劇団「地蔵中毒」が『ハムレット』をウエストポーチ着用ver.で上演

2017.11.24
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舞台

劇団「地蔵中毒」の舞台より


英国の生んだ、史上最大の劇作家ウィリアム・シェイクスピア。没後401年を迎えた今日、何かしらの彼の作品が、どこかしらの劇場で常に、様々なスタイルで上演または上映されている。今年(2017年)だけでも、マイケル・メイヤー演出の『お気に召すまま』、 ジョン・ケアード演出で内野聖陽主演の『ハムレット』、故・蜷川幸雄演出の『マクベス』、シルヴィウ・プルカレーテ演出で佐々木蔵之介主演の『リチャード三世』、イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出の『オセロー』、さらには小池修一郎演出のフレンチ・ミュージカル版『ロミオ&ジュリエット』、天野天街が熊本で演出した『夏の夜の夢』、男肉 du Soleilの『リア王』、KUNIOの『夏の夜の夢』、劇団子供鉅人の『マクベス』をはじめとして、例をあげれば枚挙にいとまがないほど意義深い公演が目白押しだった(さらに派生的なヴァリエーションとして『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』などといった舞台までもあった)。世界の演劇シーンはずっと「シェイクスピア中毒」にかかりっぱなしといっても過言ではないだろう。

そんな中、劇団「シェイクスピア中毒」、もとい、劇団「地蔵中毒」が満を持して、『ハムレット』を「ウエストポーチ着用ver.」で上演する。題して劇団「地蔵中毒」番外公演「無教訓意味なし演劇番外編『ハムレッット(ウエストポーチ着用ver.)』」である。 2017年11月25日(土)・26日(日)、東池袋のアートスペースサンライズホールで開催される。

インスタ映えのする手書きチラシ

それにしても「ウエストポーチ着用ver.」とは、なんと意表を突いたスタイルであることか。「その手があったか!」と、世の演出家の先生たちやシェイクスピア研究者たちを大いに悔しがらせているとも伝えられる今回の作品、シェイクスピア上演史に一石を投じ、センセーションを巻き起こすことは間違いないだろう。「大胆なアレンジ!! そして、始まったからには、必ず訪れるラスト!!」というキャッチコピーもまた、なかなか痺れる。

そんな今回の作品について、劇団からアナウンスされているあらすじは次のとおりである。

「この壁のシミ……、ビョークにそっくりだ!!」 最愛の父の死にうちひしがれるハムレットは、ある日、父の亡霊を目撃し、叔父が父を殺害したという事実を知る。復讐に燃えるハムレットは、果たして、父の仇を討てるのか!? そして、総武線が時間通りに来ない理由とは!? 一旦、ローマ字で書き起こし、その後、変換し直した意欲作! 皆様!ミカンの食べ過ぎで手が黄色くなった状態で、劇場でお会いしましょう!

劇団「地蔵中毒」の舞台より

そもそも劇団「地蔵中毒」とはいかなる劇団なのであろうか。劇団の主宰にして作・演出の大谷皿屋敷によれば、<思いついてはみたものの社会に発表するにしては“見せられる側が迷惑”な、くだらない“思いつき”の供養の場として発足された「無責任エンターテイメント集団」である。ぼんやりと浮かんだ輪郭のない“思いつき”を、「無職」「無気力」「無教養」の三重苦を抱えたメンバーがコーティングして、ぐにゃぐにゃな形のままお届けする演劇には「?」がいっぱい。欲しいのは「演技力」よりも「日銭」!毎日お腹いっぱいなら、それでいい! 演劇河川敷でフラフラと、廃棄弁当を貪る“演劇ホームレス”それが劇団「地蔵中毒」です>とのことだ。実に不可解きわまりない。そこで劇団の公式サイトでさらに調べてみたところによると……。

