上海歌舞団・舞劇『朱鷺』大絶賛の名作が再び日本に! 記者会見の様子を写真付きでレポート 

2017.8.1
レポート
クラシック
舞台

朱潔静、王佳俊、草刈民代  撮影=西原朋未

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8月29日から東京を皮切りに開催される上海歌舞団舞劇『朱鷺』-toki-」。人間の青年と朱鷺の精との心のふれあいを通し、過去から現在、そして未来へと託される思いを綴った舞劇で、2015年の来日公演では大絶賛を浴びた。このほど2017年公演に向けて主演の朱鷺の精を演じる朱潔静(ジュ・ジエジン)と王佳俊(ワン・ジヤジュン)が来日。さらにオフィシャルサポーターとして元バレエダンサーで女優の草刈民代が登場し、来るべき公演に向けての見どころや期待を語った。

日本で初演された上海歌舞団のオリジナル作品

舞劇『朱鷺』は、上海歌舞団のオリジナル作品で、初演は実は日本朱鷺の精ジエと青年ジュンの恋物語を軸に「地球・生命・人類」というテーマが描かれるこの作品は、朱鷺が絶滅に瀕していた日本人の心に響いたのだろう、2014年のプレビュー公演後、2015年に東京、大阪、名古屋など全国で行われた30公演では約12万人を動員し、絶賛を浴びた。

その『朱鷺』が今年の夏、また日本に“戻ってくる”。記者会見に登場した朱と王は「コンニチハ。また日本に来られてとてもうれしいです」とそれぞれ日本語で挨拶。さらに王は「前回の公演から2年、毎日稽古を続けてもっといいものにしようと練り直してきた。日本で上演できることを毎日待ち続けていました」と続けた。

王佳俊、朱潔静  撮影=西原朋未

今回は東京をはじめ愛知、大阪で19公演が予定されている。上海歌舞団総合プロデューサーの陳飛華によると、来日メンバーは約80人。「作品を調整してさらに良いものをお見せできる。前回公演では訪れる先々で日本の皆さんの温かい心にふれた。この公演を通して日中交流がより深まることを願っている」と公演に向けての自信をのぞかせた。
 

オフィシャルサポーターに草刈民代
「中国人ならではの、中国古典舞踊の進化形」

この『朱鷺』公演には、オフィシャルサポーターとして元バレエダンサーにして現在女優の草刈民代が就任。草刈は現役のバレエダンサー時代に中国人ダンサーともペアを組んで踊り、中国のトップダンサーを招聘して共演した経験を持っており、「中国人の踊りの素晴らしさは知っている。この素晴らしい作品のオフィシャルサポーターとしてお役に立てれば」と挨拶した。

草刈民代  撮影=西原朋未

そしてこの『朱鷺』の印象について「バレエでもコンテンポラリー作品でもなく、陳先生(総合プロデューサー)に『中国の古典舞踊の進化形』という話を伺い納得した。首の動かし方ひとつとっても中国の古典舞踊のトレーニングを長いこと積まなければ踊れない、中国舞踊の歴史が全て投影されている唯一無二の作品」と語った。

 

「動物園で朱鷺の動きを観察した」見どころは24羽の朱鷺の群舞

この『朱鷺』の見どころのひとつとして、草刈りをはじめ、朱、王共々口を揃えて推奨するのが24羽の朱鷺の群舞だ。

草刈は「日本人もそうですが、中国の方々も一糸乱れぬ群舞は得意とするところ。しかもこの『朱鷺』では、朱鷺という鳥を表現するうえで、中国伝統舞踊をはじめとするトレーニングを受けている人が何人も集まらないと成立しない。女性の出番が多く、これだけ女性の群舞が踊る量が多い作品はあまりない。それが圧倒的な美しさとスケールで迫ってくる。舞踊団の歴史やトレーニングの質の高さが昇華されていて実に見事」と話す。

王佳俊、朱潔静、草刈民代  撮影=西原朋未

王もまた「朱鷺を踊る群舞のダンサー達は朝から晩までリハーサルを続け、劇場入りをするとすぐにダンスシューズを取り出し、稽古を始めるくらい熱心。舞台袖から本番の彼女たちの姿を見ていると、時々本物の朱鷺のように見えることがある。皆さんにもぜひ見ていただきたい」と語る。

