DIR EN GREY/Toshiyaインタビュー【前編】いま改めて問う、アルバム『ARCHE』がもたらしたものと表現の自由

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2015.10.30
DIR EN GREY(L⇒R)/Toshiya(B)、Shinya(Dr)、京(Vo)、薫(G)、Die(G)

DIR EN GREY(L⇒R)/Toshiya(B)、Shinya(Dr)、京(Vo)、薫(G)、Die(G)

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2014年3月に開催した『DUM SPIRO SPERO』以来、約2年ぶりとなる日本武道館2days公演『ARCHE』を2016年2月に行なうDIR EN GREY。約3年という時間を費やして完成した最新アルバム『ARCHE』、そのアルバムを携えた国内外ツアーの集大成を控えたいま、改めて問う。アルバム『ARCHE』がバンドにもたらしたもの、そして“表現の自由”を追求することの意味とは? メンバーを代表してベースのToshiyaに訊いたロングインタビューを、【前編】【後編】に渡りお届けする。



周りからの評価が大きければ大きいほど、そこが自分たちの絶頂期ではないんじゃないかとも思いたい。


――『ARCHE』を引っ提げたものとしては二回目の国内ツアーを終えましたが、どのような実感でしょう?

「まぁ、今回は『ARCHE』のツアーなんですけど、『ARCHE』じゃない……っていうのが、言い方として正しいかどうかわからないですけど、いろんなタイミングもあって、過去曲もかなり入ってきたツアーにはなったと思うんですよ」

――それは昨年夏に突如として1stアルバム『GAUZE』(1999年)を掲げたツアー『TOUR14 PSYCHONNECT -mode of “GAUZE”?-』をやったことも関係があるんですか?

「何だろう? 単純に言うと、もっと日本だけじゃない視野で、やろうと思っている曲たちを入れていったという感じかな。たとえば、明日から行く台湾だったり、次のアメリカだったり、その後の中国だったりというのも含みますけど、『ARCHE』を基軸にして、さらに自分たちの歴史を紐解くようなもの……と言っていいかわからないですけど、(ファンが)聴きたいんじゃないかと思うようなものを入れていった感じだったかな。でも、それは自分たちにとっても重要なことでね。DIR EN GREYが歩んできた道というのは、楽曲そのものが表していると思うんですよ」

――『ARCHE』というアルバムの制作に当たっては、これまでのDIR EN GREYの音楽性を見つめ直すような経緯もありましたよね。その流れが続いていると考えてよいのでしょうか?

「うん、そう思いますね。9枚目のアルバムを作るに当たって、5人が集まって歩き出したものに対して確認をしたというのかな。一言でいうと、ちょっと懐かしいもの、今まで避けてきたものにも着手しようとも思ったし。でも、それだけじゃダメだなとも思っていたんですよね。まぁ、それは毎回のことではあるんですけど、試行錯誤の末にここに辿り着いて、『ARCHE』をリリースして、一度目の『ARCHE』のツアーを廻り、二回目を廻ることになって……何と言っていいかわからないですけど、自分の中では、もう一回、ここでつながりたいなと思ったんですよね」

――つながりたい? それは過去と現在といったものですか?

「そういうものでもあるし、対ファンの子だったり、それこそ対メンバーであったり。自分を取り巻く世界というのかな。今回のツアーを廻る前ぐらいの時期に、何かそんな思いがすごくあったんですよね」

――ただ、それまでが断絶されていたわけでもないですよね?

「うん。すごく漠然とですけど、自分の中では、正直なところ、気持ちはもう次に行こうとしているんですよね。アルバムも10枚目になるし……という言い方はアレだけど、バンド結成してもう少ししたら20年になるのかな。でも、こんなことは誰も予想していなかったと思うんですよ。もちろん、(長く)やっていたいとは思っていたけど、何の保証もないし、変な話、終わらせることも簡単だと思うし。何かそんなことを考えていたら、今こうやって自分たちがやれていることに関して……感謝というかね、嫌な言い方ですけど(笑)、そういうのをすごく感じまして。自分の中では、次の場所に行かなきゃなって思いがすごく出てきたんですよね。でも、それは昔のようにガムシャラな感じとはまた違うものなんだろうなと思うし。もちろん、年令を重ねてきたとはいえ、その気持ちは今でもあるんですよ。ただ、もっといろんなことを考えなきゃ、見なきゃいけないなって」

DIR EN GREY/2014年3月8日 日本武道館

DIR EN GREY/2014年3月8日 日本武道館

――その取り組みの一つが、先ほど話に出たツアーのセットリストにおける、曲のセレクトの仕方だったりもするわけですね。では、『ARCHE』というアルバムは、どういった作品だったと振り返ります?

