中村芝翫主演舞台『オセロー』製作発表で、神山智洋(ジャニーズWEST)が生田斗真の「神山なら大丈夫」発言に深々と頭を下げる 

レポート
舞台
2018.6.16
(左から)前田亜季、檀れい、中村芝翫、神山智洋

(左から)前田亜季、檀れい、中村芝翫、神山智洋

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2018年9月2日(日)から東京・新橋演舞場にてシェイクスピア4大悲劇の一つ『オセロー』が上演される。これに先駆け、6月15日(金)都内にて製作発表会見が行われ、主人公・オセロー役を演じる中村芝翫と、檀れい、神山智洋(ジャニーズWEST)、前田亜季、演出の井上尊晶、音楽の松任谷正隆、そして松竹株式会社の安孫子正副社長が登壇した。

ヴェニスを舞台に、ムーア人の将軍オセローが人種を越え元老院議員の娘デズデモーナと強い愛で結ばれ、親の反対を押し切り結婚する。ところがオセローの忠臣イアーゴーは、自分が副官に任命されなかったことでオセローに深い憎しみを抱き、陥れようとする。副官を務めるキャシオーを意図的に失脚させ、さらにはデズデモーナとキャシオーが密会しているかのように言葉巧みにオセローの心を揺さぶるイアーゴー。嫉妬の罠にはまり、でっちあげの浮気の証拠を信じてしまったオセローはついに…。激しい恋、嫉妬、血で血を洗うような権力闘争、家庭の崩壊、外国人への差別問題など、今の時代にも通じる要素が網羅されている作品だ。

中村芝翫

中村芝翫

さかのぼると、1914年(大正3年)に松竹にて上演されて以来、歌舞伎にゆかりのある役者がオセロー役を演じてきた。「芝翫」襲名後初めての外部舞台となる芝翫は「まさかこの年齢になって『オセロー』をやらせていただけるとは思わなかったです。妻(三田寛子)から『あなた、シェイクスピアはやらないの?』と言われても『僕が演じていいのかな……』思っていたくらい遠いところにあった作品でした。だからこそ今回お声を掛けていただいたのをありがたいなと思いました」と語る。

そしてまだ稽古前ではあるが、オセローという人物を演じるにあたり「オセローの言葉が架空のものではなく、僕の肉体から発するような言葉になるよう、(演出の)尊晶さんと話し合って作っていきたい」と役作りについて私見を述べる。とはいえ「怖いですね。台詞の量も半端じゃなくて、オセローを演じるのも大変だけど台詞を覚えられるかが心配ですね」と台本の分厚さを指で表現しつつ笑っていた。

檀れい

檀れい

オセローの妻デズデモーナ役を演じる檀はシェイクスピア作品に出演するのが初とのこと。檀は「皆さまの話を聞いていると『怖い』という気持ちが出てきました。でもその怖い気持ちを取っ払って、芝翫さんについていきたいです。8月、9月(の稽古と公演期間)は芝翫さん一筋で走って参りたいと思います」とオセローの妻として意気込みを見せる。その檀の事を芝翫は「本当にお人形さんのようで、言葉が出ないくらい美しさがある。こんなに綺麗な人を愛する事が出来るのは幸せです」と目尻を下げていると、檀が恥ずかしそうにうつむいていた。

悲劇の夫婦を演じます

悲劇の夫婦を演じます

神山智洋

神山智洋

オセローの忠臣でありながら、この物語を悲劇へと動かしていくイアーゴー役の神山は「まさか僕がシェイクスピアをやることはないだろうと思っていたが、その一方でいつかシェイクスピア作品をやってみたい、という気持ちもあり、出演が決まったときはやった!と喜びました……が、台本を見たらとんでもない台詞量で(笑)。本番までに間に合うかなあと不安になります」と率直に語った。病気治療のため活動休止中の今井翼からこの役を引き継いだことにも触れた神山は「翼くんから『よろしくお願いします』と言葉をいただいたので、翼くんの想いも背負って自分なりのイアーゴーを演じ、『オセロー』の世界をひっかきまわし、ぶっ壊していきたいです」と“二人分”の力を込めて意気込む。そんな神山について芝翫は「私の友達の生田斗真くんが『神山なら大丈夫です』と太鼓判を押してくださったので、きっとすばらしいイアーゴーを作ってくれるはず」と背中を押す。先輩の生田、そして大先輩の芝翫の言葉に神山は会見場のテーブルに額が付くくらい頭を下げていた。

神山さんのこの笑顔、いいですね!

