安西慎太郎&辻本祐樹『ゆく年く・る年冬の陣 師走明治座時代劇祭』インタビュー「今年の年納めは『る年祭』で!」
(左から)安西慎太郎、辻本祐樹(「辻」は一点しんにょうが正式表記)
演劇界の年末の風物詩、る・ひまわり×明治座「祭」シリーズ(以下、「祭シリーズ」)が2年ぶりに帰ってきた。
注目集まる今年の演目は、安西慎太郎と辻本祐樹のW主演による『ゆく年く・る年冬の陣 師走明治座時代劇祭』。第一部は、名将・伊達政宗とその忠臣・片倉重長を主人公にした芝居『SANADAMA・る』。第二部は、各戦国芸能プロダクションから選りすぐられた精鋭アイドルメンバーが1位を争うショー「プロデュース1615」。商業演劇らしいお芝居とショーの二部構成で、観客を大いに沸かせる。
他の舞台では味わえない、お祭り感あふれる演出が醍醐味の「祭シリーズ」。年の瀬の明治座に明るい笑いが広がりそうだ。
(※おことわり:辻本祐樹の「辻」は、一点しんにょうが正式表記となります。)
予測不可能な感じが、このシリーズの面白さ
――今年も「祭シリーズ」の季節がやってきましたね。
安西 僕は今回で3回目。改めて思うのは、舞台上で年を越せる幸せですね。お客さんと一緒に年越しを過ごせるなんて、なかなかできることじゃない。毎年幸せを感じながら参加させてもらっています。
辻本 ここ数年、毎年カウントダウンはこの「祭シリーズ」でお客さんと一緒に過ごしていますからね。もうこれなしで年は越せないといった感じです(笑)。
――安西さんにとっては、2014年の『聖☆明治座・るの祭典〜あんまりカブると怒られちゃうよ〜』が「祭シリーズ」初参加でした。当時の思い出は?
安西 ビンタがめちゃくちゃ痛かったです(笑)。
辻本 そこなんだ(笑)。
安西 僕らで大喜利大会みたいなのをして、それをある俳優さんががビンタしながらツッコむんですけど、その方のテンションが非常に高くて……(笑)。そのテンションに負けないよう必死でした。
辻本 本番はビンタの勢いが倍増してたよね。すごい音してた(笑)。
安西 後で本当に腫れてましたから(笑)。
辻本 でも、そんなこと言いつつ、みんな自分から叩かれに行くんですよ。
安西 最初は痛かったんですけど、本番が始まったら無性に叩かれたくなっちゃって。
辻本 おかしいでしょ。俳優なのに芸人さんみたいになってる(笑)。
――日頃からわりと叩かれたりするのはお好きな感じで…?
安西 いや、叩かれるよりは……叩きたいです!
辻本 何を言ってるの!?(笑)
――この「祭シリーズ」の魅力を解説するとしたら、どんなところですか?
辻本 これはもう開けてみないとわからない、不思議な箱みたいもの。何が起きるかは、観に来ないとわからない。演者である僕たちも稽古をやってみないと最終的にどうなるか全然掴めないですからね。それくらい稽古場でどんどん変わっていく。そんな予測不可能な感じもこのシリーズの魅力です。
――稽古場でどんどんみなさんがアイデアを出し合っていく感じなんですか?
辻本 もうその繰り返しです。だから稽古はめちゃくちゃ大変で。どの作品もそうなんですけど、特にこの舞台は本当にお客さんの反応次第なので、つくっている段階では「これでいいのかな?」って不安ばかり。初日は袖でみんな吐きそうになっています(笑)。
――その分、役者としてはひと皮もふた皮も剥けそうな感じがしますね。
辻本 これまで何皮も剥けた役者を見てきているので。今回もまた誰が何皮剥けるのか楽しみですね(笑)。
――おふたりは、14年の『聖☆明治座・るの祭典』が初共演だったと聞いています。安西さんから見て、辻本さんはどんな人ですか?
