石川禅が語る。「歌は芝居。ソロコンで自分個人の物語を描きたい」

インタビュー
音楽
舞台
2018.6.25
石川禅 『エリザベート』フランツ・ヨーゼフ1世役 写真提供 東宝演劇部

石川禅 『エリザベート』フランツ・ヨーゼフ1世役 写真提供 東宝演劇部

画像を全て表示(5件)

ストレートプレイやミュージカルで活躍中の石川禅。毎年舞台に出演し続け、今年も、『マディソン郡の橋』『シラノ・ド・ベルジュラック』などでひときわ存在感を光らせている。演技も歌も卓越した実力を持つ石川に、第4回目となるソロコンサートについて聞いた。

ーー2015年から毎年開催されて、ついに4回目。毎回、色を変えている印象ですが、これまでのコンサートで取り組んできたこと、そして今回のテーマを教えてください。

今回は、自分の色をより強めたいと考えています。僕の場合、歌唱力というより、俳優としてこの歌をどんなプロセスで表現するかを大事にしています16曲前後と、これだけの曲数を一気に歌唱として歌ったら、僕はお手上げ状態(笑)。それができるのは、歌を芝居として表現しているからです。

1st​と2ndではソロコン初心者ということで、思い切って大曲を揃えました。3rdではダンスがテーマという、無茶なことに挑みました。石川禅のエンターテインメント性を考えた時に、ダンスは不可欠な要素なんですね。めちゃくちゃ踊れるわけじゃないけど、必要なシーンでは踊っている。また多くの方から、「踊れるようになったら、もっと幅が広がる」とアドバイスもいただいて。例えば主演女優の相手として社交ダンスする機会もよくあるわけです。そのために、常日頃から体は動かしていなければいけない。そんな状況で、プロデューサーから「3rdではダンス!」と言われた時は、「キター!」ってなりました(笑)。つまり苦手なことに取り組んで、頑張ったのが3rd。

ある意味、石川禅のスタイルを構築するための挑戦が、このコンサートの意義。自分の中から無尽蔵に湧き出るアイディアを活かす場でもあります。4thではこの課題に真正面から取り組みます。

石川禅 『レ・ミゼラブル』マリウス・ポンメルシー役 写真提供 東宝演劇部

石川禅 『レ・ミゼラブル』マリウス・ポンメルシー役 写真提供 東宝演劇部

ーー今まではエレクトーンの演奏でしたが、今回はバンドが入るとか。

はい。生の楽器の音を聞きたいというご要望が多くありました。そこで、バンドを入れて、今までと全く違うアコースティックな雰囲気になるかと。その上で、自分流の歌に対する思い入れを、自由な発想で描きたいと思っています。

ーー禅さんはよく“歌は芝居”とおっしゃいますが、ミュージカルの作品中で歌う時と、コンサートで歌う時では、心持ちが変わったりするものですか。

違いますね。例えば、「スターズ」(『レ・ミゼラブル』より)は僕の場合、作品中ではジャベール警部の扮装をして、「ごみを始末しろ♪」とテンションを上げてテナルディエ一家を追いやり、「あいつがジャン・バルジャン♪」という流れから、「スターズ」に入ります。コンサートでは、まず衣裳もメイクも違いますから、僕の等身大の装いでそこまで役に入り込んで歌うと、逆に笑えてしまうんじゃないかな?

表現方法は様々で、心の内側に感情を貯めて淡々と喋ることで気持ちが伝わる芝居もあります。イメージとして一番近いのは、東日本大震災の後に開かれた『レ・ミゼラブル』チャリティコンサートの時かな?ステージの後ろに大きなスクリーンがあり、顔がアップで映るので、作品中の歌い方だと迫力が出過ぎるし、大きく動くとカメラアングルから外れてしまう。そこでメイクを薄めにしてあまり表情を変えず、心情から出てくるものをそのままに歌いました。今回の「スターズ」はその方法で作ろうかな、と。

石川禅 『レ・ミゼラブル』 ジャベール役 写真提供 東宝演劇部

石川禅 『レ・ミゼラブル』 ジャベール役 写真提供 東宝演劇部

ーーそれは楽しみですね。「スターズ」と「カフェソング」(『レ・ミゼラブル』より)は何百回と歌われて禅さんの血肉となっている曲かと思います。

確かに目をつぶっていても何をしていても、するするっと歌詞が出てきますよね。ただ、どうしてもコンサートでこの2曲が燦然と輝くという声もいただいたり……。どうにか他の曲をこの2曲に対抗できるレベルに上げるには、芝居的な要素を取り入れて、もっと自分の色を強めていかないと!

