英国ロイヤル・オペラ・ハウス 2017/2018シネマシーズン/3作目はバレエ『不思議の国のアリス』

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2017.11.30
 ⒸROH

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英国ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)のライヴビュー上映の3作目は、バレエのシーズン開幕を飾った『不思議の国のアリス』だ。


ルイス・キャロルの同名の小説を題材に、クリストファー・ウィールドンが振り付けたROHオリジナル作品で、2011年の初演以来、改定を加えながら再演を繰り返し、今やすっかりバレエ団の代表的なレパートリーとなった。2013年のROH来日公演でも上演されたほか、ロサンゼルス・バレエやオーストラリア・バレエなどがレパートリーとするなど世界にも広がっている。2018年は新国立劇場バレエ団がシーズン開幕作品としてこの『アリス』を上演予定で、まさに今注目の作品と言えるだろう。

今回のシネマでは、アリスに初演キャストのローレン・カスバートソン、ハートのジャックにフェデリコ・ボネッリ、マッドハッターにはスティーヴン・マックレー、さらにハートの女王にラウラ・モレーラが配されている。個性豊かなキャラクターを個性的なダンサーが表情豊かに、時には騒々しく、突き抜けた演技で踊り見応え満点だ。ROHバレエシーズン開幕にふさわしい、賑やかで華やかな舞台を大スクリーンでぜひ、目にしていただきたい。

■英国テイスト満載!伝統色に溢れた現代のバレエ

ROHのバレエ『不思議の国のアリス』はルイス・キャロルの原作をベースに、少女アリスと庭師ジャックの恋を通し、アリスの成長が描かれる。

物語の始まりはアリスの家のガーデンパーティー。キャロルが『アリス』を出版した1860年代のヴィクトリア王朝の時代で、キャロルがアリスや姉妹たちの写真を撮るなど、原作者へのオマージュも盛り込まれている。そのパーティーでルイス・キャロルが白ウサギに変身。キャロルおじさまなのか白ウサギなのか、ともかく「彼」を追ってアリスもウサギの穴に飛び込み、「不思議の国」の冒険が始まる。

©ROH, Johan Persson

©ROH, Johan Persson

「不思議の国」ではマッドハッターや三月ウサギに眠りネズミ、侯爵夫人と料理人、魚にカエル、そしてハートの女王とおなじみの登場人物が次々と登場する。衣装をはじめ舞台美術などの世界観は『アリス』原作の、テニエルの有名な挿絵が元となっている。侯爵夫人の乳母車など、小道具はヴィクトリア王朝時代のものを再現したそうだ。一方で不思議の世界の仕掛けにはプロジェクションマッピングを利用して効果的に表現する。踊りは古典バレエやコンテンポラリーのテイストにタップダンス、歌舞伎の黒子が操作するようなチェシャ猫、ハートの女王が踊る『眠れる森の美女』の「ローズ・アダージョ」のパロディといったユーモアなど、伝統と現代、様々なスタイルがセンス良く、品よく盛り込まれている。ともかく隅々まで英国らしさに溢れており、誇りさえ感じられる。

ⒸJohan Persson

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■より深化したストーリーとダンサー達の表現

ストーリーは2011年の初演から繰り返し改訂が加えられ、さらに深まった。最初は2幕だったこの作品は再演で3幕となり、さらに今回はアリスとジャックのパ・ド・ドゥなどに細かい改定がなされている。これにより話の軸である「アリスとジャックの恋」がよりわかりやすく明確になっている。

シーズン初演に『アリス』を選んだのは「たくさんのキャラクターが出てくるので、大勢のダンサーが活躍できるから」と幕間インタビューでケヴィン・オヘアROH芸術監督が語る通り、この作品は大勢のダンサーが観られるのも魅力のひとつ。

©ROH, Johan Persson, 2011

©ROH, Johan Persson, 2011

初演からアリスを演じるカスバートソンにはこの役に対する愛情と思い入れがたっぷりと感じられ、マックレーのマッドハッターはクレイジーさにさらに磨きがかかるとともに、色気までが加わり怪しさ満点。

この『アリス』で忘れてはならないのがハートの女王。ゼナイダ・ヤノウスキーの怪演を記憶している方々も多いだろうが、今回演じたモレーラもまた負けず劣らずの爆演で笑いが止まらない。悪ぶっているようでどこか人の良さげなジェームズ・ヘイの白ウサギ、表情もアクションもいぶし銀感満点のギャリー・エイヴィスの侯爵夫人など、ダンサー達の役に対する解釈や踊り・演技も一層深まり、実に見応えがある。

©ROH, Bill Cooper, 2014

©ROH, Bill Cooper, 2014

「パーカッションがピットの3分の1を占める」という音楽もぜひ耳を傾けてほしい。時を刻むマリンバなどの音とともに繰り返されるアリスとジャックの主題が遠い昔の思い出のようにノスタルジックに響き、2人の恋物語に彩りを添える。

お馴染の幕間インタビューはダーシー・バッセルとともにアレクサンダー・キャンベルが登場。軽快でインテリジェンスなトークにも注目だ。

大人から子供まで、バレエを初めて観る人もマニアックなファンも幅広く楽しめる『不思議の国のアリス』。ぜひお見逃しなく!

上映情報
英国ロイヤル・オペラ・ハウス 2017/2018シネマシーズン
『不思議の国のアリス』
 
【振付】クリストファー・ウィールドン
【音楽】ジョビー・タルボット
【指揮】クン・ケセルス
【出演】ローレン・カスバートソン(アリス)
フェデリコ・ボネッリ (ハートのジャック)
ジェームズ・ヘイ(ルイス・キャロル/白ウサギ)
*エドワード・ワトソンから変更
ラウラ・モレーラ(ママ/ハートの女王)
*ゼナイダ・ヤノウスキーから変更
スティーヴン・マックレー(マジシャン/マッドハッター)
【上演時間】3時間13分
 
【上映劇場】
北海道 ディノスシネマズ札幌 2018/1/13(土)~2018/1/19(金)
宮城 フォーラム仙台 2017/12/2(土)~2017/12/8(金)
東京 TOHOシネマズ日本橋 2017/12/1(金)~2017/12/7(木)
東京 イオンシネマ シアタス調布 2017/12/1(金)~2017/12/7(木)
千葉 TOHOシネマズ流山おおたかの森 2017/12/1(金)~2017/12/7(木)
神奈川 TOHOシネマズららぽーと横浜 2017/12/1(金)~2017/12/7(木)
愛知 TOHOシネマズ名古屋ベイシティ 2017/12/1(金)~2017/12/7(木)
京都 イオンシネマ京都桂川 2017/12/1(金)~2017/12/7(木)
大阪 大阪ステーションシティシネマ 2017/12/1(金)~2017/12/7(木)
神戸 TOHOシネマズ西宮OS 2017/12/1(金)~2017/12/7(木)
福岡 中洲大洋映画劇場 2017/12/2(土)~2017/12/8(金)
※上映時間について、公開日が近づきましたら 上映劇場へ直接お問い合わせ下さい。

■公式サイト:http://tohotowa.co.jp/roh/
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