見逃し厳禁! 成河が38役を演じ分ける超絶技巧のひとり芝居『フリー・コミティッド』、その通し稽古を観た!!
成河 撮影:岡千里
2018年6月28日の開幕に向けて着々と準備が進む、都内の某稽古場。成河(そんは)が初めて挑む、本格的なひとり芝居『フリー・コミティッド』の通し稽古を見学させてもらった。演出の千葉哲也ら、数人のスタッフが見守る中、談笑したり、発声練習したり、気になるセリフを復唱したりする成河に千葉は「今のうちに失敗をたくさんすることだよ」などと声をかけている。アクティングエリアを見ると、それほど広くはないスペースに仮のセットが組まれ、ぎっしりと物が詰まっている事務室風。それも狙いなのか、ちょっとぶつかっただけですぐにでも崩れそうだ。
成河 撮影:岡千里
千葉哲也 撮影:岡千里
稽古場のエアコンを止め、電気もすべて消灯。セットの隅に置かれたクリスマスツリーの豆球だけがチカチカと点滅している。そう、この芝居の中での季節は真冬、クリスマスの少し前。場所はニューヨークのマンハッタン、アッパー・イーストサイド。ここは四ツ星人気レストランの予約受付室なのだ。地下にあって窓もない設定なので、とても閉塞感がある雑然とした部屋になっている。
成河 撮影:岡千里
ドアを開けて成河演じる主人公のサムが登場し、部屋の電気をつけると、ごちゃっと物の置かれた机の上にオフィス用の電話機が2台。着信音を響かせながら、ランプを点灯させている。実はこの部屋には他にレストランフロアと厨房、そして気難しいカリスマシェフとの直通内線電話がそれぞれ微妙に離れたところに据え付けてあり、加えてサムももちろん携帯電話を持っているため、それらが同時多発的に鳴るたびにサムは走り回り、電話を受け、上手くことをさばいていかなければならないのだ。しかもサムはこの予約受付係のアルバイトをしながらも、実は本業は俳優。大事なオーディションの結果を知らせる電話や、また離れた故郷に住む一人暮らしの父親からも電話が入ってくるという事情も、ここに加わってくる。
レストランは常にオーバーブッキング気味、にもかかわらず我儘なセレブたちは当然のように自分の予約をねじこもうとしてくるため、それに対応するサムは相手に合わせてうまく断ったり、忖度したり、と臨機応変に対応しなければならない。成河はそれを、電話の相手が変わるたびに特長のある口調や訛り、口癖やテンションの高低などに工夫を凝らしつつ、独特な個性を持つ登場人物たちをサムとの会話を通じて、声色と身振りの超絶技巧で次々と表現していく。間髪空けずに強烈な個性を放つ人々の相手をしつつ、途中では階上のフロアでも問題が勃発! 散々な目に遭わされ、複雑な思いも抱えながら、ひたすら孤軍奮闘するサム。彼のストレスが最高潮に近づくにつれ、それを見守るこちらは笑いながらも、サム、そして成河を応援したい気持ちにどんどんなっていく……。
成河 撮影:岡千里
成河 撮影:岡千里
そして、予定通りに2時間弱でこの日の通し稽古はつつがなく終了。セリフを補助するプロンプはほとんど必要がないくらいで、途中で電話が床に落ちたり、携帯電話が一瞬見当たらなくなったりするハプニングはあったが、それにも成河は冷静に対処し、一度もストップすることなくスムーズに進行していた。半ば放心状態のような様子でセット裏から戻ってきた成河は、ふぅーっと大きな深呼吸。確かにあのセリフ量、運動量は消耗度が高そうだ。一度、通すだけで体重がかなり減っていそうな気さえする。
そして驚くべきは、この時点で実は初日まであと約2週間ある、という事実。つまりこの完成度から、更に稽古を重ねて相当レベルアップしたものが劇場で披露されることが保証されているようなものなので、もしかしたらとんでもないパフォーマンスが目撃できるかもしれない。これまで数々の難役を軽やかに演じ切ってきた成河のポテンシャルから鑑みても、この期待は決して裏切られないはず。6月28日DDD 青山クロスシアターにて開幕される初日を、心して楽しみに待ちたい。
取材・文=田中里津子
公演情報
■翻訳:常田景子
■演出:千葉哲也
■出演:成河
■企画・製作/主催:シーエイティプロデュース
■日程:2018年6月28日(木)~7月22日(日)
■会場:DDD 青山クロスシアター http://www.ddd-hall.com/
■料金:一般 6,900円(全席指定・税込)
※未就学児入場不可
■問合せ:スペース TEL:03-3234-9999
■公式サイト:https://www.stagegate.jp/stagegate/performance/2018/free_committed/