石丸幹二と安蘭けいが語る『スカーレット・ピンパーネル』の魅力と思い出
安蘭けい、石丸幹二 撮影=平田貴章
フランク・ワイルドホーンが音楽を手がけ、ブロードウェイや宝塚歌劇団でも上演されている人気ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』が待望の再演を迎える。主演の石丸幹二とヒロイン役・安蘭けいが、作品の魅力や思い出話を語り合った。
――それぞれの役柄と、演じられた感想を教えてください。
石丸:僕の演じるパーシーはイギリス1の大金持ちの貴族で、正体を隠して戦うスーパーヒーロー。彼は用意周到で何をもくろんでもすべて成功しますから、演じていて心が躍りますし、爽快でした。
安蘭:マルグリットは元女優で活動家、パーシーの妻であり芯が通った強い女性です。結婚パーティーは最高に幸せだったのに、パーシーの態度が豹変して辛かったです。疑われている理由がわからなくて、でも自分に理由がある気もするし。
――確かにヒーローものの冒険活劇の中に、男女間の疑心暗鬼や嫉妬が盛り込まれているのがこの作品の魅力ですね。
石丸:僕たちの日常生活でもよくあることだと思います。ちょっとした誤解から人間関係が微妙になる。この二人は相手を愛しているという想いがあるから、どうにか関係が壊れるのを回避しようとする。そこがリアル。
安蘭:率直に聞いたり言ったりすれば誤解は起きないのに、言えない、言わないのが端から見ているともどかしい。誰かが助言してあげれば、こんなもつれないのに。でも、それが人間らしいところかな。
石丸:お互い、そんな心の内をソロで歌うでしょ。実にエネルギーがいるナンバーで、ここまで悶々としているなら言えばいいのにと思っちゃう(笑)。
安蘭:そうそう! でも愛しているが故に言えない。弟の問題で余計パーシーに話せない。強い女性だけど、やはり家族には弱い。そこは女らしいところかな。
石丸幹二 撮影=平田貴章
――「ここが素晴らしい」と思ったシーンは?
石丸:僕は出ていなけど、マルグリットと弟アルマンが互いの真実を知る、馬車のシーン。真実がぽろっと出て、すべて謎が解けた時のあの爽快さ! 毎回、袖から見ながら、胸がすく思いでした。また、二人は椅子に座っているだけなのに、馬車に揺られているように見えるのが見事ですね!
安蘭:私が好きなのは、橋でマルグリットがピンパーネルと会うシーン。もちろんピンパーネル=パーシーなのだけど、顔を見られないから正体に気づかない。お客様から見たら、ジリジリするでしょうね。
石丸:ピンパーネル団の男たちが書斎に集まり、一致団結するところも楽しいですよ。変装を名目に、男たちがキテレツな扮装して現れた時の勝ち誇ったような顔! そこで歌う「炎のなかへ」は、僕たちもお客様もテンションが上がります。
安蘭:あの場面は作るのが大変でしたね。手順を緻密に考えて。
石丸:またワイルドホーンの曲が見ているお客さんをワクワクさせるんです。芝居に音楽が加わるとよりハラハラする。ほんと、いいナンバーばかりです。またコスチュームが贅沢で、瞬時にみんなが着替えるところが魅力の一つかと。
安蘭:パーシーはイギリス1の大金持ちなので、着る衣装はどれも煌びやか。
石丸:孔雀みたいな服とか!
安蘭:私も夫パーシーのおかげで真っ赤、真っ白と、素敵なドレスを着放題です。
――安蘭さんは宝塚在団中にパーシーを演じられました。8年ぶりにこの作品に出て、またパーシーを演じたいと思いませんでしたか。
安蘭:いや、ないですね。もう女でいたいと思います(笑)。ただ、パーシーが「実は僕がスカーレット・ピンパーネルだ!」と言った時の、お客様がウォーってなる感じはもう一度体験したいです。あれ水戸黄門の印籠みたいなもので、待ってました!って。
石丸:あの瞬間は最高に気持ちいいですよ。その後、階段を上り下りしながら剣を振り回す、激しい殺陣が待っていますけど。
安蘭:本気で剣を当てる音が、リアルでしたよ。
石丸:敵役の石井(一孝)くんが大汗を飛ばしながら戦ってて、僕も熱くなったなぁ。
安蘭けい 撮影=平田貴章
――『ベルサイユのばら』『レ・ミゼラブル』と同様に、フランス革命期の話というところも興味深いですね。
安蘭:どちらの作品も市民側からの目線だけど、この『スカーレット・ピンパーネル』は貴族の目線で描かれた話。その意味では、視点が変わって面白いです。立場によって見え方が全然違う。
石丸:フランス革命を別の視点から見ると、新鮮に感じられます。
安蘭:貴族が自らが参加して、悪を懲らしめるのが素敵なんですよ。もちろんお金のない人たちが戦うのもいいけれど、イギリス貴族のあり方や楽しみながらできてしまう余裕。パーシーみたいな男性がいたら惚れますよ!
石丸:僕も女性だったら惚れるなぁ(笑)。でも彼も完璧な人ではなくて、マルグリットを信じられなくなる弱さもある。その人間らしさもまた魅力かと。この話って、終わり方が爽快でしょ? 正義が勝ち、愛が復活する。気持ちいいし、夢があります。
安蘭:スカッとしますよね。最後、お客様が希望をお持ち帰りいただけるのが、すごくミュージカルらしいと思います。
――最後にメッセージをどうぞ。
石丸:前回、が完売して、多くの方に見ていただけるチャンスがなかったので、今回、ぜひ足をお運びいただけたらと思います。メンバーも大幅に変わりますので、新たなキャストの魅力もふんだんにご覧いただけるかと。この1年の間、私たちも新たな経験を重ねてきた上で、この作品に取り組みます。前回、ご覧になった方も新しい発見があると思いますので、ぜひ。
安蘭:宝塚でも再演されているので、見比べるのも面白いでしょう。劇場でお待ちしています!
インタビュー・文=三浦真紀 撮影=平田貴章
■日程
2017年11月13(月)~15日(水) 梅田芸術劇場メインホール
2017年11月20日(月)~12月5日(火) TBS赤坂ACTシアター
■出演者
石丸幹二/安蘭けい/石井一孝/上原理生 泉見洋平 松下洸平
久保貫太郎 久保田秀敏 多和田秀弥 東啓介 藤田玲 則松亜海 ほか
脚本・作詞:ナン・ナイトン
作曲:フランク・ワイルドホーン
訳詞・翻訳・潤色:木内宏昌
潤色・演出:ガブリエル・バリー
演出:石丸さち子
公式HP http://www.umegei.com/the-scarlet-pimpernel/
公式ツイッター @pimpernel_2017
東京公演主催:TBS・梅田芸術劇場
大阪公演主催:朝日放送・梅田芸術劇場
企画・制作:梅田芸術劇場