神山さんのこの笑顔、いいですね!

前田亜季

前田亜季

デズデモーナの侍女エミーリアを務める前田は「私もシェイクスピア作品は初めてで、新橋演舞場という大きな舞台に立つのも初めて。皆さんと一緒に新しい『オセロー』を作っていけたら」とコメント。前田について芝翫は「遠い親戚にあたる(※実姉の前田愛は、芝翫の甥・中村勘九郎の妻)あっちゃんが出演してくれるのは心強いですね。毎年正月には顔を合わせる間柄ですから」というと、前田は照れ臭そうに微笑んでいた。

お二人とも薫るような美しさですね。

お二人とも薫るような美しさですね。

井上尊晶

井上尊晶

本作の演出を務める井上は、蜷川幸雄の助手を30年務め、蜷川イズムの薫陶を受けてきた人物。「生前、蜷川が『これ、持っとけよ』とロシアの有名な演出家が『オセロー』の演出プランをまとめた内容のコピーをくれたんです。今回演出のお話をいただいた時にふとそれを思い出し掘り起こしました。運命というか『オセローをやれ』と背中を押されたような気持ちになりました。演劇が持っているエネルギーを僕に引き継ぎたかったのかな」と本作との出会いについて語る。そして「今使っているワイヤレスマイクを使わず、(シェイクスピア作品を上演してきたロンドンの)グローブ座のように、新橋演舞場の空間に世界に向けて高らかに響かせてほしい」と演出案を口にすると、キャスト陣が思わず驚きの表情を見せていた。

松任谷正隆

松任谷正隆

そしてその井上を“天敵”と呼ぶのが音楽を担当する松任谷。「以前、寺山修司作の舞台『青い種子は 太陽のなかにある』で尊晶さんと一緒に仕事をしました。当時この作品の音楽をやらないか、とオファーを受けたとき、どうしようと秋元康さんに相談したら『蜷川さんは何でもいいと言ってくれるけど、その下にいる井上尊晶は曲者だ』と言われたんです(笑)。その言葉通り、蜷川さんは何でもOKを出してくださいましたが、尊晶さんとはかなりぶつかりました。その“天敵”から今回電話があり『オセロー』の音楽をやってくれないか、と相談されました。だから『僕は音楽を作るのが下手なので、3月に一度読み合わせを実施してくれないか』とお願いしたんです。そのときの読み合わせの音源を全部書き起こし、それを元に30曲作り、その内29曲は僕の中でボツにしました。ここから急ピッチで作っていきます」と現在の進捗を説明すると、再びキャスト陣が目を丸くし、井上は隣で微笑みを浮かべていた。

これまでの松竹『オセロー』の中では、芝翫をはじめ、キャストが大きく若返っている点にも注目したい。何度も「新しい『オセロー』」という言葉が芝翫の口から発せられた2018年版の『オセロー』。新橋演舞場の「和」空間の中で、どのようなドラマを見せてくれるのだろうか。

取材・文・撮影=こむらさき

公演情報

『オセロー』

■日時:2018年9月2日(日)~26日(水)
■会場:新橋演舞場
■作:W.シェイクスピア
■訳:河合祥一郎
■演出:井上尊晶
■音楽:松任谷正隆

 
■出演:
オセロ―:中村芝翫
イアーゴー:神山智洋(ジャニーズWEST)
ブラバンショー:辻萬長
ヴェニス公爵:田口守
ロドヴィーコ―:大石継太
モンターノー:二反田雅澄
ビアンカ:河合宥季
グラシアーノ―:廣田高志
ロダリーゴー:池田純矢
キャシオー:石黒英雄
エミーリア:前田亜季
デズデモーナ:檀れい
塚本幸男、児玉真二、河内大和
澤魁士、プリティ太田、野澤健、澄人、鎌田雅尋、水谷悟、五味良介
桂佑輔、尾瀧一眞、小野哲平、中村芝晶
上川路啓志、駒井健介、チョウヨンホ、長谷川直紀、薄平広樹、原田翔平、光山恭平

 
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