ーー今回、観客の皆さんからリクエストを募ったそうですが、その結果をご覧になった感想は?

そうなのか! と思いました。1位「スターズ」、2位「カフェソング」。この2曲が来ることは予想していましたが、「スターズ」の1位は予想外だったな。

ーー3位は「星から降る金」(『モーツァルト!』より)。

「星から降る金」は、男性のミュージカル俳優さんがよくコンサートで歌われますが、僕にはその気持ちがよくわかります。おそらく皆さん、同じ想いだと思う。この曲は、自分の実体験なんですよ。大抵の父親は、息子が俳優になると言うと、まず反対するもの。よほど理解があったり、自身が芸能関係の人なら、話は別ですけど。僕が俳優になると言った時、父は何気ない顔をしていましたが、その後、妹の家に行って轟々泣いたそうです。父が亡くなった後、「あなた、今だから言うけど……」と告白されて知りました。それでも、僕が青年座で新人賞をいただいた『評決』のの半券が、父が大切なものを入れた箱の中から出てきて……、涙が止まりませんでした。多分、俳優の皆さんには、自分がこの仕事に就くにあたり、それぞれの家族とのドラマがあったはず。うちの父は甘かったので許してはくれましたけど、内心ショックだったんですね。

ーーその意味では、「星から降る金」は実体験に基づいた心の内を表現しやすい曲ということですね。

そうなんです。僕は今回、この曲をミュージカルのナンバーとしてではなく、自分のドラマとして歌おうと思っています。以前、イベントでも何度か歌ったことはありますが、その時は女語りの歌詞を男語りに変えたんです。今回は歌詞は女語りそのままに、青年が父親の元から旅立ち成長していく姿を描けたらと思います。ヴァルトシュテッテン男爵夫人のメッセージを、僕自身の歌い語りとして挑戦してみたい。ひょっとすると、ミュージカルで歌われるスタイルとは全く変わるかもしれません。

石川禅 『エリザベート』フランツ・ヨーゼフ1世役 写真提供 東宝演劇部

石川禅 『エリザベート』フランツ・ヨーゼフ1世役 写真提供 東宝演劇部

ーー「時がきた」(『ジキル&ハイド』より)が4位。

コンサートでも歌った曲ですが、実は鹿賀丈史さんが『ジキル&ハイド』初演の時(2001年)、大千秋楽が終わった後のお疲れ様パーティで、余興としてジキル&ハイドのナンバーほぼ全曲歌いました。僕は鹿賀さんのアンダーだったので、全曲網羅していたんですね。「時が来た」から、薬を飲み始めての「変身」「生きている」まで。また、「同情、愛情」の後に殺人を犯し、そこから「対決」をやりました。

ーーそれはすごいです。機会あったら、ぜひ聴きたいですね!そして「アンセム」(『CHESS』より)が上位にありますね。名曲で難曲。

前回歌いましたね。初めてこの曲を歌うと決まった時に、無駄に派手な歌だと思ったんですよ。なぜ、「威風堂々」みたいに盛り上がっているのだろう?と。僕は『CHESS』という作品をよく知らず、色々と調べたら東西冷戦の物語だと知り、コンサートで号泣する羽目になったんです(笑)。もう声が出なくなってしまって、お客さんに謝ったほど。この曲の前が「カフェソング」で、一緒に戦った仲間が亡くなってしまう歌。その流れで「アンセム」を歌うと、仲間を裏切るニュアンスが残ってしまって。ウワーッと盛り上がった瞬間にとめどもなく涙がこぼれました。

ーーそれって、ミュージカルの作品中ではできないこと。ソロコンサートでは禅さんの世界を作れますし、きっとお客様も特別な瞬間を共有できた実感があるのでは?