「うーん…………すごく変な言い方ですけど、9枚目のアルバム(笑)」

――長い沈黙の後に出てきた言葉がそれですか?(笑) でも、言わんとしていることはわかります。

「うん。今、頭の中でいろいろ考えてみたんだけど、最初に出てくるのって、9枚目ってことなんですよ。でも、その9枚目というのは、確実に8枚目の『DUM SPIRO SPERO』までの流れとは違うと思うんですね。どのアルバムもターニングポイントだとは思うんですけど、また違った形になるものへの、キッカケになるようなアルバムになったんじゃないかなと思うんですよ。結局は結果論でしか言えないんですけど」

――個人的な見解で言えば、完成した直後に聴いたときは、どうしても、DIR EN GREYが行き切った、ある種の理想形が表現されていた『UROBOROS』や『DUM SPIRO SPERO』と比較してしまうところがあったんですよ。ところが、今になって聴いてみると、面白いことに、純粋に一つの独立したアルバムとして受け止められる感覚になっているんですよね。

「なるほど。自分たちでは、作ることに対しての変化はないんですよ。何を作っているときも真剣だし、いいものを作ろうと思ってやっているだけなので。出来上がったものに対しての周りの評価や反応で、自分の手から離れて、初めて形になってくるというのかな。空気だったようなものが物質化する、そんな感じなんですよ。『UROBOROS』『DUM SPIRO SPERO』に関しては、DIR EN GREYというバンドが変化の末に掴んだ絶頂期って、みなさん思ってくれていると思うし、自分たちもすごくあそこで変われたとも思ったんですよね。ただ、人間は変化したい生き物だから、欲は止まらないと言いましょうか。常に変わりたい、進化したいと思うじゃないですか。周りからの評価が大きければ大きいほど、それに反抗するわけではないけど、そこが自分たちの絶頂期ではないんじゃないかとも思いたい。だから自分たちは、ずっと新たなものを作っていけるのかなと思うんですよね。自分が認めてしまったら、そこで終わってしまうんじゃないかという恐怖心がやっぱりあるから。毎回そうですけど、最高なものができたとしても、最高傑作とは俺は言いたくないんですよね。その意味で言うとね、『ARCHE』は、『UROBOROS』『DUM SPIRO SPERO』という流れを断ち切りたかったんだろうなと今は思うんです。そこで自分たちはどこに行くのか? となったとき、陳腐な言葉かもしれないけど、原点回帰という方向に自然と行ったんですよね。それはなぜかというと、やっぱりそこが始まりだったからなんだろうなと。ずっと新しいものを生もう、生もうとやってきて、実際にいろんなものを生み出してきたけど、結局、最初に生み出したものは、やっぱり帰るべき場所なんだろうなとも思ったし。でも、逆を言えば、もし自分たちがこの9枚目で戻ることができていたならば、10枚目にはまた新しい何かを生むことができるんじゃないかなって希望もやっぱりあるんですよ。個人的には、今はとても新鮮な気持ちかな」

DIR EN GREY/2014年3月8日 日本武道館

DIR EN GREY/2014年3月8日 日本武道館


武道館は両日共に自分たちなりのサプライズというか、何か楽しんでもらえるものはあると思います。きっとニヤッとしますよ(笑)。


――ええ。原点回帰とはいえ、当然、『ARCHE』は初期作品の焼き直しではないですしね。それゆえにこの作品で初めてDIR EN GREYに魅了されたという人の感覚にも興味が沸いてくるんですけどね。もう一つの視点としては、ライブでの実演を意識して作っていたアルバムでもありますよね。だからこそ、ツアーをやってみての感覚もまたあったと思うんですよ。

「やってみてわかったんですけど、混ざりやすいんですよね、『ARCHE』の楽曲というのは」

――混ざりやすい?

「そう。たとえば、『DUM SPIRO SPERO』のツアーで今回のように過去曲が入ってきたら、何かバランスが悪いんですよ。ただ、『ARCHE』に関しては、どのアルバムの楽曲を持ってきても、スムーズに聴かせることができるというかね。でも、自分たちの過去のアルバムって、そういうものが多かったんじゃないかなとも思うんですよ。『UROBOROS』、『DUM SPIRO SPERO』は完璧なコンセプトアルバムとしてやってきたので、そこに隙間がないんですよね。その意味で言うと、『ARCHE』はすごく多方向に飛んでいける。改めて考えたら、当たり前というか、普通のことなんですけどね」

――言うなれば、『ARCHE』はDIR EN GREYのすべての歩みを網羅したような側面がありますからね。そのライブも海外転戦を経て、来年2月5日と6日の日本武道館公演が、『ARCHE』に伴うツアーの最終公演となりますね。

「すべてはそこに向かうために、今、動いている部分はありますからね。細かな部分はこれから詰めていくところもありますけど、もちろん、まずは『ARCHE』ですよね。そこにはさっきも言った“混ざりやすい”という要素が一番入ってくるだろうし。演出ということでは、やっぱり武道館でしかできないこともありますからね。両日共に自分たちなりのサプライズというか、何か楽しんでもらえるものはあると思います。きっとニヤッとしますよ(笑)」

――ニヤッとですか!? 「残」の煽りを40分やるなんてことはないと思いますが(笑)、何かヒントになりそうなものはありませんか?

