毛利亘宏×生駒里奈「少年社中は、私のホーム」 少年社中『トゥーランドット~廃墟に眠る少年の夢~』インタビュー

インタビュー
舞台
2018.11.9
(左から)生駒里奈、毛利亘宏

(左から)生駒里奈、毛利亘宏

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『モマの火星探検記』から17ヶ月。このふたりのコンビが、また新たな傑作を生み出す。

少年社中第36回公演『トゥーランドット~廃墟に眠る少年の夢~』は、20周年を迎えた少年社中のアニバーサリーイヤーを締め括る記念すべき作品だ。主宰・毛利亘宏の思い入れがたっぷりつまった本作のヒロインを務めるのは、女優・生駒里奈。『モマの火星探検記』以来、2度目のタッグに、ふたりとも今から稽古が楽しみで待ち切れないといった表情を浮かべる。

生駒が演じるのは、思考も行動も統一された管理社会を束ねるトゥーランドット姫。毛利の紡ぐ渾身の物語によって、今また新しい生駒里奈が誕生しようとしている。

『モマの火星探検記』のときは毎日知恵熱が出ていました(笑)

ーーまずは『モマの火星探検記』当時のお話から聞いていこうと思うのですが、そもそも毛利さんは生駒さんのどんなところに惹かれて、あのユーリという役にキャスティングしたのでしょうか?

毛利:僕が初めて生駒さんを生で見たのは『ネルフェス2014in武道館』だったんですけど、もう生駒さんが輝いていて。存在そのものが、すごくピュアだったんですね。それで、その後、『モマの火星探検記』をやるっていう話になったときに、真っ先に“生駒里奈”の名前が頭に浮かびました。それぐらいあまりにもイメージ通りだったんです。

生駒:私にとっても『モマの火星探検記』はすごく大きな作品です。お話をいただいたときから、「これに懸けるんだ」って直感で思いました。ここで結果を出さないと、絶対に次の自分にはなれないなって。今の私をつくった第一歩は、間違いなく『モマの火星探検記』。あの作品のおかげですごくいいスタートが切れた。私の人生の中でも、これ以上ないくらい大きなきっかけになった作品です。

生駒里奈

生駒里奈

ーー毛利さんとの芝居づくりはいかがでしたか?

生駒:めちゃくちゃ楽しかったです! 毛利さんは私のいいところも直していかなくちゃいけないところも全部はっきりと言ってくださるんです。おかげで、稽古をしながら改めて自分を客観的に見られたし、お芝居というものが何なのか勉強させてもらえました。

ーーダメなところを言われるのは嫌いじゃない?

生駒:嫌じゃないです。むしろ言われない方が嫌です。

毛利:稽古をしながら、日々一つひとつ丁寧に積み重ねていったよね。僕にとってもすごく楽しい時間でした。

ーー毛利さんの中で、稽古をしながら女優・生駒里奈さんの輝きを感じた瞬間はいつですか?

毛利:役者というのは基本的に通し稽古を重ねていくたびに本番に向けてどんどんギアが上がっていくものなんですけど、その上がり方の曲線が生駒さんはすごかったんです。どんどん役に没入していっているのが目に見えてわかるし、それが見ていて気持ちいい。W主演だった(矢崎)広と生駒さんのエネルギーに引っ張られて、座組み全体が本番に向かっていったような印象でした。

毛利亘宏

毛利亘宏

生駒:本番に強いというのが私のいいところでもあり悪いところで(笑)。私はあまり良くない癖だと思っていたので、そこを毛利さんに褒めてもらえたのが意外だったし、「自分の武器にしてもいいのかな?」と思えて嬉しかったです。『モマの火星探検記』はもう周りの出演者のみなさんがすごすぎて……。毎日知恵熱が出ていました(笑)。

ーーその知恵熱は、「負けたくない」という気持ちから?

生駒:というよりも、単純にもっと上手くなりたいっていう気持ちです。私、燃えるの、好きなんです。こんなにすごい人たちと対等にやるのは今はまだ無理だけど、みなさんのいいところをバランスよく取り込みたいなと思って。エネルギーをいっぱいもらったし、その分、いっぱい消費した。おかげで、毎日頭が痛くなっていました(笑)。

毛利:その食らいつく姿勢があったから、現場も引き締まったというか。生駒さんの日々の真摯な姿勢を見て、周りのみんなも純粋に頑張らなくちゃと思った部分は大きいと思います。

(左から)毛利亘宏、生駒里奈

(左から)毛利亘宏、生駒里奈

誰も見たことのない生駒里奈の顔を見せたい

ーーだからこそ、今回も自然に生駒さんの名が挙がったんですか?

