PAN 20周年の節目に立つ大舞台=なんばHatch公演へ向け、たっぷり語る

インタビュー
音楽
2015.10.19
PAN(写真左から、よこしん / 川さん / ゴッチ / ダイスケ)

PAN(写真左から、よこしん / 川さん / ゴッチ / ダイスケ)

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楽器もできなかった少年たちが、放課後みんなで集まるために組んだバンド・PAN。それが20年も続き、ついには大阪を代表するライブハウス・なんばHatchでワンマンライブを行うまでになるとは、果たして本人たちは想像していたのだろうか。11月11日にリリースとなるシングル「想像だけで素晴らしいんだ」で歌われる詞を聴くと、その答え――彼らがどのような想いで活動を続け、どんなふうに歩んできたのかが分かる気がする。決して平坦でも近道でもなかったであろう20年の歩みを経て、これほどまでに真っ直ぐな希望に満ちた楽曲を送り出し、そして大舞台へと向かうPANの4人はいま何を思うのか。これまでのことから、なんばHatchへの意気込み、そこで披露する「世界一への挑戦」についてまで、たっぷり訊いた。
 


――今年は20周年イヤーということで様々な活動をしてきているPANですが、今振り返るとどんな思いで活動してきた20年間だと感じますか?

川さん(Vo):元々は遊びの一つとしてバンドをやる、楽器もできない段階から始めたのが15歳のときで。幼馴染が中学卒業して高校入るときに、高校は別々やったんで、学校終わった後集まってバンドやるか、みたいな。でも何もできないからとりあえず学校の軽音楽部に入って覚えて、そっからコピーバンドした感じですね。だからホンマに、ただ遊んでたっていうか。何かを目指すとか何かをしたいっていうのではなかったんですけど、2~3年くらい経って、「ちょっと自分らの曲を作ってみようか」みたいになって。

――なるほど。

川さん:そこからちょっとずつライブをしていき、途中でコンテストみたいな大会に出て、良い感じの賞を何個かもらったりもして。そこで他人に評価された!みたいな感覚があって「あれ、俺ら持ってるんじゃないか!?」と(笑)。

――いけるぞ!っていう手ごたえが。

川さん:そう、でもそのときはまだ本気ではなくて。……俺は高校出たあと就職したんです。働きながらもバンドを辞めるっていう考えはなくて、働きながらバンドを続けてたんですけど、4ヶ月くらいしたら「……これはバンドやな!」(笑)。

よこしん(Ds):あはは!

川さん:やっぱりね、高校生からいきなり社会人になるのは結構ギャップがあるというか。バイトとは違うし、「まだまだやりたいことあるぞ」ってなったんですよ。他のメンバーは専門学校とか行ってて――ゴッチは「今後の人生を手堅く生きたい」とか言って、コンピューターの専門学校行ってたんですよ。

ゴッチ(G):コンピューターの資格を持っておけば、今後の人生に潰しが効くなぁとっていう安直な思いで入学したけど、半年で辞めました(笑)。

ダイスケ(B):当時、ネットとか全然発達してなくてね。

ゴッチ:そうそう。だからとりあえずワープロを使えるようになりたくて。そっからです。

ダイスケ:まずはゴシックと明朝の切り替えからな。

ゴッチ:もうええねん! 細かい話は(一同笑)。で、すぐ辞めてしまったんですけど、バンドを辞めるっていうのは頭になかったんで、続けていて。そんなときに東京のレーベルから「CD出してみいひんか」みたいな話をもらったんですよ。「無料でレコーディングできるとか、ええやん!」って。

――それまで自主制作とかしてたんですか?

川さん:ないですないです、僕らはデモテープしか無くて。自分らでスタジオで録音したやつとか、MTR――といっても今のとは全然違って、カセットテープで録るようなやつで。

ダイスケ:CDが誰でも作れる時代じゃなかったんで。CD-Rも無かったし。

川さん:だから、歌ってカセットテープに録音してっていうのを、しかも家でやってましたからね。……カセットテープって何回も録ってると伸びてくるんですよね。

――そうでしたね。

ゴッチ:そのうち、なんか(低音で)「ブォォン」みたいな音して、再生スピードがどんどん遅くなって(笑)。

川さん:でもそれでやるしかないから、ライブ会場とかでもそのテープを置いてて。無料であげたり、100円とかだけ貰ったりしてたんですけど、ライブごとに30本とか50本とかテープを用意して、コンポとかで出来上がったテープをダビングして増やしていくわけですよ。で、そのコンポに「倍速機能」があったから倍速で録音して。それをちゃんと聴けるか確認してみたら、倍速で入ってるんですよ(一同笑)。

