「ミュージカルが好きな人は絶対に観ないと損!」~『サムシング・ロッテン!』中川晃教インタビュー~
中川晃教
兄弟で劇団を運営するニック(中川晃教)とナイジェル(平方元基)は、時代の寵児シェイクスピア(西川貴教)に対抗できる作品のアイデアを求め、予言者ノストラダムス(橋本さとし)のもとへ。彼の頼りないお告げに従って、未来で流行っているらしい「ミュージカル」を作ろうとするのだが……!? 2018年12月~1月に東京・大阪にて上演のブロードウェイの大ヒット作を福田雄一が演出するコメディ・ミュージカル、『サムシング・ロッテン!』に主演する中川晃教にインタビュー!
福田雄一の破壊力は“シェイクスピア”並み!
ーーまずは、粗訳台本を読まれた印象をお聞かせください。
周りにブロードウェイの舞台を観ている人が結構いて、客席が笑いの渦だったと聞いていたので、どんな物語なんだろうという期待を持って読み始めました。そうしたら、ルネッサンス時代のイギリスで、一世を風靡していたシェイクスピアに対抗するために、新たな娯楽を模索する中でミュージカルが登場してくるというもので。2018年の今の日本でも、ミュージカルというものがとても熱いですよね。そんな時代にぴったり重なる作品だし、僕が演じるのは色々な障壁を乗り越えてミュージカルを成功させようとするニック役ということで、僕たちの現実と置き換えることもできるやりがいのある役だなぁと思いました。
中川晃教
ーー演出の福田雄一さんとは、舞台では今回が初タッグとなりますね。
僕、“福田組”と呼ばれる方々が大好きなんですよ。ムロツヨシさんや佐藤二朗さんが持ってらっしゃる独特の空気感って、翻訳ものの舞台ではほとんどの場合生かされないものだと思うんですけど、福田さんはその辺を躊躇なく、どんどんバンバンぶち込んでくる方(笑)。それによって作品が別の側面を持って生まれ変わるのを、僕は今まで客席から観てきたから、そこに俳優として立ち会えるのはとっても刺激的なことだと思っています。映像ではご一緒したことがあるんですが、編集で完成する映像と舞台では福田さんの視点が違うと思うから、どんな作り方をされるのかすごく楽しみですね。
ーー福田演出を経験済みの役者仲間の方から、噂を聞いたりアドバイスを受けたりは?
福田さんの話って、俳優間では何でもない会話の中でポロポロ出てくるんですよ。経験してない人がしてる人に「どんな感じなの?」って聞いてる現場をよく見ますし、僕も今回の出演が決まってから「今度、福田さんとやるんだよね」ってよく言われます。それくらい福田さんって、ミュージカルシーンにおいて「ちょっとヤバい人出てきちゃったよ」みたいな感じがあるというか(笑)、僕たちに刺激を与える存在になってる気がするんです。ミュージカルシーンに新しいムーブメントを作ろうと旗を振っていらっしゃる今の福田さんには、この作品で言うシェイクスピアくらいの破壊力があるんじゃないかと思います。
西川貴教との夢の初共演
ーー福田さんの稽古場では、まずは福田さんを笑わせることが大切、というような話もよく耳にしますが……?
