WWE日本公演6・29&30両国2DAYS 中邑真輔、アスカ、ヒデオ・イタミ “祖国で王座奪取”の期待も込めて、 日本人スーパースター、それぞれのリベンジ!
激闘と波乱の連続となった6・17シカゴでのビッグイベント「マネー・イン・ザ・バンク」(以下MITB)。その興奮冷めやらぬ間に、世界最高峰のスポーツエンターテインメント団体WWEが日本にやってくる。『WWE LIVE JAPAN』と銘打たれた日本公演が6月29日(金)&30日(土)、東京・両国国技館にて開催されるのだ。
「MITB」の結果を受けておこなわれる今回の日本公演には、スマックダウンブランドのスーパースターが大挙上陸。そのなかには3人の日本人スーパースターも含まれている。中邑真輔、アスカに加え、イタミ・ヒデオの凱旋も決まった。シャーロット・フレアーの来日中止は残念だが、イタミの登場はうれしいニュース。これにより、以下の対戦カードが発表された。
6月29日(金)
▼WWE王座戦ノーDQマッチ
AJスタイルズvs中邑真輔
▼スマックダウンタッグ王座戦フェイタル4ウェイ形式
ブラジオン・ブラザース(ローワン&ハーパー)vsウーソーズ(ジミー&ジェイ・ウーソー)vsルーク・ギャローズ&カール・アンダーソンvsルセフ・デイ(ルセフ&エイデン・イングリッシュ)
▼スマックダウン女子王座戦
カーメラvsベッキー・リンチ
▼ダニエル・ブライアンvsビッグ・キャス
▼ニューデイ(コフィ・キングストン&ビッグE&エグゼビア・ウッズから2人)vsザ・バー(シェイマス&セザーロ)
▼ヒデオ・イタミvsザ・ミズ
▼タイ・デリンジャーvsサモア・ジョー
▼アスカ&ナオミvsアイコニック(ビリー・ケイ&ペイトン・ロイス)with ラナ▼シン・カラvsアンドラデ“シエン”アルマス with ゼリーナ・ベガ
6月30日(土)
▼WWE王座戦フェイタル4ウェイ形式
AJスタイルズvs中邑真輔vsダニエル・ブライアンvsサモア・ジョー
▼スマックダウン女子王座戦
カーメラvsアスカ
▼スマックダウンタッグ王座戦フェイタル4ウェイ形式
ブラジオン・ブラザース(ローワン&ハーパー)vsニューデイ(コフィ・キングストン&ビッグE&エグゼビア・ウッズから2人)vsルーク・ギャローズ&カール・アンダーソンvsザ・バー(シェイマス&セザーロ)
▼ウーソーズ(ジミー&ジェイ・ウーソー)vsルセフ・デイ(ルセフ&エイデン・イングリッシュ)
▼ヒデオ・イタミvsビッグ・キャス
▼シン・カラvsザ・ミズ
▼ベッキー・リンチ&ナオミvsアイコニック(ビリー・ケイ&ペイトン・ロイス) with ラナ
▼タイ・デリンジャーvsアンドラデ“シエン”アルマスwith ゼリーナ・ベガ
※来日タレント、対戦カードは当日まで変更される場合があります。予めご了承ください
※6/29、30とも王者・所属スーパースターは6/18時点のものです。
こうしてみると、3人の日本人スーパースター全員から「リベンジ」のテーマが見えてくる。それぞれが“祖国でやり返す”との思いを胸にリングに上がることだろう。
中邑真輔は「MITB」でAJスタイルズのWWE王座に挑戦。相手をKOしなければ決着がつかない“ラストマンスタンディングマッチ”で対戦したのだが、惜しくも敗れてしまった。よって、日本人初のWWE王者誕生、頂点のベルトを巻いての凱旋はお預けに。この瞬間、中邑の戴冠は本人や日本のWWEユニバースのみならず、日本人レスラー、ファン、関係者の“悲願”となった。
昨年5月にスマックダウンデビューを果たした中邑は、WWE昇格後初の試合がPPVという破格の待遇でブランドに迎え入れられた。8月1日にはWWEの顔であるジョン・シーナとの決定戦を制してWWE王座への挑戦権を獲得。当時の王者ジンダー・マハルとの対戦は日本でも実現したのだがベルトには届かず、王座は新日本時代に東京ドームで対戦したAJスタイルズに移動した。同時に、中邑のターゲットもAJに移ったのだ。
中邑とAJのタイトル戦は年間最大のビッグイベント、4・8「レッスルマニア34」で実現した。結果はAJの防衛だったが、試合後に中邑がまさかの急所攻撃でヒール転向というビッグすぎるサプライズ。祭典後もAJを狙い、両者は以後すべてのPPVで王座を賭けて対戦してきた。中邑がベルトを手にしていないことでもわかるように、結果は2敗2分けで白星がない。もしかすると、今回の日本公演は中邑にとってWWE王座へのラストチャンスになるのではないか。ここでもベルトが取れなかったとしたら、ターゲット変更、闘い方の軌道修正を余儀なくされる可能性が高い。
日本公演でのAJと中邑の対戦は、初日が反則裁定のないノーDQ形式による一騎打ち。2日目はダニエル・ブライアン、サモア・ジョーも加えた4ウェイとなる。どちらも中邑にとって正念場。ある意味こちらも凱旋となるAJとしても、思い出深い日本でベルトを手放すわけにはいかないだけに、両日ともPPV並みの激闘必至である。