――甲高い感じで(笑)。

川さん:そう、でも「これでいくしかない!」と。

ゴッチ:倍速のまま会場で配ったりして。今では相当レアですよ。

川さん:全曲倍速バージョン。聴いてみて「あれ?早いな、声高いな」みたいな。

よこしん:早いとかいう次元じゃないでしょ(笑)。

ゴッチ:そんとき「がんばりまっせ」っていう曲があったんですけど、(高音で)「ガンバリマッセ!ガンバリマッセ!」みたいになってて(笑)。だから、もし音源から知った人がおったら、「ライブだとテンポ遅いね?」って(一同笑)。

ダイスケ:というテープを10曲100円とかで配ってて。

川さん:そんな頃レコーディングできるって話を聞いたので、「タダでやってくれるし、倍速になる心配もないし」って(笑)。それが東京に行くキッカケになって、ライブしに行ったわけですけど、まず友達が一人もいないっていう状況の中でライブをしたときに、「こんなにも相手にされへんのか」と。それで悔しいなっていう気持ちになってきて、それからライブのパフォーマンスだったり流れだったりを考えて、何か面白いことやった方がええかな、と。そこで今のPANの原型が出来上がったかなっていう気はしますね。

――なるほど。

川さん:何度か東京にライブしに行ってて……よくフライヤー(チラシ)配ったりするじゃないですか。みんなが配ってるときに、僕らは食パンを配るっていうのを始めたんです(笑)。細かい情報書いててもしゃあない、「パンです!」っていうのを覚えてもらわな!って。

――それは強烈に刻まれますよね(笑)。

川さん:そうそう。でも受け取った人から「味がない」っていうクレームが来て。悔しいから物販コーナーにピーナツバターとジャムとスプーンを用意して待ってるっていう。それでパンをもらった人は塗りにきて、立ち去っていく。

ゴッチ:別に物販も見ずに、バターだけ塗って帰るっていう(笑)。

川さん:これは採算が合わへんなっていうことで、ステージでパンを見せようっていうことになって。次はそれを投げてみようっていうのが、パフォーマンスとして「わりと面白いな」っていう受け止められ方をしたんですよね。基本的に面白いことを言ったりやったりするのは好きなので、段々と「音楽はやりつつ面白いバンド」になっていきたいなぁと思うようになりました。

――今に繋がってくる部分ですね。

川さん:あとは色々なところにライブしに行く中で、だんだんと友達が出来て、そこからの刺激も大きかったですね、対バンとか。日本には面白いバンド、カッコいいバンド、良い曲、パフォーマンスとか、いっぱいあるんだなって刺激になって。そこから音源作ってツアーやってっていうのを繰り返す中で、段々と身について行った部分が多いというか。だからその頃にも、明確に「こうしたい!」っていうのは無かったかもしれないです。ただやっぱり色々と覚えて身にけていくと、今度は色々ありすぎて自分たちのやりたいことがよく分からなくなって。

――うんうん。

川さん:25~26歳とか、そのくらいの頃が一番もがいてたかもしれないですね。そこから色々身に付けたものを一つずつ降ろしていく時期があって、そこで曲作りに対する意識なんかも変わったと思います。初めは自分たちで「やりたい!」って始めたことが、いつの間にか「やらなあかん」みたいに変わってて、ようやく自分たちで「こうやりたい、こうなりたい」って定まったのが10年経ってからなんです。

――そこからはもう真っ直ぐに。

川さん:そうですね。「自分らって何なんやろ」とか「どういう場所で際立つんやろ」とか結構考えたし、あとは色々バンドがいる中で、隙間――誰もやってない事って何やろ?とか、それを拡げていく作業であったり。でもやっぱり面白いことが好きっていうのはずっとあって、それをやるのは自然なんですよね。っていうことを続けてきた中で、20歳~30歳くらいまでいたドラムが脱退することになって。そこでよこしんが入るんですけど、よこしんも所属してたバンドが解散するところで、そのタイミングが重なったおかげで活動が途切れずに済んだのは、PANとしてかなり運が良かった、大きかったですね。

――よこしんさんは、誘われたときどう思いました?

よこしん:ずっと真剣に頑張ってきたバンドが解散するっていうタイミングで、もうすぐ30歳にもなるっていう時期だったりもしてて。「本気でやるのは、次やるバンドが人生で最後かなぁ」っていうのを思ってる時に誘ってもらったんですけど、違うバンドからも誘われてて。だから、結構悩みました。だから最初はサポートっていうかお試しみたいにして入りましたし。

――やっていく中でハマっていったと。

よこしん:そうですね。一緒にやる人が楽しかったり、自分に合う人じゃないとやっていかれへんなっていうのは思ってたので、川さんってどんな人なんやろ? ダイちゃんは、ゴッチさんは?って見てました。

川さん:あんまり喋ったことなかったんですよ。それまでは。

よこしん:そう、2~3回くらいは共演したんですけど。

川さん:それ以外は全然知らなくて。こっちはとりあえずドラムをやってくれるっていうだけでライブができるし、ありがたかったですけど!

