ザ・プーチンズ改め「ザ・ぷー」、改名後初のワンマン公演ワンマン・ライヴ『怪電波放送局』開催!~テルミンと美声の“無駄遣い” by 高木大地(金属恵比須)

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2017.10.31


かつてのロックは、「カッコよさ」だけではなく、「面白さ」も同時に内包していたように思う。

カッコつけるが、ボケる時はとことんボケる。

代表的なものとして、ピーター・ガブリエル在籍時のジェネシス(1970~1975年)を例に挙げたい。

ヨーロッパの気品のある絵画調のジャケットに、深遠で時に陰気で猟奇的でもある文学的歌詞世界――レコードを聞くかぎり、インテリジェンス漂う気品のあるロックに聞こえるジェネシス。しかしライヴでは一転、MCで観客をどっと笑わせる。

そして、物語を音楽でなぞらえるのでおのずと演劇的要素が強くなり、結果として非常に滑稽な被り物を装着したりもする。あまりに奇態なその姿に観客はまた笑う。

申し遅れたが、私・高木大地はプログレッシヴ・ロック・バンド「金属恵比須」を主宰する者で、ギター、ヴォーカル、作詞・作曲のほか、MCと前説の担当をしている。バンドの方針として、「70年代ロックの正統的な継承者」を標榜している。特に、ジェネシスからの影響は絶大で、演劇的な物語の要素を土台に、ステージセットにも時間をかけ、MCや舞台構成には笑いの要素をスパイスとして加えている。

そんな中、70年代ロック・バンドのほかに、近頃参考にしているユニットがある。

ザ・ぷー」。

7月まで「ザ・プーチンズ」という印象的な名前で活動していたので、ご存じの方も多いのではないか。「ザ・プーチンズ」改め「ザ・ぷー」が11月に改名後、初のワンマン・ライヴ『怪電波放送局』を行なうということを聞きつけた。3日にわたり計4公演。しかも開催場所はニッポン放送のイマジンスタジオ。本格的な放送局で「放送局」の開催とはただごとではない。

ザ・ぷー「THE KAIMEI」in チームラボジャングル/冒頭部分がどこかP・ガブリエルっぽい


ザ・ぷー」をご存じのない方のために簡単にご紹介をば。

ヴォーカル兼ギターの街角マチオと、テルミン奏者の街角マチコ、そしてさるのパペットである川島さる太郎、プロデューサーのSONE太郎の4人(3人+1匹?)で構成される。

「国際的怪電波ユニット」を自称しているが、「怪電波」とは、マチコの操る不思議な楽器「テルミン」のことだろう。

アンテナに手をかざして、音程や音量を調節しながら演奏するテルミン。1919年、ソ連の物理学者兼スパイのレフ・テルミンが開発した電子楽器であり、かのロシア革命の指導者レーニンをも感動させたりもした不思議な逸品だ。

なおレフ・テルミンの物理学者としての功績は、「マイクロ波による電波の振動を音声に変換する画期的な盗聴器を開発した」(Wikipedia)とのことで、まさに「怪電波」。

そのテルミンを――決してジミー・ペイジのようなギミック的に使用するのではなく――メロディを奏でる楽器としてポピュラーミュージックに取り込んでいる点が非常に特徴的だ。

それもそのはず、街角マチコは、数々のメディアでテルミン奏者として取り上げられ、「テルミン大学」という普及活動も行ない、また、「全日本テルミンフェス」なるイベントを毎年開催し、恐ろしく官能的な音色を紡ぎ出している本格派である。

そこに、街角マチオによる甘い美声の歌が乗る。ボサノバ、ラップ、あらゆるジャンルの歌をも美しくまとめ上げる魔性の魅力がある。

しかしマチオの真の魅力は、「美声」ではない。その美声で発せられる「ナンセンスな歌詞」「シュールなMC」というか「コント」こそが本当の魅力なのだ。

なにをいいたいのかまったくわからないけれどもヒット曲となった「ナニコレ」。

「ナニコレ」MUSIC VIDEO


若い恋愛模様を法律用語で淡々と語る「恋愛契約書」。

「恋愛契約書」MUSIC VIDEO


いってしまえば、「美声の“無駄遣い”」である。

そして、かなりの長い時間を使って行なうMCもしくはコント。これもまた「美声の“無駄遣い”」なのだ。かつてジェネシスが、「怪奇のオルゴール」「サパーズ・レディ」「月影の騎士」などを奏でる前に必ず行なった笑いある語りを彷彿とさせる。

GENESIS「月影の騎士」


音楽性は最新であっても、精神的にはどことなく70年代ロックの香りを漂わせ、「舞台芸術の一つの完成型」とも思えるステージ。

「演劇と音楽とコントをMIXした独自のスタイル」と本人たちの弁の通り、非常にプログレッシヴな展開が待ち受けている。新しく、真の意味でプログレッシヴなライヴを求めるには絶好の機会である。音楽の下地は盤石で、カッコよく、かつ死ぬほど面白いライヴに出会えることはそうそうあったものではない。

ワンマン・ライヴ「怪電波放送局」、楽しみでならない。私も当然拝見する。

そして、その「技」を盗むつもりである。

文=高木大地(金属恵比須)

公演情報
ザ・ぷー改名後初のワンマン公演「怪電波放送局」
 
■日時:
11/10(金) 夜:開場18:30 開演19:30
11/11(土) 昼:開場13:00 開演14:00
11/11(土) 夜:開場18:00 開演19:00
11/12(日) 昼:開場13:00 開演14:00

 
■場所:ニッポン放送B2イマジンスタジオ
千代田区有楽町1−9−3 ニッポン放送本社ビルB2
JR有楽町駅 徒歩3分 日比谷線 徒歩1分

■企画・制作:Grand Pacific Work
■主催:ニッポン放送
■公式サイト:http://theremin-unv.com/putins/?p=1164

 
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