入江雅人がホストを務める『ゾンビフェス THE END OF SUMMER 2018』豪華ラインナップが渾身のパフォーマンスを披露

レポート
舞台
2018.8.29
入江雅人 (撮影:市川唯)

入江雅人 (撮影:市川唯)

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東京が激しい雷雨が吹き荒れた8月27日、第二回『ゾンビフェス THE END OF SUMMER 2018』が渋谷•CBGKシブゲキ!!にて開催された。

オープニングアクトは、活動写真弁士の坂本頼光による「サザザさん 第X話 ゾンビフェスバージョン」。いつもは無声映画の活動弁士として活躍中の坂本頼光だが、自身でイラストを書きパソコンを駆使しアニメーション化をする独自のスキルを生かし、ゾンビにまつわる自作短編アニメーションを制作。舞台上で、多数の登場キャラクターの生アフレコを全て1人で行なう、という驚異の一人技で観客を圧倒した。ある国民的アニメのパロディ?と思いきや、ストーリーは風刺が利いたブラックジョークで突き抜けている。来年は大作ドラマへの出演が決定しているという坂本の「B面」を堪能でき、ゾンビフェスは冒頭から痛快なスタートを切った。

坂本頼光 (撮影:市川唯)

坂本頼光 (撮影:市川唯)

続いては、ゾンビフェスのホスト・入江雅人の登場と入手杏奈による一人芝居とダンスでのオープニング「OPENING OF THE DEAD」。ゾンビフェスのテーマを見事に体現していた。

入手杏奈 (撮影:市川唯)

入手杏奈 (撮影:市川唯)

次に登場したのが、人気漫才コンビの「かもめんたる」の岩崎う大と槙尾ユウスケだ。「俺の黒い部分」「フードファイターとその妻」2つのコントを披露。“2人芝居”で生み出されるオモシロは後を引く。客席がじわじわと侵食されていく様子に、かもめんたるとゾンビという題材の相性の良さを感じた。

かもめんたる (撮影:市川唯)

かもめんたる (撮影:市川唯)

4番目に登場したのは、世界各国をスタンダップコメディで渡り歩く、俳優であり“サムライ・コメディアン”の清水宏。様々な国で“ゾンビ”は、共通言語であり、言葉不要で面白さが通じる存在だという。各国のゾンビネタへの反応を紹介しながら、一番インパクトを受けたというロシアでゾンビネタを披露した際のエピソードを披露。臨場感溢れる体験談と、清水の客席を巻き込んでいくハイテンショントークに客席も熱気高く聞き入っていた。

清水宏 (撮影:市川唯)

清水宏 (撮影:市川唯)

続いては、入江雅人の一人芝居『湯けむりとゾンビ』。脚本をブルー&スカイが担当。ゾンビに取り囲まれ、宿に逃げ込んだバレーボールの女子チームと監督。外の緊張感とは裏腹に宿の中では監督の煩悩との戦いが繰り広げられるアンビバレンツな世界が展開。とても生命の危機に面していると思えないのんきな人々の様子が何とも可笑しい。ブルー&スカイの持つ独特テイストが冴える不条理コメディだ。

入江雅人一人芝居『湯けむりとゾンビ』 (撮影:市川唯)

入江雅人一人芝居『湯けむりとゾンビ』 (撮影:市川唯)

6番目に登場したのは、落語家の立川志ら乃。「ゾンゾンびんびん」という新作落語をネタおろし、初披露した。江戸落語にゾンビが登場するという高座は、奇想天外ながら、人情を感じる一席となっていた。サゲが決まり、客席を笑いに包んでいた。

立川志ら乃 (撮影:市川唯)

立川志ら乃 (撮影:市川唯)

10分間の休憩を挟み、ピラニアンズのギタリスト・塚本功が登場。入江とは以前、入江雅人&ピラニアンズでリリースしたCD『OK新宿』からの縁で、今回は入江からのラブコールで出演。『THE END OF SUMMERTIME』と題し、ギター一本と歌で観客を心地よい世界に誘う。カッコいい!の一言に尽きる存在感と演奏で観客を魅了し、第二部のオープニングを飾った。

塚本功 (撮影:市川唯)

塚本功 (撮影:市川唯)

再び、ダンサーの入手杏奈が登場。タイトルは「DANCE OF THE DEAD Ⅱ」。 “ゾンビ”をテーマにした創作舞踊を披露。青いワンピースをなびかせながらしなやかに時に不気味に舞う“美しいゾンビ”に客席は魅了された。

入手杏奈 (撮影:市川唯)

入手杏奈 (撮影:市川唯)

続いては、オクイシュージと野口かおるによる「ゾンビの現場」。入江雅人が脚本を書き下ろし、オクイと野口という飛び抜けた個性と実力を持つ俳優による2人芝居。ゾンビ役の現場に来た俳優の2人の待ち時間に繰り広げられるやりとりが、時にツッコミ漫才のようでもあり、哀愁もあり、自在に空間が変化してゆく。野口かおるのワンピースのゾンビ姿がなんとも可愛らしい。2人の俳優の、丁々発止でもあり噛み合なくもある会話がとても微笑ましくほっこりとした。

オクイシュージと野口かおる (撮影:市川唯)

オクイシュージと野口かおる (撮影:市川唯)

そして、トリを飾るのは入江雅人の一人芝居「帰郷」。入江の一人芝居のスタンダードとなっている、ファンも多い作品だ。少し先の未来の話。ゾンビパニックに見舞われた日本。福岡に帰郷した主人公は、幼なじみのしげちゃんの家を訪れる。それはある目的があったからだった。それは、幼なじみのためだからこそ叶えようとした、ある悲しい覚悟だった…。近未来と田舎という不思議な取り合わせと、入江の福岡弁が独特な郷愁感を生み、胸を締め付けるような珠玉のセンチメンタル・ゾンビドラマだ。これを見ずに夏は終われない、そう思える一作である。

入江雅人一人芝居「帰郷」 (撮影:市川唯)

入江雅人一人芝居「帰郷」 (撮影:市川唯)

それぞれ完成度が高く盛りだくさんの、濃厚なフェスとなった。終演後、満員の客席も大きな拍手を送った。来年以降も、夏の風物詩として、この「ゾンビフェス」が続くことが期待される。

入江雅人一人芝居『帰郷』 (撮影:市川唯)

入江雅人一人芝居『帰郷』 (撮影:市川唯)

公演データ

ゾンビフェス THE END OF SUMMER 2018 上演記録
■日程:2018年8月27日(月)
■会場:CBGKシブゲキ!!
■出演:(五十音順)
入江雅人(一人芝居)
入手杏奈(ダンス)
オクイシュージ&野口かおる(演劇)
かもめんたる(コント)
坂本頼光(無声映画活弁)
清水宏(スタンダップコメディ)
立川志ら乃(落語)
塚本功(エレクトリックギター演奏と歌)
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