芸術の秋、ぶらっと展覧会に出かけてみよう 【SPICEコラム連載「アートぐらし」】vol.5 力石咲(美術家)

コラム
アート
2017.11.6
『野生展:飼いならされない感覚と思考』エントランス

『野生展:飼いならされない感覚と思考』エントランス

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美術家やアーティスト、ライターなど、様々な視点からアートを切り取っていくSPICEコラム連載「アートぐらし」。毎回、“アートがすこし身近になる”ようなエッセイや豆知識などをお届けしていきます。
今回は、美術家の力石咲さんが「展示を観に行くこと」について、実際にご覧になってきた『野生展:飼いならされない感覚と思考​』の感想を交えて語ってくださっています。

こんにちは。美術家の力石咲です。2回目のコラムでは、私が大好きな「展示を観に行くこと」について書きたいと思います。

私はよく展示を観に行きます。ジャンルとしては大好きな現代アートが多いですが、少しでも興味のあるものはなんでもとりあえず行ってみます。今年行った展示で印象深いものは、3月の水戸芸術館『藤森照信展—自然を生かした建築と路上観察』、5月渋谷のギャラリーTOM『ペーター・ヴォーゲル+アヒム・ヴォーゲル展INTERACTIVE』、8月上野の国立西洋美術館『アルチンボルド展』、そして天王洲にある建築倉庫ミュージアムです。建築倉庫は常設なのでこれからも頻繁に訪れたい場所です。

少しでも興味のあるものという視点で観に行く展示を選んでいるわけですが、昔から好きな作家の展示はもちろん、その時々の自分の創作活動のヒントになるようなものに惹かれます。例えば、考察していきたい事象や知識を深めていきたいこと、自分の活動の文脈に関係のありそうな展示内容だったり作家の展示であったり、時には展示方法が勉強になりそうだなという視点で観に行くこともあります。

そもそもなぜ展示を観に行くことが好きなのかというと、違った世界の見方を作品を通じてできるからです。物事の捉え方や目のつけどころ、価値観など、自分とは違った感覚で世界を見ることができる。作品というのは突然生まれるものではなく、それが意識的でなくても必ずその作家の生い立ちや人生が反映されているものだと思います。だから私は展示を見る時、その作家の年表や略歴もよくチェックしてしまいます。展示されている作品だけでなく過去の作品や考え方などを作品集や書籍で観て読んで、その作家ごと好きになることも多いです。

ちなみに私には5歳の子供がいますが、展示もよく一緒に観に行きます。子供にもいろいろな考え方や生き方、人がいるということを知ってほしいし、自分の頭で考えてなにかを創出する楽しさや力を刺激できればいいなと思っています。今では美術館でも子供向けの企画展が数多く開催されていますが、私はあくまで自分の観たい展示に連れていきます(笑)。「つまらなかった〜」と言われることもありますが、予想外に楽しんでくれることも。目のつけどころや感想に感嘆することもしばしばです。今後、子供と行きたい展示は森美術館で開催中の『THE ドラえもん展 TOKYO 2017』。ドラえもんは私も大好きですから!

 

さて、私がこのコラムを書くにあたって、今一番観たい展覧会として選んだのは、六本木の21_21 DESIGN SIGHTで開催中の『野生展:飼いならされない感覚と思考』です。

『野生展:飼いならされない感覚と思考』エントランス

『野生展:飼いならされない感覚と思考』エントランス

最近まで『ニット・インベーダー』というプロジェクトを2カ所で開催していて、それで頭がいっぱいでした。頭の中もコリコリに固まっていた感じがするし、近年自分のやりたいことが明確になってきている反面、ちょっと視野が狭くなっているのかもと感じています。改めて現在の活動のルーツがどこにあるのかを探るようなことも最近しているのですが、そこに「野生」という言葉がピンときたのです。自分の野生的な部分、野生性とはどういうものなのか……。

会場に入ると、展覧会ディレクターの中沢新一さんのメッセージが。

展示は、野生を発見する方法論から始まり、日本独特の野生の表現である「かわいい」ものたちの紹介、そして出展作家による野生状態にある心の生み出す豊かな世界へと移行していきます。

私はこの展示から、以下のような解釈を持ち帰ってきました。

飼いならされていない心の領域である「野生の領域」を自分の中に発見するためには、物事を「Aが原因になってBという現象が起こる」という固定的な因果関係で捉えるのではなく、「Bが成り立つためにはAだけでなく、表面には表れていないCやDやEも潜在的につながりあい、影響を及ぼしあっている」という思考方法が必要だということです。

世界の物事の間には固定したつながりがあるという考え方では、世界に対する理解は狭く硬いものになっていってしまい、そうして人の心は文化に飼いならされてしまう。そうではなくて、もっと物事にまつわる複雑な関係性を探ることで、その真実やつながりが見えるようになる。表面的に教えられたことや常識だと思われることを鵜呑みにせず、自分で物事について深く考えてみる。疑ってみることも大切。その作業の中で、自分の野生的な部分が見えてくるのではないかな、と捉えています。

さて、展示の後のお楽しみ、ミュージアムショップでは『野生展』の前に開催されていた『「そこまでやるか」壮大なプロジェクト展』の大きな出版物がありましたので迷わず購入しました。そこまで?と思うほど大きいです(笑)。絶対見に行く!と決めていたのに会期を間違えていて見逃してしまった展覧会だったのです……。

これまでミュージアムショップで購入してきたものの一部。カタログ、マスキングテープなど。

これまでミュージアムショップで購入してきたものの一部。カタログ、マスキングテープなど。

21_21 DESIGN SIGHTのある六本木は、森美術館や新国立美術館もあり、好きなアートスポットのひとつです。今回は道すがらの東京ミッドタウンで開催されていた『TOKYO MIDTOWN AWARD 10th YEAR EXHIBITION』も観て、好きな作品に投票してきました。

芸術の秋、皆さんもぶらっと展覧会に出かけてみてはいかがでしょうか? ではまた、次回のコラムでお会いしましょう!

イベント情報
野生展:飼いならされない感覚と思考​

期間:2017年10月20日(金)〜2018年2月4日(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1、2
詳細:http://www.2121designsight.jp/program/wild/
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