ロックスターはカントリーを目指す

コラム
音楽
2015.9.21

アメリカン・ロック・スターはナッシュビルを目指す

昔から、ロックのフィールドで成功した人がカントリー色の強い音楽性に舵を切ったり、カントリーそのものに挑戦してアルバムを作ったりする動きは多い。

それほどアメリカではカントリー・ミュージックの市場規模も大きく、人気も高いと言えるのだが、今まさにカントリーに寄った作品をリリースするアーティストの動きが重なっているので、その代表的なものを紹介しよう。

まず最初に紹介するのは、言わずと知れたエアロスミス(Aerosmith)のボーカリストであるスティーヴン・タイラー(Steven Tyler)だ。

本体のバンドが現在オフのため、それぞれが自由な活動をしているのだが、そんな中でスティーヴン・タイラーが発表した「Love Is Your Name」という楽曲が話題になっている。

Steven Tyler - Love Is Your Name

 

この楽曲は、フィドル(バイオリンのことをカントリーやトラッドのジャンルではこう呼ぶ)、バンジョー、ドブロなどのカントリーで使用される楽器が使われた、完全なカントリーソングといえる仕上がりとなっている。この楽曲のように、カントリー要素が強いロック(ポップス)は、昨今のアメリカのカントリー・チャートの主流のサウンドと言え、少し前まではディクシー・チックス(Dixie Chicks)が、最近ではレディ・アンテベラム(Lady Antebellum)やザ・バンド・ペリー(The Band Perry)などがその中心にいる。

また、今や完全にジャンルを超越し、世界の歌姫というまでに成長したテイラー・スイフト(Taylar Swift)も、もともとはこのようなカントリーの世界から火が付いた存在だ。

 

次に紹介するのは、こちらも相当の大物。イーグルス(The Eagles)のボーカリスト兼ドラマーのドン・ヘンリー(Don Henley)だ。

イーグルスは2年以上に渡るロングツアー「History of the egles」を終えたばかりだが、ドン・ヘンリーはカントリーの本場であるナッシュビルのスタジオで作り上げた、ソロとしては15年ぶりになるアルバム『Cass County』を9月25日に発売する。

Don Henley 『Cass County』

 

このアルバムは多彩なゲストを迎えて制作されており、ミック・ジャガー(Mick Jagger)が参加していることでも話題となっているが、カントリーの世界での大物である、ヴィンス・ギル(Vince Gill)や、アリソン・クラウス(Alison Krauss)をはじめとて、ドリー・パートン(Dolly Parton)や、ミランダ・ランバート(Miranda Lambert)とのデュエット曲も収録されている。

 

アルバムのトレーラー内での、「これこそ、長い間作りたいと思っていたアルバムそのものだ」という発言にも表れているように、ドン・ヘンリーはずっとカントリーサウンドを手掛けることを目指していたという。

彼の在籍するバンド、イーグルスもデビュー当時はカントリー・ロックと言われていたくらいだから、そこには何の不思議もない。

 

この大御所以外にも、シンディー・ローパーがカントリーのアルバムを制作したいと公言していることや、マリリンマンソンはまさに現在、カントリーのアルバムを制作中であるという話もある。

2011年には、スティクス(STYX)のトミー・ショウ(Tommy Shaw)が、完全なブルーグラス・サウンド(カントリーのジャンルの一つ)のアルバム『The Great Divide』を発表しているなど、このようなロック・フィールドからのカントリーへのアプローチは枚挙にいとまがない。

Tommy Shaw 「I'll Be coming Home」

 

日本に居るとなかなか接する機会がないカントリー・ミュージックは、実はアメリカでは常に高い人気を誇るジャンルの一つとして存在しており、前述のテイラー・スイフトをはじめとして、今年にニューアルバムを出したZac Brown Bandなどの大スターを輩出している。

Zac Brown Band - Homegrown (Lyric Video)

 

是非一度、これらのアーティストの音にじっくりと触れてみて欲しい。

そこには、アメリカの歴史に深く根付いた、心地いいサウンドがあるはずだ。

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