藤田俊太郎が日英で演出を務める新プロジェクトに注目!ミュージカル『VIOLET』記者会見

レポート
舞台
2018.9.13
(左から)トム・サザーランド、藤田俊太郎

(左から)トム・サザーランド、藤田俊太郎

画像を全て表示(6件)


2018年9月12日(水)、梅田芸術劇場と英・チャリングクロス劇場の共同プロデュース公演となる、ミュージカル『VIOLET』の記者会見が行われ、チャリングクロス劇場芸術監督のトム・サザーランドと、本作の演出を手がける藤田俊太郎が登壇した。

この企画は日本と英国の二つの劇場が共同で演劇作品を企画・製作・上演する新しいプロジェクト。演出家と演出プランはそのままに、「英国キャスト版」「日本キャスト版」を各国の劇場で上演するというものとなる。まずは2019年1月より『VIOLET』の「英国キャスト版」をチャリングクロス劇場にて企画・上演し、その後「日本キャスト版」を東京・大阪にて上演する(日本公演は後日発表)。

会見の冒頭では、梅田芸術劇場取締役東京事業部長の村田裕子より、このプロジェクトが始まったきっかけが説明された。2015年に日本で初演されたミュージカル『タイタニック』の演出でサザーランドが来日し、日本の一流のクリエイティブスタッフと見事に作品を作り上げたことから刺激を受け「日本の演出家にもグローバルな視点で活躍するチャンスを与える事ができないだろうか」という考えに至り、本企画が生まれたと語る村田。相談されたサザーランドも共感しプロジェクトが本格的スタートへ。そして、このプロジェクトを実現できる日本の演出家は、と考えた際に満場一致で藤田の名前が挙がったそうだ。

サザーランドは「2015年に初めて来日したときはとても怖かった。その気持ちを今もはっきり覚えています。その後、日本で『タイタニック』の初演を迎えた時、僕の中でも特別な作品となりました。今回、藤田さんをロンドンにお連れすることができて嬉しく思っています。このプロジェクトを早く始めたいです」と笑顔で話し、藤田の演出の力については「僕は藤田さんほど『VIOLET』の良さを引き出せないと思う。藤田さんがこれから作り上げていくコラボレーションでより大きな、深みのある作品を作っていくと思う」と太鼓判を押した。

様々な名作の演出を手掛けたサザーランドだが、藤田の演出をリスペクトする理由の一つに現在東京・日比谷シアタークリエにて上演中の『ジャージーボーイズ』の存在もあるようだ。「この作品は昔からよく知っているが、藤田さんの演出を観るまでは“知っている”と思い込んでいました。藤田さんの手によって全然違う作品に変身していました。不思議と自分の言語ではない演出を観た時に初めて本作のストーリーを理解できました。それまで観ていた『ジャージーボーイズ』はフランキー・ヴァリとフォーシーズンズのトリビュートという感が強かったが、藤田さんのはストーリーが明確で、アーティストたちが成長していく過程、世界的にアイコニックな存在となっていく点が観る者に伝わる、それが藤田さんの演出のすばらしい所だと感じました」と絶賛していた。

一方の藤田は「本プロジェクトで『VIOLET』の演出が出来ることを大変光栄に思っています。これまでに何度もチャリングクロス劇場で芝居を観ました。ここの芸術監督であるトムと、マネージング・ディレクターであるスティーブン・M・レヴィ。この二人が作り出すクリエイティブな空気と、同劇場の歴史ある建物に感銘を受けました。その後何度もミーティングを重ねてきました。今はこれからキャストの皆さんと出会い、優秀なカンパニーの皆さんとお仕事できる事にワクワクしています」と英語で挨拶。

このプロジェクトのオファーが来た時の心境について藤田は「ロンドンで演出をしてみたかった。というより世界のいろいろなところで演出をしたいです。僕も演劇が人生のすべてであり、チャレンジしていきたい。これだけの野心的なプロジェクトに出会えた事に感謝し、即答しました」と意気込みを見せていた。

『VIOLET』は、幼い頃に顔に大けがを負った25歳の女性ヴァイオレットが、あらゆる傷を治すという奇跡の宣教師に出会うために旅をする姿を描いた作品。本作について藤田は、「1960年代にアメリカで起こった公民権運動が背景となっています。一人の女性ヴァイオレットがノースカロライナをバスで飛び出し、その旅の中で様々な人-60年代を戦った人たちの価値観、宗教、人種を越えたその時代-を目撃していきます。その結果、彼女の考えに変化が生まれる…というのがこの物語のテーマです」と説明。「ヴァイオレットの目で見たこの作品は、今この時代に上演することで、新たな価値をもってお客さんに伝わるのではないか。何故なら今のアメリカ政権は、排他的な発言や人種差別的発言を繰り返し、60年代以降の人々の戦いをないがしろにしているから」と、上演する意義を強く訴えた。そして「『VIOLET』の演出プランについて、「ロンドンでの上演では劇場そのものをヴァイオレットが乗ったバスのように仕立て、観客と一緒にヴァイオレットと旅に出る、そんな演出を考えています」と楽しそうに語った。

会見の中で、何度となく「演劇は自分の人生のすべて」「朝目覚めてから寝るまで演劇の事をずっと考えている」と口にするサザーランドと藤田。藤田が「皆さんロンドンまで観にきてください」といえば、「初日のを買って絶対観に行く」とサザーランド。まるで演劇が生み出した双子のようにシンパシーを感じ合っている姿が印象的だった。
来年1月の上演に向け、本作の続報が入り次第、またお伝えしたい。

取材・文・撮影=こむらさき

公演情報

ミュージカル『VIOLET』

■原作:ドリス・ベッツ「The ugliest pilgrim」
■脚本・歌詞:ブライアン・クロウリー
■演出:藤田俊太郎
■音楽:ジニーン・テソーリ

 
■プレビュー公演
2019年1月14日(月)~20日(日)英・チャリングクロス劇場
■本公演
2019年1月21日(月)~4月6日(土)英・チャリングクロス劇場

■梅田芸術劇場公式サイト:http://www.umegei.com/
シェア / 保存先を選択