毛利:『モマの火星探検記』のユーリはもともとあった役だったので、次は生駒ちゃんのためのオリジナルの役を書いてみたいな、と。そういう気持ちは前回一緒にやったときからずっとあって。タイミングを考えても、この作品しかないなと思ってお願いしました。『モマの火星探検記』のときはまだ生駒さんは乃木坂46にいたけれど、今回は完全にひとりの女優。だからこそがっつり勝負がしたいし、誰も見たことのない生駒里奈の顔を見せたいですね。

生駒:お話をもらったときはめっちゃ嬉しかったです。ちょうど乃木坂46を辞める間際ぐらいにこのお話をいただいて。乃木坂46を離れて、ひとりの女優になったタイミングで、また少年社中で勝負できることにワクワクしました。でも、今まで積み重ねてきた分をここでちゃんと見せないと、この先やっていけないなという覚悟もありました。だから、今もずっと緊張しています(笑)。

ーーやっぱり乃木坂46という看板が外れたことは、意識面でも影響は大きいですか?

生駒:良くも悪くもアイドルというフィルターは大きくて。今までは少しでもいいお芝居をしたら「アイドルなのにいいね」と言ってもらえたけれど、そのフィルターが外れたらそうはいかない。見られるのは、私自身の実力。それは恐怖でもあるけれど、私はリミッターがないからこそ面白いなって頑張れるタイプ。まだ自分がどういうふうにできるかはわかりませんが、堂々と自分を解放できるときが来たのかもしれないと思っています。それも、少年社中という安心できるみなさんの前で、可能性を試せることが嬉しい。私にとって、もちろん乃木坂46はホームだけど、少年社中もまた大切なホームなんです。

生駒里奈

生駒里奈

毛利ホームって言ってもらえるのは嬉しいですね。長年やってきた甲斐があるというか。『MAPS』(20周年記念第二弾・2018年6月公演)のときも観に来てくれて、楽屋でご飯食べて帰ってたよね(笑)。

生駒:そうなんです(笑)。観たら『MAPS』の世界観にハマっちゃって、ずっと泣いてたんですけど、社中飯に慰めてもらいました(笑)。

「私ってこんな顔もするんだ」って驚きました(笑)

ーー今回の役は、生駒さんのどんな魅力を引き出したいと思って書いたんですか?

毛利:可愛いだけじゃなく、カッコいいところを見せたいなって。イメージはトゥーランドット姫と、あとはジャンヌ・ダルク。ビジュアル撮影のときの写真を見たら、生駒さんの表情がすごく良くて。これはいけるなって確信しました。

生駒:私はジャンヌ・ダルクの方はこういうふうになるだろうなと自分でもある程度想像できたんですけど、トゥーランドット姫の方がむしろ意外で。上がった写真を見て、「私ってこんな顔もするんだ」って驚きました(笑)。

生駒里奈

生駒里奈

ーーキービジュアルの衣装が素敵ですよね。

生駒:どちらかと言うと、今までヒロインよりヒーローというか少年っぽいイメージで。アイドルをしているときも全然可愛い感じじゃなかったら(笑)、こんなふうにお姫様みたいな恰好をするのがちょっと恥ずかしくて。「あ、自分も女の子なんだな」って、ちょっと嬉しかったです(笑)。

ーーよく似合っていますよ。

生駒:メイクをしてもらっているときから、どんどんお姫様っぽくなっていて楽しかったです(笑)。

ーー現時点のプロットも読みましたが、非常に面白いですよね。

生駒:はい。もともとファンタジーが好きなので、こういう世界観であったり、衣装とかキービジュアルの雰囲気もすごく好みで。自分の大好きな世界にまた飛び込めることにとてもワクワクしています。

毛利:僕としては、この「演劇で世界を変える」というキャッチコピーがすべて。こう言い切った以上、それにふさわしいものをつくらなければいけないという覚悟が決まりました。間違いなく少年社中の代表作になる作品。ドキドキと不安もあるけれど、それ以上に楽しみという気持ちが一番です。

生駒里奈には、マグマのようなエネルギーがある

ーーでは、ここで改めて「演劇」に懸ける想いを聞かせていただきたいです。生駒さんは、卒業以来、舞台のお仕事が続いていますが、生駒さんにとって板の上に立つことはどんな想いがあるのでしょうか。