――加入からサウンド面が変わったりした部分もありました?

川さん:やっぱりドラムが変わると、既存の曲のニュアンスも変わってきたりしますし……(よこしんが)入ってすぐのタイミングで曲作りしてたんですけど、そこによこしんが曲を作ってきたりしたんですよ。それ自体僕らにとって新鮮で、曲も今までになかったような曲だったりもして。まぁそこからアレンジしていく中でPANの音にはなっていくんですけど……それこそ「スパイス」ですよ、もう。新たな「スパイス」が!(ドヤ顔)

よこしん:お、上手いこと持っていって。

ゴッチ:いや、お前、何ゴール見つけた顔しとんねん(一同笑)。

ダイスケ:でも実際、ドラムが変わったときがバンドの考えも変わってきてる時期だったんで、すごく転機でしたね。身に付けたものを降ろしていって、「これだ!」って定まった時期と重なってて。

ゴッチ:実際加速してますね。よこしんが入ってから。

ダイスケ:(バンドが)ええとこの5年やな、PANの。

川さん:20年やってる中の一番良い5年。

よこしん:そう。だから良い「スパイス」出せたんじゃないかなと。

ゴッチ:どんだけ擦るねん(笑)。

川さん:そこからライブの表現も変わっていったし、音源もたくさん作ったし、その辺りはやり易くなりましたね。そこから今にいたるまでは、バンドも固まってやってこれて、徐々に結果に結びついてきたかな?とは思います。

――先ほど対バンで刺激を受けて、というお話もありましたけど、今年も『マスコロ』をはじめ、たくさん対バンをしています。その中で特に刺激になった存在はいますか?

ダイスケ:アイドルの方とか、勉強になりますね。自分の物差しと違う、計られへん場所から得るものは大きかったですね。演出だったり。ももクロがステージから水撒いたりしてるのを観ると「自分らだったら何やろな?」とか思うわけですよ。そうすると「やっぱパンなのかな」って(笑)、じゃあ今やってる演出は間違ってないなとか。バンドでいっても四星球とか、人を楽しませる、ワクワクさせる仕掛けがたくさんあって、凄いなと思いますし。

川さん:若いバンドからの刺激もあるし、年上のバンドのカッコよさっていうのも重々承知していて、刺激になってるし。対バンあっての現在のPANっていうのは間違いないですね。

――そんな刺激も受けつつ活動してきた今年ですが、集大成がなんばHatchでのワンマン(PANマン)になるわけですね。

川さん:そうですね。20周年イヤーとしてはそこに目標を設定してきてて。

――その前にまずはシングル「想像だけで素晴らしいんだ」がリリースされます。早速聴かせていただいたんですが、今までのPANの音楽がギュっと凝縮されているというか。

川さん:今振り返ってきたようなことを歌うっていうのには、良いタイミングかなぁと思って。なんばHatchが控えているのもあったし、「想像だけで素晴らしいんだ」っていう、「これをなんばHatchで歌ったらどうなるんやろうな?」っていうのは常に頭にありながら歌詞を書いたりしたし、バンド始めてから今までは何があったやろなとか、それを一回自分の中で見直す良いきっかけになったかなと。元々は20周年を振り返る曲を作りたいねっていうのは無かったんですけど、曲が出来上がった時点で「これは(集大成的な詞が)カッチリくるな」って思ったので、歌詞に関してはわりとすんなりと、ひねる必要もないなって感じでした。

ゴッチ:音に関しても、この曲に関しては、飛び道具的な感じよりシンプルに、歌にそのまま身をゆだねる感じでフレーズ作りをしたというか……勝手にそうなっていった感じですね。

川さん:ライブで、『マスコロ』でやったときは良かったですね。まったく初めての状態で演奏したときに、一発目の反応で「あぁ、この曲ってやっぱり力があるな」っていう手応えはすごくありました。

――実際、1~2回聴いただけでフレーズが残りますもんね。あとはカップリングもタイトルで遊んでたり(笑)、バイトがテーマだったりしていて、この4曲で「20年やってきたPANっていうバンド」が表されてると思います。

ゴッチ:あぁ。

川さん:確かにそんな感じはありますね。

ダイスケ:それぞれ「らしい」曲が入ってます。

――これらの曲も披露されるであろう、なんばHatchに関して、そろそろ何をやろうとか固まってますか?

