『続・時をかける少女』作・演出の上田誠&ケン・ソゴル役の戸塚純貴に聞く~大阪追加&高知公演も決定!
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(左から)上田誠、戸塚純貴。 [撮影]吉永美和子(人物すべて)
「甘酸っぱいけど、しっかり笑えるラブコメディにできれば」(上田)
タイムトラベルの能力を身に付けた少女・芳山和子が、様々な事件と切ない恋を経験していく、筒井康隆の青春SF小説『時をかける少女(以下、時かけ)』。原田知世主演映画(1983年)を始め、幾度も映像化・アニメ化されてきたこの名作に、続きがあったことをご存知だろうか? 1972年に放映された、同作の続編となるTVドラマを、脚本を担当した故・石山透がノベライズ化。登場人物たちは同じでも、内容的にはまったく異なるテイストの作品だという。主演に上白石萌歌を迎えた、この小説の舞台版の作・演出を担当するのは、SFコメディの名手である「ヨーロッパ企画」の上田誠。さらに、上田が脚本を手掛けたTVドラマ『ストリートワイズ・イン・ワンダーランド』に出演した戸塚純貴が、和子が恋におちる未来人、ケン・ソゴル役に抜擢されている。前売販売開始前から、大阪の追加公演が決定するほど注目を集める舞台。この2人にお互いの印象や、「スポーティなものになる」(上田)というその内容について聞いてきた。
『続・時をかける少女』メインビジュアル。
■「上田さんの舞台に出るのは、すごくやりたいことの一つでした」(戸塚)
──上田さんはチラシのあいさつ文で、この小説の存在を知ってひっくり返りそうになったと書いてましたね。
上田 いや、そうなんですよ。『時かけ』は不朽の、エバーグリーンの名作なんですけど、続編があるなんてまったく知らなくて。その本を見た時も「夢でも見てるんじゃないか?」ってぐらいビックリしました(笑)。でも筒井先生が書かれたんじゃなくて、『時かけ』のTVドラマの脚本を担当した石山透先生が、オリジナルで書いた続編なんです。『時かけ』はその10年後ぐらいに、原田知世さんの映画が大ヒットして注目されるけど、一方で『続・時かけ』は時間の狭間に忘れられてしまったようになっていたと。
──戸塚さんは世代的に、原田知世さんの『時かけ』は観てないですよね?
戸塚 あ、でも観ましたね。この話をいただいた時点で、アニメの方は観ていたんですけど、やっぱりこの映画を観ないといけないなって。ちょうどある映画館で、大林宣彦監督のSF作品の特集が組まれていて、その中でこの『時かけ』が上映されてました。
上田 あのケン・ソゴルをやってた方(高柳良一さん)は、今(この公演を主催する)ニッポン放送に勤められているんですよ。
戸塚 えー、そうなんですか?
上田 確か総務部長になられていて、この企画に結構前のめりだと(笑)。不思議なめぐり合わせですよねえ。
戸塚 いやー、めちゃくちゃ会ってみたいですねえ。
──『続・時かけ』を読んでみた印象はいかがでしたか?
上田 オリジナルの『時かけ』は青春の輝きに加えて、郷愁や切なさもあるという作品なんですけど、それとは打って変わって、結構アクション活劇みたいな感じで。よくあの原作から物怖じせずに、こんな続編を作れたなあというぐらい、破天荒で勢いのある作品です。未来で3人の科学者が行方不明になったので、ケン・ソゴルが「助けてくれ!」みたいな感じで和子を呼び出すという……あんな切ない別れ方したのに、もう一回呼び出すんや、みたいな(一同笑)。しかも呼び出しておいて走らせたりと、無茶振りしまくるという話です。
戸塚 和子は(『時かけ』の時の)記憶を消されてるんですよね?
上田 そうそう。ソゴルの記憶はないけれど健気に頑張って、次第に「どうやら私、この人が好きだったんじゃないか?」って考え出すという。ただこれを『時かけ』の続編としてやるっていうのは、筒井先生本人にとってはどうなのか? と心配したんですけど、首を縦に振っていただいてですね。石山先生のご遺族からもご了承いただき、晴れて両先生の方面からOKをいただけたという。それだけで、またとないチャンスをもらえたなって。
戸塚純貴。
──戸塚さんは『ストリートワイズ……』で、安藤政信さん演じる主役の探偵のライバル的な、エリートの刑事役で出演されてましたが、その時のお互いの印象というのは?
