安蘭けいが語る『ドラマティック・コンサート Golden Age』~「2017年の締めくくりはジャズとミュージカルナンバーで!」
女優として、またシンガーとして活躍する安蘭けいが、2017年12月19日(火)に東京・新国立劇場 中劇場にて『安蘭けい ドラマティック・コンサート Golden Age』を催す。前回は『愛の讃歌』というタイトルでシャンソンを軸にしたコンサートを披露したが、今回は『Golden Age』=ジャズが時代の流行となった1920~1930年代、通称「黄金時代」の名曲を歌い上げる。もちろんそれだけではなく、安蘭自身にも縁のあるミュージカルナンバーが多数披露される。2017年の締めくくりにふさわしいこのコンサート、具体的にはどのような内容になるのか、安蘭に話を聞いた。
■2017年の最後の最後まで「歌」に貪欲でいたい
――今年の締めくくりはやはり「歌」で、ということになりそうですね。一年を振り返ってみていかがですか?
実はちゃんと歌う機会があまりない一年だったんです。ストレートプレイにも出演していたので。11月になってようやくミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』に出演しましたが、自分の中では「もっと歌いたい」という思いがあったんです。
――その思いも込めてこのコンサートで歌いきることになるんですね。ところで「Golden Age」というテーマは何がきっかけで生まれたんでしょうか?
考えてくださったのは演出の原田諒さんです。前回は「愛の讃歌」というタイトルでシャンソンを歌いましたが、「今回はまた色の違うコンサートにしたいね、ジャズとか……」というところから始まりました。とはいえ、実は私、これまでジャズをあまり歌ってこなかったんです。難しい曲が多く、ハードルの高さを感じていました。でも、いつかジャズを歌えるような歌手になれたら……とは思っていました。そんな中、原田さんが「この時代の歌にチャレンジしてみてはどうだろう?」って言ってくださったので、チャレンジするきっかけになりました。
――コンサート全体の見どころ、聴きどころを教えてください。
今回は石川禅さんと田代万里生くんがゲストとして出てくれることになり、贅沢なコンサートになると思います。実は、二人ともミュージカルでは活躍していますが、「ジャズ」となるとやはりハードルが高いジャンルになるはずなので、今回は3人でチャレンジする姿勢で行こうかと思っています。セットリストも「皆でがんばるセットリスト」です(笑)。2017年の最後の最後まで貪欲にいこうと思っています。
――安蘭さんから見たジャズの魅力をお伺いできればと思います。
「ジャズ」って譜面があり歌詞があるけれど、縛りのない曲なんです。歌う、もしくは演奏する人が自由に崩して楽しむ良さを持っている曲。一人ひとりの崩し方が異なるのも味になる訳ですが、逆にどう崩していいのかが難しいのも「ジャズ」かもしれませんね。そういう意味では自分の色を出せるのかな?と思っています。私の色、そしてゲストの石川禅さんの色、田代万里生くんの色……お互いの色の違いを活かしていい化学反応を生み出していきたいです。三人で歌う曲もありますし!
――3人のチームプレイに期待します! ところで、今回歌う楽曲の中で特に思い入れの深い曲は?
そうですね……「Strange Fruit(奇妙な果実)」は、ビリー・ホリデイ最後のステージを描いたソロ・ミュージカル『レディ・デイ』で私が歌った曲です。なかなかハードな歌詞なので、皆さんにどう聴こえるのか、と思っています。でも自分の中では再挑戦したい曲ですね。あとは当日までのお楽しみですが、宝塚歌劇団の頃を彷彿とさせる曲も用意しています。私の出演しなかった作品の楽曲なのですが、思い入れのある曲なので歌おうと思いました。
「The Arbiter」は万里生くんと共演したミュージカル『CHESS』のナンバー。イベントなどでも歌ったことがありますがこれを改めて披露したいと思います。「星から降る金」(『モーツァルト!』)は万里生くんが歌うんですよ。彼は高音が得意なので気持ち良く歌ってくれそうです。
そして、これまた当日までのお楽しみ曲ですが、禅さんが自ら歌いたいと持ち込んだ曲もあるんです。
――楽しそうですね! コンサートに向けて、お二人とはお話されているんですか?
