おっちゃん&ミンジュの怪しいK-Pop喫茶[第5話]世界の中心で『I』を叫ぶ
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テヨン『I』MVより
からんからん…
ミンジュ「(がちゃ)毎度あんにょーん…ん?」
♪光注ぐ Sky アーイアーイアーイ…
その下に立つ子(I) アーイアーイアーイ…
夢見るように Fly アーイアーイアーイ…
My Life is a Beauty…
おっちゃん「(はらはら)なんて…なんて美しい。解き放たれた魂が、ニュージーランドの空を浮遊する…」
ミンジュ「わ、キモイ。iPad見ながらジジィが泣いている。さては競輪で大損したんか」
おっちゃん「アホか(ずびー)。ワシは人生そのものがギャンブル。いまさら競輪になど命賭けんわ」
ミンジュ「威張るようなことか? そんじゃなんで泣いとったの?」
おっちゃん「(ずず)テヨンたんのソロデビュー曲を聴いておったのじゃ」
ミンジュ「あー、もう発売されたん?」
おっちゃん「10月7日になると同時にな」
ミンジュ「そやったかぁ。うっかりしとったわ。そんで、泣くほど切ない歌なん?」
おっちゃん「いや、切なくはないな」
ミンジュ「切なくもないのに泣く? やっぱ競輪…」
おっちゃん「たわけ! 人は悲しい時だけに泣く訳やない。
激しく心を揺さぶられた時にも涙は出る。それこそこの地球で人間だけが持つ芸術的感動ちゅう奴や」
ミンジュ「つまり感動して泣いてたと?」
おっちゃん「その通り。テヨンの歌声はいつも心に響いてくるのやが、この『I』ちゅう歌は、ことの外ワシの魂を揺さぶって来る」
ミンジュ「そんなにぃ?」
おっちゃん「ああ、何度聴いても心が震える。鼓動が不規則になる…」
ミンジュ「おっちゃんの不整脈はともかく、キレイな映像やね」
おっちゃん「うむ。ニュージーランドはオークランドで撮影されたとゆうことやが、まるでアイルランドのようではないか。まぁ、あっちならもっと空がどんよりしてるけど」
ミンジュ「へえ…(行ったことないくせに)」
おっちゃん「ただ、映像は素晴らしいけど、劇用車がBMWなのはいかがなものか?
せっかくのアイルランドテイスト、オースチンヒーリーとまでは行かなくとも、せめてMGのオープンカーを使って欲しかった」
ミンジュ「その辺のこだわりはさっぱり判らんが、所詮ヲタクのゆうことやから放っとこう」
おっちゃん「お、喋っとる間に終わってもうた。もっかい聴こ(ぽち)」
ミンジュ「うげ、無限リピートモードや」
おっちゃん「そりゃあテヨニストなら当たり前のことじゃ。実際このMVは今日までに、すでに約750万回も再生されておるのだ(10月12日正午現在)」
ミンジュ「ひゃー、少女時代本隊に引けをとらないペースやん」
おっちゃん「そうなんよ。
この曲を含むミニアルバムの音源が7日の夜中に解禁になったんやけど、その朝には韓国内主要音楽配信サイト8つで1位を独占する爆発ぶりや。そんでそれから5日間1位をキープしとる。
さらにiTune Storeでの売り上げが、ブルネイ・コスタリカ・香港・インドネシア・マカオ・マレーシア・パナマ・フィリピン・シンガポール・台湾・タイ・ベトナムなど12ヶ国で1位。
日本やアメリカなど25ヶ国でトップ10にランクされておる」
ミンジュ「す、凄い。凄すぎて怖い(ぶるぶる)」
おっちゃん「(うむ)ずっと待ち望まれておったテヨンのソロやからな。
フレディ・マーキュリーが組合の方々に待ち望まれておったくらい待ち望まれておったんや」
ミンジュ「その例えは不適切なような」
おっちゃん「売れるのは間違いないと思うてたけど、まさかここまでとは。…予想以上やった」
ミンジュ「テヨンねえさんの歌唱力は前から有名やったからね」
おっちゃん「確かにドラマ“快刀ホンギルドン”のOST『もしも』や、“ベートーベン・ウィルス”のOST『聞こえますか』などのヒットで、アイドル歌手の域を超えた実力者であることは知られておった。
しかし、アイドル歌手の中にはSistarのヒョリンやf(x)のルナ、IU、Aileeなど上手い歌手は結構おる。その中でもテヨンが特別視されているのは、歌の上手さだけが理由ではない」
ミンジュ「とゆうと?」
おっちゃん「誤解され勝ちやけど、テヨンは天才型の歌手やない。確かに音程やリズム感には天性のものがあるかも知れんけど、IUのような広い音域とか、Lim Kimのような個性的な声とか、そういった才能には恵まれておらん。
例えば練習生時代には高音を出す時に顔を苦しそうに歪めて歌っていたのでトレーナーに怒られたっちゅうエピソードがある。実際デビュー当時には高域が苦手な様子がうかがえた」
ミンジュ「へー、今はむしろ高音得意そうやけどね」
おっちゃん「声は比較的凡庸で、ボーカルトレーナー兼歌手のキム・ヨヌなどは、かつて雑誌のインタビューに答えて“何かを明確に表現できるパワーや音色がある声ではない ”と評しておる。この場合のパワーとは声量ではなく、声の持つ力ゆう意味や」
ミンジュ「あら、厳しい」
おっちゃん「まぁキム・ヨヌは特別歌が上手くて綺麗な声の持ち主やからね」
