相楽樹、2018年は三島由紀夫戯曲に挑戦! デヴィッド・ルヴォー演出の舞台『黒蜥蜴』出演への思いを語る
『黒蜥蜴』合同取材会にて(撮影/石橋法子)
2018年1月より、江戸川乱歩の傑作を三島由紀夫が戯曲化した舞台『黒蜥蜴』が東京と大阪で上演される。耽美でグロテスク、怪奇的な謎解きも楽しい究極の”純愛”ストーリー。演出は三島作品を敬愛するイギリス人演出家、デヴィッド・ルヴォー。美貌の女盗賊・黒蜥蜴を中谷美紀、好敵手にして運命の恋人、探偵の明智小五郎を井上芳雄が演じる。そして宝石商・岩瀬の娘で、物語の鍵を握る早苗を演じるのが相楽樹(さがらいつき)だ。NHK朝の連続テレビ小説『とと姉ちゃん』小橋鞠子役も記憶に新しい注目の若手女優が、大阪公演の合同取材会で意気込みを語った。
『黒蜥蜴』合同取材会にて
「早苗は物語の鍵を握る大事な役。中谷さんに圧倒されることなく役を楽しみたい」
ーー魅力的な作品への出演が決定しました。
演出のルヴォーさんとは面接という形でお話しました。私が偶然、美輪明宏さん(演出・美術・衣装・主演)の舞台『黒蜥蜴』を観ていたこともあり、黒蜥蜴や早苗についてどう思うかとか。その時はまさか自分が出演するとは思ってもいなかったので、美輪さんの舞台を観ていたことに不思議な巡り合わせを感じました。正式に出演が決まった時は、純粋に嬉しかったですね。
相楽 樹
ーー黒蜥蜴、岩瀬早苗の印象は、何とお答えに?
舞台を拝見して、黒蜥蜴でもある緑川夫人は美への執着を強く持っているひとだなと。宝石を盗んだり、殺めてまでも美しい人の体を手に入れようとする。女性なら美への追求そのものには共感されるかもしれませんが、彼女はダイヤとか冷たくて裏切らないものでしか自分の欲を満たせない。この解釈が正しいかは分かりませんが、美しいけど少し悲しい女性なのかなと。
相楽 樹
早苗は、宝石商の娘。お金持ちで育ちがいい本物のお嬢さん。じつは物語の後半で明かされる、ちょっとした秘密がある役です。物語の鍵を握る大事な役なので、もしも自分が演じることになればしっかりと務めたいですし、魅力的な役だと思いますとお伝えしました。
相楽 樹
ーーちなみに、相楽さんが美しくあるために実践されていることとは。
私が言えることじゃないですけど、よく食べてよく寝ることじゃないでしょうか。普通のことを当たり前にする。エステにお金をかけることも大事かもしれませんが、私は普通の生活をよりよく過ごすことが一番だと思います。
ーー改めて、戯曲を読んだ感想をお聞かせください。演出のデヴィッド・ルヴォーさんは「古きよき時代のハリウッドの撮影スタジオのような場所」を装置案として考えているそうですね。
ルヴォーさんは本作を「グロテスク・ビューティー」と表現されていて、今は生バンドの演奏を想定していると仰っていました。大劇場に生演奏の迫力と中谷美紀さん、井上芳雄さんの芝居が加わったら相当すごい舞台になるんじゃないかなと。美輪さんの舞台ではドレスや装飾品が華やかでシーンが変わるたびに、そのゴージャスさに目を奪われました。その印象があるので、ルヴォーさんがセットも含めどう演出されるのか楽しみです。戯曲は現段階のものをそのまま使われるかは分かりませんが、前半は中谷さん演じる緑川夫人と早苗との掛け合いの台詞で結構なページが割かれていますね。
相楽 樹
ーー物語の鍵を握るのは、早苗なのですね。
美輪さんの舞台でも少しそういうシーンはありましたが、最後には早苗ってただのお嬢さんだと思っていたら、「実はこうだったの!?」となると思います。ネタバレになるので詳しくは言えませんが(笑)。それも、ルヴォーさんがどこまで早苗の役割を私に任せてくれるかによると思います。
相楽 樹
ーー主演を務める中谷美紀さん、井上芳雄さんの印象は。
中谷さんは小さい頃からドラマなどで目にしてきた女優さんですし、特にドラマ『JIN-仁-』の中谷さんが色っぽくて大好きです。ご本人にしか出せない唯一無二の魅力があり、女性としても憧れる存在です。今回は中谷さんとご一緒するシーンがあるので、劇場の大きさや中谷さんの存在に圧倒されないよう、負けずに舞台に立っていなくてはいけないと思います。せっかく頂いた役なので、存分に楽しみたいですし。
相楽 樹
井上さんは舞台『陥没』を拝見しました。ちょっとダメな人の役なのに、気づいたら井上さんのことばかり目で追ってしまう。その事に気づいて、終演後に周りの女性たちに聞いてみたら、みんなそうだと言っていて。やっぱり、スター井上さんのカッコ良さですよね。コメディの要素もあったりして、歌だけじゃなくストレートプレイでもこんなに表情豊かで振り幅のある方なんだと知って、なおさら緊張してきました(笑)。
相楽 樹
「中谷さんの妖艶さにクラクラし、井上さんのカッコよさにメロメロになるはず!」
ーー相楽さんは、大阪で舞台に立たれたことはありますか。
2014年に一度、劇団競泳水着『別れても好きな人 2014』の大阪公演で、インディペンデントシアター1stのステージに立ちました。競泳水着を着る劇団ではありませんので、念のため(笑)。月9みたいに純粋な胸キュンのラブストーリーをよく手掛けられる演出家の方で、同一人物の過去と未来を演じました。当時19歳でしたが、大学生時代と彼女が看護婦となって働く28歳ぐらいの時を演じました。お客さんの目の前で色々なプレッシャーを感じるということを、小劇場で経験しました。
相楽 樹
ーー大劇場への出演は?