彼らは当初、妊婦の母乳を飲ませる風俗の常連客で結成された劇団だった。しかし海外公演の際、野外に設置した舞台が国境を跨いでしまっていたため、上手(かみて)から下手(しもて)に移動する度に役者が射殺され、上演が終わる頃には大半のメンバーがいなくなってしまった。その後に改めて旗揚げ公演をおこなうために募集をかけて集めた劇団員により現在に至るが、偶然にも全員が「夜尿症」であることが判明した。そのうえ全員のカラダから「ネットカフェと同じニオイ」が発せられているともいう。

劇団「地蔵中毒」の舞台より

2014年10月に、無教訓意味なし短編集vol.1「牛殺し!獄中おばあちゃんの空中分解カポエラー(仮)」で旗揚げ。以降、「無教訓意味なし」シリーズを続けてきた。入場料は、旗揚げ公演では入場無料(ただしワンドリンク500円オーダー制)だった。第二回公演(2015年7月)では500円。第三回公演(2016年1月)で1000円(500円+ワンドリンク500円)。「演劇界初!ジャガイモを握りながら観る公演!」と銘打った第四回公演(2016年7月)は1000円。第五回公演(2017年1月)では予約1300円・当日1500円。そして第六回(2017年7月)では予約1500円・当日1800円……と、まあ巧妙にじわじわと値上げしてきた(その一方で「カルディにて無料でコーヒーが飲める」特典サービスも打ち出した)。そして、いよいよ次回番外公演では予約1800円・当日2000円とさらに値を吊り上げた。しかし「演劇という娯楽は金持ちしか観れないのか」「所得の少ない層は演劇を観るな、ということか」という批判をかわすためであろう、「レディースデイ割引」「メンズデイ割引」「同姓同名割引」「ラスト3分割引」「ラスト8秒割引」「80人団体割引」「自宅待機割引」「観劇辞退割引」「半チャーハン割引」「VLOOKUP関数割引」「平将門割引」「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウイズ・ダイアモンズ割引」等々といった数十にも及ぶ各種の割引制度が周到に用意されている。詳しくは劇団のTwitterで確かめてほしい。

劇団「地蔵中毒」の舞台より

ともあれ、これまで観てきた『ハムレット』に対して一度でも「このままでいいのか、いけないのか」と疑問に思ったことのある人ならば、藁にもすがる思いで劇団「地蔵中毒」の舞台を拝みにいってはどうか。もちろん、本当に藁だから、何ら得るものはないだろう。それが嫌なら、尼寺にでも行け!

劇団「地蔵中毒」の舞台より

劇団「地蔵中毒」の舞台より

文=安藤光夫

公演情報
劇団「地蔵中毒」番外公演
無教訓意味なし演劇番外編「ハムレッット(ウエストポーチ着用ver)」


■原作:ウィリアム・シェイクスピア
■作・演出:大谷皿屋敷
■出演:
栗原三葉虫(くりはらさんようちゅう) 
関口オーディンまさお
かませけんた
東野良平(ひがしのりょうへい) 
フルサワミオ
鈴木理子(すずきさとこ)
武内慧(たけうちけい/東京にこにこちゃん) 
立川がじら(落語立川流)
hocoten(ほこてん)
礒村夬(いそむらかい/グッドラックカンパニー) 
小野カズマ(排気口)
啓豪(Keigou/よしもとクリエイティブ・エージェンシー俳優部)
三丈晶生(みたけあきお)
上野優輔(うえのゆうすけ)
森わかな
■制作:宇都宮みどり
■音響:金内たけき(夏アニメーション) 
■撮影:並木雅浩(はりねずみのパジャマ)

 
■日時:2017年11月25日(土)~26日(日)
11月25日(土)15:00〜/19:00〜
11月26日(日)14:00〜/17:00〜(各回30分前開場)
■場所:アートスペースサンライズホール
東京都豊島区南池袋4-19-6 日ノ出ビルB1(有楽町線「東池袋」徒歩3分)
■入場料:予約1800円 当日2000円
■公式サイト:https://g-chudoku.jimdo.com/
■劇団「地蔵中毒」Twitter:https://twitter.com/zizouchudoku