戸塚 僕はヨーロッパ企画さんの舞台が大好きで、何度も観させていただいてたんです。だから上田さんとご一緒するというのは、一つの目標みたいな感じだったんですよ。
上田 嬉しいですねえ。戸塚さんとは『ストリートワイズ……』で初めてご一緒したんですけど、そう聞いて「じゃあ、話が早いな」と思って(笑)。実際一緒にやってても「やっぱりコメディ、好きなんだなあ」というのが伝わりました。
戸塚 好きですねえ。コメディこそ、演じる上で考えることがたくさんあると思うので。
上田 コメディをやるには、コメディっぽく演じたらあまり面白くなくなって、むしろ真面目に演じれば演じるほど笑いに近づくっていう、何か逆現象みたいなことがあって。とはいえこっそりコメディらしさも忍ばせておかないと、やっぱりダメで。この絶妙なラインというのがコメディにはあるんですけど、そこをすごく肌感覚でわかってらっしゃるんです。『ストリートワイズ……』ではそれで相当助かったから、今回もお呼びさせていただきました。
戸塚 やっぱり演劇の舞台で上田さんとご一緒するっていうのが、僕の中ではすごくやりたいことの一つだったので。だからこの話をいただいた時はめちゃくちゃ嬉しかったし、しかも上田さんにはもってこいの話じゃないですか? SFという所では。ただヨーロッパ企画も『ストリートワイズ……』も、上田さんの作品はチームワークがないとできない世界だと思うので。今回は上白石さんや健太郎君とか、若い子たちともそういうチームワークが上手くできて、面白い掛け合いができたらいいなあって思います。
(左から)上田誠、戸塚純貴。
■「タイトルに“かける”と付いてるし、みんな走ってもらおうかと」(上田)
──今の時点で、舞台化についてどんなアイディアを練ってますか?
上田 先ほどの戸塚さんの話で言うと、なるべく群像のシーンを増やそうと思っています。あと、一応「時をかける」んだから、走りまくるのがいいかなあと。駆けまくるというか。
戸塚 タイトルそのまんま(笑)。
上田 というのも今回のキャストの皆さんは、役者歴が長い人もいれば、健太郎君のように初めて舞台に立つ人もいる。となると演技面では、どうしても上の世代が主導権を持つような気がするんですよ。稽古場の雰囲気として、そういう序列みたいなのができてしまうと、コメディをやるのにあまり自由な環境じゃなくなるんです。だから何か運動……スポーティな要素を入れたら、また違った感じになるんじゃないかと。
──じゃあ台詞芝居というよりは、割と肉体派な方向に。
上田 実際原作もチェイスシーンが多いですし、走り回らせる方がこの座組らしいとも思うんです。たとえばですよ?「ルームランナーの上で50分走って劇をする」みたいな、老いも若きも困難で、じゃあみんなでアタックしてみよう! 感のある仕掛けの方が、多分まとまりができるんじゃないかと。それがコメディというのとは別に、今回やれる要素かなあと思っています。
──となると、役者たちの最大の課題は体力作りになるということでは。
上田 そうなりますねえ。だから今制作の方に「客席には降りれるんですか?」とか「(舞台を回転させる)盆は使えますか?」とか聞いてます(笑)。どうですか? 体力って。
戸塚 もともとずっと野球をやってたし、最近は基本移動が自転車なんで、割と体力は付いてるかなと思います。ただこの直前にやってる舞台が、若干運動量があるんで……今よりさらに体力が付いてるか、疲れ切ってるか(笑)。
上田 疲弊してる状態か(笑)。それで言うと、健太郎さんもスポーツをやってたそうだし、萌歌さんはミュージカルとかやってるんで、きっと動けるという感じがします。一方で新内(眞衣)さんは「走るのとか超苦手」って言ってたけど、それはそれでいいんじゃないかと思っていて。すごく走れる人が走るよりも、苦手だけど頑張って走ってる人の方に感動するって、あるじゃないですか? 僕そういうのが、割と好きなんで。
上田誠。
──上田さんの作劇の特徴として「稽古のエチュード(即興芝居)から脚本を考える」というのがありますが、今回もその形で行くのでしょうか?
