城田優、4年ぶり上演のミュージカル・コンサート『4Stars 2017』を大阪で大いに語る

インタビュー
舞台
2017.9.26
『4Stars 2017』合同取材会にて(撮影/石橋法子)

『4Stars 2017』合同取材会にて(撮影/石橋法子)


2013年、ブロードウェイなどで活躍する世界トップレベルのミュージカル・スター3人が来日、日本のミュージカルスター、城田優を交えた4人で夢の共演を果たしたミュージカル・ショー『4Stars』。あの感動が今秋、新たな演出家と新メンバーを迎えた『4Stars 2017』として帰ってくる! 出演は初演よりラミン・カリムルーシエラ・ボーゲス城田優の3人に、2013年『ピピン』でトニー賞ミュージカル主演女優賞を受賞したパティーナ・ミラーが新たに加わり、初来日を果たす。セットリストには、今年のアカデミー賞で6部門を受賞した映画『ラ・ラ・ランド』のオープニング曲もあり、今回も魅力的なショーになりそう。城田優が大阪公演の合同取材会で、本作の魅力をたっぷりと語った。

『4Stars』合同取材会にて

『4Stars』合同取材会にて

「4人の色が混じり合う、スペシャルなエンタテインメントショーをお届けします!」

ーー国境を超えた”音楽の祭典”が再び上演されます。海外の方と主に英語で歌われることについては、どのようにお感じですか。

僕にとって第一ヵ国語は日本語、第二ヵ国語はスペイン語、英語はみなさんと同じように中学校で初めて習いました。一見、ネイティブのように思われるかもしれませんが、それは勉強しているから。逆に言えば勉強しているだけであって、元々喋れるわけでも発音が良いわけでもない。初演の時には発音の先生がいましたし、英語の歌詞の意味を汲み取ることが非常に難しかったですね。

城田優

城田優

ーー音に乗せる上でも、言語による違いがあるそうですね。

僕にとって一番感情を込めて表現しやすいのは、日本語の曲。ただ日本語はひとつの音に一文字しか乗せられない。例えば、「ありがとう」なら五個の音が必要になってくる。英語やスペイン語なら500音で伝わることも、日本語だと1500音くらい必要になってくるイメージです。そこが、日本でミュージカルが受け入れられないひとつの理由だと思っています。音を縦に切っていくので、流れが悪いんですよね。最近は日本語でお洒落な作詞をしたり、日本にミュージカルの歌を定着させるにはどうすればいいのか、よく考えています。

城田優

城田優

ーー英語の歌はいかがでしょう。

英語は流れるように歌えるので、言語としては歌いやすい。ただ、意味を自分の中にちゃんと落としこむ作業が難しい。感覚的に歌詞のニュアンスが分からない部分もあるので、歌うときも発音を気にしたり、苦か楽かでいえば苦です。好きですけど(笑)。前回スペイン語で歌った『ISABEL』はたくさんの方から「良かった」と言って貰えました。幼少期にスペインに住んでいたので、発音は完璧だと思いますし、知らない単語も勉強すればスッと頭に入って来る。意味も理解した上で歌えたので、その辺りが理由かなと。

城田優

城田優

ーー初演では言語というハードルがあったのですね。

昔作られたミュージカルは今とは違う文法が使われていたり、勉強することはたくさんあります。考える間もなくスラスラと英語を話すには時間が必要ですし、その上で発音や歌詞の意味を自分の中に落とし仕込んで、日本語と同じように感情を入れて歌うので。他の3人よりもやることが、何十個、何百個も多いわけです。

城田優

城田優

ーー初演では火花が散るような競演でした。

正直、前回は「絶対負けない!」と火花を散らしていました(笑)。ブロードウェイのど真ん中で主役を張っているお3方と同じ条件で歌うことは、僕にとってかなりハードルの高いことであり、日本の皆様にポテンシャル、技術、すべてを比べられ、評価される立場にあったので。圧倒的な緊張、恐怖、……いろいろありました(笑)。ただ今回目指す先は、お3方とスペシャルな時間を共有し、それをお客様にお届けすること。みんなで楽しく、最高な時間を過ごすことに集中したい。

ーー共演したラミン・カリムルー、シエラ・ボーゲスとは、現在も親交があるそうですね。

プライベートでも仲良しですね。今回のステージでは、この4年間の交流が生み出す新たなコラボレーションが絶対にあると思います。パティーナ・ミラーとは初対面ですが、ブロードウェイで彼女のポテンシャルは確認済みです。勝ち負けではないですけど、僕としては「城田優なんでここにいるの?」と思われるほどしゃくなことはないので、頑張りたい(笑)。

