気鋭のヴァイオリニスト、ノエ・乾が語るヘルシンキ・バロック・オーケストラと奏でる『四季』 ~ コスモポリタンの感性に耳を傾ける

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クラシック
2017.10.27
ノエ・乾

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ヴァイオリニストの若き名手、ノエ(のえ いぬい)は、まさに「コスモポリタン」と呼ぶに相応しい道を歩んできた。ギリシャ人の母と日本人の父をもち、ベルギー・ブリュッセルに生まれた彼は、同国のみならず、パリ国立高等音楽院やドイツのカールスルーエ国立音楽大学でも研鑽を積んだ。ナポリ・クルチ国際コンクール第1位をはじめとする輝かしい受賞歴を誇り、アルゲリッチやカヴァコスといった著名演奏家との共演してきた。こうした世界を舞台とした躍進の傍ら、祖母が福島に住んでいることから震災復興に向けたコンサートにも情熱を傾け、音楽を通じて温かな時間を届けることで、東北の人々の心に寄り添い、絆を深めてきた。

その彼が、12月1日、東京・紀尾井ホールにて開催される「『四季』と『ブランデンブルク協奏曲』の夕べ」と題されたコンサートに出演し、アーポ・ハッキネン率いるヘルシンキ・バロック・オーケストラと共にヴィヴァルディ『四季』を披露する。北欧古楽シーンの精鋭集団と、コスモポリタンとしての瑞々しい感性の競演には期待が高まる。また、乾は先だって、クライスラーの知られざる名作品の数々を堪能できるアルバム『ノエ・乾 クライスラーを弾く』をリリースしたばかり。公演と新アルバムの聴きどころから、福島への想いまでを訊いた。

ノエ・乾

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古楽器で、「四季」の新たな魅力を

――まず、12月1日に行われるヘルシンキ・バロック・オーケストラの公演に向けての心境をお聞かせください。

このコンサートの最後を飾る「四季」でヴァイオリン・ソロを務めます。言わずと知れたヴィヴァルディの名曲です。今回は、フィンランドでバロック音楽の演奏をリードしてきたヘルシンキ・バロック・オーケストラとの共演ですから、曲の新たな魅力を引き出せるのではないかと、僕も今から楽しみにしています。

――ヘルシンキ・バロック・オーケストラは、今年設立20周年を迎えたそうですね。どんな印象をおもちですか。

ハッキネンさんが音楽監督を務めるようになってから、アクティブに活動を展開され、国際的にも高い評価を得ています。イントネーション(音程)に優れた、素晴らしいアンサンブルで、それぞれのメンバーの個性も発揮できるオーケストラという印象がありますね。

――古楽オーケストラとの共演に際して、ノエさんは、どのようなスタイルで演奏されるのでしょうか。

ヘルシンキ・バロック・オーケストラの方々は、皆、古楽器(現代の楽器にいたる改良が施されていない古い様式の楽器)で演奏されるので、今回は僕も普段使っている楽器とは違う古楽器を準備します。弦や弓も含めて、「オール・バロック」です。古楽器を通じて改めてこの作品に深く向き合うことで、時代の音楽にぴったりのものが出てくるんじゃないかと思っています。また、今回は、これまで演奏しているよりも低いピッチ(A=415)で演奏します。実は、僕がこのピッチで「四季」を演奏するのは初めて。これは、今までに何度も演奏してきたこの曲だからこそできることです。

ノエ・乾

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――「四季」の中で、お気に入りの楽章はどこですか。

ゆっくりとした楽章が大好きで、例えば、「春」の第2楽章の犬の鳴き声が表現されているところ。短いですが、キャラクターが明確で魅力的ですね。また、ゆっくりとした曲だと、バロック時代特有のオーナメンテーション(装飾法)を色々と付けることできるので、そういった面白みもあります。