生駒:舞台は、自身を高めていけることを純粋に体感できる場所。だから、やっていてすごく楽しいです。ただ、最近、少し捉え方も変わっていて。この間、ふっと「あ、私、役者になりたい」って改めて思ったんです。これから本物の役者になるためには、楽しいだけじゃなく、もっとちゃんと一つひとつの技術を自分のものにしていかなきゃいけない。今はそのことをすごく考えています。

生駒里奈

生駒里奈

ーー演劇の世界には、少年社中のみなさんもそうですが、確かな技術があって、舞台の上に立つだけで存在感がにじみ出る役者さんがいっぱいいますからね。

生駒:そうなんです。でもその中できっと他の人にはない、自分のスタイルというものがあるはずなので、そこを見つけられたらいいなって思っています。たとえば、さっき言ったみたいに私はいわゆる王道のヒロインじゃない。でも、そういう女の子だけど女の子らしくないところが、演じるときに何かプラスの力になるかもしれない、とか。この前も普通に歩いているつもりだったのに「ちゃんと足を閉じて歩いて」って注意されて(笑)。そういうちょっと人と違うところを武器にできたら面白いのかなと思いました。

ーー毛利さんは、役者・生駒里奈の魅力ってどこだと思いますか?

毛利:一番はパワーかな。こんな小さい体にマグマのように沸々とエネルギーがたぎっていて。だから、演出家としてはついそれを舞台上で爆発させたくなるんです。

ーーそのマグマみたいなエネルギーというのは、生駒さん自身も自覚しているところではありますか?

生駒:あるのはあるんだろうなと思うんですけど、上手くコントロールはできなくて。それをもっと自分の意思で操れるようになったら、役者としてレベルが上がるのかなという気がします。

毛利:そういう意味では、今回はそれを操る役になると思います。いろんな顔をコントロールしないと、できない役。稽古、本番とどう乗り越えていくのか楽しみです。

ーーでは、最後にこれから始まる稽古に向けて楽しみにしていることを教えてください。

生駒:『モマの火星探検記』のときに矢崎さんの誕生日があって、みんなでお祝いしているのを見て、すごく羨ましかったんです。今回、ちょうど稽古期間に私の誕生日が重なりそうなので……(笑)。

生駒里奈

生駒里奈

毛利:わかりました。少年社中の本気をお見せします(笑)。

生駒:ありがとうございます(笑)。少年社中は頼れる方がいっぱいいる分、思い切り自分を解放できる場所。前回、少年社中で自分の表現の仕方がわかったところがたくさんあるので、今回もたくさん試したいし、また毛利さんからいっぱいいろんな言葉をいただきたいです。

毛利:個人的には乃木坂46を卒業して、またひとつ大きくなった生駒さんの姿を見られるのが、まずは楽しみです。そして、またここでこれから戦うための武器を手に入れてほしい。ホームと思ってもらえることがとにかく嬉しいので、羽根を伸ばして自由に楽しんで演劇を遊び尽くしてくれたらと思います。今作は演劇で世界を変えるお話し。お客さんも演劇で世界が変わることを楽しみにしてほしいと思います。

生駒:少年社中で世界が変わった自分としては、今作でまた変わった自分を見せられたら、これ以上ないことだと思います。楽しみたいとも思います! みなさん、劇場でお待ちしております!

(左から)生駒里奈、毛利亘宏

(左から)生駒里奈、毛利亘宏

ヘアメイク=林美由紀
取材・文=横川良明  撮影=山本れお

公演情報

少年社中20周年記念ファイナル
少年社中第36回公演『トゥーランドット~廃墟に眠る少年の夢~』
脚本・演出:毛利亘宏
出演:
井俣太良 大竹えり 岩田有民 堀池直毅 加藤良子 廿浦裕介
長谷川太郎 杉山未央 山川ありそ 内山智絵 竹内尚文 川本裕之
生駒里奈 松田凌 / 有澤樟太郎 赤澤燈 ザンヨウコ
馬場良馬 鈴木勝吾 / 藤木孝
 
【東京公演】2019年1月10日(木)~20日(日) サンシャイン劇場
【大阪公演】2019年1月24日(木)~27日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
【福岡公演】2019年1月30日(水)・31日(木) ももちパレス(福岡県立ももち文化センター大ホール)
 
■公演特設HP http://www.shachu.com/trd/
■少年社中公式HP http://www.shachu.com/
■少年社中公式Twitter @shonen_shachu
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