サメだけじゃない!あなたに海の恐ろしさをたたき込む『海底47m』#野水映画“俺たちスーパーウォッチメン”第三十二回

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2017.8.10
 (C)47 DOWN LTD 2016, ALL RIGHTS RESERVED

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TVアニメ『デート・ア・ライブ  DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス  怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。
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8月、夏真っ盛り。夏と言えば、やっぱり海!今年の夏も、海水浴やバーベキューを計画している方も多いのではないだろうか。でも私のように、「日焼けするし、砂とかめんどいし、そもそもそんなアウトドア派な友だちいないし……」という方もいることだろう。今回は、これから海に行く方には海の恐ろしさを学ばせてくれ、家で夏を回避する方には海に行った気分を味わわせてくれる、素敵な作品を紹介したいと思う。その名も『海底47m』だ。

メキシコで休暇を過ごす姉妹・リサとケイトは、海中に沈めた檻の中でサメを鑑賞する、“シャークケージダイビング”に誘われる。姉のリサは尻込みするものの、好奇心旺盛な妹のケイトに押し切られてしまう。水深5mのケージの中で海中を堪能していると、突然船とケージをつなぐワイヤーが切れてしまい、二人はケージごと水深47mの海底へ落下。船との通信は途絶え、ボンベの酸素も残り少なくなってゆく中、絶望する二人に巨大ザメが牙を剥く。

 

海=サメという常識を破るパニックムービー

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海を舞台にしたパニックムービーやホラーといえば、やはり『JAWS/ジョーズ』(75)を真っ先に思いつく方が多いのではないか。やはり自由の利かない海中で、人間よりも強い生き物は恐ろしく感じることだろう。

しかし最近では、サメ竜巻やロボットザメなどが登場する、奇をてらった、「サメ映画」と呼ばれるジャンルの作品も増えている。そんな中、昨年の夏に公開された『ロスト・バケーション』(16)は、負傷して浅瀬の岩場に取り残された女性がサメに付きまとわれる正統派のサメ映画で、なかなか緊張感のある作品だった。浅瀬でも怖いサメに、水深47mなんていう彼らのテリトリーで出会うなんて、どれだけ絶望的なシチュエーションなのか。

いやでも待てよ、ピンチになるのは二人の姉妹。ということは、サメが出てきたらたった二人くらい早々に食われておしまい!ってなるんじゃないだろうか? なんて考えながら観ていたのだが、本作の評価すべき点はサメを多用せず、海の怖さを描き切ったことだった! 

まずケージが海中深く落ちてゆく描写は、観る者に「うわぁー……いやだー!」という恐怖を与えてくれるはずだ。そしてケージが落ちた衝撃での怪我。血の匂いを嗅ぎつけたサメたちがやってくることはもはや必然である。

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こうして最悪な状況が重なっていく中で、私が何より感じたのは“息苦しさ”だ。ジリジリと減ってゆく酸素ボンベの数値を見ているのは、死へのカウントダウンをされているようで、本当に息が詰まるほどだった。もうそれなら海面まで泳いで行っちゃえよ! と思うかもしれないが、急浮上をすれば、今度は減圧症で死んでしまうかもしれない。にっちもさっちもいかなくなり、妹のケイトは、ひとまず船との通信が届くところまで浮上するのだが、その時背後にサメが! 「サメを多用しない」とは言ったものの、期待通りのタイミングで現れてくれるお約束は外さない。最高ではないか。 ちなみに、サメとの攻防戦はこのシーンだけではないので、サメホラー好きの方はお楽しみに。だがそこで起きる奇跡の展開は、私もまったく予想出来なかったし、本作の一番の見どころとなっている。

いやぁ、サメがいつ来るかわからない緊迫感に加え、これほどまでにダイビングに伴うリスク(そうそうこんなことないとは思うが!)をまじまじと見せつけられたので、私は「もう一生海になんか潜らないぞ!」と心に決めました。はい。

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そんな中でも、リサとケイトの姉妹の絆には、ぐっとくるものがあった。そもそもこの旅行は、「お前つまんないんだよ」と彼氏に振られてしまった姉を元気づけるために、妹のケイトが企画したものだ。そうして姉のリサをリードしているケイトは、海底でも、やはりテキパキしているしっかりさん。しかしリサも、妹への愛はしっかり持っている。ピンチに陥ったケイトを、身を挺して助けに行く強さを見せてくれるのだ。

まぁ最初こそ、メキシコでウェイウェイと楽しむ姉妹たちの様子を見せられ続けてモヤモヤとするものの、本作の上映時間87分の内、70分は海の中のシーンだ。

暗い劇場で、姉妹と一緒に暗い海の底に閉じ込められたような息苦しさを感じながら、その恐ろしさで涼を取ってほしい。

『海底47m』は8月12日(土)より、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー。

作品情報

映画『海底47m』​


 
(2016 年/アメリカ/英語/90分/カラー/シネスコ)
出演:クレア・ホルト「オリジナルズ」、マンディ・ムーア『ウォーク・トゥ・リメンバー』、 マシュー・モディーン『フルメタル・ジャケット』 
監督・脚本:ヨハネス・ロバーツ 
原題:47 METERS DOWN
字幕翻訳:石田泰子 
配給:ギャガ・プラス 
公式サイト:http://gaga.ne.jp/47m/
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