ大きさだ。1911年にボストン美術館に収蔵されたが、作品の大きさと経年による劣化により25年以上にわたり公開されることがなかった。本展での公開に際して、約170年ぶりに本格的な解体修理が行われ、初の里帰りを果たした。会場では解体修理についても映像や写真などで紹介している。

《涅槃図》は涅槃に入る釈迦の周りで、菩薩、羅漢、動物などが悲しみにくれる姿が描かれているが、その生きとし生けるものたちの姿がとても興味深い。美男子だったといわれる弟子、阿難が悲しみのあまり気絶した(あるいは急遽駆けつけて昏倒する)姿で描かれていたりと、一蝶特有のユーモアも感じられ、見てい飽きない。

英一蝶《涅槃図》正徳3年(1713)

他にも、アーネスト・フランシスコ・フェノロサなどの日本を愛する偉大なコレクターたちによってもたらされた、喜多川歌麿、酒井抱一、曾我蕭白などの江戸美術の優品が展示される。

喜多川歌麿《三味線を弾く美人図》文化元-3年(1804-06)頃

曾我蕭白《風仙図屏風》宝暦14年/明和元年(1764)頃

ゴッホの傑作、ルーラン夫妻の肖像画が2枚揃って来日!

続いてフランス絵画の章では、本展の目玉といえるゴッホのルーラン夫妻の肖像画が登場する。パリを離れ南仏アルルに移り住んだフィンセント・ファン・ゴッホを親身になって支えてくれた友人、ジョゼフ・ルーランと、その妻オーギュスティーヌの肖像画が2点揃って展示されるのは日本初となる。2作品は対作品として制作されたわけではなく、制作した時期も8ヶ月ほどの差がある。その間にポール・ゴーギャンとの共同生活の破綻、ゴッホ自ら耳を切り入院するなど、ゴッホにとって重大な事件が起きている。後に描かれた夫人の肖像画からは、装飾的な表現などゴーギャンの影響も見てとれる。

フィンセント・ファン・ゴッホ《郵便配達人ジョゼフ・ルーラン》1888年

フィンセント・ファン・ゴッホ《子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人》1889年

フランス絵画の章では、他にもモネの魅力的な4作品や、ドガ、セザンヌ、ミレーなどボストン美術館が誇る19世紀フランス絵画の名作がずらりと並び、うっとりしてしまう。

クロード・モネ《ルーアン大聖堂、正面》1894年

クロード・モネ《睡蓮》1905年

エドガー・ドガ《腕を組んだバレエの踊り子》1872年頃

展覧会の中盤を過ぎると、ボストン美術館の天井画も手掛けたジョン・シンガー・サージェントの美しい肖像画やアメリカ印象派の絵画など、18世紀から20世紀半ばまでのアメリカ絵画コレクションの作品へと進んでいく。

ジョン・シンガー・サージェント《フィスク・ウォレン夫人(グレッチェン・オズグッド)と娘レイチェル》1903年

ホッパー、ウォーホル、村上隆と人気作家作品が揃う現代美術コレクション

ボストン美術館の魅力のひとつは、多くの近現代の作品も扱っているところだ。本展でも19世紀以降のアメリカを代表する芸術家の版画、写真作品や、国際色豊かな同時代を生きる作家の現代美術が公開される。

版画・写真の章で注目したのが、エドワード・ホッパーによる版画4作品だ。ホッパーといえば、アメリカの都市や郊外の風景を描いた油彩画で知られているが、表現力豊かな版画作品も残している。版画作品からも、風景や人物から滲み出るようなホッパー特有の孤独感を感じることができる。

エドワード・ホッパー《橋の上の娘》1923年

最後の展示室では、ケネディ大統領夫人ジャクリーンを題材としたアンディ・ウォーホルの《ジャッキー》や、デイヴィッド・ホックニー、村上隆などの現代美術作品が並び、本展を興奮のまま締めくくる。

ボストン美術館の主要なコレクションから選りすぐった作品で構成された本展は、注目作品しかないといえるほどの贅沢な展覧会となっている。至宝といえる名作の数々を収集し、寄贈したコレクターやスポンサーに思いをはせつつ、是非、作品をじっくりと堪能してほしい。とっておきの感動と満足感が得られるはずだ。

本展公式サイトでは、イッセー尾形による指人形劇『ゴッホの友人ルーランさんの夫婦漫才だこりゃ』など、本展を盛り上げるコンテンツも充実しているので、そちらもチェックしてみよう。

イベント情報
ボストン美術館の至宝展 ー東西の名品、珠玉のコレクション

会期:2017 年 7 月 20 日(木)~10 月 9 日(月・祝)
会場:東京都美術館 企画展示室
開室時間:9:30~17:30(金曜日は20:00まで、7月21日、28日、8月4日、11日、18日、25日は21:00まで)
※入室は閉室の30分前まで
休室日:月曜日、9月19日(火)(但し、8月14日[月]、9月18日[月・祝]、10月9日[月・祝]は開室)
入館料:一般1,600円 大学・専門学校生1,300円 高校生800円、65歳以上1,000円 中学生以下無料

《巡回情報》
【神戸会場】2017 年 10 月 28 日(土)~2018 年 2 月 4 日(日)/神戸市立博物館
【名古屋会場】2018 年 2 月 18 日(日)~7 月 1 日(日)/名古屋ボストン美術館

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