安西 とんでもなく優しい方なんですよね。辻本さんの言葉には、人を本気で信じこませる力があって。たとえばですけど、辻本さんが「お腹が空いてる」って言ったら、本当にお腹が空いてくるんです。
辻本 俺、すごいじゃん。本当に能力者じゃん(笑)。
安西 すごく覚えているのが、るの祭典という公演の時に、竹中半兵衛役の嶺くん(木ノ本嶺浩)が死ぬシーンの稽古をやってたんですけど、そのときの嶺くんがすごく面白くて。それを目の当たりにしながら、僕は「どうしよう。俺は何もできない」って袖でガチガチに緊張してたんですね。そしたら、辻本さんがポンッて肩を叩いて「大丈夫。お前ならできる」って言ってくれて。その瞬間、「何かできるかも…」って気持ちが沸いてきました。
それくらい辻本さんの言葉には影響力がある。だから今回、辻本さんと一緒に主演をさせていただけるのは、僕にとって夢のようなことで、今もちょっとフワフワしています。
辻本 本当に? ありがとう(照)。今回、W主演というかたちですけど、僕は座長だから特にどうしようという気持ちはなくて。もちろん嬉しいは嬉しいですけど、僕らが引っ張っていくというよりも、みんなで頑張ろうという気持ちです。今回、また新しいメンバーも加わったので、果敢に挑戦する若い子たちを見ながら、僕もいっぱい勉強させてもらおうと思います。
第二部のいいところは、何をやっても怒られないところ(笑)
――第二部のショーも楽しみです。
辻本 ショーは毎回必ず盛り上がるんですよ。だから、みなさんもペース配分には要注意。前の日はたっぷりと寝て、体力温存して遊びに来てほしいです(笑)。
安西 毎回いろんなユニットが登場するんですけど、僕の知る限り、毎年1チームくらいはまったく予算をかけていないユニットがあって、そこが大活躍するイメージなんですよね。それが今回はどこなのかが気になります(笑)。
――今年も真弾青少年団、優一の國、マーライオンZ、MAN WITH A KABUTOと一癖も二癖もあるユニットが登場します。パフォーマンスをしている側はどんなテンションなのでしょう?
辻本 これこそもうキャラクターを演じるような感覚で、普段の自分を完全に忘れています。ふと「あれ? 俺、歌って踊ってる? こんなことやるために芸能界に入ったつもりじゃなかったのに……」って思ったりするんですけど(笑)、やっているときはすごく楽しい。「明治座さんでこんなことやっていいのか!?」ってドキドキしながら、全力で楽しんでます。
安西 第二部のいいところは、何をやっても怒られないところ(笑)。第一部はお芝居なので、ある程度バランスが必要ですが、第二部はそんなこと全然気にしなくていい。お客さんさえ喜んでくれれば何をやっても怒られないので、それが楽しいです。
辻本 事務所にも怒られないしね(笑)。何せ毎回必ず脱ぎ出す人がいますから。その様子を楽屋のモニターで見ながら、「やばいやばい!」って言い合ってます(笑)。このシリーズに出てくるのは暴走型の人間が多いので、今回もどうなるか乞うご期待ですね。
――今回おふたりが注目したいキャストをひとり挙げるとしたら?
安西 僕は宮下雄也さん。雄也はさんはもう天才です。お客さんも雄也さんが出てくると何かしてくれるっていうワクワク感があるそうで。本当に面白い人なので、どんなものが出てくるか楽しみです。
辻本 僕は紫吹淳さんを置いては語れないですね。一度、この「祭シリーズ」でご一緒させていただいたのですが、そのときの紫吹さんはジャージで踊ってました(笑)。でも不思議なことに、紫吹さんが踊ると、それがジャージには見えなくて…。むしろ背中から羽が見えました(笑)。
――紫吹さんのジャージ姿は衝撃ですね(笑)。
辻本 そんな紫吹さんの姿を見られるのは「祭シリーズ」しかないですから。今回もどれだけぶっ飛んでくださるか注目です!
――では、最後にお客様へのメッセージをいただければ。
辻本 毎年来てくださっている方はもちろん、初めてご覧になる方も、年末にふさわしい笑って泣けるエンターテイメントを楽しんでいただけると思います。みなさんの想像は軽く超えていくつもりなので、ぜひ期待してお越しください!
安西 「祭シリーズ」は今回で7作目。そこに辻本さんと一緒に主演という立場でやらせていただけることに対して感謝の気持ちでいっぱいです。その気持ちを忘れず、お客さまに楽しんでいただける作品をつくっていきますので、どうか楽しみにしていただければ!
取材・文・撮影=横川良明
スタイリング ホカリキュウ
第2部:ショー「プロデュース1615」
<東京公演>2017年12月28日(木)~31日(日)明治座
【Instagram】https://www.instagram.com/lehimawari