ーーパティーナ・ミラーは、2013年『ピピン』でトニー賞ミュージカル主演女優賞を受賞されました。今回『4 Stars 2017』で待望の初来日を果たします。

ちょうど初演の『4 Stars』の稽古でNYにいたときに、『ピピン』を観ました。「リーディングプレイヤーのパティーナが凄かった」とシエラに話したら、「凄いよね、私の友達だよ」と。こんなモンスター級の歌唱力を持った2人と、今回の舞台に立つのかと。本当に「負けていられない」という言葉が出てきますよね(笑)。正直、もしもこれが日本語の歌だったら、感情の込め方とかでこの3人に負ける気はしない。ただ、やっぱり英語ですから。叶わない部分もあるかもしれませんが、4人それぞれの色が混じり合うことで、魅力的なエンタテインメントショーをお見せできればと思います。

城田優

城田優

「前回はビッグナンバーを歌い次ぐ豪華なショー、今回は物語で一本の道筋をつけたい」

ーー再演を待つ間、城田さんも『エリザベート』で読売演劇大賞優秀男優賞をはじめ数々の賞を受賞され、2016年にはミュージカル『アップル・ツリー』で初演出を手掛けるなど多方面でご活躍です。『4Stars 2017』ではそれらの経験を活かしたい思いもあるのでは?

前回、シエラに言われて印象的だった言葉がずっと心に残っています。ある日、セントラルパーク付近を二人で歩いているときに、「実は僕はマイナス思考で……」と自分のことを話したことがあるんです。ステージに立つ前はすごく緊張するし、ソロだと失敗したらどうしようと考えてしまうんだとか。するとシエラが「優は証明しようとしているんだね」と。「多分、自分がやってきたことを舞台上で証明しなきゃいけないと思っているんだよ。だけどそんなことは全然必要なくて、お客さんとただその時間を共有すればいいんだよ」って。すごく納得しました。

城田優

城田優

確かに自分は絶対に失敗したくない、成功しなければいけないと思っていた。それを証明するために、要はオーディションのような感覚で舞台に立っていた部分がたくさんあったなと。でも彼女たちは違うんですよね。オンオフの切り替えがほとんどない。リハーサルと同じような感覚で「よし行こうぜ!」と、本番のステージでも本当にラフに歌い上げる。僕みたいに「失敗したらどうしよう……」とか、起こってもいないことに不安を抱くような緊張ではなく、どちらかというと「これから何が起こるんだろう!」というポジティブな緊張感で挑んでいるんです。やっぱり、彼らのそういう姿を見ると、僕もそっち側にいきたいなと思います。今回はあまり気負うことなく自分の持っているエネルギーを出しきって、互いの相乗効果でさらに盛り上がっていけたらいいなと思います。

ーー演出家には、ブロードウェイより新進気鋭のサラナ・ラパインが新たに加わります。

NYで一度お会いしました。前回はそれぞれがビッグナンバーを歌い次ぐ豪華な内容でしたが、今回は物語という一つの道筋をつけたいと。なおかつウィーン、フランスなど世界各国のミュージカルナンバーや、英語、日本語、スペイン語など僕らのアイデンティティを活かした楽曲を取り入れたいとお話しました。前回が打ち上げ花火なら、今回は線香花火、ねずみ花火、ロケット花火、もちろん打ち上げ花火もありますよ、という構成に。血管の隅々にまで血が巡るよう、歌によって物語にエネルギーを乗せられたら良いなと思います。サラナはすごく頭の良い方なので、一流の素晴らしいショーになると確信しています。

城田優

城田優

「オリンピック、ワールドカップ、そして『4Stars』と一大イベントとして定着させたい!」

ーー城田さんからご覧になった、パティーナ・ミラー、ラミン・カリムルー、シエラ・ボーゲスの魅力とは?

パティーナとお会いするのはこれからですが、間違いなく”モンスター級”の方だと思います。ラミンは最初から僕にも日本にも興味を持ってくれて、好奇心旺盛でイタズラもするようなお茶目なひと。家族思いのお父さんでもあり、NYではラミンの、日本では僕の家族や友達を交えながら一緒に食事をしたりする、僕にとってはお兄ちゃん的存在です。歌に関しては、本当に糸のように繊細な声からダイナミックな高音まで、「あんなに自由自在に声を出せる人が世の中にいますか!?」っていうくらいすごいです。僕自身もキーのレンジはかなり広いんですけど、ラミンの音域の広さと安定感は桁違い。彼の喉はトレーニングの賜物というよりも天性のものなので、叶いません(笑)。

シエラはピュアで優しくてチャーミング。動物や自然が大好きで、日本の神社、公園にもすごく興味を持っている。てんとう虫が好きで前回は、「テントムシ」と片言の日本語でずっと話していました(笑)。ベジタリアンで、ご飯に対してもすごく感謝して食べている姿が印象的です。前回はシエラに音楽を共有することを教えて貰い、支えになりました。「優は何も気にしなくていいよ。そのままで本当に素晴らしいんだから。私たちは嘘をつかないから」と。もちろんラミンやレア・サロンガの2人も僕を支えてくれた。優しさの塊、愛に溢れる人たちですね。

城田優

城田優

ーーそんな『4Stars』の中で、城田さんご自身の魅力とは?