――6年前からバロック音楽への造詣を深めてきたということですが、その歩みを振り返って、いかがですか。

最初の2、3年は、簡単ではありませんでした。バロック音楽を学ぶ前は、情感を込めて、旋律をスラーで繋げるスタイルで弾いていましたが、そこから脱して、それぞれの音符を繋げず、自然にはずむように弾けるようになるまで、時間がかかりました。バロック音楽は奥が深く、ダンスとも密接に繋がっています。ダンスを感じられるようになってくると、演奏の際の動きや構えから変わってきますね。今回のコンサートでは、6年間の成果をお聞きいただければ嬉しいです。

ノエ・乾

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福島に寄せる愛

――10月には、4枚目となるアルバム「クライスラーを弾く」がリリースされました。これについて教えていただけますか。

これまでコンサートで演奏してきたクライスラーの代表的な作品群に加えて、知られざる作品も盛り込んだ充実のアルバムです。楽曲の多彩さから、クライスラーを再発見できるのではないでしょうか。例えば、R・シュトラウスのような「ウィーン狂詩曲風幻想曲」や、コルンゴルドのような「エピソード」という作品。これらの曲が、日本で聴ける機会は滅多にないと思います。クライスラーの作曲家としての多面性を楽しんでもらいたいですね。

――収録は、福島県猪苗代町でされたと伺っています。

毎年、『ばんだい高原国際音楽祭』を開催している猪苗代町体験交流館「学びいな」で、今年の5月に録音しました。

ノエ・乾

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――福島といえば、2011年以降、ノエさんは毎年、東日本大震災復興支援コンサートに取り組んでいらっしゃいますよね。

実は祖母が福島におり、大震災後、連絡がつくまで3日間かかりました。僕自身、甚大な被害に大きなショックを受け、こういう時にこそ、何かをやりたいという気持ちが自然と芽生えてきた。そのため、来日を決め、2011年4月11日に震災復興コンサートを名古屋で行いました。以来、福島を中心に、仮設住宅での演奏やチャリティコンサート、音楽祭といった場で演奏を続けてきました。今では、福島だけでなく、周りの地域から足を運んでくださる方もいらっしゃり、「文化が人と人とを繋ぐ力はすごい」と感じます。被害を受けたところは、まだまだ復興の途上ですが、初めて会ったときに感じた人々の暗く、固い表情に比べて、少しずつ心が元気になってきているように感じます。そうした顔を見られるだけでも嬉しいですね。

――最後に、読者のみなさんに、公演に向けてのメッセージをいただけますか。

今回のコンサートは、僕がソロを務める「四季」だけではなく、バッハの「ブランデンブルク協奏曲」といった名曲を多く配したプログラムです。どなたでも楽しんでいただける内容だと思います。また、僕にとっては、古楽オーケストラとの共演という大きなチャレンジとなります。以前から僕の演奏を聴いてくださった方々には、新鮮な驚きをお届けできると確信していますし、何か新しいことが飛び出してくるコンサートになりますので、是非、足をお運びいただければ嬉しいですね。

ノエ・乾

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取材・文=大野 はな恵 撮影=荒川 潤

公演情報
ノエ・乾&ヘルシンキ・バロック・オーケストラ
2017 Xmas コンサート 『四季』と『ブランデンブルク協奏曲』の夕べ
 

■会場
紀尾井ホール (東京都)
■時間
2017年12月1日(金) 開演 19時
■出演
ノエ・乾(ヴァイオリン) 
アーポ・ハッキネン(指揮・チェンバロ) 
ヘルシンキ・バロック・オーケストラ
■曲目
J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲 第3番 BWV1054 
J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲 第5番 BWV1050 
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集「四季」作品8

 

 

プレゼント企画
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【応募方法】
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※ご応募いただく際には、応募フォーム内の注意事項を必ずお読みください


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【プレゼント応募期間】
10月27日(金)12:00 ~11月4日(土)23:59
 
【当選発表】
当選の発表は、プレゼントの発送をもって代えさせていただきます。
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