『RUSH BALL』が海を超え、ロックで日本・台湾の想いを繋ぐ『RUSH BALL in 台湾』現地レポ―ト
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■ストレイテナー
20周年のアニバーサリーイヤーを迎えた、ストレイテナー。颯爽と登場すると、「彩雲」から始まり、「DISCOGRAPHY」「THE World Record」とのっけから攻めたセットリストに。腰にくるビートのままに、心地よさそうに身体を揺らしたり飛び跳ねる観客たち。ここにきてより感じたのは、台湾には自分たちなりの楽しみ方で、好きなようにライブを満喫する観客が多いなということ。また、例え初見のバンドであったり、初聴の楽曲でもアーティストと向き合い、最後まで全力で楽しもうとする姿勢も真摯に伝わってくる。それぞれ自分の好きなスタイルで、ストレイテナーの音楽を純粋に楽しんでいる観客たちを見て、そんな風に思った。約3年ぶりの台湾ライブだというストレイテナーは、それを知ってか代表曲をセットリストの頭には持ってこず、キレキレの演奏で躍らせては高揚感を突き上げて、先ずは観客の心を掴んでいった。
MCでは、ホリエアツシ(Vo/Gt/Pf)が「『RUSH BALL』という、日本が誇るロックフェスティバルで、尊敬するカッコいい仲間と共に台湾に来れて嬉しいです。日本から来た人は、観光も存分に楽しんで。台湾の皆さんは日本に来てくれるのを待ってます!」と挨拶。さらに、「1日、1日が積み重なって1年になって、10年になって…。20年続けてきました。これまでの成功も挫折も、喜びも悲しみも悔しさも、積み重ねてきた全てを歌います。20年前は全く見えなかった、その未来…今」と続け、「The Future Is Now」を披露。
ストレイテナー
観客と高め合ったグルーヴを爆発させるようにして、「Melodic Storm」、「シーグラス」を投下して眩い景色を生み出していった。研ぎ澄まされた音が、透き通った声が、丁寧に積み重ねられていくごとに、どこかまだ見ぬ先へと連れてっていってくれるような、期待感に満ちたライブだった。
■BIGMAMA
ベートーヴェンの第九のSEでBIGMAMAが登場。同じくベートーヴェンの『運命』をモチーフにした「虹を食べたアイリス」でライブをスタートさせる。この時点からラストまで、ほとんどMCなしでノンストップにライブを展開。かつてのクラシックがそうであったように、楽曲で想いの全てを物語っていくステージングは圧巻だ。躍動感あるバンドサウンドに合わせて、飛び跳ね、舞い踊るようにして奏でる東出真緒の美しいヴァイオリンの戦慄に、ひずむギターが重なっていく、BIGMAMAにしか作りえない世界へと観客はグイグイ引き込まれていく。
BIGMAMA
今度は、チャイコフスキーの『白鳥の湖』を取り入れた「Swan Song」。誰もが聴いたことのあるクラシックのフレーズが、BIGMAMAの楽曲として大胆に溶け込みさらに観客を魅了する。そして、インディーズ初期の楽曲「Paper-craft」から、今年リリースされたメジャーデビューシングル「POPCORN STAR」へと軽快に紡がれ、バンドの辿ってきたこれまでとこれからを示すかのような展開に。
BIGMAMA
真正面から受け止めると飲み込まれてしまいそうなほど、放たれる音像はみるみるスケールを増していき、ファイティングポーズを崩さず、そのままドヴォルザークの『新世界』をモチーフにした「荒狂曲〝シンセカイ〞」をアグレッシブに披露。情熱的で迫力あるセッションが、脳裏に焼き付いて離れない。ラストは、金井政人(Vo/G)の声がよりドラマチックに届けられた「Lovers in a Suitcase」。鮮やかな音の波が、息つく暇なく流れるように展開していったライブは、多幸感と高揚感溢れる余韻を残した。
■Dragon Ash
トリを飾るのは、99年の『RUSH BALL』初開催時にも名を連ね、過去最多出場となるDragon Ash。イベント15周年時にトリを飾り、記憶に残る鮮烈なステージで魅せた彼ら。ライブの幕を開ける「Stardust」は、昨年リリースしたバンドのデビュー20周年を飾るアルバム『MAJESTIC』からの楽曲。その後に続く楽曲の多くもそうで、このアルバムの楽曲が軸になったセットリストとなる。『RUSH BALL』20年の歴史を知る数少ないバンドとして、イベントと共に歩んできた積み重ねをぶつけて、新しい歴史の1ページを開いていこうとしていたように感じた。
Dragon Ash
拳を突き上げずにはいられないライブチューン「Mix it Up」では、《ここに制限はない/just free your mind/そう変幻自在/あるのはマナーと思いやり/music lover と共にあり》とKj(Vo/Gt)が歌い、観客も興奮の沸点をぶち壊して熱狂。続く、KenKen(Ba)もマイクをとる、バンドにとっても大事な楽曲「The Live」、そして血沸き肉躍る展開からで観客と喜びを噛みしめ合うようにして歌われた「Ode to Joy」へ。ダンサーが全身全霊でその胸の高鳴りのままに、ダンサブルなナンバー「Jump」では高く、高くジャンプして会場が波打ち、いまだかつてないほどの祝祭感ある温かい煌めきに満ちたムードに。そのまま、「百合の咲く場所で」、「Fantasista」とブチ上らずにはいられないアンセムが続き、全員で大合唱する最高潮を迎えた。
Dragon Ash
そして、アンコールでは、何やらメンバー同士で耳打ちをしていたかと思えば、デビュー初期の名曲「Iceman」を披露! これには観客も喜びが弾け飛び、ラストは「Life Goes On」。途中、もみくちゃになったフロアやダイバーをKjが気遣う一幕もあり、最後まで“思いやりとマナー”を忘れず、汗なのか、涙なのか……滴り落ちる雫を拭いながら、全身全霊でロックを楽しむ観客のキラキラとした笑顔が溢れたライブだった。