上田 台本全部ありきという現場と、そういうやり方をちょっと混ぜてもいい現場があるので、今はその顔色をうかがってる感じですね(笑)。戸塚さんはエチュードは、全然行けそうな感じがしますけど。
戸塚 ヨーロッパ企画はそういう作り方をする、っていうのは聞いてましたからね。それは楽しそうだし、やってみたいなあと思います。
上田 この間ご一緒した現場を見ていると、ボケるのも先輩方にイジられるのもどっちも得意な人だし、コメディ面は大丈夫やと思うんです。ただ今回は、萌歌さんと2人でいい感じになるシーンもあるわけで。和子がだんだんソゴルに惹かれていくという設定があるから、ちゃんと憧れられるよう、どこか魅力的な点がないといけない。
戸塚 緊張感ありますねえ(笑)。僕はちゃんとした恋愛をする役をやったことがなくて、むしろそれを周りから見てるとか、冷やかす役の方が多かったりするから。
上田 僕の舞台って、大きな嘘……たとえば「ここはパリです」みたいなことは言うけど、キャスティングや人間の生理とかの小さな面では、案外嘘は付かないんです。絵がまったく描けない人を、有名な画家の役にするとかっていうのはない。そこにリアリティというか、ドキュメンタリー性みたいなモノが何となくあった方が、きっと観ていて面白いはずだと思うんです。そこがまったくの嘘だと……「実は全然惹かれてないです」ってなると寂しいので(笑)、せっかくならちゃんと恋愛の対象になるような。その部分を戸塚さんから引き出せたらと思うし、僕も今まであんまり恋愛のシーンをやったことがないんで、そこを上手く面白くやれたらなあと思います。
──そういえば戸塚さんは「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」で「理想の恋人賞」を受賞していますが、ついにそれが体現されるわけですね。
一同 (笑)。
戸塚 でもその賞、僕の代で終わったんですよね。
上田 最後の理想の恋人(笑)。
戸塚 でもそうなんですよ。僕は青春物とか恋愛物になかなか呼ばれないけど、これをきっかけに「こういうこともできるんだぞ」っていう幅を見せられたらいいですよね。今こそ理想の恋人に選んで下さった方に、全力で応えたいと思います。
上田 でも人が何で好意を抱くのかって、机の上で考えても、その通りにならんかったりするんですよ。「あ、いいな」と思う瞬間って、意外にちょっとしたことがきっかけだったりするし、それをどういう感じでいくがいいのかな? と。それが今回すごく大事だと思うし、なんせラブコメディ……タイムスリップ・ラブコメディですからねえ。
戸塚 ラブコメディって(チラシに)書いちゃってるんだもん、だって。
上田 一応嘘でもやんないと(一同笑)。でもこれが「オリジナルの『時かけ』でコメディします」って言ったら、すでに針のむしろという感じが、やっぱりあるんですよ。でも「続」だと、内容を知ってるお客さんもそんなにいないでしょうし「これが“続”なんだ」と言い切ってしまえば(一同笑)。
戸塚 そうですよね。初舞台化ですしね。
上田 そこはとても、両先生にいただいたいい隠れ蓑があるわけですし。あまり知られてない作品であることを逆手に取って、できるだけやりたいことをやっていきたいですね。甘酸っぱいけれど、しっかり笑えるコメディにできればと思います。
取材・文=吉永美和子
■日程:2018年2月7日(水)~14日(水)
■会場:東京グローブ座
■日程:2018年2月17日(土) ※夜公演追加決定!
■開場:森ノ宮ピロティホール
■日程:2018年2月20日(火)19:00
■開場:高知県立県民文化ホール オレンジホール
■脚本・演出:上田誠(ヨーロッパ企画)
■出演:上白石萌歌、戸塚純貴、健太郎、新内眞衣(乃木坂46)、石田剛太(ヨーロッパ企画)、諏訪雅(ヨーロッパ企画)、土佐和成(ヨーロッパ企画)、永野宗典(ヨーロッパ企画)、島田桃依(青年団)、中山祐一朗(阿佐ヶ谷スパイダース)、バッファロー吾郎A、MEGUMI
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