僕は誰とでも仲良くなれる。人が好きで興味があるからこそ、みんなも心を開いてくれたと思うんですね。英語は日常会話程度で、時々速くてみんなの会話に置いていかれることもあるけど、「いま何の話をしているの?」と聞けば、誰かが分かりやすく説明してくれる。100%のコミュニケーションは取れていなくても、言葉の壁を超えたところで、互いにリスペクトし合えていると僕は思っているので。逆に、彼らはひとつの言語で主に生活してきたと思うけど、僕はスペイン語と日本語、そして英語も入ってくるので、インターナショナルな部分は自分の魅力に成り得るのかな。でも、本番になると怖じ気づくし、特に「これです」と自信を持って言えることはないかな……。もっと彼らのエネルギーをもらって開放する。とにかく考えずに、感じることを大事にしたいなと思います。

城田優

城田優

ーー今後もオリンピックのように4年ごとの上演に?

こんなにモチベーション高く、圧倒的な経験値を得られて、何より世界最高峰の人たちと一緒に素晴らしい作品を日本で作れる機会は他にはないので続けていきたいと思っています。事務所の方にはずっと働きかけてきて、今回ようやく実現しました。その際、今後は『4Stars』から5、6と人数が増えたり、僕以外の日本人が出たり、新しい世代にチャンスを与えられるような場になるとか、色々と形が変わっても良いと思います、と提案させて頂きました。

城田優

城田優

ただ、去年やって今年も上演となると、じつは実現させることがとても難しく、素晴らしく価値のある公演なのに「全然プレミアム感がないぞ!」となりかねない(笑)。4年ぐらいのスパンがちょうど良いのかもしれないですね。4年あれば、お互いの経験値も増えますし、どんどん新しいミュージカルの曲も生まれてくると思うので。僕がおじいちゃんになる頃には、オリンピック、ワールドカップ、そして『4Stars』と、日本の中で一大イベントとして定着していたら嬉しいですね。いろんな国のスターたちが集まって日本でショーをやる。「あれ、今年『4Stars』の年じゃない?」という会話が交わされたり。

ーー“日本代表”の城田さんは、いつまで拝見できそうですか。

僕ですか? うーん、あと2回ぐらいは出演して、その後は作り手側に回りたいですね(笑)。

ーー今後への期待が膨らみます。最後に、お客様へメッセージを。

本場ブロードウェイから演出家、出演者、音楽監督が日本にやって来てショーを作る貴重な機会です。本来なら、僕らが飛行機に乗ってホテルを予約して劇場へ足を運ばない限り、彼らのショーは観られないわけですから。ただでさえ豪華な上、今回はウィーン・ミュージカルやフレンチ・ミュージカル、さらに日本の皆様に馴染みのある僕が出演した『エリザベート』など、普段彼らが絶対に歌わないであろう曲も披露してくれる、今までにない試みです。(大阪公演は)4日間と公演期間も短いので、迷っていたら確実にはなくなると思います。前回も立ち見や、が入手できない方がたくさんいたので。絶対に素晴らしいショーになるので、ぜひ観に来て欲しいです。

城田優

城田優

取材・文・撮影=石橋法子

公演情報
『4Stars 2017』
 
■演出:サラナ・ラパイン
■出演:パティーナ・ミラー、ラミン・カリムルー、シエラ・ボーゲス、城田優 ※アルファベット順
 
<大阪公演>
2017年12月14日(木)~12月17日(日)
梅田芸術劇場 メインホール

<東京公演>
2017年12月20日(水)~12月28日(木)
東京国際フォーラム ホールC

■一般発売(東京・大阪) 9月16日(土) 
 
■問い合わせ(10:00~18:00)
梅田芸術劇場【東京】0570-077-039 【大阪】06-6377-3800
 
■公式HP http://4stars2017.com
■公式ツイッター @4Stars_2017  
■公式インスタグラム @4Stars_2017
 
 
【 一部セットリスト&歌唱者 】※変更の場合あり
「アナザー・デイ・オブ・サン」『ラ・ラ・ランド』より/シエラ・ボーゲス & 城田優
「アンセム」『チェス』より/全員
「闇が広がる」『エリザベート』より/ラミン・カリムルー & 城田優
「カフェ・ソング」『レ・ミゼラブル』より/ラミン・カリムル―
「僕は怖い」『ロミオ&ジュリエット』より/城田優
「マジック・トゥ・ドゥ」『ピピン』より/パティーナ・ミラー
「ネバーランド」『ファインディング・ネバーランド』より/ラミン・カリムルー
「天国へ行かせて」『天使にラブ・ソングを』より/パティーナ・ミラー
「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」『オペラ座の怪人』より/ラミン・カリムル―
「ウェア・ディッド・ザ・ロック・ゴー」『スクール・オブ・ロック』より/シエラ・ボーゲス
「墓場にて」『オペラ座の怪人』より/シエラ・ボーゲス

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