城田優「ミュージカルに賭ける思いが詰まっている」 ニューアルバム「a singer」について訊く

2018.10.27
インタビュー
音楽
舞台

城田優

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俳優でミュージカルでも活躍する城田優が、アルバム「a singer」をリリース。全11曲、日本語、英語、スペイン語を自在に操りながら、ミュージカルナンバーを中心に、今の“城田優”を垣間見ることができる。このアルバムや曲への思い入れ、現在のミュージカルシーンについて、城田が語った。

ーー今回、CDを出そうと思った理由は?

これまでも何度かお話を頂いてきたのですが、十数年ミュージカルに出演させていただいてきて、自分の軌跡として形に残せればと思いました。​

ーー選曲はご自身で?

基本的に、自分の好きな曲を選びました。今回は、「a singer」というタイトルのように、それぞれのミュージカル作品の役として演じながら歌いました。​

ーーでは、一曲ずつ曲への思いをお聞かせください。『ピピン』より、「コーナー・オブ・ザ・スカイ」。来年、ダイアン・パウラス演出でのご出演が決まっていますね。サーカスをイメージした、とても素敵なプロダクションです。

『ピピン』はブロードウェイで観ましたが、とても素敵なミュージカルです。「コーナー・オブ・ザ・スカイ」はジャクソン5もカヴァーした有名な曲で、メロディも素晴らしい。僕自身大好きな曲です。​

城田優

ーー「ホール・ニュー・ワールド」は誰もが知るディズニー映画『アラジン』の名曲バラード。すみれさんと、英語でのデュエットですね。

これまでイベントなどでも何度も歌ってきた曲です。今回のアルバムは、ミュージカルファンだけでなく、一人でも多くの方にミュージカルの魅力を知っていただくことが最大のテーマ。この曲は誰もが知っているミュージカルソングとして入れました。誰を相手役のジャスミンにしようか? となった時に、英語が喋れて歌が上手い人となると、友達のすみれさんしか浮かばなくて。すみれさんは女優さんとしてのイメージが強いので、一般の方々に歌が上手いイメージはあまり広まっていないんかと思うのです。でも歌を聴き終わった後に、わぁ! ときっと皆さん、驚くはずです。レコーディングはとてもいい雰囲気でしたよ。​

ーー『エリザベート』より「闇が広がる」withラミン・カリムルー。親友同士、夢のデュエットですね。

「闇が広がる」は満場一致で入れる話になり、では相手は誰にするのか、舞台『4 Stars 2017』​でデュエットしていただいたラミン・カリムルーさんとまたご一緒出来たら夢のようだとお願いしたら世界の大スターですが、「優、何が何でもやるよ!」と快く引き受けてくださり嬉しかったです。舞台『4 Stars 2017』で、ラミンさんが日本語で歌った時よりもさらに磨きがかかっています。一緒にレコーディングし、僕が発音や日本語の意味を伝えながらレコーディングしました。言語が変わっても、彼の歌のパワーは変わらず、素晴らしいです。ラミンさんもこの曲が大好きで、とても喜んでくれました。​

ーー『スウィーニー・トッド』より「僕がついている」。懐かしい作品ですね。

はい、12年前、僕はアンソニー役を演じ、今でも時折稽古場の様子を懐かしく思い出します。自分が演じた役の歌ではありませんがこの歌が一番好きなので。「心配しないで、僕がいる♪」というストレートで温もりに溢れた歌詞が素敵です。メロディがシンプルで綺麗、作品中ほっこりする曲かと。​

ーー『サウンド・オブ・ミュージック』より「マイ・フェイヴァリット・シングス」。もはや、スタンダード曲。ジャズアレンジが素敵です。

これは周りからのアイディアです。ドラマ『トットちゃん!』や舞台『4Stars 2017』で歌いましたが、英語が早口で発音も難しい。ぜひ皆さんに実際に歌って、体験してほしい(笑)。大人っぽいアレンジで、ウィスキーと葉巻が似合うイメージに仕上げました。​

城田優

ーー『ロミオとジュリエット』より「エメ」with生田絵梨花。『ロミオ&ジュリエット』は、城田さんがロミオとティボルトを交互に演じるなど、チャレンジなさった作品でした。