そうですね。なので、今回、リベンジします。

ーーリクエスト以外では、『エリザベート』『レベッカ』『アリス・イン・ワンダーランド』の曲で、面白い試みをするそうですね。

複数の登場人物が掛け合いで歌う曲を選んでみました。ソロ曲ではない、ソロコンサートでは歌いづらい曲に、あえて挑戦! 掛け合いやコーラスが入るところを全部僕一人で歌うとどうなるのか、乞うご期待です。また今話題の作品、これから上演される作品から何曲か歌います。バンドとのセッションもあるので、お楽しみに。また、アンコール曲にはこの歌か! と言う、かなり意外な隠し球を用意しています。『シラノ・ド・ベルジュラック』をご覧いただいたお客様は、おお! と思われるかも?

ーーこのコンサートでの経験が俳優の仕事に活きることはありますか。

一番勉強になるのは、精神面かもしれない。舞台に立つ巨大なプレッシャーをどう回避するか。僕はその方法として、いつも誰も自分のことは見ていない、他の俳優を見ていると思い込むんです。すると、舞台上でとても自由になれる。多分、主演するとしても、そう思い込むでしょう。しかし、ソロコンサートの場合、皆さんは石川禅を観にくるので逃げられない。1stコンサートの時はイントロが始まる前からずっと帰りたいと思ってしまって……、僕、器が小さいんです。毎回ビビります。でも、このコンサートを重ねることで、精神面が強くなってきた気がします。カーテンコールを何度もいただくと、僕に拍手してくださるなんて、本当に恐縮です! と心から思います。改めて、そんな感覚を教えられますね。

石川禅 『アリス・イン・ワンダーランド』ジャック/白のナイト役 写真提供 ホリプロ

石川禅 『アリス・イン・ワンダーランド』ジャック/白のナイト役 写真提供 ホリプロ

ーー観客の皆さんとの交流も、作品より直接的というか、近いのは?

そう、お客様と交流しながら歌うほうが緊張しません。普段の僕の芝居は相手役さんに捧げる芝居なんですよ。自分にこだわっていたら、芝居はできないと思っている。その点、コンサートでは僕の相手役がお客様。不思議とお客様の顔をみて歌い出すと大丈夫ですし、そのほうが安心します。

ーー客席に降りるシーンもありますね。

前回、「Be Our Guest」を歌いながら、「どこからいらっしゃいましたか?」と客席で質問して回ったら、全員が知り合いでした(笑)。「遠方から来ていただいて、ありがとうございます! すみません!」と言いたかったのに、皆さん都内という(笑)。

ーー最後に、メッセージをお願いします。

俳優のコンサートとして毎回、新しい挑戦をしていきたいと思っています。今回はバンドが入り、雰囲気がガラッと変わります。どんな自分らしいコンサートになるのか、ぜひ足をお運びください!

取材・文=三浦真紀

コンサート情報

『石川禅 4th ソロコンサート』
 
日程:2018年6月30日(土)14:30開演/17:30開演
場所:イイノホール
料金:全席指定:¥6,500
 
※ハイタッチお見送り会開催決定!&セットリスト一部発表!
『石川禅 4th ソロコンサート』17:30回終演後、石川禅によるハイタッチお見送り会開催決定!  
17:30回の本コンサートのをお持ちの皆さまご参加いただけます。  
【注意事項】  
※当日係員が誘導いたします。  
※サイン・撮影・プレゼント等は進行の妨げになりますので、ご遠慮下さい。  

セットリスト一部発表!  
もしも鍛冶屋なら「 マリー・アントワネット」  
ミッドサマー・イブ「PUCK」  
星から降る金「モーツァルト!」  
わたしはわたしの発明品「アリス・イン・ワンダーランド」  
★回替わり曲  
最後のダンス「エリザベート」  
彼を帰して「レ・ミゼラブル」
 
 
取り扱い】
ホリプロセンター 03-3490-4949
(平日10:00~18:00/土曜10:00~13:00/日祝・休)
シェア / 保存先を選択