ミンジュ「確かにすごいハイトーン。言うだけのことはある」
おっちゃん「こうした欠点を彼女はすべて努力で乗り越えてきた。練習の虫なのはよく知られておるし、デビューしてからもずっと、音域を広げ、声を鍛え続けてきた。
今では彼女が高音を苦手と思ってる人はいないし、鈴を鳴らすようでもハスキーでもない声は、逆にどんな曲にも合わせられる利点となった。
それだけやなく、聴く者の心に浸透してくる深い響きを持っていて、メンバー間では得難い美声と評されておる」
ミンジュ「欠点を美点に…」
おっちゃん「テヨンの歌手として優れておるところは、トロットからEDMまで歌いこなすその対応力と表現力や。
これは彼女が幼い頃から歌好きで、いろんな曲を歌い込んで来たという部分もあるやろう。どんな歌でもたちまち彼女流の解釈で歌いこなしてみせるのは、誰にでも出来る芸当ではない。
そして、その時に味方となるのが、深い浸透力を持ちながら、どちらかに偏ったような個性を持たない声なんじゃ」
ミンジュ「なるほどー」
おっちゃん「で、フレディ・マーキュリーばりに待ち望まれていたテヨンの初めてのソロ活動。
多くの人はこれまでのOSTで歌ってきたようなバラードやと思っておった」
ミンジュ「(うんうん)ウチもそお思うてた」
おっちゃん「ところがギッチョン、あっと驚くミドルテンポのロックポップやったんでみんな腰を抜かした。
そやけど、歌を聴いて“さすがテヨン”と納得した」
ミンジュ「とゆうと?」
おっちゃん「誰も見たことがなかった新しいテヨンの姿がそこにあったからや。
“ウチは少女時代やバラードだけやないでー。もっと奥が深いでー”と彼女にゆわれとる気がした」
ミンジュ「やられたーって感じやね」
おっちゃん「『I』にはテヨン自身も作詞で参加しとる。
初めての作詞にも関わらず“Sky”、“Fly”、“子ども(アイ)”などタイトルに引っかけて韻を踏んでるし、“ beauty”の最後の部分で一瞬ファルセット気味になるなど歌唱力強者らしい技巧も目に付く。
伴奏にはオーケストラなど使わず、ちょっとNell(韓国のロックバンド)っぽいギターが印象的なコンボに留めて、声を活かす工夫をしておる。後半になるほど厚みを増すコーラスの中、浮かび上がる伸びやかなボーカルが素晴らしい。
また、これまでの人生で苦しんだ話を最初にラップで聞かせ、その後はひたすら自由を求め羽ばたこうとする思いを繰り返すなど、詩的な構成も練られている。
よお出来たデビュー曲や」
ミンジュ「自伝的歌詞て伝えられてた意味はそれかぁ」
おっちゃん「その通り」
ミンジュ「歌詞の世界と現実は別物やけど、テヨンねえさんが今まで歌う喜びと同じくらい苦しんで来たってのはよくわかるよね。
多分女子アイドルじゃ一番人気がある人やろうけど、逆に言えばアンチの数も多いから」
おっちゃん「うむ。昔DJを務めとった『テヨンの親友ラジオ』の中で、伝言板の悪質な書き込みを読んで放心状態になったのをよお憶えとるよ。アンチは手加減を知らんからな。
以前バラエティ番組に出て“自分の子どもは歌手にさせたくない”とゆうとったくらいやから、子どもに同じ苦労をさせたくないと思うてるのは確かやろうな。
そんな悲しい悔しい思いも、人知れず続けてきた努力の積み重ねも、すべて伸びやかな歌声に乗せて昇華させている訳じゃ。名曲とゆわずしてなんとゆう?」
ミンジュ「まぁそこまで推すなら名曲でええけど」
おっちゃん「もっと積極的に誉めい! テヨンはこの歌でもって、“これが私や!”と世界に訴えておるのやぞ。
そお、まさに“世界の中心で『I』を叫ぶ”やな(ニヤリ)」
ミンジュ「いや世界の中心はニュージーランドやなくてオーストラリアのウルルやから」
おっちゃん「(がっくり)そこは乗っかれよ」
ミンジュ「ま、まぁ、この曲に賭けてるねえさんの思いは伝わってくるような(汗)」
おっちゃん「そうやろうそうやろう。テヨンはこの曲に家族を巻き込んでまで勝負を賭けておるのじゃ」
ミンジュ「家族?」
おっちゃん「そう。結構話題になってるんやけど、MVに一瞬出て来るこのにいちゃん…」
テヨン『I』MVより
ミンジュ「お、シュッとしたイケメン(涎)」
おっちゃん「それがテヨンの一歳違いの兄、キム・ジウンじゃ」
ミンジュ「(ぴゃー)マジで?」
おっちゃん「一緒に飯食ってる時に“来週MVの撮影でニュージーランドに行くけど来る?”と誘ったら、ジウンの友達が多いところらしくて“行く行く”ゆうてついてきたらしい。
ほんで撮影中暇そうにしてたんで、カメオ出演させてみたちゅうことなんやって」
ミンジュ「へー。だからってホイホイ出るなんて度胸あるね」
おっちゃん「テヨンちは最近じゃ妹のハヨンがSMエンターテインメントの練習生になったと言う噂もあるし、おとんも昔自分の眼鏡屋のCMに出てたし、ダウンタウンの松ちゃんちみたいに家族総タレントを目指しておるのかも知れん」
ミンジュ「んなアホな」
おっちゃん「家族事務所設立して脱イ・スマンを画策してるのかも」
ミンジュ「そうかなぁ?」
おっちゃん「自分のとこも弟が結構稼いでるみたいやし、家族事務所にした方が儲かるで」
ミンジュ「儲かる? マジで?
