根本宗子インタビュー「わからないことをわからないまま書いています」~月刊「根本宗子」『愛犬ポリーの死、そして家族の話』

インタビュー
舞台
2018.12.12
根本宗子 (撮影:荒川潤)

根本宗子 (撮影:荒川潤)

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今や演劇界でもっとも「次の作品」を待たれる存在となった月刊「根本宗子」。今年(2018年)ナイロン100℃『睾丸』に出演するなど、近年は役者として外部作品への参加も活発な彼女だが、ホームグラウンドである劇団公演で、2年ぶりとなる本多劇場への公演を控えている。『愛犬ポリーの死、そして家族の話』は、四姉妹の四女が、愛犬にそっくりな男性に恋をするというシノプシス。相手役の男性には、大人計画の村杉蝉之介が月刊「根本宗子」に初参戦。作・演出を手がける根本に、本作について話を聞いた。

◆役者に託す自由度が増す

――台本の執筆はどのように進めているのですか?

今回は書き方が特殊で、ブロックごとに書いているんです。四姉妹のうち上の3人は夫婦で暮らしていて、四女の花だけが独身で、姉妹の夫婦ごとに話が進んでいく感じなので、それぞれやってみてもらって、順番を入れ替えるかもしれません。四女の花が物語の主軸で、幼少期から現在までの話なんですけど、そこに夫婦がからんでくる構造です。今回はめずらしく、かなり場面転換がある舞台なんです。セットチェンジの都合もあり、やってみて試すでしょうし、でも長女を先にするか、順番を入れ替えるか、稽古場でどれが面白いかを確かめてみたい。

――やはり台本はキャストに向けてあて書きしていますか?

そうですね。基本的にいつもあて書きです。でも、以前に比べて役者に託す自由度が増したというか。昔はあて書きをしたうえで「こうやってほしい」という、自分の頭の中にゴールのヴィジョンがある状態だったのですが、今回はなるべく持たないようにしてます。

――姉妹を通じた家族の話ですね。この設えを考えたきっかけはなんでしょうか。

『忍者、女子高生(仮)』も家族の話でした。ただ、マザコンがメインの話で、家族や家庭の話にはならなかったなと思っていて……。私、一人っ子なんですけど、親と分かり合っているつもりでも意見が食い違うことなんて山ほどあって、いくら親子でも考えが同じなんてことはあり得ない。それが夫婦となると、もっとかみ合わないことも生まれてくるでしょうし。どう折り合いをつけるかって、夫婦間ですごく大変なんだろうなと……。夫が相手でも大変なのに、姉の夫などいたらもっと過酷だろうと思って(笑)。4人も姉妹がいたらどうなるんだと思って書いたところがありますね。

――近しい間柄とは違いますが、舞台の現場でも役者とかみ合わないというようなことはありませんか。

あ、でも私、あんまり稽古場で役者と考え方でぶつかったことがないんですよ。もともと他人の話を聞くのが好きなタイプなんで。聞いたうえで、こうしてほしいという話をしますね。すごく話をしてると思う。近年は特に役者の話を取り入れて稽古して、私の意見も加わって結果的に足し算でなく掛け算になるように考えています。だから、噛み合わずぶつかるとかは無いかな。ぶつかる前になんとかするし

◆自分のことを話すおしゃべりな俳優が好き

――役者の意見を聞くようになったのは……。

以前の作品は、自分の身に起こった話を題材にしていました。要は自分が主人公のものを書いていました。それから自分の話じゃないものを書いていくことになって、そうしたら他人の話を取り入れていこうと思うようになった。自分の周辺をモチーフにすることから完全フィクションに変わったことがきっかけですね。

今回の設定もフィクションだけど、四姉妹の肉声に私の考え方は入っていると思います。すべての登場人物に、どのみち私のなんかしらは入ってくると思うんですね。男女に関係なく、登場人物のすべてに私の考えが含まれているとは思います。けれども今回は、完全に何を考えているかわからない人を登場人物として書いたんです。今までは、理解できないキャラクターでも、そのなかに理解できる部分を作っていました。「この人にはこういう正義や理屈があって行動している」というふうに。つまりほんの少し「私」がそのキャラクターに入っている。それをやめて、今回「私」を入れずに、書いているのが村杉さんの役なんです。だから、村杉さんならどうするかを取り入れて、村杉さんにゆだねる部分が多くなると思います。核心を突く部分や最終的な目的地は私からお願いしますが、村杉さんが選ぶ道筋はかなりゆだねていくだろうと思います。

――根本さんの好きな役者はどんなタイプの人ですか?