『ロミオ&ジュリエット』には僕が好きなミュージカルの音楽とポップミュージックが凝縮されています。中でも「エメ」は特別で、絶対に入れたいと思いました。僕にとってロミジュリ自体が特別な作品。もともとロミオがやりたくて、自分から小池(修一郎)先生にやりたい! と申し出たのです。フランス版のCDを初めて聞いた時、泣いちゃったんですよ。特に「エメ」は後半、転調の繰り返しで、最後コーラスが重なる様子が、あまりにも素晴らしくて。胸が痛くなる、今思い出しても鳥肌が立つほどです。​

公演では(山崎)育三郎と二人で主演し、基本、若い世代が作る世界。それまでの出演作『テイクフライト』『エリザベート』『スウィーニー・トッド』などは先輩の役者さんが多く、まだ20歳前後だった僕は「優くん、おいで〜」みたいな存在(笑)。それが26歳でロミジュリに出演し、主役としての責任、自分たち主体で作品を作り上げることを初体験したんです。先日、育三郎と対談したら、二人ともすごく楽しかったという話になりました。ジュリエットは当時全くの新人だった昆夏美さんと莉奈さん。彼女たちにちゃんと伝えなければという思いもありました。​

ーー再演時、ロミオとティボルトの二役を演じられた時、小池先生が「優に頼りっきりだよ」とおっしゃっていました。それがきっかけで、演出にも興味を持つようになったのですか。

はい、2013年の再演はジュリエット役の俳優の演出助手のようなサポートもやらせていただきました。演出したいと思ったきっかけは、まさにこのロミジュリです。ジュリエット役だけでなく、他にも初ミュージカルの人がいて。「こうしたら、こうなるんだよ」と伝えると、本人たちが実践してどんどん良くなっていく。そんな姿を見ると、喜びが湧くのですね。まさに演出家ってこういうことなのかなと思いました。小池先生が衣裳合わせをしている時には「ちょっと見てていいですか?」とその過程を見学したり。セットや絵コンテも見て、そこで演出家の仕事に興味が芽生えました。再演の時は演出助手的な視点で意見を言わせていただく事もありました。僕の中でいい作品を作りたいという欲が強くなったのです。今思うと、結構な熱量で取り組んでいましたね。その意味でも、ロミジュリは大事な作品ですし、ミュージカルの深さ、ロックでポップな音楽の方向性も好き。素敵な出会いでした。

生田絵梨花さんと僕は舞台では共演していないので彼女と「エメ」を歌えるのはここだけ。今、ジュリエットを演じていて、ポテンシャルが高く、将来が楽しみな生田さんとご一緒できてよかったです。​

城田優

ーー『ファントム』より、「母は僕を選んだ」。これも懐かしい。城田さんの単独初主演作品ですね。

ロミオをやり終わった後、この役ほど大変な役はない、こんなにエネルギーを使う作品はないと思っていたのに、翌年ファントムを演じたら、いきなりそれを塗り替えられた。ロミオとは比べ物にならないくらいに、思い出に残る作品です。曲は「母は僕を選んだ」が一番好き。涙なしでは歌えないナンバーです。稽古場では最初のうち、泣いちゃって、演出家から堪えて歌ってくれと言われたほど。そのくらい、感情がブワッと上がる曲です。後半のクライマックスで、エリックという一人の人間が愛と憎しみを歌う。作品中、お客様からの拍手が一番多かった気がします。CDでこの曲を聴いていただき、どんな物語だろう? どんなシーンだろう? と想像していただけると嬉しいです。作品を観て歌を知るのと同時に、歌を聴いて情景を想像して作品を知る。特にこの曲は物語性が強いので、想像するのも楽しいんじゃないかなぁ。​

ーー『モーツァルト!』より、「僕こそ音楽」。

僕は出演したことがない作品の曲ですが、好きな曲です。舞台『4Stars 2017』で歌ったら、すごく心地よくて自分と重なる曲だと気づきました。「役者じゃない、お芝居はできない♪」と言っているところは矛盾しているけど、それ以外は全部ぴったり合っている。「このままの僕を愛して欲しい♪」という歌詞、そしてメロディも素敵です。​

ーー「ザ・グレイテスト・ショー」と「ア・ミリオン・ドリームズ」は人気映画『グレイテスト・ショーマン』から。フジテレビの「うたの夏まつり」でも「ザ・グレイテスト・ショー」と「リライトザスターズ」を歌われましたね。

