メキシコと新日本で活躍のラ・ソンブラが、WWEスーパースターとして日本凱旋 アンドラデ“シエン”アルマスに大注目!
世界最大のスポーツエンターテインメント団体WWEが、いまや恒例となった夏の日本公演を今年も開催。『WWE Live JAPAN』と銘打たれた東京・両国国技館大会が、6月29日(金)、30日(土)の2日間にわたっておこなわれる。
今回来日するスーパースターのなかでも、アンドラデ“シエン”アルマスは新鮮な存在だ。アルマスの来日は、NXT時代の2016年12月3日の大阪公演以来。よって、WWEスーパースターとしての東京上陸は初めてとなるのだが、彼の場合はまだ、“元”ラ・ソンブラと言った方が通じやすいのかもしれない。新日本プロレスとメキシコの老舗団体CMLLで活躍したマスクマンのラ・ソンブラこそが、アルマスの“正体”なのだ。
身長175センチ、体重95キロ。ルチャドールとしては大型の部類に入るアルマスは、1989年11月3日生まれの28歳。ブリジャンテのコーチを受けて2003年にデビューした。CMLLには07年から参戦、“シャドー”を意味するラ・ソンブラに改名した。同年11月27日に現NOAHの大原はじめを破りNWA世界ウエルター級王座を戴冠。09年1月にはボラドールJrと組んでCMLL世界タッグ王座を奪取した。翌年5月には新日本の棚橋弘至と対戦、棚橋&タイチ&OKUMURA組からCMLL世界6人タッグ王座をラ・マスカラ&マスカラ・ドラダとのトリオで団体に奪還。この試合が6月の初来日へと直結し、新日本のベスト・オブ・ザ・スーパージュニアにエントリーされたのである。
11年には1・4東京ドーム大会に参戦し、夏のG1クライマックスにも出場。8・8横浜では、中邑真輔とG1公式戦で闘っている。また、この年から始まったCMLLと新日本のコラボレーション興行「ファンタスティカマニア」にCMLL世界6人タッグ王者として来日すると、当時はNO LIMITというタッグチームだった内藤哲也とベルトを賭けて対戦した。また、「ファンタスティカマニア」でメキシコ人同士によるメインイベントを初めて飾ったのもソンブラである(12年1・22後楽園ホール)。
のちに内藤と結託するロス・インゴベルナブレスが結成されたのは14年4月のことだった。“制御不可能な野郎ども”を意味するこのユニットは、ラ・ソンブラ、ラ・マスカラ、ルーシュの3人でスタート。世界最古の歴史を誇る団体にテクニコ(ベビーフェース)でもルード(ヒール)でもないというまったく新しい概念を持ち込み大ブレイクをやってのけた。内藤がこのムーブメントにインスパイアされたのは15年10月のメキシコ遠征。10・23アレナ・メヒコでインゴベルナブレスの勝利をアシストし結託すると、即、この概念を日本に持ち込みロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンを結成、新日本のトップに立つきっかけとなった。
新日本&CMLLを股にかけて活躍していたソンブラは、15年11月にWWEとの契約を発表。11・13アレナ・メヒコにおける対ルーシュがCMLLラストマッチで、15日のFULLモンテレイ大会でおこなわれた6人タッグマッチ(ソンブラ&ルーシュ&マルコ・コルレオーネ組vsトラウマⅠ&Ⅱ&エロデスJr組)がメキシコ最後の試合となった。
WWEでは、まずはNXTに登場。素顔のマニー・アンドラデを名乗り、16年1・8タンパでのハウスショーで白星デビューを果たした。同年5月21日、サモア・ジョーのNXT王座挑戦を機にリングネームを現在のものに変更。NXTでは中邑、ヒデオ・イタミ、戸澤陽ら日本人選手ともしのぎを削ってきた。
そんなアルマスがふたたびタイトル戦線に加わったのが昨年夏だ。ドリュー・マッキンタイアに苦杯をなめさせられてきたアルマスだが、11・18「テイクオーバー」で、念願の王座奪取に成功。ロデリック・ストロング、アダム・コール、ジョニー・ガルガノらから防衛を重ねていった。今年の“レッスルマニアウィーク”4・7「テイクオーバー」でベルトを失い、以後も奪回に失敗するも、陥落から10日後のスマックダウン「スーパースターシェイクアップ」でWWE昇格が明らかになった。
スマックダウンでの初試合は5・15英国ロンドン。マネジャーのゼリーナ・ヴェガ(来日経験もあるティア・トリニダード)を帯同し、秒殺デビューを飾ってみせたのである。翌週も相手を秒殺すると、5・29ローリーからはシン・カラを挑発。昇格から初となる本格的な抗争を予感させる場面が見られるようになっている。
メキシコから日本に飛躍し、さらにはWWEへと駆け上がったアルマス。とはいえ、世界的認知度では、WWE昇格した今年が“元年”となるのだろう。ラ・ソンブラからアンドラデ“シエン”アルマスへ。ニックネームの“シエン”とは、スペイン語で“100”の意味。本格的活躍のスタートが日本公演の時期と重なるだけに、その意味合いは前回の来日とは比較にならない。
文:新井宏