白井晃演出で多部未華子が美貌の青年貴族に! 『オーランドー』開幕
多部未華子『オーランドー』
白井晃演出で、日本初演となる『オーランドー』が、KAAT神奈川芸術劇場<ホール>にて2017年9月23日(土・祝)より開幕。公演に先駆け、9月21日(木)には公開フォトコールと囲み会見が行われた。
『オーランドー』はイギリスの女流作家ヴァージニア・ウルフの代表作で、アメリカの劇作家サラ・フルールが翻案した作品。16世紀のイングランドに生まれた貴族の少年・オーランドーが、エリザベス女王をはじめあらゆる女性を虜にしながら、数奇な運命を辿る姿を描いている。出演は美貌の青年貴族オーランドー役を演じる多部未華子のほか、小日向文世、戸次重幸、池田鉄洋、野間口徹、小芝風花。
多部未華子『オーランドー』
多部未華子(中央)『オーランドー』
美貌の少年貴族オーランドー(多部)は、16世紀、エリザベス一世(小日向)統治下のイングランドで生まれ、その美しさで女王をも虜にする。成長するにつれ、ますます輝き、ロンドン中の貴婦人(戸次、池田、野間口)が彼に恋い焦がれる。
小日向文世、多部未華子『オーランドー』
小日向文世、多部未華子『オーランドー』
1608年、折しもロンドンを大寒波が襲う。寒波とともに現れたのは、ロシアの姫君サーシャ(小芝)。オーランドーとサーシャはたちまち恋に落ち、凍ったテムズ川でスケートを楽しむなど大胆な行動で宮中の話題となる……。
ところが、サーシャはオーランドーを裏切ってロシアに帰国。傷心のオーランドーは、トルコ大使としてコンスタンティノープルに渡ることを願い出る。そこでも、人々の心を掻き立てるオーランドー。数多の女性と浮名を流すオーランドーもいつしか30歳になっていた。
小芝風花『オーランドー』
多部未華子、小芝風花『オーランドー』
ある日、オーランドーは眠ったままとなる。6日目に民衆の暴動が起き町は大混乱に陥るが、それでも彼が起きる気配はない。ついに7日目の朝に目覚めた彼は、なんと女性になっていた!
「イングランドに帰りたい」18世紀、オーランドーは女性としてロンドンの邸宅に帰還することとなる。さらに19世紀、ひとり所在なさを抱えたオーランドーは、運命の人マーマデュークと出会い、即座に恋に落ちる。そして時は巡り20世紀……。
フォトコールでは、オーランドーとサーシャが出会うまでが公開された。多部は、広い舞台に凛々しく瑞々しい青年オーランドーの姿をぐっと際立たせる。小日向は、エリザベス女王として豪華なドレスを身にまといながら、恋に振り回される女性の心を熱演。そして小芝は、サーシャ役としてミステリアスな立ち振舞いで、オーランドーだけでなく観客の心も奪っていく。
小日向文世(中央)『オーランドー』
そして、物語を動かしていくのは戸次、池田、野間口。3人は、年代も性別も異なる複数の人物を次々演じ分ける上に、ストーリーテラーを担ったり、天蓋を支えたり、テムズ川で凍ったりと大忙し。また、林正樹、相川瞳、鈴木広志の生演奏も加わり、少人数とは感じさせない楽しさと華やかさを添えていた。
多部未華子、戸次重幸『オーランドー』
池田鉄洋『オーランドー』
(前列左から)小芝風花、多部未華子、小日向文世、白井晃(後列左から)野間口徹、戸次重幸、池田鉄洋
囲み会見は、多部の「頑張りたいと思います。順調…順調ですかね?(笑)」と共演者への問いから始まった。オーランドーは、男性から女性へと性を越え、さらに時を超え、真実の愛を追求していく役どころ。自身の見どころについては「恋は盲目というように、オーランドーはどんどん溺れていくので……」と恋する姿を見てほしいと控えめに語った。
一方、小日向は、自身の女王姿に「こんな衣裳を着る仕事ができるとは夢にも思っていなかったので、芝居を続けていてよかったなと!こういう衣裳を着て、顔を真っ白く塗って(芝居を)やりたいなとずっと思っていたんですよ」と満面の笑み。
そして、フィギュアスケートを得意とする小芝は、芝居でスケートをどう表現するのかを問われると、「床を蹴るという演出でやるんですけど……こういう説明って、難しいですよね(笑)」と困り顔だったが、白井ならではの演出で表現されているので注目だ。
演出について、白井は「皆さんに複数の役をやっていただくので、変わり身が大変なんですけど……七変化ぶりを楽しんでいただけると思います」とまた新たな表現に挑戦してきたことを伺わせた。
その変わり身がたくさんある野間口、戸次、池田からは、三人三様の苦労話が飛び出した。野間口が「ご存じの方もいらっしゃると思いますが、白井さんの稽古は期間も長ければ、時間も長いんです。夏が終わっちゃいました(笑)」と言えば、戸次も「休憩時間も20分とかだったもんね」と続く。
池田は「白井さんに貴婦人を演じてくれと言われたのですが、こんな感じ(早替えのための簡易なドレス)なので、貴婦人になるモチベーションがなかなか上がらず……(笑)」と、複雑な乙女心(?)を明かし、笑いを誘った。
公開された姿以外で、出演者たちがどんな登場をするのか、開幕が楽しみだ。性別を超え、時代を超え、演劇的な楽しさがいっぱいに詰まった物語を、ぜひ劇場で。
取材・文・撮影=折原 怜
【神奈川公演】
■日程:2017年9月23日(土・祝)~2017年10月9日(月・祝)
■会場:KAAT神奈川芸術劇場<ホール>
【兵庫公演】
■日程:2017年10月21日(土)~10月22日(日)
■会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
【東京公演】
■日程:2017年10月26日(木)~10月29日(日)
■会場:新国立劇場 中劇場
■原作:ヴァージニア・ウルフ
■翻案・脚本:サラ・ルール
■演出:白井晃
■翻訳:小田島恒志・小田島則子
■出演:多部未華子 小芝風花 戸次重幸 池田鉄洋 野間口徹 小日向文世
■演奏:林正樹 相川瞳 鈴木広志
■公式サイト:http://www.parco-play.com/web/play/orlando/