それは人によるみたいで、確かに「お前から笑いが何種類出てくるのか」みたいに泳がせることもあるらしいですけど(笑)、佐藤二朗さんが稽古初日から色んなことをぶち込んだら、「それは後でいいから今はとにかくこれやって!」ってなったって(笑)。僕が福田さんにとってどういう人かまだ分からないし、それにニックはツッコミ役なのかなっていう感じもあるから、最初から笑いに走ることはしないと思います。僕、前に『SHIROH』の本番中に1回だけ周りの皆さんに乗っかってしまったことがあって、そうしたら演出のいのうえひでのりさんがすごい勢いで走ってこられて、「アッキーは笑い取らなくていいから!」っておっしゃったんですよ。福田さんにもきっと、そういう役ごとのポイントみたいなのがあるんじゃないかな。ニックのポイントが何かはまだ分からないですけど、今のところは、周りからの球を受け止めて跳ね返す役どころなんじゃないかという気がしているんです。
中川晃教
ーー跳ね返さなきゃいけない球を投げてこられるであろう共演者の一人、シェイクスピア役の西川貴教さんの印象をぜひお聞かせください。
西川さんには、跳ね返すより跳ね返されたいですね(笑)! ご一緒させていただくことが決まってからお会いした時も、「もう全部、根こそぎかっさらっていってください!」ってお伝えしたんですよ。僕にとって西川さんは、そのマルチな才能を間近で見て刺激を受けて、自分自身やミュージカルシーンにフィードバックできるよう頑張ろう、と思わせてくれる存在。初めて共演できるのが本当にうれしいし、西川さんのシェイクスピア役はもちろん、自分で言うのも変かもしれないですけど僕のニック役も合っていると思うから(笑)、この夢のようなキャスティングにはちょっと運命を感じています。
ーー弟役の平方元基さんについてはいかがですか?
元基とは、ミュージカルで共演したのは今年6月の舞台『銀河鉄道999』〜GALAXY OPERA〜 が初めてだったんですが、その前にコンサートでは共演していて、それ以来プライベートでは弟のような存在なんです、まさに(笑)。基本的にはかわいいんだけど、意外と真面目で理論的なところもあって、頭がいいなぁっていつも思ってます。「二人で即興ミュージカルを作ろうぜ」ってなって、僕がピアノを弾きながら2時間くらいやり続けたら、彼の服が汗でビチョビチョになったなんてこともありましたね(笑)。『999』で共演してみて感じたのは、共演者や演出家に向き合った時の、距離感のバランスの良さ。そんな元基が、この物語の中で唯一恋模様の部分を担う役でもあるナイジェルをどう作ってくるのか、楽しみにしているところです。
中川晃教
400年後の演劇界は、鼻の穴が舞台!?
ーーここから少し、作品にちなんだ質問を。ニックは劇団運営に行き詰まり、預言者ノストラダムスを頼りますが、中川さんご自身は何かに行き詰まって占い的なものに頼りたくなることはありますか?
あんまりないですね。占いはいいことしか信じないし(笑)、プライベートで旅行をする時には方角的に大丈夫かを聞いたりはしますけど、仕事でも気にし出したら地方公演に行けなくなっちゃうから、「跳ね返すぞ!」って割り切っているし。僕が行き詰まった時に頼るのは、占いより仲間。35年間生きてきて今、仲間の大切さを痛感中なんですよ。幼なじみもそうだし、仕事を始めてから出会った共演者たちもそう。ミュージカルや音楽って自分一人の力で生み出せるものではやっぱりなくて、じゃあどうやってお客様の期待に応えて時代を切り拓いていくのかって考えた時、仲間の大切さというのをすごく感じます。
ーーでは次は、劇中のノストラダムスの予言にちなんで。彼は400年後、つまり現代の演劇界ではミュージカルが流行っていると予言するわけですが、中川さんが予想する、今から400年後の演劇界とは?
え~、何だろう(笑)。人工知能と一緒に舞台を作りたいっていうのはずっと考えてるんですけど、それはそんな先じゃなくて、想像できる範疇ですもんね。もしかすると、舞台なのかそれに代わる空間なのかに穴があって、その中にお客さんが入っていくような、穴の中から俳優が出てくるような……シンプルで何もない穴なんだけど、その中に色んな世界が渦巻いていて、それを司っていたのは人工知能だった!みたいな。「あれ、人間どこにいた?」「あの穴が人間だったんだよ」「何どういうこと? 何の穴? 鼻の穴?」みたいな(笑)、そういうすごいものが400年後の演劇界にはありそう……みたいなところでどうでしょうか(笑)。
ーーありがとうございます、さすがの発想力でした(笑)。最後に改めて、『サムシング・ロッテン!』へのお誘いのメッセージをお願いします!