私が舞台で忙しかったこともあり、直接話が出来ていなかったのですが、万里生くんはマネージャーさんを介して「とうこさん(安蘭)はこの歌を歌ったらいいと思う」「二人で歌うならこの曲がいい」など、提案をしてくれたんです。その提案からセットリストに加えた曲もあります。「The Arbiter」はまさにその流れで決まった曲です。
また、「時が来た」(『ジキル&ハイド』)も歌います。この曲は当初3人で歌う曲にしませんか?という話もありましたが、どうしても独り占めしたくて、私がソロで歌うことにしました(笑)。
――これだけはマイクを渡さない、と(笑)。
二人とも存在感が大きいので、私のコンサートだってことをどこかで主張しておこうかなって(笑)。でも二人の胸を借りて良いコンサートを作りたいですね。
――コンサート中のMCも気になります。この3人によるMCはどうなってしまうんでしょうか?
3人ともしゃべりますよ!! でもこの3人だと一幕が押して押して押しまくりそう(笑)。
(同席しているスタッフから、「次のコーナーまであと〇分、というようなお知らせをどこかに表示させる予定です」と説明が入る)
え? 本当に?(笑)
――でもそのトークが楽しみ!というファンの方もいるんじゃないんですか?
いるんですよ! 私のグダグダトークが好きらしくて。喋りだすとスイッチが入ったかのようにバババッと喋り出してしまうんです。誰かに仕切ってもらいたい。その役割は万里生くんになるでしょうね。彼はそういうのが上手だから。私が脱線しても「とうこさん……」って元に戻してくれるはず(笑)。
■コンサートは「自分のスイッチをオフにする場所」
――コンサートで歌う自分と、ミュージカルもしくはストレートプレイに出演する自分……この二つのバランスはどのように取っていきたいと思っていますか?
ミュージカルやストレートプレイの仕事が何本か入る中で合間にコンサートをやる、そのくらいの割合が心地よいですね。ミュージカルは役を演じながら歌う楽しさがありますが、この役だからこう歌わないと、とか、そんな歌い方はしないだろう、という制約が出てきますよね。でもコンサートは「私のまま」でいい。「違うよ」とは言われない……もちろん歌詞が違っていたら「違うよ」って言われてもいいですが(笑)。自分の好きにできるのがコンサートの醍醐味ですね。
――ミュージカルの時とは違うスイッチが入っている感じですか? むしろ、安蘭さんご自身に戻ることになるので、スイッチはいい意味でオフ状態?
完全オフでのびのびと歌わせていただきます(笑)。
■年齢と共に素通りできない楽曲が増えてきた
――歌えば歌うほど、新たな発見がある楽曲ってあるものですか?
「アイーダの信念」(『AIDA』『王家に捧ぐ歌』)はそういう感じの曲です。
歌ってなかなかゴールが見えないですね。舞台で歌って歌い切れた感があっても、しばらく経ってまた歌う機会があったときに「難しい」って思うことがよくあります。一つ山を越えたらさらに山が見えた、というような感覚です。
あと、自分が大人になり歳を重ねることで、歌詞の理解が深まってきました。歌い込むほどに新しい気づきがあるのがおもしろいなって思います。この前はなんでこの部分をスルーしていたんだろう、流すような歌詞じゃなかったのに、とか。心に引っかかるところが以前と違うんです。当時はメロディが好きだったのに今は歌詞が好きになっていたりということもありますね。当時はまだ聞き込めていなかった、歌詞への理解が足りなかったんだなって。人生経験の分だけ素通りできない楽曲が増えてきたように思います。
――最後に読者の皆様へのメッセージをお願いします。
今年の前半は自分が好きな歌から離れていたので、この年末に、しかもお客様の前で自由に歌えることを幸せに思っています。舞台上に立っている私はたぶんものすごく幸せだと感じているはずなので、客席にいるお客様にその幸せな気持ちを分かち合えたらと思っています。
――すると、安蘭さんからお客様へ「一足早めのクリスマスプレゼント」のようなコンサートになりそうですね。
そうですね。もっとも、私が誰よりも「歌」というプレゼントをもらえて幸せになっているかもしれないです(笑)。
取材・文=こむらさき
■日時:12月19日(火)14:30~、18:30~
■会場:新国立劇場 中劇場
■演出:原田諒(宝塚歌劇団)
■出演:安蘭けい
ゲスト:石川禅、田代万里生
コーラス:家塚敦子、池谷京子、透水さらさ
ダンサー:当銀大輔、加賀谷真聡
■公式HP:http://hpot.jp/stage/arangolden-age