演奏が終わると、KenKenはずっとそばに置いていた、12年に亡くなったメンバー・IKÜZÖNE(Ba)の衣装スタンドを、ステージ中央に移動させてからバックヤードへと帰っていった……。メンバー全員で台湾のステージに立ち、またひとつ前に進めたということだろうか。この日のMCでは、イベントについてやバンドについてほとんど語られることはなかったが、全てはライブで体現していたように思う。かつての『RUSH BALL』でKjが語っていた通り、このステージに立つまでにバンドは数々の苦難を乗り越えて来た。それでも前に進んできたからこそ、今がある。そしてこれからも歩み続けようという、Dragon Ashの想いがラストの「Life Goes On」まで、ぎっしりと詰め込まれたライブだったように思う。だからこそ、かつてないほど温かく、希望に満ちたライブだったのだろう。
こうして、Dragon Ashの堂々たるステージングで、「RUSH BALL」初の台湾公演の幕が閉じた。日本と台湾の心の距離の近さ、音楽は言葉の壁を超えるということを証明してくれた出演バンドたちは、泉大津フェニックスで3日間に渡って開催される『RUSH BALL 2018』への出演も決まっている。この日、台湾の人と作り出した景色と、込み上げてきた想い、そして生まれたドラマと伝説の続きを、きっと彼らが見せてくれるので、台湾の人にもぜひ見届けに来てほしい。そして今度は僕たちが彼らを日本に迎え入れる側として、共に“マナーと思いやり”を守りながら、20周年という歴史の1ページを共に刻みたい。
ここからは余談。初めて、台湾の地で思いっきり空気を吸って、定番のグルメを楽しみ、街を散策してみてもあまり“海外に来た”という感覚が自分にはなかった。それがどうしてかとずっと考えていたけれど、『RUSH BALL』で台湾の人と日本の人がロックで繋がっているのを見た時、なんだか答えが分かったような気がした。
昔から台湾の人は“親日”だというけれど、この“親”は単に“親しい”というだけでなく、個人的には“親戚”と言ってもいいぐらい、家族ほどの近しい心の距離も表しているように思う。空き時間に、台湾のお客さんと話していても、誰もが家族のように接してくれ好きなバンドについて語ってくれたり。一緒になって好きなバンドのライブで涙を流し、熱狂して、日本とか台湾というのを関係なく感想を語り合っている様子を見ると、“みんな同じなんだ”と思ったのだった。少なからず、あの会場に集まっていた人たちの想いはひとつだったはず。そういう互いの親近感が、町全体に漂っていたからこそ、“海外に来た”という感覚にはなれなかったのだろう。家を出て、飛行機で移動したとはいえ、またもうひとつの“家”に帰ってきたような感覚の方がしっくりと来る。
Fire EX.のSamがMCで言っていたように、日本と(特に大阪と)台湾はとても近い距離にあり、家族同然だというのも言い過ぎでないかもしれない。これを機に、台湾にまた訪れたいと思ったし、台湾の人たちにもたくさん日本に来てほしいと思った。そして、自分自身が言われたように、今度は「日本に来てくれて、ありがとう」と返したい。
そんな海を越えた交流のきっかけを、また夏に『RUSH BALL』が作ってくれるのかと思うと楽しみで仕方がない。もうひとつの家に帰るぐらいの気軽さで日本に来て、またライブを共に楽しめたら嬉しいなと思う。そして自分がそうだったように、大阪を散策したり、食事なんかを楽しみながら、親近感を持って帰ってもらえたら、さらに嬉しく思う。
取材・文・撮影=大西健斗 LIVE PHOTO=橋本塁
セットリスト
2.DISCOGRAPHY
3.The World Record
4.From Noon Till Dawn
5.DAY TO DAY
6.The Future Is Now
7.Melodic Storm
8.シーグラス
ライブ情報
会場:泉大津フェニックス
時間:各日共、開場9:30 / 開演11:00
2018年8月25日(土)
BIGMAMA / go!go!vanillas / キュウソネコカミ /
クリープハイプ / サカナクション / ドラマチックアラスカ /
フレデリック / フレンズ / ポルカドットスティングレイ /
夜の本気ダンス / OPENING ACT:ReN
DENIMS / MONO NO AWARE / PAELLAS / teto / サイダーガール / ドミコ /
パノラマパナマタウン / ハンブレッダーズ / ユアネス / リーガルリリー
2018年8月26日(日)
BRAHMAN / Crossfaith / Dragon Ash /
MONOEYES / POTSHOT / SiM /
SUPER BEAVER / The BONEZ / THE ORAL CIGARETTES /
TOTALFAT /OPENING ACT:Ivy to Fraudulent Game
a crowd of rebellion / Creepy Nuts / FINLANDS /
FRONTIER BACKYARD / SUNNY CAR WASH / TENDOUJI / Wienners /
The 3 minutes / ココロオークション / 忘れらんねえよ
2018年9月1日(土)
ACIDMAN / [ALEXANDROS] / EGO-WRAPPIN' / POLYSICS /
THE BACK HORN /the band apart / 9mm Parabellum Bullet /
きのこ帝国 / サンボマスター /ストレイテナー
OPENING ACT:Saucy Dog
cinema staff / CIVILIAN / Dizzy Sunfist /
LITE / mol-74 / The Floor / THE PINBALLS /
THE冠 / 神聖かまってちゃん / ミオヤマザキ