初めてです。7月に出演させて頂いた、吉本新喜劇座長・内場勝則さんの主演舞台『FILL-IN~娘のバンドに親が出る~』は紀伊國屋ホールだったので、私の中では大きな会場でしたが、今回は日生劇場が約1,300席、梅田芸術劇場が約1,900席と倍以上ですから! 最後列のお客さんの顔まで見えるのかな? ちゃんとお芝居が届くといいなと思います。
相楽 樹
ーー劇団「五反田団」主宰で映画監督でもある前田司郎さんのWSに参加されたり、小劇場への興味は以前から?
小劇場は観るのも好きで、高校生の頃から頻繁に出演もさせて貰うようになりました。きっかけはマネージャーさんが小劇場好きで「芝居の勉強になるから」と、一緒に連れられて観た劇団競泳水着さんが面白くて。「私も出てみたい!」とオーディションを受けたのが一番最初です。前田司郎さんは普段から仲良くさせて頂いています。本を紹介してもらったり、知らないことを色々と教えて貰っています。
ーー小劇場での経験が活かされている部分はありますか。
小劇場では劇場入りすると演者みんなで舞台セットを組み立てたり、メイクも衣装も全部自分たちで用意する。例えば、衣装パレードといってみんなで役に似合う私服を持ち寄って、脚本家や演出家からOKが出たらそれが衣装になるとか。本当に手作り感覚がすごくある。そういう裏方の大変さを経験できたことは、自分のためにもなりました。だから、小劇場で早替えの人とかを目にすると「袖で慌てて着替えたんだろうな……」とか、色んな目線で観てしまいます(笑)。
相楽 樹
ーー小劇場ファンや同世代の方に『黒蜥蜴』をおすすめするとしたら?
文豪の作品で難しいとか、大人向けの作品に思われるかもしれませんが、緑川夫人と明智小五郎の恋愛は報われないけど、物凄く情熱があるので。好きなひとに寄り添いたいけど寄り添えない切なさとか、誰かを愛することは年齢に関係なく誰にでも共通することだと思います。男性は中谷美紀さんの妖艶さにクラクラし、女性は井上芳雄さんのカッコよさにメロメロになると思います。どんな方にも楽しんで頂ける作品です。
ーー黒蜥蜴と明智の知的な心理戦も楽しみです。最後に、本作への意気込みを。
ここまで大きな劇場で古典の名作を演じることは、私にとって初めての挑戦になります。豪華なキャストの方々と、デヴィット・ルヴォーさんの演出でご一緒させて頂けることは不安もありますが、とても楽しみです。きっと自分にとって大事な作品になると思うので、みなさんも一緒に作品世界にどっぷりと浸り、早苗がどういう方法で”いなくなった”のか、推理しながら楽しんで欲しいなと思います。
『黒蜥蜴』合同取材会にて
取材・文・撮影=石橋法子
■原作:江戸川乱歩
■脚本:三島由紀夫
■演出:デヴィッド・ルヴォー
一倉千夏、内堀律子、岡本温子、加藤貴彦、ケイン鈴木、鈴木陽丈、滝沢花野、長尾哲平、萩原悠、藤田玲、松澤匠、真瀬はるか、三永武明、宮菜穂子、安福穀、山田由梨、吉田悟郎(50音順)
■公演日程:
東京公演:2018年1月9日(火)~ 28日(日)日生劇場
大阪公演:2018年2月1日(土)~ 5日(月)梅田芸術劇場メインホール
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■先着先行受付:2017年9月12日(火)12:00~9月27日(水)18:00
■一般発売:2017年9月30日(土)~
■料金:
東京公演 S席 12,500円 A席 9,000円(全席指定)
大阪公演 S席 12,500円 A席 9,000円 B席 5,000円(全席指定)
■企画・制作:梅田芸術劇場
■問い合わせ(10時~18時):梅田芸術劇場 0570-077-039[東京] 06-6377-3800[大阪]
■公式サイト:http://www.umegei.com/schedule/634/