王佳俊、朱鷺のポーズを取る朱潔静  撮影=西原朋未

朱によると、朱鷺の群舞を踊るために、朱をはじめダンサー達は動物園を訪れ朝から晩まで朱鷺の動きを観察して研究し、動作に作り替えたという。朱は朱鷺のポーズを取りながら「一番大切なのは細やかさ。そして高貴であること」と話す。「ダンサーはともすれば舞台に上がると大きな動きで派手に表現することがあるが、朱鷺はそうなってはならない。動物園では少しでも朱鷺に近づき理解したい、と思い観察していた」そうだ。

朱潔静  撮影=西原朋未

またもうひとつの見どころは1部と2部の世界観の違い。1部は幻想的な古(いにしえ)の時代だが、2部は一転、現代に。そこではコンテンポラリー舞踊の動きも取り入れられている。「現代的な灰色の、無味乾燥な世界表すのにコンテンポラリーの手法が合っていた」と王。そこへ1枚の朱鷺の羽が舞い落ち、現代の物語が紡がれる。多彩な踊りにより展開する舞台に、非常に興味が湧く。
 

互いを知り尽くしたパートナー。日本の滞在も楽しみに

主演の朱と王は実は10歳くらいの頃から、22年もの間一緒に踊っているという。朱によると「互いに暗黙の了解、阿吽の呼吸で踊ることができるが、性格は真逆。舞台では王は山のようにどっしりと支えてくれ、私(朱)は水のように緩やか。でも実生活は逆で、朱が山、王が水」なのだそう。また王は「無口で素晴らしい聞き役で、100%安心して共に踊ることができるパートナー」だそうで、草刈も「踊りで女性を美しく見せる、安心感のあるパートナーは無口な人多かった。そういう人は女性を美しく見せる踊りのセンスに長けているんです」と太鼓判。

王佳俊 撮影=西原朋未

その「どっしりとしていて安心感があり、筋肉質だけど細マッチョ」(草刈・談)の王は日本のカレーやラーメンが好きだそうで、「舞台はすごく疲れる精神プレッシャー大きいので終わったらラーメンを食べに行く」のだそう。イケメンのダンサーは日本好き、と聞くと、なにやらこちらもうれしくなり、親しみもわいてしまう。
 

熱量の伝わる作品。「常に初心・初演のつもりで」

会見の合間に上映された映像は、見事な朱鷺の群舞に、朱鷺の精と青年の視線から感じられる互いの心、一転してダークトーンとなる2部の現代的な踊りが映し出される。ストーリーもわかりやすそうで、期待が膨らむ。
朱は「舞台や映像美術、振付など、すべてが独特な『朱鷺』という作品を通した言語といえる。私たちダンサーは常に初演のつもりで、初心を忘れることなくこの作品を磨き、素晴らしいものをお届けできるよう全力で準備に当たっている」と話す。草刈も「『朱鷺』にかける熱量が伝わり、ぜひ楽しみに拝見したい」と期待を込めて語る。
ダンサー達の作品に対する愛情、熱い思いが伝わってくる『朱鷺』。上海歌舞団ならではの、世界に唯一無二の作品をぜひ見てみたい。


取材・文・撮影=西原朋未
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公演情報
上海歌舞団「舞劇『朱鷺』-toki-」

■日程・会場
<東京公演>
2017年8月29日(火)~8月30日(水) Bunkamura オーチャードホール
2017年9月6日(水) ~9月10日(日) 東京国際フォーラム ホールC
<名古屋公演>
2017年9月2日(土)~9月3日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール
<大阪公演>
2017年9月13日(水)~9月14日(木) オリックス劇場
■出演:
上海歌舞団 
メインダンサー:朱潔静(ジュ・ジエジン)〈プリンシパル〉/王佳俊(ワン・ジヤジュン)〈プリンシパル〉
■公式サイト:http://toki2017.jp/

 
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