初日のノーDQマッチではやはり、レッスルマニアに端を発したローブロー(急所攻撃)がポイントになってくるのではなかろうか。2日目は4人が同時に闘い、最初に勝った者が王者となる。つまり、王者は自分が負けなくても王座から転落するリスクを背負うのだ。そう考えるとAJが圧倒的不利に見えるかもしれないが、こういった修羅場をくぐり抜けていくのが王者の王者たる所以。中邑がこれまでの敗戦すべてを吹っ飛ばすような初戴冠劇を祖国でやってのけるのか。勝手知る両国のリングはリベンジにうってつけの場だが…。
“明日の女帝”と呼ばれるアスカにも、今回の凱旋はリベンジがテーマとなった。WWEの連勝記録を塗り替えたアスカだが、「レッスルマニア34」のシャーロット・フレアー戦でついにストップ、スマックダウン女子王座獲得はならなかった。
しかしながら、この敗戦のみでその後はふたたび連勝街道に突入。5・15スマックダウンでペイジGMがカーメラとのタイトルマッチを発表した。その後、王者カーメラがアスカを挑発。元NXT女子王者アスカの標的が、スマックダウン女子王座に絞られたのである。カーメラは、レッスルマニア直後にシャーロットから勝利し王者になった。リック・フレアーの愛娘を王座から引きずり下ろすとは、一体どれだけの実力者なのか。アスカにとってはとんでもない強敵の出現である。
しかしながら、本当にそうなのだろうか。カーメラは昨年の「MITB」で女子初の挑戦権争奪ラダーマッチに勝利するも、その勝ち方が物議を醸した。セコンドのジェームズ・エルスワース(男)がラダー上のブリーフケースを取って下にいるカーメラに投げ渡したのだ。結果的には「ブリーフケース獲得」で勝負がついた。翌週にはセコンド禁止の“やり直しマッチ”が組まれるのだが、ここでもカーメラは反則絡みで結果的には白星、いつでもどこでも挑戦権の保持を認めさせてしまう。しかも、ここから先が長かった。いつまで経ってもキャッシュインが宣言されないのである。
「レッスルマニア34」、アスカとの激闘直後のスマックダウンで事件は起こった。今回の日本公演にも登場するアイコニックがシャーロットを襲撃、KO状態のところで突然カーメラが現われ権利行使をアピールしたのである。結果、カーメラはスーパーキック一発でフォール勝ち。権利獲得から10カ月。長い間待たせた末の、あっという間の出来事である。
その後もカーメラがシャーロットを攻撃すると、祭典で友情が芽生えたアスカが救出に現われる。そして迎えた6・17「MITB」でのタイトル戦。ここでアスカがベルトを奪えば、王者としての凱旋が実現することになる。実力的にはアスカに分があると言っていいだけに、その可能性は高かった。ところが、試合中にアスカの姿をした謎の人物が出現、エプロンに立った。着物と能面…それは、もうひとりのアスカなのか……。
しかし、これはアスカの分身ではなく。カーメラが仕組んだ罠だったのだ。その正体は、WWEから解雇されていたはずのエルスワース!気を取られたアスカはカーメラのスーパーキックを食らい、フォール負け。WWEで2度目の黒星だ。カーメラとの再戦は、日本公演2日目に組まれている。初日に王者がベッキー・リンチを破れば、自動的に翌日が王者カーメラ、挑戦者アスカのタイトルマッチに。リベンジのためにも初日にはカーメラに防衛してほしい、というのが日本サイドの心情か。
そしてもうひとり、中量級に特化した205Liveで活躍するヒデオ・イタミもリベンジを誓って1年ぶりに帰ってくる。とはいえ、前回はヒデオにとってほろ苦い凱旋となった。ハルク・ホーガン立ち会いのもと鳴り物入りでWWEと契約を交わしたのだが、ケガに泣かされ苦難の道を歩んできた。日本公演で帰国しても試合ができない状態もあった。昨年の両国は日本で3年ぶりの試合出場で、クリス・ジェリコ、エンツォ・アモーレとのシングルマッチをおこなった。が、ジェリコから高評価を引き出すも結果は完敗、2日目のアモーレ戦ではビッグ・キャスの乱入にあい無効試合に終わってしまった。タッグチームの分裂騒動に巻き込まれたのである。
そして今回、ブランドの枠を越えた来日発表はヒデオのリベンジが求められてのものだろう。対戦相手は初日がザ・ミズで2日目がビッグ・キャス。ミズは前回のジェリコと並ぶベテランの試合巧者でWWEを代表するスーパースターである。キャスはズバリ、ぶち壊されたことへの怒りをぶつける絶好のチャンスだろう。ハウスショーでこういったカードが組まれるのは極めて異例。なんといっても、日本人スーパースター誕生の先陣を切ったのはヒデオである。過去を清算し、真のスーパースターへ。6・29&30両国は、日本人スーパースターたちの“やり返し”に期待大だ!
文:新井 宏