はい。映画は映画館で2回見ました。1回目から「ア・ミリオン・ドリームズ」が好きで、まず歌い出しから気に入り、サビに入ってすごいなぁ! と。2回目見た時もやはり一番好きでした。今回、プロデューサーである事務所の社長に「ザ・グレイテスト・ショー」も入れたら? と提案してもらい、チャレンジとして歌いました。将来的にもし舞台化されたら、ぜひやりたい作品ですね。​

ーー「イザベル」は城田さん主演のドラマ『文学処女』の挿入歌。スペイン語で歌われています。

イル・ディーヴォがクラシックの楽曲をカヴァーして歌詞をつけた曲です。5年前に舞台『4 Stars 2017』で歌いました。リハーサルで初めて歌った時、レア・サロンガ、ラミン・カリムルー、シエラ・ボーゲスが立ち上がって、最高! と拍手してくれ、「絶対レコーディングしたほうがいいよ!」と言われた曲です。自分のアイデンティティとしてスペイン語の曲を入れたいと思い選びました。イル・ディーヴォはすごくクラシカルに歌われているんですけど、僕のリクエストにより、南米的なラテンのサウンドに仕上げていただきました。

ーー全11曲、出来上がってのご感想は?

豪華な方達に参加していただいて、シンガーとして今の自分の最大限の歌唱ができたと思います。

城田優

ーー舞台『4 Stars 2017』で、海外のミュージカルスターとの共演から、刺激を受けることは多いですか。

はい。皆さんのメンタルや取り組み方は、すごいなと感心させられることが多いです。彼らが世界のスターだからではなく、外国のエンターテイナーは根っこから違うと思うことがあり、こういう風にいられたら理想だということを身をもって見せてくれました。今はグローバル化して、エンターテインメントも国境がなくなっています。その意味ではチャンスです。でも、まずは日本のエンターテインメントシーンを更に良くしていくためにもっと頑張らなきゃとおもいます。本物志向で、良い作品が残り、良くない作品は消えていく世の中にしたいです。​

ーー良いものが残り、良くないものは消えていく。そのために、何が必要でしょうか。

三つあります。一つは観客の目線。海外ではブーイングと喝采がちゃんとあり、面白いものは面白い、面白くなければ面白くないとはっきりしています。僕自身もそうありたいと思っています。​

二つ目が作り手。もっと観客をびっくりさせなければいけないと思います。僕が次に演出を手掛ける作品では、必ず新しい! 面白い! と思っていただけるものを提示したいと考えています。

三つ目は僕を含めた役者たち。もっと向上心を持って成長しなければいけません。ただ歌が上手いだけではなく、嬉しい時に嬉しい歌い方、悲しい時に悲しい歌い方ができる人がもっと育たなければいけないと思う。僕自身も、もっと上手くなりたいと常に危機感を持っています。プロとして、真摯に取り組みたい。

新人でも、歌と芝居心があればいいんです。オーディションでどんどん新しい発掘できれば。​

今、日本発のミュージカルを作りたいなと考えています。僕らの世代が、企画、演出、出演を担える時代です。役者・観客のみんなで力を合わせて、日本のミュージカルシーンに貢献していきたいですね!​

城田優

取材・文=三浦真紀 撮影=山本 れお

リリース情報

「a singer」

2018年10月24日(水)発売
価格:¥2,778+税
品番:SICL 30046
 
【収録曲】 
1. コーナー・オブ・ザ・スカイ(ピピン)*
2. ホール・ニュー・ワールド(アラジン)duet with すみれ*
3. 闇が広がる(エリザベート)duet with ラミン・カリムルー 
4. 僕がついてる(スウィーニー・トッド)
5. マイ・フェイヴァリット・シングス(サウンド・オブ・ミュージック)*
6. エメ(ロミオとジュリエット)duet with 生田絵梨花 
7. 母は僕を産んだ(ファントム)
8. 僕こそ音楽(モーツァルト!)
9. ザ・グレイテスト・ショー(グレイテスト・ショーマン)*
10. ア・ミリオン・ドリームズ(グレイテスト・ショーマン)*
11. イザベル MBS/TBSドラマイズム『文学処女』挿入歌**
*英語歌唱 / **スペイン語歌唱
 
公式サイト:https://www.yu-shirota.com/

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城田優 直筆サイン色紙を2名様にプレゼント

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