「うーん……ちゃんと止まらずに動きますよってことかな(笑)」

 

単に刺激的なものを作りたくてやっているわけではない。
社会の括りの中では適正と判断されないものが多いだけ。

――余計にわからなくなりました(笑)。武道館でも様々な映像が用いられるはずですが、先頃、『AVERAGE PSYCHO 2』と題されたミュージッククリップ集もリリースされました。<表現の自由を問う>といった紹介のされ方を目にすることも多かったですが、規制によって修正を施されていたものではなく、本来の形のものが収録されていますよね」

「やっぱり、抑圧されると出したくなる感覚はありますよね。これはもう作り手のエゴなのかもしれないですけど、たとえば、映画でもディレクターズカットとか、いろんなヴァージョンが出たりするじゃないですか。作ったからにはちゃんと見てもらいたいなって。でも、作りながら自分でも思うんですよ。多分、規制されるんだろうなって。ただ、最近思うのは、自分の中でただのはけ口になってしまっては嫌だなということなんですよ。インディーズ的なところだったら出せるとかね(注釈:今回は規制の及ばないインディーズ流通で販売されている)。そこら辺の変な葛藤はありますよ。最初から規制されるために作っているとは思われたくないし」

――規制された映像も実際のところかなり刺激的ですが、それらの真なるヴァージョンですから、こちらを最初に観た人は、より強烈に感じるでしょうね。

「そうですね。ただ、単に刺激的なものを作りたくてやっているわけではない。たまたま自分たちがやろうとすることが、どうしても、社会の括りの中では適正と判断されないものが多いだけであって。理想を言えば、そのルールという誰かに都合良く作られたものの中に則って、刺激的なものを作りたいとは思うんですけどね」

――ただグロテスクであればいいとか、そういうものではないですよね。あくまでも映像作品として成立するものですし、実際に観てみれば、何を描こうとしているのか、主張は明確にわかると思うんです。

「そうですね。その手段が、もしかしたら自分たちはストレート過ぎるのかもしれない。もうちょっとオブラートに包んだりすることもできるんでしょうけど、それをやれないからこそ、やりたいとも思うし。ということを考えると、どうしても直接的なものになってきてしまう感じはすごくするんですよね。誰かが作ったルールというか規制はどこに行ってもありますよ。でも、もちろん、ものにもよりますけど、そこで黙って従っていればいいのかっていうことでもないと思いますからね」

インタビュー・構成=土屋京輔
 

ライブ情報


『ARCHE』
■2016年2月5日(金) 東京都・日本武道館
開場/開演 18:00/19:00

■2016年2月6日(土) 東京都・日本武道館
開場/開演 17:00/18:00

<席種・料金>
・アリーナスタンディング (ブロック指定) ¥6,800(税別)
・スタンド指定席¥6,800(税別)

先行発売>
2015年10月20日(火)~11月3日(火・祝)23:59

一般発売>
2015年11月15日(日)発売



『TOUR16 FINEM LAUDA』
2016年1月14日(木)【大阪府】 なんばHatch -「a knot」 & ONLINE only-
2016年1月15日(金)【大阪府】 なんばHatch -「a knot」 & ONLINE only-
2016年1月21日(木)【愛知県】 名古屋ダイアモンドホール -「a knot」 & ONLINE only-
2016年1月22日(金)【愛知県】 名古屋ダイアモンドホール -「a knot」 & ONLINE only-
2016年1月26日(火)【神奈川県】 CLUB CITTA' -「a knot」only-
2016年1月27日(水)【神奈川県】 CLUB CITTA' -「a knot」only-

<席種]>1Fスタンディング/2F指定席
※2F指定席は大阪公演のみとなります。

料金]>¥6,000(税別)
※本ツアーはOFFICIAL FAN CLUB 「a knot」及び、DIR EN GREY ONLINE有料会員限定公演となり、一般発売はございません。 
※「a knot」only公演は、OFFICIAL FAN CLUB 「a knot」会員のみご購入いただけます。

<OPEN/START>18:15/19:00 
<総合問合せ>NEXTROAD 03-5114-7444 (平日14:00~18:00)

 
リリース情報
DIR EN GREY:アルバム『ARCHE』

DIR EN GREY:アルバム『ARCHE』

アルバム『ARCHE』
2014年12月10日発売
【通常盤】SFCD-0144/¥3,000+税


 

DIR EN GREY:DVD/Blu-ray『AVERAGE PSYCHO 2』

DIR EN GREY:DVD/Blu-ray『AVERAGE PSYCHO 2』

DVD/Blu-ray『AVERAGE PSYCHO 2』
2015年9月2日発売
【Blu-ray】FWXD-001/¥3,500+税
【DVD】FWBD-001/¥2,500+税

<収録内容>
-Music Clip-
Agitated Screams of Maggots
VINUSHKA
Unraveling
Revelation of mankind
-Live Screen Video-
蜜と唾 (Live Screen Ver.)
THE BLOSSOMING BEELZEBUB (Live Screen Ver.)
-Bonus Footage-
Interview
AVERAGE PSYCHO Trailer
 

 

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