よくしゃべる人。しかも自分の話ばかりする人がいいですね。黙っている人よりも断然しゃべる人がいいです。田村健太郎さんによく出て欲しいと思うのも、おばちゃんみたいに自分の話をすごくするからかもしれない(笑)。私はあて書きなので、その人のパーソナルな部分を知りたいんですね。役者さんの話を聞いたからといって、その人そのものを書くわけじゃないですけど、なんか「こういうことを考える人なんだ」と知っておきたいから、自分のことをしゃべってほしい。それと私の台本は台詞量がめちゃくちゃ多いから、普段からおしゃべりな人のほうがこの台詞量を話すのは向いていると思います。あと、まくしたてるシーンが多いので、がんばってまくしたてるのではなく、それが自然にできる人がいいですね。

◆台詞以上に意味のある間を

――チャラン・ポ・ランタンの小春さんが劇中の楽曲を提供しますね。

四女の花の幼少期から大人になるまでの話なので、そのままやると長くなるので、歌でサクッと進めてしまおうということになり、ある種のファンタジーシーンなので、小春ちゃんにお願いしました。私、舞台上で説明しちゃうことがそんなに嫌いじゃなくて、スタイルとしてありだと思っているんです。モノローグやテロップでは今回のお芝居とは合わないから、劇中歌にしました。ほとんどのキャストが少しずつ歌います。小春ちゃんは、私の台詞を聞いて「歌にすればいいのに」ってずっと言ってくれていたんです。今回は作詞も一緒にやってもらっていて。花の幼少期からの出来事や感情を箇条書きにして渡したら、バッチリなデモテープを作ってきてくれました

――千秋楽は2019年のカウントダウンを実施するんですね。

まだ内容ははっきり決まってないのですけど、2019年というより劇団10周年へのカウントダウンなんです。イベント的なことをやって、たぶん私のひとり芝居があるかもしれないです(笑)。あと、“カウントダウンプロレス”という案が稽古場で出てます。なんだろ…それ…(笑)

――本作の上演にあたって、根本さんが課していることを教えてください。

すごく間をとるようになりましたね、台詞量が多くて、まくしたてる舞台ばかり作っていましたが、田村さんの間の埋め方を見て、台詞以上に意味のある間のあり方を考えるようになりました。それと、過去にはけっこうサービス精神を出し過ぎた時期があったので、私は何を書きたかったのかというところに立ち返って芝居を作っています。本当に、わからないことをわからないまま書いています。わかんない人を描くことで、より伝わる何かを手に入れられるかを考えている気がします。すごく稽古が楽しいです

取材・文/田中大介 撮影/荒川潤

公演情報

月刊「根本宗子」第16号『愛犬ポリーの死、そして家族の話』
 
■作・演出:根本宗子
■劇中楽曲:チャラン・ポ・ランタン 小春
■出演:青山美郷、村杉蝉之介、瑛蓮、小野川晶、根本宗子、田村健太郎、岩瀬亮、用松亮
 
■会場:本多劇場
■日程:2018年12月20日(木)~31日(月)
※千秋楽は終演後にカウントダウンイベント付き
■料金:全席指定:(前売)5,800 円/(当日)6,300 円
千秋楽チケット(12/31・21:30 開演の回/カウントダウンイベント付き):6,500円
 
■製作:月刊「根本宗子」・ヴィレッヂ
■問い合わせ:ヴィレッヂ(平日 11:00~19:00) TEL:03-5361-3027
■特設サイト:http://www.village-inc.jp/nemoto16/
 
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