秋田で偶然出会ったミュージカル
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わらび座「政吉とフジタ」 撮影:コンドウダイスケ
レオナール・フジタの大壁画も題材のご当地ミュージカル
ひょんなことから9月の半ばに秋田へ出かけた。東京駅で買った仙台名物「牛タン弁当」を食べながら「トランヴェール」誌を読んでいた。そこで発見したのが、わらび座のミュージカル『政吉とフジタ』。フジタとは、あの世界的画家のレオナール・フジタこと藤田嗣治のことで、政吉とは、1930年代のものを中心に藤田作品を多く収蔵していた秋田の資産家、美術蒐集家である平野政吉のことだ。秋田県立美術館の看板とも言える大壁画「秋田の行事」は、昭和12年当時の秋田の人々の暮らし、年中行事と祭りが、秋田の産業、歴史までもが散りばめられ描かれている。縦365センチ、横2050センチで、製作当時、世界一と言われていた大作だが、これも藤田が平野政吉の求めに応じて、二人で構想した美術館を飾るために描かれた。藤田はこの壁画をたった15日で一気に描き上げのだとか。
ミュージカル『政吉とフジタ』は、政吉が藤田による一枚の絵と衝撃的な出会いをするところから、「本物の芸術を秋田に、秋田の子どもたちに!」 との願いから、情熱を持って藤田を口説いたこと、巨大壁画「秋田の行事」を製作したこと、パトロンと画家の関係を超えて、尊敬と信頼の強い絆で結ばれ、政吉が藤田の絵を集めた美術館を秋田に作ることを約束したことといった物語を紡いだミュージカルだ。脚本は、最近ではテレビ朝日系の『エイジハラスメント』を書いた内館牧子で、彼女も秋田市出身らしい。と、目を窓の外に目を向けると、そこは田沢湖駅だった。ここには、劇団わらび座の本拠地であるわらび劇場を中心に、人と文化の出会いと交流の場として、芸術・芸能・ホテル・温泉・地ビール・工芸・郷土料理を楽しめる、「たざわこ芸術村」がある。なんだか、このタイミングの良さに一人、にんまりする。ちなみにいま、わらび劇場ではラッパ屋の鈴木聡脚本・演出によるミュージカル『為三さん』を2016年1月3日(日)まで上演している。
二人の男が尽力した平野政吉美術館は2013年6月をもって閉館したそうだが、秋田駅から徒歩10分ほどのところに移転した秋田県立美術館に藤田嗣治の作品群は収蔵されているのだそう。そして、このミュージカルが上演されている「にぎわい交流館AU」は、実は美術館のすぐ隣にある。せっかくだからミュージカルと大壁画、セットで楽しみたかった。秋田の銘酒は飲んだが、滞在した日は休演日だったのだ。
わらび座「政吉とフジタ」 撮影:コンドウダイスケ
日時:2015年8月30日(日)〜12月13日(日)
会場:にぎわい交流館AU
脚本:内館牧子 演出:栗城宏 作詞:高橋亜子 作曲・編曲:飯島優 振付:高田綾
出演:安達和平 累央 丸山有子 碓井涼子
一般2,500円/小中学生1,500円 ※当日券は各500円増
問合せ・申込み:わらび劇場 TEL.0187-44-3915、秋田商工会議所 Tel.018-866-6676、わらび座オンライン予約 http://www.e-get.jp/warabi/pt/