巨匠シギスヴァルト・クイケンが語る“バッハの多彩な音楽を堪能する2日間”

インタビュー
クラシック
2017.9.14
シギスヴァルト・クイケン

シギスヴァルト・クイケン

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古楽界をリードし続ける巨匠シギスヴァルト・クイケンが、ラ・プティット・バンドとともに来日し、10月11日(水)、10月12日(木)の2日間にわたりオールJ.S.バッハ・プログラムの演奏会を開催する。シギスヴァルト・クイケンに今回のプログラムの聴きどころについて伺った。

――今回のプログラミングの意図と聴きどころを教えてください。

「バッハプログラム」では、バッハの芸術の驚くべき多様性をご覧に入れたいと思います。彼はすべてのジャンルにおいての達人です。

・フランス風序曲+舞踊形式(管弦楽組曲第3番)
・学術的で複雑な対位法:前の時代からの伝統に基づいているが、時に自分なりの解釈で曲が作られた時代のスタイルにアレンジしたもの(「音楽の捧げ物」よりトリオ・ソナタ)
・イタリアの器楽協奏曲形式(チェンバロ協奏曲 ヘ短調)
・ドイツのカンタータ(カンタータ第204番「われ心満ちたり」)

――日本では比較的演奏機会の少ないバッハのカンタータについて楽しみ方、聴きどころを教えてください。

ソプラノ独唱と器楽のためのカンタータ「満足について」(第204番、おそらく1726-1727年作曲)は教会カンタータではなく、世俗カンタータとして、道徳や哲学、信仰心について書かれています。富や贅沢なくらしを目指すかわりに、心の安らぎに幸せを見いだすことや、どんな状況でも平静でいること、そして自身の良心の中にある本質だけに注意を向けるよう促されています。

歌詞は、詩人クリスティアン・フリードリヒ・フーノルト(1721年没)の詩と、同じテーマを扱った14の現存する4行詩(作者不明)が組み合わされています。バッハは、弦楽器、1本のトラヴェルソ、2本のオーボエとハープシコードだけの編成にもかかわらず、楽器の特徴を最大限に生かし、色彩に富んだかけあいを書いています。このカンタータは8曲からなり、レチタティーヴォとアリアが交互に展開する古典的な構成です。アリアは当時のダンスと関係しています。

――メンバーには若い音楽家も含まれています。結成当時と現在と、音楽作りにおいて違いがあれば教えてください。

ラ・プティット・バンドは、1972年の結成当初から、“進化”し続けている楽団です。様々な国籍の、大変多くの若い音楽家(日本人も多く、今やバロック奏者として有名なあの人もです!)がある時期をラ・プティット・バンドで過ごし、その進化に寄与してきました。ラ・プティット・バンドは、今も、歴史あるバロック・古典音楽を試し、発展させる実験室のような場所なのです。常に新しく、若い精神を持ったグループとして、変化し続けながら経験を深化させています。

私が、ソロ歌手(1パート一人)のバッハの宗教的な作品に取り組むと決め、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラを再興したここ数年は、"指揮者"として指揮をする機会はどんどん減り、ヴァイオリン、もしくはバスパートからリードするようになりました。もちろん、より大きな編成で後の時代の作品を演奏するときは、全体をまとめるために指揮者として前に立ちますが。

シギスヴァルト・クイケン

シギスヴァルト・クイケン

 
公演情報
ラ・プティット・バンド~オールJ.S.バッハ・プログラム~

日程:2017年10月11日(水) 19:00
会場:浜離宮朝日ホール


主催:朝日新聞社
協賛:キングインターナショナル

<出演>
ヴァイオリン:シギスヴァルト・クイケン、サラ・クイケン
ヴィオラ:マルレーン・ティアーズ
チェロ:ロナン・ケルノア
フルート:アンネ・プストラウク
オーボエ:ヴァンシャンヌ・ボウドユイン、オフェル・フレンケル
チェンバロ:バンジャマン・アラール
ソプラノ:アンナ・グシュヴェンド

<プログラム(11日・12日共通)>
管弦楽組曲 第3番 ニ長調 BWV1068 ※弦楽のみで演奏
「音楽の捧げ物」BWV1079より トリオ・ソナタ
チェンバロ協奏曲 第5番 ヘ短調 BWV1056
カンタータ 第204番 満足について「われ心満ちたり」BWV204

代:7,500円(全席指定・消費税込)

公演公式ページ:http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/event/2017/03/event873.html

 
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