(えーと)弟の契約、あとどれくらい残ってるのかなぁ? 契約切れたら誘ってみようかなぁ」
おっちゃん「真に受けるなよ(呆)」
ミンジュ「…(コロス)」
おっちゃん「そやけどワシにはひとつ心配事があった」
ミンジュ「それは?」
おっちゃん「今までもガールズグループに所属しながらもソロ活動をするアイドルは多かった。
しかしその多くが成熟した女性美を見せるために、セクシー寄りのコンセプトを採用し、ケツ振りダンスか、大股開きダンス、あるいはポールダンスもどきの振り付けを採用してきた」
ミンジュ「あー、あの娘とあの娘とあの娘やね」
おっちゃん「テヨンはガールズグループの中でも年長の方やから、成熟しとるっちゃあ成熟しとる。とは言え、セクシーコンセプトはキャラやない。
“My life is a beauty”とか歌いながら、世界の中心で腰を振られても困るんや」
ミンジュ「…(世界の中心が気に入ったな)」
おっちゃん「ところが、テレビでお披露目となった10月8日の『M Countdown』では、3名構成のバンドとラッパーひとりを引き連れたシンプルな構成。
バックダンサーも振り付けもなく、ただ想いを込めて歌うだけの姿に、ワシは安心すると同時にSMエンタの見識に感心した。
ソロのテヨンはもはやアイドルではなく、アーティストなんやなーと思うた次第や」
ミンジュ「もともとグループ内でもメインダンサーやないし、歌だけで勝負しようってのは判るけど、アイドル出身者の誰にでも出来ることやない。まさにトレンドメーカーの自負やね」
おっちゃん「初ステージでは凄く緊張してたのが見てて判ったし、いつも周りにいる仲間がいないからちょっと目が泳いだりしてたけど、後半になるほど安定してきたな。
容姿の美しさも含めて、これほどのレベルのソロ歌手はなかなかおらんと思うよ」
ミンジュ「対抗出来るのは渡辺直美くらいのもの…(ぽかっ)いててて」
おっちゃん「つまらんチャチャ入れるんじゃない!
かつて幻となった2集のプロデューサー、ユ・ヨンソクが、まだ少女だったテヨンを評して“オク・ジュヒョンやパク・ジョンアのような歌姫(ディーバ)に成長できる可能性がある”ちゅうてたけど、あれから7年、まさしくテヨンはディーバに成長したと思うで。
今回の活動は、まさしくディーバの誕生を我々に知らしめるためのものやったんや!(どーん)」
ミンジュ「はぁ(今回長いなー)
そんじゃあテヨンねえさんのソロコンサート、楽しみやろ? アイドルグループの一員が単独でコンサート開くなんて画期的なことやし」
おっちゃん「…(ずーん)」
ミンジュ「ん、どおした?」
おっちゃん「
ミンジュ「わははは!」
おっちゃん「笑い事か!」
ミンジュ「仕方ないやんか。そんじゃあこの店でずっと『I』聴いとくんやな。おっちゃんにとっては、この店が世界の中心や」
おっちゃん「とほほー」
※ユ・ヨンソク…同名のイケメン俳優がいるが、ここではシンガーソングライターのユ・ヨンソクのこと。
90年代にはバンド“プルンハヌル(青い空)”、“W.H.I.T.E”で活躍し、2000年代に入ってはソロアルバムも出している。
バラードが得意で、作曲や音楽監督としても活動している。
2008年秋にリリースされる予定だった少女時代の2集アルバムをプロデュースしたが、様々な事情によりこのアルバムはお蔵入りとなった。
とは言え、活動曲はMVの撮影まで行われており、2012年の年末にようやく『Dancing Queen』として陽の目を見た他、ビジュアルコンセプトは『Gee』に一部引き継がれている。