名だたるミュージカルのパロディシーンがふんだんに盛り込まれてるから、ミュージカルが好きなお客さんは絶対に観なきゃ損だと思うし、ミュージカルを知らないお客さんにとったら、「これがミュージカルなんだ!」って思える作品だと思います。個人的には、(橋本)さとしさんがノストラダムスを役っていうのも大きな見どころ。あの「プロフェッショナル(仕事の流儀)」のナレーションをやってる人が、この胡散臭い役をどう演じるんだろうっていうところも含めて(笑)、ぜひ色んな方に楽しんでいただきたいですね。
中川晃教
取材・文=町田麻子 撮影=福岡諒祠
公演情報
【東京公演】
会場: 東京国際フォーラム ホールC
日程:2018年12月17日~30日(全19公演)
◆ニッポン放送スペシャルデー 2018年12月24日(月・祝) 18:00 ※e+独占販売公演
【大阪公演】
会場:オリックス劇場
日程:2019年1月11日~14日(全6公演)
出演:
中川晃教 西川貴教 瀬奈じゅん 平方元基 清水くるみ 橋本さとし
青山郁代 池田紳一 井上花菜 可知寛子 小暮キヨタカ 小山侑紀 坂元宏旬 高橋卓士 高原紳輔
竹内真里 常住富大 丹羽麻由美 伯鞘麗名 福田えり 辺田友文 横山敬 横山達夫 ほか
作詞・作曲 :ウェイン・カークパトリック、ケイリー・カークパトリック
脚本 :ケイリー・カークパトリック、ジョン・オファレル
演出・上演台本:福田雄一
価格:
【東京公演】
S席¥12,500 A席¥9,500 B席¥7,000(全席指定・税込)
【大阪公演】
平日 S席11,000円 A席8,000円 B席6,000円/土日祝 S席11,500円 A席8,500円 B席6,500円
※未就学児童入場不可 ※営利目的の転売禁止
先行販売:7月上旬~順次販売予定
一般販売:9月8日(土)10:00~ ※詳細は、公式HPにて
東京公演お問い合わせ:
キョードー東京 0570-550-799(オペレーター平日11:00?18:00、土日祝10:00?18:00)
大阪公演お問い合わせ:
キョードーインフォメーション 0570-200-888
公式HP:http://www.something-rotten.jp
公式twitter:@SthRotten_JP
東京主催:フジテレビジョン/キョードー東京/エイベックス・エンタテイメント
大阪主催:関西テレビ放送/キョードー大阪/フジテレビジョン/キョードー東京/エイベックス・エンタテイメント
後援:WOWOW
企画制作:フジテレビジョン
ルネサンス時代のイギリス。売れない劇作家であるニック(中川晃教)は弟のナイジェル(平方元基)と共に自身の劇団を運営していた。時代の寵児であり、スーパースターの劇作家シェイクスピア (西川貴教)にニックは対抗心をむき出しにするが、劇団運営に行き詰まり、妻ビー(瀬奈じゅん)の目を盗んで預言者ノストラダムス(橋本さとし)のもとを訪ねる。そして、彼のお告げに従い、世界初の歌って踊る「ミュージカル」を書こうと決意するのだった。 その後もノストラダムスのもとへ通うが、出てくるのは頼りない予言ばかり……ヒット確実な作品タイトルは「オムレット」(実は「ハムレット」の間違い)だと言われ、ニックはミュージカル「オムレット」を生み出すために悪戦苦闘する。作家の才能を秘めている弟のナイジェルは、兄の言うことを聞きつつも「卵の物語なんか書きたくない!」と思い悩む。そんななか、出会った美しい清教徒の娘ポーシャ(清水くるみ)と恋に落ち、新たなインスピレーションが生まれていた。 一方、「ロミオとジュリエットに続く大ヒット作を書かねば」と人知れず思い悩んでいたシェイクスピアは、以前からナイジェルの才能に目をつけていて、彼からなんとか次作のアイデアを得ようと画策する。「トービーベルチ」と名乗る役者に化け、ニックの劇団に潜入し、後の大ヒット作となる 「ハムレット」の土台となるアイデアをどんどん盗んでいくが……。