川さん:まだ決定ではないですけど、今ちょうど色々と案を出していて。

――何やら世界記録にも挑戦するとか。

川さん:そうなんですよ! まだ明かせないんですけど、PANが「世界一の何か」に挑むっていう。

ダイスケ:これをライブ中にやったら面白いだろうなっていうことを。

川さん:なんばHatchでやるだけじゃなくて、世界記録まで達成する、その瞬間をみんなにも観てもらいたいなっていう。だから、その……音楽とは違うプレッシャーというか。もうアスリートですね(笑)。

ダイスケ:仕上げていかないとね。

――え、フィジカルな要素が絡んでくるんですか?

ゴッチ:わりとそうです。

川さん:色んなものが。フィジカル、メンタル。全部が一つにならないとこれは達成できないんで。だからみんなには空気読んでもらって、ちょっと静かにしてもらって。

よこしん:あはは! ライブやっちゅうねん(笑)。

川さん:シーンとした中で……何かに挑みます!

――すげえ気になるんですけど(一同笑)。

川さん:これね、本当に簡単ではないんですけど、一つ言えることはパンを使った何か、世界記録っていうことですね。

――期待してます! それ以外の部分ではライブに向けてどうでしょう。

川さん:やっぱりその日の特別感っていうのは出していきたいし、今までやったことない事もやりたいなっていうのは企んでます。3時間くらいあるので、あの大きい空間の中でPANが3時間のライブってなると、自分たちもワクワクするし、曲数も増えてくるから、色んな曲をやれると思うし。だからこそ、久しぶりにPANを観に来るっていう人にも来てほしいし、最近知った人にも「こんな曲もあったんか」っていうのを魅せられたり、色んな楽しみがあるので期待していてほしいな。

ゴッチ:大きいハコなんで、大きい演出とか、今までやったことないこともやるんですけど、今までやってきたことも敢えてやりたいっていう。ライブハウスでやってきたライブをそのままなんばHatchに持っていくっていう空気感も大事にしたいです。あとはどこまで自分が楽しめるかっていうところですね。

ダイスケ:この日だけのライブを見せるつもりで、僕も気合入ってます!(よこしんをチラッと見る)

よこしん:(笑)。

――一人ずつ訊いていくと、最後の方って話しづらいですけれども。

よこしん:大体それドラムの役目ですよね(笑)。

ゴッチ:じゃあ全部英語で!

よこしん:Ah~,Spicy??

川さん:いきなり「刺激」(笑)。

よこしん:(笑)。 実際、PANのライブって楽しいのがテーマみたいなところがありますけど、今回もいかに楽しんでもらって、こっちも楽しめるかを大事に考えて、良いライブができたらなという想いでございます!

 


撮影・インタビュー=風間大洋

 
ライブ情報
PAN結成20周年記念イベント
【20祭やDAY!ファイナル!PANマン!~イチかバチかハッチか!~】


日時:2015年12月20日(日)
会場:なんばHatch

 

 

リリース情報
シングル「想像だけで素晴らしいんだ」
「想像だけで素晴らしいんだ」

「想像だけで素晴らしいんだ」


【初回盤限定盤】
タイトル:想像だけで素晴らしいんだ(CD+DVD付)
価格:1,220円+税(12/20に開催、なんばHatchワンマン記念価格!)
品番:ADVE-1011D
発売元:54Adventure / MOONSHINE Inc.
販売元:PCI MUSIC
CD収録曲:
1. 想像だけで素晴らしいんだ
2. やったった感
3. We are バイト
4. S・A・L・A・D・A


DVD収録内容:【NEW】
M1. そこに光る(マスターコロシアム’15 9月22日/4日目)
M2. 直感ベイベー(マスターコロシアム’15 9月21日/3日目)
M3. 今夜はバーベキュー(マスターコロシアム’15 9月22日/4日目)
M4. 想像だけで素晴らしいんだ(マスターコロシアム’15 9月22日/4日目)
M5. Z好調(マスターコロシアム’15 9月21日/3日目)
M6. 天国ミュージック(マスターコロシアム’15 9月21日/3日目)

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【通常盤】
タイトル:想像だけで素晴らしいんだ
価格:¥1,000 +税
品番:ADVE-1011
発売元:54Adventure / MOONSHINE Inc.
販売元:PCI MUSIC
CD収録曲:
1. 想像だけで素晴らしいんだ
2. やったった感
3. We are バイト
4. S・A・L・A・D・A

 

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